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アイドル護衛 （前編）
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ＯＰＥＮＩＮＧ
今、異界で大人気のアイドル。
彼女の名前は、リュシル。
人間と獣人（妖）のハーフである彼女は、
種族を問わず、人気を誇っている。
その勢いは増すばかりで、衰える予感は一切しない。
今宵も、満員御礼。
リュシルのライブイベントが開催される。
オーディエンス…ファンは男ばかりで、むさ苦しい。
ライブハウスは、熱気ムンムンだ。
そんなライブハウスの中、壁に凭れて煙草をふかすディテクター。
（あぁ…臭い…帰りてぇ…）
そう、ディテクターも、リュシルのファン…なワケがない。
仕事。リュシルの護衛が、今回の彼の仕事だ。
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ディテクターに暇なら付き合えと言われ、
護衛任務に同行している陣内・京司。
京司とディテクターは、仲が良い。
二人並んで壁に凭れ、煙草をふかす京司とディテクター。
ライブ会場は、リュシルファンの男共で溢れ返っており、
むさ苦しいったら ありゃしない。
「…出来うる限り、早く終えたいかも。この仕事」
汗臭さに不快な表情をしつつ言う京司。
ディテクターは苦笑して「同感だ」と頷いた。
その時、フッと会場が暗くなり、ステージのみが照らされる。
ポップなＢＧＭに乗って登場する、アイドル・リュシル。
「うぉぉぉぉぉーーー！！！！」
「リュシルちゃぁぁぁぁーん！！！！」
リュシルの登場で、会場の熱気はマックスを振り切った。
オーディエンス…ファンの熱いラブコールに応えて、
リュシルは客席に何度も投げキッスを飛ばす。
その度に、ファンはいちいち雄叫びをあげる。
騒々しい中、京司は笑って言う。
「へぇ。なかなか可愛いお嬢ちゃんじゃねぇの」
ディテクターは肩を竦めて苦笑した。
『みんなぁ！今日は来てくれてアリガト！リュシル嬉しいっ！！』
「うぉぉぉぉぉーーーー！！！！」
『めいっぱいっ！楽しんでいってねぇっ☆』
「うぉぉぉぉぉーーーー！！！！」
大ヒットデビューシングルから、ライブスタート。
アイドルに大した興味は持ち合わせていない京司だが、
リュシルが歌う曲は、どこかで聴いたことのあるものばかり。
大人気の彼女は、毎日テレビやラジオに出演している。
その為、どこにいても、興味がなくても、彼女の歌声と接触する機会は多い。
「あ。これ、聴いたことあるな」
リュシルの歌に反応し、微笑んで言う京司。
ディテクターは、ライブ開始前と何ら変わらず、
不愉快というか、居心地の悪そうな面持ちだ。
京司はクックと笑ってディテクターに言う。
「気持ちは理解るけど、せっかく主役が華々しいんだから、少しは楽しんだらどうよ？」
ディテクターは苦笑して、しみじみと返す。
「…お前って、順応性高いよな」
「その場の状況を楽しむってのも人生には必要だと思うぜ」
「わかるけどな…」
「お前、いっつも そんな面してるから金運も逃げるんじゃねぇの？」
「………」
リュシルのライブは、順調に進行していく。
だが、ライブも終盤となると、
テンションの上がりすぎた、おかしなファンが出てくる。
ステージに登ろうとしたり、卑猥な言葉を叫んだり…。
そんな迷惑なファンに、リュシルの歌を聴く資格はない。
京司は、迷惑なファンが出現する度に、
サイレンサーつき麻酔銃を抜いて、対象へ発砲。
「やれやれ。困ったもんだな」
ぐっすりと眠るファンを引きずりつつ苦笑する京司。
ライブ会場の隅には、彼によって眠らされたファンが山のように積まれている。
「お前…結構酷いよなぁ」
ポツリと呟くディテクター。
京司はポイッとファンを山に放って返す。
「ん？何が？」
「…これじゃあ、ゴミ扱いじゃねぇか。まるっきり」
「ある意味ゴミだと思うわけよ。俺は。はは」
「ははは。って、素直に笑えねぇよ。お前が言うと」
京司とディテクター（主に京司だが）の活躍により、
リュシルのライブは無事に終了。
迷惑な輩は続出したが、リュシルに危害は一切なかった。
任務は、大成功と言えるだろう。
今回の任務の報酬は、折半。
人気アイドルの護衛なだけあって、
折半しても、かなりの額が手元に入る。
京司とディテクターは、依頼主であるリュシルのマネージャーに会い、
報酬を受け取ると同時に、リュシルにお疲れ、と労いをかけようと、
揃ってリュシルの楽屋へ向かった。
報酬で、何を買おうか食べようかとワクワクしている京司。
そんな京司を見つつ微笑むディテクター。
「あー。酒もイイな。日本酒をキューッと…たまんねぇー」
「貯金、っていう選択肢はないのか？」
「するよ。ちょっとね」
「ちょっとかよ」
「塵も積もれば山となる、ってね」
「ちゃっかりしてるな」
「はははっ」
期待に胸躍らす京司と、そんな京司に笑うディテクター。
だが、楽屋に到着して、二人は異変に気付く。
何度扉をノックしても反応がない。
おかしいな、と思いつつ扉を開けるディテクター。
楽屋に、リュシルはいなかった。
「あれ？トイレでも行ってんのかな」
ディテクターの背中からヒョコッと顔を出して言う京司。
「………」
ディテクターは楽屋内を見回し、顔を強張らせた。
嫌な予感。
ディテクターが感じ取ったそれは、確かなものだった。
「うわぁぁぁ〜〜！どうしよう、どうしよう〜〜〜！！」
そう叫びながらバタバタと駆け寄ってくるのは、
依頼人であるリュシルのマネージャー。
かなり困惑しているようだ。
ディテクターは右往左往するばかりのマネージャーに歩み寄って尋ねる。
「何かあったのか？」
ハッと我に返り、ディテクターを見上げるマネージャー。
しばしの沈黙の後、マネージャーは狂ったようにディテクターを揺さぶって告げた。
「リュシルが、リュシルが、どこにもいないんですよぉぉぉーーー！！」
話によると、ライブ終了と、ほぼ同時にリュシルは姿を消したという。
スタッフ総出で探しているものの、どこにもいない。
もしや、誘拐されたのでは…とマネージャーは気が気じゃない様子だ。
「探すぞ」
ポンと京司の背中を叩いて言うディテクター。
「俺、人探しって苦手なんだよなぁ」
京司は、そうボヤきつつもディテクターの後を追う。
一体、リュシルはどこへ…？
（後編に続く）
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■■■■■ ＴＨＥ ＣＡＳＴ ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
【 整理番号 / ＰＣ名 / 性別 / 年齢 / 職業 】
７４２９ / 陣内・京司 （じんない・きょうじ） / ♂ / ２５歳 / よろず屋
ＮＰＣ / ディテクター（草間・武彦） / ♂ / ３０歳 / ＩＯ２：エージェント（草間興信所の所長）
ＮＰＣ / リュシル・ファートン / ♀ / １７歳 / 異界で大人気のアイドル
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こんにちは！ 発注・参加 心から感謝申し上げます。
気に入って頂ければ幸いです。 続きは、後編で＾＾
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２００８．０２．２７ ／ 櫻井 くろ（Kuro Sakurai）
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