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<東京怪談・PCゲームノベル>


INNOCENCE 01 スカウト

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OPENING

異界の辺境、廃墟が並ぶ不気味な地域。
魔物の出現が頻繁な、物騒地。
異界の住人でも、好き好んで寄り付く者はいないであろう、この地に存在する、
美しき白亜の館。
その館から、今。
一人の少年が、姿を現した。
「はぁ〜。ひっさしぶりだよな。スカウト!腕が鳴るぜ〜」
伸びをしながら、サクサクと歩く、何とも楽しそうな表情の少年。
そんな少年の後ろを、小柄な少女が、ゆっくりと付いて行く。
少女は、少年の背中に忠告を突き刺した。
「…誰でも良いわけじゃないんだからね」
「わ〜かってるよ」
ケラケラと笑いつつ返す少年。
無邪気な少年に、少女は溜息を落とす。

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誰もいない公園。
時刻は、深夜零時を過ぎた頃か。
日中、この公園には彷徨う子供の魂の笑い声が響く。
だが夜遅くともなると、魂も休息を要するようで、
公園は、閑散と静まり返っている。
一歩踏み入っただけで、ゾクリと背筋に寒気が走る。
この公園に、生身の者…生者が寄り付くことは滅多にない。
そんな公園のベンチに、腰を下ろす者が一人。
銀髪のセミロングに、赤い瞳。
凛とした美しさを漂わせる、彼女の名は黒崎・麻吉良。
彼女は、ここで一夜を明かすつもりのようだ。
心霊スポットと噂される、この公園で一夜を明かす…。
彼女は別に、オカルトマニアでも、物好きでもない。
だが彼女は、心霊現象に恐怖を抱くことはない。
なぜなら、彼女自身も…生者ではないのだから。
死人とはいえ、この世に大きな未練や、
達成できなかった目的を持つ者は、生者と何ら変わりない。
姿形は、そのままに。話すことも、あらゆる感情を持ち合わせることも可能だ。
現実世界では、そのような存在を纏めて”霊”と呼び、
大抵気味悪がられるが、異界では違う。
そのような存在も、立派な”存在”として扱われる。
現に、魔物討伐や事件の解決に、死人が協力していることが多い。
麻吉良も、その一人。
必要とされれば、光栄とばかりに積極的に協力する。
事実上、世には存在していないが、麻吉良は、今も毎日を必死に生きているのだ。

麻吉良の生きる世界、異界は物騒な世界。
屋外で一夜を平穏に過ごすことは、難しい。
麻吉良は、伏せていた目を開き前方を見やる。
そこには、巨大な蜘蛛が三匹。
唾液を垂れ流しながら、ジリジリと麻吉良に近づいていく。
麻吉良が溜息を落とした直後、
大蜘蛛三匹は、一斉に麻吉良へ飛び掛る。
しかし。
麻吉良が、チン、と刀を鞘に納めた途端、
大蜘蛛三匹は、スラリと真っ二つに裂かれ、音もなく煙となって消えていく。
俊足の抜刀術。それが、麻吉良の戦闘スタイルだ。
邪魔者は消え、しばらくは、ゆっくりと身を休めることができる。
そのはずだが、麻吉良の目は鋭いまま。
どこからか感じる、視線に気を張っていたがゆえに。
麻吉良に感付かれたことで、不審者は素直に姿を見せる。
木の陰から姿を現したのは…少年と少女だった。
どんな猛者が飛び出してくるのかと身構えていた麻吉良は、
あわられた少年と少女に、一瞬フッと気が抜ける。
だが、すぐに気を張らねばならない状況へと追い込まれる。
少年と少女が、自身に向けて銃口を向けていたから。
躊躇うことなく、少年と少女は同時に発砲。
二人の持つ銃から放たれるのは、銃弾ではなく…。
紅い炎と、蒼い水だった。
炎と水は、併せて美しい螺旋を描き、麻吉良へ向かってくる。
(魔法…かな)
麻吉良は二人の能力に判断を下し、
攻撃を避けながら、迅速に二人へ接近する。
二人の目前でピタリと停止し、刀に手をかける麻吉良。
少年と少女は顔を見合わせ頷くと、
銃を腰元に収めてパチパチと拍手しだした。
「すげー身体能力だね、おねーさん」
「お見事です」
賞賛を述べる二人に、麻吉良は、どうもと会釈しつつ首を傾げた。



「なるほど…スカウトですか」
ベンチに座り、納得する麻吉良。
少年と少女が麻吉良を襲った目的は、お手並み拝見。
彼等はINNOCENCEに所属するエージェントだと言う。
異界に生きる者なら誰もが知っている有名な組織IO2。
そのIO2のライバル組織と言われているのが、INNOCENCEだ。
麻吉良も異界に生きる存在。INNOCENCEを知っている。
だが、実際に所属エージェントと接触するのは初めてのこと。
見たところ、少年少女は、まだ二十歳そこらだろう。
こんなに若いエージェントが活躍しているのか、と麻吉良は感心する。
「IO2に負けないくらいの戦力が必要なんだ。即戦力人員っつーか、さ」
微妙にズレていた帽子を調整しつつ言う少年。
麻吉良は目を伏せ、少し物思いに耽る。
IO2。
彼女にとって、IO2は今最も気になる存在。
ずっと捜し求めている”あの人”が、
IO2エージェントと繋がりを持っているという情報を、先日得たばかりだ。
だが、ヘタに動いて怪しまれてはマズイ。
すぐにでも行動を起こしたかったが、
麻吉良は、それを必死に抑え、どうしたものかと思案していた。
そんな矢先に、この事態。
イノセンスとIO2は、ライバル関係にある。
噂ゆえに、事実なのかは理解らない。
けれど、それを確かめる必要はない。
IO2と、自然に接触できることは確かなのだから。
「いいわ。詳しく話を聞かせて」
頷きつつ言う麻吉良。
少年と少女は顔を見合わせ、
自分達のアジト…イノセンス本部へ麻吉良を連れて行くことにした。

記憶の欠乏。
生きていくのに、このままでも…実際、支障はない。
無理に思い出そうとするのも一つの手。
けれど、それまでを捨てて新しい生き方をするのも、一つの手。
多くの者は、記憶を失ったことを嘆く仲間や家族がいる為、
何とか元に…記憶を戻そうとする。
けれど、麻吉良は一度、この世を去った。
現在、世にないはずの存在だ。
愛する”誰か”を護る為、命を賭した。
その”誰か”は思い出せないけれど、あの時の決意に、きっと後悔は、ない。
その”誰か”を救うことが出来たのか否かは気になるところだが、
あのまま、深い眠りに堕ちても。悔いはなかった。
けれど、自分は今、存在している。ここに、存在している。
自分が蘇った意味、自分を蘇らせた人物の思い。
その全ては、あの人と繋がっている。
麻吉良は、自分の意味を求め、”あの人”との接触を求め、
少年と少女のスカウトに応じた。

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■■■■■ THE CAST ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


【 整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業 】

7390 / 黒崎・麻吉良 (くろさき・まきら) / ♀ / 26歳 / 死人

NPC / 黒崎・海斗 / ♂ / 19歳 / INNOCENCE:エージェント

NPC / 白尾・梨乃 / ♀ / 18歳 / INNOCENCE:エージェント


■■■■■ ONE TALK ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


こんにちは。 はじめまして。
ゲームノベル”INNOCENCE”への参加・発注ありがとうございます。
発注・参加 心から感謝申し上げます。 気に入って頂ければ幸いです。
INNOCENCEは、関連シナリオが幾つもありますので、
是非。また、ご参加下さいませ。

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2008.02.22 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
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