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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


モダン・デ・セリナ

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OPENING

(へぇ…随分と、オシャレなカフェだな…)
雑誌を眺めつつ感心している武彦。
武彦が見やっているのは、トーキョーウォッチャー。
都内のイベントスポットやら何やらがビッシリと掲載されている雑誌。
こんな雑誌を、武彦が自ら買ってくるわけがない。
零が買って来たもので、テーブルの上に置きっぱなしになっていたのを、
武彦は手に取って、眺めている…というわけだ。
武彦が見やっているのは、
三日前にオープンした、オシャレなカフェのページ。
モノトーン基調で纏められた店内は、
何だかモダンで、とてもオシャレな感じ。
ふと、武彦は時計を見やった。
時刻は18時。
零は、友達と遊んでいるそうで、帰りが少し遅くなると言っていた。
ということは、夕食は自分で済ませねばならない。
今から準備するのは…正直、面倒くさい。
せっかくだし…誰か誘って、このカフェに行ってみようか。
武彦は懐から携帯を取り出した。

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「は、はいっ」
慌てて鞄から携帯を取り出し、どもりつつ返す香織。
電話は、武彦から。表示された『着信/武彦さん』の文字に、ついつい…動揺してしまう。
電話の向こう、武彦はデートのお誘いを飛ばす。
良さげな喫茶店を見つけたんだ、一緒に行きたい。
武彦の誘いを、香織が断るはずもなく。二つ返事でOK。
香織は、いそいそと向かう。待ち合わせ場所である公園へ。
おしゃれな喫茶店に行く、ということで少し気張ってきたのだろう。
武彦は、妙にオシャレな服装で待っていた。
香織は駆け寄り「似合いますね、素敵です」と微笑んだ。
「どうも、ありがとう」淡く微笑み返す武彦。
二人は手を繋ぎ、喫茶『モダン・デ・セリナ』へ。

モダン・デ・セリナは地下にある喫茶店。
穴場的な喫茶店だが、雑誌で紹介されたこともあり、店内は賑わっている。
曲線がオシャレなインテリア…黒いテーブルと椅子。
一番奥の席へと案内された二人は、肩を並べて座る。
「ここ…来てみたいって思ってたんです」
「そうなのか?ほい、メニュー」
「あ、ありがとうございます。…草間さんと、いつか…って」
「はは。そっかそっか。草間さんと、ね」
パラパラとメニューをめくりつつ苦笑する武彦。
そこで、あっと気づき…香織は言い直した。
「た、武彦さんと、です」
「よくできました」
見やれば、メニューはかなり豊富。
どのメニューにも "セリナ" がついている。
店名にもついているし…何か特別な意味でもあるのだろうか。
そう思った武彦は、オーダーついでに、店員に聞いてみた。
何でも、セリナというのは遠い異国で女神をしめす言葉らしい。
この店の店主には、二十年以上もの付き合いを経て、
つい最近ようやくプロポーズした恋人がいるらしく。
そのプロポーズと、店のオープンが重なったことで、
愛しき女神よ…ということで、セリナと名づけたのだそうだ。
むず痒くなるようなロマンチストだが…。
店は、うまいこと繁盛している。
想いの結果…だろうか。
「素敵ですね…」
ふふ、と笑う香織。武彦はメニューをパタンと閉じてクスリと笑う。
やっぱ、そういうのに憧れるもんかね。女の子ってのは。

*

写真と名前から受ける印象から、
美味しそうだと思ったものを全てオーダーした武彦。
次々と運ばれてくる料理に、香織は不安そうな表情。
「あの…武彦さん…お金、大丈夫ですか?私、少しなら…」
ゴソゴソと鞄を漁る香織。
武彦は、その手をがしっと掴んで止め、
大丈夫だから、腹いっぱい食え、と笑った。
店一番の人気メニューであるセリナ・サンドを始め、
スープ、デザート…食後のコーヒーも。
全て、はっとしてしまうほどに美味なものだった。
少し料理を摘んでは、他愛ない話を。
賑やかな店内で、何気なくも…幸せなひととき。
だいぶ滑らかに喋れるようになったものの、
まだ微妙にぎこちなさの残る香織の口調。
一生懸命、言葉を捜しては、慎重に一つ一つ零していく。
チラチラと武彦の反応を見ながら、
えっと、あの、とどもりつつ…一生懸命喋る香織。
そんな香織の話をウンウン、と頷きながら聞いて、武彦は笑顔。
沈黙すると怖くなるのだろう。
必死になって、それを払おうと口を開く。
そんなに慌てなくても大丈夫。
言葉を交わしていない時間も、俺は好きだよ。
そうは思うけれど、口にはしない。
一生懸命話す香織が、可愛くて。
見ていたいから。

「ふぅ…お腹いっぱいです」
コトン、とグラスをテーブルに置いて一息つく香織。
その表情からは、喋り疲れた疲労も窺える。
何だかんだで、ずっと喋ってたもんな。
俺は、ずっと聞いてただけだけど。あ…。
ふと、香織の頬についているクリームに気付く武彦。
さきほど食べ終えた、ケーキのクリームだろう。
しっかりしているように見えて、欠点なんてなさそうに思えるけど…。
こういうとこは、子供なんだよな。まだまだ…。
「ついてる」
「あっ」
指で拭ったクリームをペロリと舐めて笑う武彦。
香織は俯き、気付かなかったです…と照れ笑い。
賑やかな店内で、肩を並べて座り話す二人。
いつしか繋いだ手は、テーブルの下で。
久しぶりに、ゆっくりと。二人だけの時間。
食後のコーヒーを味わいつつ、二人は会話を続ける。
店のコーヒーを気に入った武彦は、
また来ような、一緒に…と微笑みかけた。
もちろん、香織は「はい」と頷き微笑み返す。
モダン・デ・セリナ、女神のカフェ。
武彦にとっての女神は…香織、かな?

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■■■■■ CAST ■■■■■■■■■■■■■

7440 / 月宮・香織 (つきみや・かおり) / ♀ / 18歳 / お手伝い(草間興信所贔屓)
NPC / 草間・武彦 (くさま・たけひこ) / ♂ / 30歳 / 草間興信所所長、探偵

■■■■■ THANKS ■■■■■■■■■■■

こんにちは! ('ー'*)
気に入って頂ければ幸いです。 是非また、御参加下さいませ。

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2008.05.24 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
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