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<東京怪談ウェブゲーム 界鏡現象〜異界〜>


アイドル護衛 (前編)

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OPENING

今、異界で大人気のアイドル。
彼女の名前は、リュシル。
人間と獣人(妖)のハーフである彼女は、
種族を問わず、人気を誇っている。
その勢いは増すばかりで、衰える予感は一切しない。
今宵も、満員御礼。
リュシルのライブイベントが開催される。

オーディエンス…ファンは男ばかりで、むさ苦しい。
ライブハウスは、熱気ムンムンだ。
そんなライブハウスの中、壁に凭れて煙草をふかすディテクター。
(あぁ…臭い…帰りてぇ…)
そう、ディテクターも、リュシルのファン…なワケがない。
仕事。リュシルの護衛が、今回の彼の仕事だ。

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「草間…一つ聞きたいんだが」
煙草をふかすディテクターに低い声で言う凍夜。
武彦…いや、ディテクターはフゥーッと煙を吐きつつ返す。
「何だ?つか、こっち(異界)ではディテクターって呼べ」
「あぁ、すまん。忘れていた。護衛…とのことだが、危ない奴は斬っていいのか?」
「…お前」
「冗談だよ。そんな顔するな」
クッと笑って、ステージを見やる凍夜。
ディテクターは、どうだかなぁ…といった表情で凍夜を見やる。
疑惑の眼差しを感じ、凍夜は肩を竦め尋ねた。
「お前、まさか俺は四六時中戦いたいだの殺したいだの考えてる奴だなんて思ってないだろうな?」
「え。違うのか?」
「ふざけるな。馬鹿が」
「いやぁ、だってなぁ…そう見えるしよ」
「勘違いするな。戦いのときだけだぞ、俺がああなるのは。普段はいたって普通だ。自分で言うのもなんだがな」
「ふぅん…?」
「危険思想などでは、断じてない」
「へぇ…?」
流すようなディテクターの相槌にムッとした凍夜は、話題を変える。
「お前、大して金にならん仕事ばかりやって、どういうつもりだ?」
「何だよ。急に」
「今回の仕事もそうだし…少しは零…いや、レイレイのことも考えてやれ」
「うーわ。お説教始まっちゃうのかよ」
肩を揺らして苦笑するディテクター。
と、その時。
会場がフッと暗くなり、ステージのみが照らされた。
いよいよ、アイドル・リュシルのライブ開始だ。


リュシルは異界で人気のアイドルで、人間と獣人のハーフ。
その為、犬耳と尻尾がある。マニアには、それがたまらないらしい。
種族を問わず、人気なリュシル。
ステージ上に現れた彼女は、テレビや雑誌で見るよりも ずっと小柄で、幼い顔立ちだ。
『みんな、今日は来てくれてアリガト!楽しんで行ってね☆』
客席に投げキッスを飛ばし、大ヒットデビューシングルを歌いだすリュシル。
ステージ上で歌うリュシルを見て、凍夜は笑って言った。
「若いな。色んな意味で」
「お前、それオヤジくせぇぞ」
クッと笑ってツッこむディテクター。
「事実オヤジな お前に言われたくない」
「あっ。ムカッときた。ムカッときたよ?」
「そうか。良かったな」
「良くねぇよ。このやろー」
軽口を交わしながらも、警戒をおこたらない凍夜とディテクター。

ライブも終盤になってくると、
オーディエンスの熱気は、最高潮。
そうなると、おかしな輩も出てくる。
最前列でノリノリだった客が、
あまりの興奮に我を忘れ、ステージに上ろうとしだしたのだ。
ギョッとし、歌い続けるものの不安気な表情を浮かべるリュシル。
凍夜はヤレヤレ、と溜息を吐くと、
客を掻き分けて最前列に移動し、問題の客の首根っこを掴んで、
そのままズルズルと引きずり、会場外へポイッと投げやった。
「な、何するんだ!何だキミは!?僕とリュシルたんのスキンシップを邪魔するなんて!」
会場から強制的に出されてプンスカと怒る問題客。
(リュシル”たん”って…ファンには、そう呼ばれてんのか、あの子は。へぇ…)
ブーブーと文句を並べる問題客を相手にせず、
どうでもいいことに反応している凍夜。
間もなく警察がやってきて、問題客は連行されていった。
「お疲れー」
「お疲れ」
すれ違いざまに挨拶を交わす凍夜とディテクター。
ディテクターは、別の客を引きずって外へ向かって行く。
そんな感じで、凍夜とディテクターは、
ライブ終盤は入れ代わり立ち代わりに、問題客を追放していった。
ハイになりすぎて迷惑な客は続出したが、
それ以外には、特に大きな問題は発生しないまま、ライブは無事に終了した。



「はぁ、疲れた」
首をコキコキと鳴らしつつ言う凍夜。
ディテクターは同感だ、と頷く。
二人はライブ終了お疲れ様、と労いの言葉をかけようと、
リュシルのいる楽屋へと向かっている。
「何か…服が嫌な臭いを放ってる」
「汗臭かったからな。染み込んだんじゃねぇか?」
「げ…」
他愛ない話をしながら歩き、楽屋に到着した二人。
ディテクターが扉をノックしようとした、その時だった。
勢い良く扉が開く。
バンッ―
「っぶ」
顔面に扉が直撃し、痛みにしゃがみこむディテクター。
楽屋から出てきたのはライブスタッフ数名で、
スタッフ達は、額に汗を滲ませて困惑を露わにした。
「ど、どどどど…どうしましょううう!?」
「トイレ!トイレはどうだ!?」
「さっき行きましたが、いませんでしたよ!」
スタッフの態度から異変を感じ取った凍夜は、
右往左往しているスタッフの一人に尋ねてみる。
「何かあったのか?」
スタッフは青褪めて、こう返した。
「リュシルが、どこにもいないんですよー!!」
「………」
「マジかよ」
驚く凍夜とディテクター。
ライブ終了と同時に、ふっと姿を消したという。
スタッフ達は、誘拐されたのではと気が気じゃない様子だ。
「どうする?」
しゃがみこんでいるディテクターに尋ねる凍夜。
ディテクターは、赤くなった鼻を擦りつつ言った。
「探すさ、当然」
「だよな」
凍夜は頷く。

手分けして、リュシルの捜索にあたる凍夜とディテクター。
いったい、リュシルはどこへ行ってしまったのだろうか。

(後編に続く)

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■■■■■ THE CAST ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


【 整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業 】

7403 / 黒城・凍夜 (こくじょう・とうや) / ♂ / 23歳 / 退魔師・魔術師

NPC / ディテクター(草間・武彦) / ♂ / 30歳 / IO2:エージェント(草間興信所の所長)

NPC / リュシル・ファートン / ♀ / 17歳 / 異界で大人気のアイドル


■■■■■ ONE TALK ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


こんにちは!毎度さまです。
発注・参加 心から感謝申し上げます。 気に入って頂ければ幸いです。
続きは、後編で^^

PS:ファンレターありがとうございました。励みになります^^

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2008.02.27 / 櫻井 くろ(Kuro Sakurai)
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