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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


幼馴染とナンパ

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OPENING

「…はぁ」
「こらこら。そんな暗い顔してちゃ無理だって」
「…いや、無理でいいし」
「も〜。つまんない男だな。お前は」
「…いいよ、つまんなくて」
「あっ!見ろ!あのコ、めっちゃ可愛い。行くぞっ!」
「…いや、だから」
「ちょーっと、そのキミー!今、暇ぁ?」
「………(はぁ)」

幼馴染である藤二に誘われて繁華街に来て早々、武彦は後悔した。
買い物に付き合えと言われて来たのに、実際は…ナンパ。
ふざけるな、と怒ってはみたものの、まぁ、無駄で。
藤二は、楽しそうに女性に声をかける。
藤二いわく、たまには知らない女の子と接触しなきゃ、
男として腐る…だそうで。

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藤二に狙われ…もとい声をかけられたのは、月宮・香織。
色々な意味で有名な『何でも屋』である。
藤二に声をかけられた香織は、振り返らずにスタスタ…。
完全スルーという態度をとった。
「…これは面白い」
プライドに火がついたのか、フフフと微笑む藤二。
何が何でも御話してやるぜ、と意気込み香織を追いかける。
その後ろから恥ずかしそうに早足でついていく武彦。
繁華街というだけあって、数え切れぬほどの人がいる。
しかも今日は日曜日。渋谷は文字通りの人混みである。
何度も声をかけるが、香織は見事にスルー。
人混みの隙間を流れるようにスルスルと進んで行く。
一筋縄ではいかないとわかれば、ムキになってしまうのがナンパ男の性。
藤二は後ろを歩く武彦の腕を引いて、トンと背中を押した。
「何だよ」
不愉快そうな顔をして振り返る武彦。嫌な予感…。
「行ってこい。お前なら真面目そうだし、足止めできるかも」
「お前…」
「足止めできたら、あとは俺に任せろ」
「………」
抵抗できそうにもない。っていうか何でそんなに必死なの…と思いつつ、
武彦はやむなく、前方を歩く少女に足早に歩み寄ってナンパに挑戦。
「少し、話がしたいんだけど…」
ボソボソと言う武彦。
藤二がタタタタと駆け寄ってきて、武彦の頭をペシーンと叩いて笑う。
「声が小さ〜い」
「…もう勘弁してくれ。恥ずかしくてやってられん」
「だめ。はい、もう一回。ゴーゴー」
「お前なぁ、この歳になってナンパとか…」
再チャレンジを頑なに拒む武彦。
背後からかかった声が、何だか聞き覚えのある声だった気がした香織は、
ピタリと立ち止まって振り返ってみた。そこには、武彦の姿。
香織はタタッと駆け出し、勢い良く武彦に後ろから抱きついた。
「うぉっ!?」
驚き仰け反る武彦。香織本人は、しがみついているつもりなのだが、
端から見れば、どう見ても抱きついているようにしか見えない。
「えぇ〜?」
声をかけた少女が武彦に抱きついてきたという状況に驚きを隠せない藤二。
まさか、さっきの一言でメロメロに…? …なるわけがない。
香織と武彦は顔馴染みだ。香織が、興信所の手伝いをしてくれることがある。
武彦は抱きついている人物が香織であることに気付くと同時に、
自分は香織をナンパしてたのか…と羞恥にガックリとうな垂れた。
「おいこら。ど〜いうことかなぁ?説明してもらおうか」
藤二は腕を組み、武彦に冷ややかな笑顔を向けた。

武彦と香織が顔馴染みであることを知った藤二は、
何だ、そういうことだったのか…とホッとした様子。
落ち着いて話ができるようにと喫茶店に入ったのだが、
藤二は一人で。向かいに武彦と香織が並んで座っている。
(何だかな。この画…)
コーヒーにミルクを入れ、クルクルとマドラーで混ぜつつ頬杖をついて笑う藤二。
香織は武彦にピッタリとくっついて淡く微笑んだ。
「草間さんにナンパされるなんて、光栄です」
「いや…あれは…忘れてくれ。頼むから」
ズズズとコーヒーを飲みつつ照れる武彦。
随分と照れているが、武彦は学生時代、結構モテた。
けれど一方的に言い寄られていただけで、
自分から声をかけたりアプローチしたことは…一度しかない。
逆に藤二は学生時代から何も変わっていない。
可愛いコを見つけると、次の瞬間には声をかけていた。
藤二が武彦の幼馴染だと知った香織は、
藤二の口から漏れる学生時代の武彦の話を興味深く真剣に聞いていた。
「香織ちゃんはさ、いくつ?」
ニコリと微笑んで言う藤二。香織はポツリと返す。
「十八です」
「若いなぁ。十八かぁ…まぁ、まだギリギリいけるよな?」
「…何がだよ」
同意を求められて苦笑を返す武彦。
香織は、その生い立ちから独特な雰囲気を放っており、
とても可愛らしいのだが、妖しくミステリアスな雰囲気も持っている。
それを藤二は、とても気に入ったようで、
香織の連絡先を聞き出そうと、自然に振舞いつつあれこれと技をしかけた。
けれど香織は、隣の武彦に夢中。
コーヒーを彼好みの味にしたり、灰皿を差し出したりと、甲斐甲斐しく世話を焼いている。
自慢の技が全て華麗にスルーされる中、藤二はクスクスと笑って香織に尋ねた。
「武彦のこと好きなの?」
単刀直入な質問だ。武彦はギョッとし、何言ってんだと苦笑する。
藤二の質問に香織は少し考え込んで…。
「草間さんは、よく私を縛ってくれるから好き…」
小さな声で、そう呟き俯いた。
「しばっ…。お前…何、激しいことしてんだよ」
コーヒーを吹き出しかけつつ笑って言う藤二。
武彦は藤二におしぼりを渡しつつ「誤解だ…」と呟く。
香織の放った言葉は、ストレートに聞き入れるとなかなか過激なものだが、
『縛る』という言葉の意味が違う。
彼女は生まれてから、ずっと地下に幽閉されて、戦闘技術を仕込まれてきた。
そこに自分の意思を挟む余地はなく、ただ従っていた為、
自由になった今でも、何かの『束縛』なくしては生きていられない。
異常な育てられ方をしたが故の、後遺症といえる。
武彦は香織によく手伝いを頼む。
これをして欲しい、あれを頼みたいという言葉は、
香織にとって行動を指定される、一種の『束縛』だ。
そこに嬉しさと安心を抱く香織は、武彦に好意を寄せている。
このことを武彦は藤二に説明するのだが、
藤二は聞く耳持たずで「変態〜」などと言ってからかい続けた。


以降も喫茶店で三人は他愛ない話に花を咲かせる。
ほとんどが恋愛に関しての話題で、時折過激な言葉が出る為、
他の客から一斉に視線を浴びることも…。
久しぶりに笑い、人との会話を楽しむ香織。
楽しそうで何よりなのだが、香織は終始武彦にペッタリだ。
その光景に藤二は何だか妙な孤独感を感じ、
(何だかな。俺、おじゃま虫みたいになってない?これ)
クスクス笑いつつ、コーヒーのおかわりを何度も頼んだ。
二人と普通に話しつつ、コーヒーを注ぎに来てくれる可愛らしい店員に、
こっそり電話番号やメッセージを書いたメモを渡しているのだが、
武彦も香織も気付いていない。あまりにも自然で、さりげなさすぎて。
店員と目くばせで会話をしている辺り…藤二も収穫アリかと思われるので、
まぁ…結果オーライ、ということで。

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■■■■■ THE CAST ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


【 整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業 】

7440 / 月宮・香織 (つきみや・かおり) / ♀ / 18歳 / おてつだい(何でも屋)
NPC / 草間・武彦 (くさま・たけひこ) / ♂ / 30歳 / 草間興信所所長、探偵
NPC / 赤坂・藤二 (あかさか・とうじ) / ♂ / 30歳 / 作家兼旅人・武彦の幼馴染


■■■■■ ONE TALK ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


こんにちは。はじめまして^^
発注ありがとうございます。心から感謝申し上げます。
気に入って頂ければ幸いです。また、どうぞ宜しく御願いします^^

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2008.03.14 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
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