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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


モダン・デ・セリナ

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OPENING

(へぇ…随分と、オシャレなカフェだな…)
雑誌を眺めつつ感心している武彦。
武彦が見やっているのは、トーキョーウォッチャー。
都内のイベントスポットやら何やらがビッシリと掲載されている雑誌。
こんな雑誌を、武彦が自ら買ってくるわけがない。
零が買って来たもので、テーブルの上に置きっぱなしになっていたのを、
武彦は手に取って、眺めている…というわけだ。
武彦が見やっているのは、
三日前にオープンした、オシャレなカフェのページ。
モノトーン基調で纏められた店内は、
何だかモダンで、とてもオシャレな感じ。
ふと、武彦は時計を見やった。
時刻は18時。
零は、友達と遊んでいるそうで、帰りが少し遅くなると言っていた。
ということは、夕食は自分で済ませねばならない。
今から準備するのは…正直、面倒くさい。
せっかくだし…誰か誘って、このカフェに行ってみようか。
武彦は懐から携帯を取り出した。

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はぁ…一人で行くことになるとは。虚しいぜ…さすがに。
ポリポリと頭を掻きつつ、雑誌片手に路地を行く武彦。
一緒に行ってみないか?と、かなりの人数に声を掛けてはみたものの、
タイミングが悪かったのか、ただ単にツいてないのか。
全員、用があったり何なりで手が離せないということで断られてしまった。
結果、武彦は一人でオシャレカフェに向かっている。
そこまでして行きたいのか…と思うが。
誘った全員に断られたことで、若干ヤケになっているのかもしれない。
どこだ…この辺りなんだけど…わっかんねぇ。
雑誌に掲載されている地図を見やりつつ、のそのそと路地を歩く武彦。
目的の喫茶店は、穴場的な感じらしく、
なかなか見つけることができない。
次第にイライラしてくる武彦。
こんな些細なことで、いちいちイライラするな。
カルシウム不足なのではなかろうか。牛乳飲みなさい、魚食べなさい。
「…わかりませんわ。一体、どこにありますのっ」
ぷーと頬を膨らませて言う女性が一人…。
ふと顔を上げて武彦は、あっ…と悟る。
女性の手にも、自分が持っているものと同じ雑誌が。
こんな路地を、女性が一人でウロウロしているなんて…。
おそらく、この女性の目的も自分と同じだろう。
そう思いつつ、武彦は少し早歩きで女性の隣を横切ろうとした。
が、捕まる。
「あっ。あなた!そこの、猫背なあなた!」
「…ん?(猫背って…もっとほかに何かあるだろ…)」
不満を抱きつつも振り返る武彦。
すると女性は、腕を組み、ふふんと笑って言った。
「わたくしを、案内しなさい。このお店へ」
やはり、目的地は同じだった。
女性が示す雑誌のページには、喫茶店が。
随分と偉そうな態度だな…。
まぁ、見た感じ…どこぞのお嬢様って感じはするけど。
少々呆れつつも、目的地が一緒ならついでだ…と、
武彦は女性と共に、喫茶店を探すことに。

*

「まさか、地下にあるとはな…見つからないはずだ」
席につき、ふぅ…と息を吐いて煙草を一本咥える武彦。
その瞬間、女性は武彦の手を叩いた。
ポトリとグラスの中に落ちて、じわーりとふやけていく煙草。
何すんだ…と文句を言う間もなく。女性は言った。
「食事時に葉巻はいけませんわ。不愉快ですもの」
「…………」
沈黙し、武彦は切々と思う。
何で、お前と一緒なんだ。
さも当然かのように、合席してんだ。この女は。
女性を見やりつつ、不愉快そうな武彦。
そんな武彦を見やり、女性は仕方ないですわね…という表情で言う。
「わたくしの名前は、ロザリンド・エノア・フォン・ヘルリンクですわ」
「…は?」
「ロザリーでよくてよ」
「………(聞いてねぇし)」
何なんだ、本当に。この女は。
人の話を、まるで聞いちゃいねぇ。
つぅか、自己中な感じが…ものすごくする。
お嬢様ってのは、皆こうなのかねぇ…。
やだやだ、面倒くせぇったらありゃしねぇわ…。
呆れる武彦を他所に、ロザリーは、メニューをじっと見やっている。
喫茶店の名前は、モダン・デ・セリナ。
よくわからないが、雑誌情報だと、
セリナ、というのは遠い異国で女神をしめす言葉らしい。
メニューには、全て "セリナ" がついている。
その為、何が何だかわからない。
面倒になったロザリーは、デザートジャンルにあるものを、全て一括オーダー。
そんなに食えるわけねぇだろう…と呆れる武彦。

あっさりと…それはもう、あっさりと。
ロザリーは、デザートを次々と平らげていく。
上品な食べ方ではあるものの、摂取スピードが半端ない。
どんな胃袋してるんだ…と呆気にとられつつエスプレッソを飲む武彦。
おぉ…これは美味い。エスプレッソ・セリナか…気に入った。
味に大満足の武彦。幸せそうな顔をしている。
そんな武彦に、ロザリーはスパッと言った。
「あなた…幸薄そうですわね」
「…何だ、いきなり。失敬だな。幸せ真っ只中だっつぅのに」
「よろしければ、紹介しますわよ。女性」
「結構です」
「最近、わたくしの侍女の友人の知り合いの貧乏神の女性が結婚したいと漏らしていたそうですの」
「侍女の友人の…何だって?」
「わたくしの侍女の友人の知り合いの貧乏神の女性、ですわ」
「………」
「きっとお似合いの夫婦になれますわよ」
「結構です」
まったくもって失礼な女だ。
貧乏神だって?勘弁してくれ。
ただでさえキツいってのに。
そんなもんと付き合った日にゃあ、ホームレスになっちまうわ。
…って、お似合いとか言うなよ。ほんと、失敬な女だ。けしからん。

*

侍女の友人の知り合いの貧乏神の女性をオススメするものの、
武彦は、その度に結構ですと言って断りを入れる。
親切に紹介してあげようとしているのに…。
本当は、紹介して欲しくて仕方ないのでしょうに。
素直じゃない男ですわね。それとも、あれかしら。
自分を格好良いとでも思ってらっしゃるのかしら。
そうだとしたら、とんだ勘違いさんですわ。
あなたなんて、あの人と比べたら…ミジンコですわ。
いえ、それ以下かもしれませんわ。
だって、あの人は…とっても素敵なんですもの。
うっとりしているロザリー。
何だ、何でまた急にウットリしだしたんだ。
本当、わからねぇ…この女。疲れる。疲れるぞ、凄まじく。
はぁ…と大きな溜息を落とす武彦。
その溜息でハッと我に返ったロザリー。
ふと時計を見やれば、いけない、もう、こんな時間。
遅くなってしまっては、お父様に叱られてしまいますわ。
「では、ごきげんよう」
席を立ち、スタスタと店を出て行くロザリー。
まるで、嵐のようだ。
残された武彦は、ただただボーゼン…。
何だったんだ、あの女。
っつうか、あれ?お前…勘定…。
お、俺が払うのか?ちょっと待て、あいつかなり…。
おそるおそる伝票を引っくり返してみる武彦。
記されている料金に、武彦はガクリと肩を落とした。
今月の小遣いが…全部、消える…。

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■■■■■ CAST ■■■■■■■■■■■■■

7525 / ロザリンド・ヘルリンク / ♀ / 500歳 / 高位悪魔・魔界の姫
NPC / 草間・武彦 (くさま・たけひこ) / ♂ / 30歳 / 草間興信所所長、探偵

■■■■■ THANKS ■■■■■■■■■■■

こんにちは! 一応、初めましてになりますね! ('∀'*)ノ
気に入って頂ければ幸いです。 是非また、御参加下さいませ。

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2008.05.24 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
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