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<東京怪談ウェブゲーム あやかし荘>


お隣は獣人さん

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OPENING

暫く住人のいなかった三下の部屋の隣に、
昨日、とある住人が引越してきた。
住人は、昨日のうちにタオルを持って、
あやかし荘の全部屋へ挨拶回りをした。
とても礼儀正しい人物だ。
だが、人間ではない。獣人なのだ。
”フラウ”と名乗る、その住人は、
隣に住む三下を何故か気に入り、やたらと接触してくる。

「はぁ…気が重い…」
部屋の中心で体育座りしている三下。
彼がローテンションな理由。それは…。
今晩、お隣さんに一緒に鍋しようと誘われているからだ。
お隣さんは、ものっすごい怖い顔。
フレンドリーで、良い人なんだと頭では理解しているが、
どうにも怖くて仕方ない。
約束の時間まで、あと三十分。
「はぁ…気が重いぃぃ…」

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「……そうだ!」
部屋の隅で体育座りをしていた三下は、あることを思いつき、
スックと立ち上がると、いそいそと部屋を出て、とある住人の部屋へ向かった。
一人であの住人の部屋に赴き、二人きりで鍋をつつきあうのに、
どうしても抵抗と恐怖を拭えない三下は、
同じ、あやかし荘の住人であり仲の良い少女に合席を頼もうと考えた。
その少女はロシア出身で、今はとあるサーカス団に所属し、
モーターアクロバットの中心スターとして、活躍している少女だ。
彼女ならきっとOKしてくれる!優しいから!
そう胸に希望を抱いて少女の部屋を訪ねた三下。
しかし、少女の部屋の扉には、
日本語とロシア語両方で『しばらく留守にします』と書かれたメモが貼られていた。
「…ガーン」
お約束な擬音を声に出してショックを表現する三下。
ガクリとその場に膝をつき、ずーんと落ち込む三下だが、
ここで諦めるわけにはいかない。だって、怖すぎるから。
三下は携帯を取り出し、少女が所属するサーカス団に連絡を入れてみる。
プルルルル…ブツッ―
『何じゃ〜い』
「あっ!す、すす…すみません。ちょっと御願いがありまして」
『何じゃ。久しぶりに連絡してきたと思ったら…都合の良い関係じゃ〜のぅ?』
「す、すみません…」
『で。何じゃ。ワシは今、忙しいんじゃ。早ぅせぃ』
「は、はい。あのですね…」
サーカス団の団長に事情を説明し、助けて欲しいと乞う三下。
団長は面倒くさそうな返答をしたが「仕方ないのぅ」と言い、
少女の代わりとなる者を寄こすから待っていろと告げた。
「…やったぁ」
安心し、ヘナヘナと脱力する三下。

約束の時間まで、あと五分。
お隣からは、鍋の香りが漂ってきている。
寄こすと言われた代わりの者は、まだ来ていない。
ソワソワと落ち着かない様子で部屋をウロウロする三下。
と、その時。何やら扉の外で話し声が。
三下は慌てて玄関に行き、バーンと扉を開けた。
「うわ。ビックリした」
突然開いた扉に驚きキョトンとしている少女。
忍者のような風貌の彼女が、サーカス団から送られてきた、代わりの者だ。
「ぁぁぁぁ…助かったぁぁ…」
少女の肩に手を乗せ、安堵の息を漏らす三下。
大袈裟すぎる三下の喜びようにアハハッと笑う少女。
少女の名前は、猿渡・出雲。
サーカスでは綱渡りを中心に活躍する軽業師だ。
出雲の傍には、二匹の猿もいる。
「ウキキ〜(訳:よう、ヘタレ。吟醸酒持ってきたで〜)」
「ウキキ…(訳:お久しぶりでごザル)」
関西弁で喋り、少し口が悪いほうの猿は佐助といい、
礼儀正しく、古風な喋り方のほうは才蔵という。
二匹とも、出雲の大切なパートナーである。
「急だったから、買い物した材料そのまま持ってきちゃったんだけど」
そう言って、三下にビニール袋を見せる出雲。
袋の中には…豚肉、大根、豆腐、ネギなど。
出雲いわく、今晩は豚汁にしようと思っていたそうだ。
三下は「何でもいいです、もう、本当、何でも…!」と言って、
出雲たちに泣きそうな顔で感謝を述べた。よほど嬉しいのだろう。



「では…行きますよ」
ゴクリと息を飲んで、お隣さん宅の扉を叩く三下。
すると扉の中から「開いてるから、勝手に入っていいよ〜」と声が聞こえてくる。
意を決して扉を開ける三下。出雲たちはビクついている三下を見て、
ビビりすぎだとケラケラ笑いながら、彼に続いて部屋の中へ。
部屋はとても綺麗に片付いていて、客人を迎える準備万全といった状態だった。
「おじゃまします〜」
ニコリと微笑んで、部屋の住人に挨拶する出雲。
住人はキッチンで何やら作業をしていたが、
どうやら済んだようで、クルリと振り返り「いらっしゃい」と迎えた。
「ひぃ…」
ザザッと退く三下。まぁ、無理もない。
この住人、人間ではなく獣人なのだ。それも、物凄く怖い顔をしている。
子供が見たら、ギャーギャーと泣き喚くこと間違いナシだ。
「ウキキ〜(訳:うわァ、ごっつう凄いツラしとるわ)」
獣人を見て、素直な感想を述べ笑う佐助。
出雲は「こら、失礼でしょ」と言って佐助の頭をパフッと叩く。
部屋の隅で引きつり笑いを浮かべている三下。
一人で来ていたら、どうなっていたのやら…。

出雲が持ってきた材料も鍋に投入され、いよいよ食事がスタート。
獣人の隣でピシィッと背筋を正して正座している三下に、
獣人は「どうぞ」と鍋を小皿に取り分けて、それを渡した。
ビクついている三下を他所に、他の三人(一人と二匹)は楽しそう。
持ってきた吟醸酒を獣人に飲ませて、
「ウキキ〜(訳:えぇ飲みっぷりや。気に入ったでぇ)」
満足そうにしている佐助。才蔵はキチンと座って、無言で鍋をつついている。
出雲は、というと「美味しい〜」と嬉しそうに鍋を頬張っている。
獣人も、とても楽しそうだ。確かに怖い顔をしているが、とても気の良い性格。
あらゆる者に好かれるであろうタイプだ。
獣人は三下を何やらとても気に入っているようで、
おかわりは?と尋ねたり、デザートを薦めたり…甲斐甲斐しく彼の世話を焼いている。
その様子を見て出雲は、箸を持ったまま三下に尋ねてみた。
「もしかして、三下さん…何かしたんじゃない…?」
「えっ?」
「獣人さんに…あれ、っていうかお名前何て言うんですか?」
出雲が尋ねると、獣人は微笑み(怖い)「フラウです」と名乗った。
「フラウさんを助けたとか」
「助け…?いや…どうでしょう…ハハハ…」
カタカタと手を震わせながら必死に笑ってみせる三下。
「お財布を交番に届けたとか、もしくは浦島太郎みたいに助けたとか」
クスクス笑って言う出雲。その話に乗っかって、才蔵は言う。
「ウキキ…(訳:知らぬうちに助けていたということも、時にはあるものでごザル)」
出雲と才蔵の言葉に、ただ苦笑するばかりの三下。
心当たりは、ないらしい。
そんな三下に、獣人フラウはフッと笑い「知るわけないか…」と呟くように言った。
「えっ?ナニナニ?何かあったの?やっぱり?」
楽しそうに食いつく出雲。
フラウの話によると、先日、こちらに引っ越してきたばかりで道に迷っていたフラウは、
慌てて走っていた三下を見かけたという。
寝癖をつけたまま、必死に走る彼の姿にキュンときたらしい。
「キュンと…って、もしかして、フラウさんって…」
キョトンとして口にする出雲。するとフラウは照れくさそうに笑って、
「女よ。私は。まぁ、この外見だから、よく間違われるけどね…」
そう言って吟醸酒をクィッと飲んだ。女というかメスというか…以外な事実だ。
「ちょっと三下さん、モテてるじゃないですかー」
ケラケラと笑って三下に言う出雲。
しかし、ふと見やると、三下は困り顔を浮かべていた。
というのも、佐助が酒を飲めと勧めているからだ。
「ウキキ〜(訳:何や、ワシの酒が飲めへんとでもいうんか)」
佐助はかなり酔っているようで、三下を脅す。
「…の、飲みます。飲みますとも…」
佐助の迫力に負けた三下は、どうとでもなれ!の勢いで、
並々に注がれた酒を、グイーッと飲み干した。
「ウキキ〜(訳:見かけによらず、ええ飲みっぷりやのう!)」
満足そうに両手をパンパン合わせて喜ぶ佐助。
「酒癖悪いよねぇ…ほんと、あのコは」
モグモグと口を動かしながら、しみじみと言う出雲。
「ウキキ…(訳:まったく…みっともないでごザル)」
才蔵はフゥと溜息を交えながら呆れた。



その後も鍋パーティは続き、盛り上がる。
あんなに怖がっていた三下も、泥酔していつしか恐怖を忘れ、
佐助と一緒に、ヨイヨイと小躍りする始末。
楽しい夕食に、誰もが笑顔を浮かべていた。
やがて、静まり返る部屋。
皆、酔いつぶれて眠ってしまった。
出雲は酒を飲んでいなく、フラウは酒に強い。
二人は平然としており、一緒に後片付けをするが、
三下と佐助、そして巻き添えを食らった才蔵は、グッスリと眠っている。
はしゃぎ疲れて眠る子供のような彼等を見つつ、フラウはクスクスと笑う。
こうしてマジマジと見ると…きちんと女性に見えるから不思議だ。
出雲は皿を拭きつつ、フラウに尋ねてみる。
「三下さんのこと、好きなんだよね?」
「…え」
皿を洗う手をピタリと止め、ポッと頬を染めるフラウ。
ものっ凄い怖い顔が、ものっ凄く可愛く見える一瞬。
出雲はクスクスと笑って、皿拭きを続けつつ、三下をチラリと見やって思う。
(モテてるじゃないですか。ぷ…)
どんちゃん騒ぎと化した鍋パーティは、これにて終了。
フラウの甘い恋が、実る日は来るのだろうか。
「ぅーん…ぅーんぅ…怖いよぉ…ぅぅーん…」
何やらうなされて寝言を言っている三下。
彼の寝言から察すると、フラウの恋は前途多難っぽい。頑張れ。

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■■■■■ THE CAST ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


【 整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業 】

7185 / 猿渡・出雲 (さわたり・いずも) / ♀ / 17歳 / 軽業師&くノ一・猿忍群頭領

7186 / ー・佐介 (ー・さすけ) / ♂ / 10歳 / 自称『極道忍び猿』

7187 / ー・才蔵 (ー・さいぞう) / ♂ / 11歳 / 自称『忍び猿』

NPC / 三下・忠雄 (みのした・ただお) / ♂ / 23歳 / 白王社・月刊アトラス編集部編集員

NPC / フラウ・ランラン / ♀ / ??歳 / 三下宅隣に引っ越してきた獣人


■■■■■ ONE TALK ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


こんにちは! 発注・参加 心から感謝申し上げます。
いつも楽しいプレイングで、ワクワクさせてもらっています。
出雲さんも、お猿さん二匹も、とっても可愛いですね!^^
気に入って頂ければ、幸いです。是非また、宜しく御願い致します。

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2008.03.02 / 櫻井 くろ(Kuro Sakurai)
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