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<東京怪談ウェブゲーム 界鏡現象〜異界〜>


アイドル護衛 (後編)

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OPENING

ライブ終了とほぼ同時に、
突如、姿を消した、人気アイドル・リュシル。
いまだに熱気冷めやらぬファンと裏腹に、関係者は大混乱。
総出で探しているが、どこにも、いない。
一体リュシルは、どこへ行ってしまったのか…。

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突如失踪したアイドル・リュシル。
とりあえず外を探してみようと駆け出そうとした凍夜。
だがしかし、ディテクターが、それを止めた。
「待て待て。手掛かりを探すのが先だ」
闇雲に探し回っても、無駄な疲労を生むだけ。
何か重要な、失踪に関する手掛かりを探すのが先だとディテクターは言う。
経験上、手掛かりは凄く身近なところに落ちていることが多い、とも。
「へぇ。探偵を名乗るだけのことはあるな。ちょっと見直した」
ハハ、と笑いディテクターに協力する凍夜。
ディテクターは「惚れんなよ」と苦笑し、楽屋の物色を開始。

何か手掛かりはないかと楽屋のあちこちを物色するディテクター。
棚やクローゼットは勿論、壁や天井、窓、
果てには、ライブ前にリュシルが飲んだであろうコーヒーカップまで、
隅々と念入りにディテクターは調べる。
その様子を見ていた凍夜は感心しつつも笑い、
「空き巣でもやった方が儲かるんじゃねぇか」そう言った。
「そうかもな」冗談を交えつつディテクターは手掛かりを探す。
一通り楽屋内を物色し、彼は最後に…リュシルの鞄に手をかけた。
「プライバシーの侵害」
「言ってる場合か」
クスクス笑いながら言う凍夜にズバッと言い捨て、
ディテクターはリュシルの鞄の中を漁る。
白い鞄にはクマのキーホルダー。
中には手帳や鏡、化粧道具が入っている。
何のことはない。アイドルとはいえ、リュシルも普通の女の子。
鞄の中は、十七歳らしい雰囲気に満ちていた。
やたらと分厚い手帳をパラパラとめくるディテクター。
「すげぇな。重たいだろ、それ」
可愛らしいデコレーションに包まれた手帳を見ながら凍夜が言った。
と、その時。手帳をめくるディテクターの手が止まる。
止まったページにあったのは、一枚の写真。
ディテクターは写真をスッと手帳のホルダーから抜くと、
それをスタッフに見せて尋ねる。
「こいつは、彼女の恋人か何かか?」
ポラロイドカメラで撮られたであろう写真には、リュシルと若い青年が写っていた。
青年に肩を抱かれているリュシルは、弾けんばかりの笑顔だ。
写真には日付と、『ずっと一緒』という文字が書かれている。
おそらく、リュシル本人が書いたものだろう。
アングルから見て、自分でカメラを構えて写したもの。
知らぬ間に撮られた、いわゆるスキャンダル写真ではないことは確かだ。
写真を見せられて、スタッフは一瞬固まるも、
スッと目をそらして小さな声で呟いた。
「一応…」
スタッフの意味深な発言に顔をしかめるディテクター。
ヒョイと覗き込んで写真を見やった凍夜はクックッと笑いつつ小声で呟く。
「マスコミに売ったら、レイレイに相当楽させてやれるな」
「お前、ちょっと黙れ」
苦笑しつつ凍夜をグイッと押しのけるディテクター。
ディテクターはスタッフに更に尋ねる。
「一応、ということは公認の仲ってわけじゃないんだな?」
「………」口篭るスタッフ。
まぁ、リュシルは人気アイドル。
そう簡単に恋愛が許される立場ではない。
だが、それだけじゃない。何か…別の何かが原因で、
スタッフがリュシルと、この青年の仲を認めていない…そんな予感がする。
口篭り続けるスタッフに溜息を落とし、
自分で調べるしかないかと頭を掻くディテクター。
すると、凍夜はディテクターからヒョイッと写真を奪い、
写真をジッと見つめて、ウンと頷き、こう言った。
「あぁ、やっぱりな。最近、裏で色々やってる組織の頭の一人息子だ、こいつ」
「…そうなのか?」
凍夜の発言を疑うディテクター。
凍夜は持ちえている限りの情報を伝える。
リュシルと共に写真に写り、彼女の肩を抱いている青年。
この青年は臓器売買や殺人、窃盗といった行為を繰り返す、
『BAG』という悪組織のトップの一人息子だ。
母親は既に他界しており、広い屋敷に父親と二人で暮らしている。
父親と、父親の仕事に反発しているという噂もある。

「なるほどな」
凍夜から聞いた情報から、
事態と状況、そしてリュシルが失踪した理由を悟るディテクター。
さて、どうしたものか…思案していた時だった。
楽屋外で、リュシルのマネージャーが「今どこにいるんだ」と大声で叫んでいる。
リュシルから連絡があったようだ。
凍夜とディテクターは楽屋を出て、マネージャーに駆け寄る。
携帯の向こうにいるであろうリュシルに対し、
マネージャーはそわそわと落ち着かない様子で、
何度も何度も、今どこにいるのかを尋ねている。
「だから、ごめんじゃなくて!今、どこにいるのかを聞いてるんだ!」
声を荒げて言うマネージャー。
リュシルは、マネージャーの質問には答えず、ただ何度も謝罪を述べているようだ。
事態は平行線を辿るばかり。
マネージャーが、いつプッツンしてもおかしくない状況が続く。
凍夜はヤレヤレと肩を竦めると、バッとマネージャーから携帯を奪った。
「あっ…ちょっと!」
慌てるマネージャーを笑顔で抑え、凍夜は告げた。
「よう。どうだい、駆け落ちの調子は?」
『………』
電話の向こう、リュシルはグッと口篭る。
凍夜はフッと口元に笑みを浮かべて、リュシルに忠告を飛ばす。
「BAGはデカい組織だ。それは知ってるよな?」
『もちろん…』
「じゃあ、すぐ見つかるってのも、わかってるよな?」
『………』
また口篭ってしまうリュシル。理解ってはいるのだ。
好きになった男が、どういう世界に生きる者なのか。
このまま、二人でずっと…なんて、叶うはずもないことを。
凍夜はリュシルの沈黙から彼女の想いを感じ取り、
「とりあえず帰って来い。皆、心配してる」
そう告げると、マネージャーに携帯を返してスタスタと、どこかへ歩き出した。
「おい」
ディテクターが呼び止めると、
凍夜はニコリと振り返って淡い笑みを浮かべ、告げた。
「降りる。報酬はいらねぇ」


リュシル失踪から三日。
あの後、すぐにリュシルは戻ってきた。
恋人と共に謝罪を、聞き飽きるほど何度も述べた。
あさはかな願いだったと、申し訳ない…と。
スポットライトを浴びる華やかな世界と、
日の光を浴びることのない闇の世界。
二人は、生きる世界が違った。
普通に生活していれば、関わりあうことは、まずなかったであろう。
けれど二人は出会ってしまった。そして惹かれあう。
幸せになれないと理解っていても…想いを偽ることが出来なかった。
それが、運命というものだから。

『みんなー!今日もありがとう!楽しんでいってねー!!』
七色のスポットライトを浴びて、今日もリュシルは歌う。
自分を求め、愛してくれるファンの為に。
「相変わらず、すげぇ人だな」
ファンで埋め尽くされたライブ会場の隅で、ポツリと呟く凍夜。
その隣で、ディテクターはクックッと苦笑する。
「何だよ」
「いや。お前って…イイ奴だなぁと思って」
「はは。今頃気付いたのかよ」
笑いながら言葉を交わす凍夜とディテクター。
二人が見やる、光眩いステージ。
幸せそうに歌うリュシルは、何度もウィンクを飛ばす。
最前列で手を振り彼女の名前を呼ぶ…世界で一番、愛しい人へ。


「あ〜…リュシルのライブ行きたかったなぁ〜!」
「三分でソールドアウトだもんな。ちきしょ〜」
ライブ会場から少し離れた場所にあるレストラン。
チケットを取れなかったリュシルのファンが二人。
ドリンクバーのみをオーダーし、居座ること二時間半。
互いに慰めあう彼等のテーブルの上には、リュシルが表紙の音楽雑誌と新聞。
新聞には大きな見出し ”BAG壊滅!謎の英雄現る!”

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■■■■■ THE CAST ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


【 整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業 】

7403 / 黒城・凍夜 (こくじょう・とうや) / ♂ / 23歳 / 退魔師・魔術師

NPC / ディテクター(草間・武彦) / ♂ / 30歳 / IO2:エージェント(草間興信所の所長)

NPC / リュシル・ファートン / ♀ / 17歳 / 異界で大人気のアイドル


■■■■■ ONE TALK ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


こんにちは!毎度さまです。
発注・参加 心から感謝申し上げます。 気に入って頂ければ幸いです。
凍夜さんと武彦、すっかり仲良しですね(笑)

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2008.03.07 / 櫻井 くろ(Kuro Sakurai)
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