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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


桜酒@2008

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OPENING

今年もやってきました。
草間興信所、恒例春の宴。
賑やかに、麗らかに…素敵な宵を。

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「お前…向こうでも、あんだけ騒いどいて…こっちでもか」
会場へ向かいつつ、苦笑する凍夜。
異界でのイノセンスとの合同花見、
それにも凍夜は合流していた。
散々騒いで、酒を浴びるように飲んで…。
気付いたときには、既に朝だったという…。
賑やかで楽しかったのは何よりなのだが、
酷い二日酔いに悩まされたのは、思い出したくない。
まぁ、今回の花見は三人。
凍夜と武彦と零のみ。
さほど騒がしくなることもなく、
落ち着いて桜を楽しむことができるだろう。
…武彦が、バカみたいに酔わなければ、の話だが。
一向が楽しむのは、夜桜。
ライトアップされた桜は、とても美しい。
会場は、既に人でごった返していた。
みんな、もうかなりの勢いで出来上がっているようで。
あちこちで笑い声が飛び交っている。
「…もう、無理なんじゃないか。場所取るの」
荷物を持ちつつ、辺りを見回して苦笑する凍夜。
確かに、もう手遅れな感じだ。
だが、武彦と零は、ニンマリとした笑みを浮かべる。
「…何だよ」
不敵な笑みに、思わず笑顔が引きつってしまう凍夜。
すると、二人はピッと前方を指差した。
見やれば、そこには、すっぽりと空いた箇所が。
よくよく見ると、
立て札のようなものに『草間興信所』と書かれている。
どうやら、事前に場所取りを済ませていたようだ。
…用意周到というか何というか。
よっぽど楽しみにしているんだな。
凍夜はクックッと肩を揺らして笑う。

ハラハラと舞い落ちる桜の花弁。
ぼんやりとした灯りに照らされて、
揺れる度に輝く様は、まったくもって…美しい。
ゴザの上に並べられる、色とりどりの食事。
零が前日から念入りに準備した弁当だ。
味は勿論…格別に美味い。
酒はもちろん、日本酒を。
「よっしゃ…じゃ、乾杯といきますか」
酒を注いだカップを渡して言う武彦。
子供のような笑顔に、凍夜は苦笑して…カップを受け取る。
交わす杯(といっても紙コップだけど)、宴の始まり。
零は、凍夜と武彦のカップが空になると酌をしたりして、
甲斐甲斐しく世話を焼く。
酒を飲んでしまうと具合が悪くなって、
大暴れしてしまうということで、零は飲まず。
だが、酒が入っていなくとも、十分に満喫することができる。
「零、おかわり」
「お兄さん、ペース速いですよ」
「まだまだぁ〜」
「…もう。気持ち悪くなっても知らないですよ?」
「いいんだよ。今日は潰れるまで飲んで騒ぐぜ」
「…人に迷惑かけないで下さいね。はい、どうぞ」
「さんきゅう」
やはり、こっちでも脇目も振らず、浴びるように酒を飲むのか。
向こうでの花見とは違い、ゆったりと楽しめるかな…と思ったのだが、
甘かったな。やはり、そうはいかないか。だよな…。
まぁ、わからなくもない。
こんなに見事な夜桜だ。
酔い潰れてしまいたくなる気持ちは…誰にでもあるだろう。
だが零が言ったように、人に迷惑をかけるような真似は勘弁してほしい。
いや、武彦は、そこらへんの奴に喧嘩をふっかけたり、
そういう”迷惑”をかけるような男じゃない。
そうじゃなくて…こう、何というか。
やたらと絡んでくるんだよな、こいつは。
普段はクール(でもないけど。俺から見れば)にキメてるくせに、
酒が入ると、途端にフレンドリーな気さくな男になるんだ。
人の心に、ズカズカと土足で踏み込んでくるような。
ちょっと面倒くさい男に変わる。
それがなぁ…ちょっと厄介なんだよな…。

そもそも、何故この草間興信所の春の恒例イベントに凍夜が同行しているのか?
まぁ、その過程は至って簡素、シンプルなものだ。
興信所にフラリと遊びにきたところ、
二人は何やら忙しなく動き回っていた。
珍しく忙しそうだな…とツッこめば、二人は声を揃えて言った。
「今夜は祭りだ」と。
そこからは、お察しのとおり。
二人に強制連行されて…今に至る、というわけだ。
俺はいいから、二人で楽しんで来いと断りはしたが、
そんな言葉を、武彦と零が、じゃあお言葉に甘えて…と聞くはずもない。
お前が来るのを待ってたんだから、
などと、いきあたりばったりな口説き文句を並べて。
二人は凍夜を無理矢理、ここへ連れて来た。
いいから…と断り続けはするものの、凍夜もマンザラでもなく。
やはり、歓迎されるというのは嬉しいものだ。

*

凍夜を連れてきたのは、正解だったと言える。
会場では大勢が、どんちゃん騒ぎを繰り広げているが、
中には迷惑極まりない、モラルの欠片もない連中もいる。
喧嘩をふっかけてくる者や、いちゃもんをつけてくる者。
酒が入っているとはいえ、それは、とても見苦しいものだ。
おとなしく花を楽しめないもんか…。
凍夜は呆れつつ、下級悪魔を召喚。
召喚した悪魔を、とびっきりの美女に返信させれば、
いきりたっていた連中は、すっかり骨抜きだ。
デレデレしている連中を見つつ、凍夜たちは苦笑する。
正体は恐ろしい悪魔だというのに、鼻の下が伸びている様は、激しく滑稽だ。
悪魔の演技の上手さも、実に見事。笑わずにはいられない。
「で、凍夜。最近どうだ?」
「どうだ…って、何がだ」
「お前なぁ。決まってんだろ。なぁ、零?」
「ふふ。そうですねぇ」
「…何だよ。ニヤニヤして…」
「彼女だよ、彼女。出来たのか?ん?」
「凍夜さん、モテますからねぇ」
「…そういう話か」
「そりゃあ そうだろ。それ以外、何を話すってんだ」
「色々あるだろ。仕事の話とか…」
「馬鹿っ。お前は、馬鹿っ。ここで仕事の話はタブーだっつうの」
「……(酔ってるな。確実に)」
案の定、酔っ払った武彦に、あれこれと詮索される凍夜。
決して本気で相手にすることはなく、適当に流しつつ…。
美しい夜桜の下、三人の宴は続く。
翌朝、二日酔いに苦しむのは…。
会場に着く前から、決まっていたことであろう。

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■■■■■ THE CAST ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

7403 / 黒城・凍夜 (こくじょう・とうや) / ♂ / 23歳 / 退魔師・殺し屋・魔術師
NPC / 草間・武彦 (くさま・たけひこ) / ♂ / 30歳 / 草間興信所所長、探偵
NPC / 草間・零 (くさま・れい) / ♀ / --歳 / 草間興信所の探偵見習い

■■■■■ ONE TALK ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

こんにちは。いつも発注ありがとうございます。心から感謝申し上げます。
気に入って頂ければ幸いです。また、どうぞ宜しく御願いします^^

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2008.04.26 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
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