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<東京怪談ウェブゲーム 界鏡現象〜異界〜>


俺も娘も17歳?!〜サンタさんを知ろう。〜


 竹取姉弟と出会ってからというもの、不思議と何気ない日常の一コマを勉強する機会が増えた。
 自分の娘と名乗る美菜が来た時は、とにかくみんなで遊んで底抜けに楽しければいい感じだったのだが……勝矢はしみじみとそんなことを感じている。


 それはそうと、地球の日本ではそろそろクリスマス。この季節の東京では雪が積もることはないだろうが、暦の上では冬となる。
 ふたりのイメージからして『かぐらならクリスマス、めぐるなら冬至を知ってそう』と勝手な予想を立てつつ、勝矢は本人たちに会った時にその辺を訪ねてみた。するとふたりとも、首を横に振る。さすがは双子、そのタイミングはバッチリ。ただその反応はお互いに予想外だったらしく、勝矢も含めて大いに驚き合う。

 「えーっ、めぐる知らないの! でもさ……めぐる、アルバイトで赤い服着てるとか言ってなかった?」
 「それがね。みーんな、その辺の都合を知ってるみたいでさ。今さら聞けない雰囲気なんだ。実はこっそり、姉さんに聞こうと思ってたんだけど……」
 「その姉さんも、実はクリスマスも知らなかったってか。そりゃ困ったなー。知ってて当たり前ってことを教えるのって、結構難しいんだよなー!」

 自分から話を振っておいて、それはないよ……かぐらもめぐるも『そこは普通、教えてくれるよね?』という顔で勝矢を見る。
 勝矢は腹を括った。こうなったらパーティーなどの実技も交えて、徹底的にクリスマスの勉強をしようと企む。そして仲間は多い方がいいと、美菜にも協力させる旨をふたりに伝える。こうしてどうにも騒々しいクリスマスのお勉強が始まった。


 美菜は、学園内ならゆ〜なと一緒にいることが多い。そしてこの日も例外ではなかった。勝矢は良識派のゆ〜ながいてくれるだけで安心できる。そしてその温和な表情を見ると、さらにほっとするのだ。他人が聞いたらなんとも無責任な安心だが、ゆ〜なという少女は自然とそんな感情を抱かせてくれる。
 かぐらとめぐるを相手にしたクリスマスの講義は、まずカレンダーを見ることから始まった。学園の掲示板を前にして、ゆ〜ながいつもの調子で語る。

 「美菜さん、クリスマスは何日ですか?」
 「えーっと、クリスマスは12月25日だよね。クリスマスイブは、前の日の24日!」

 美菜のこの反応は、まさにゆ〜なが求めていたものだ。柔らかな微笑みを浮かべながら「そうですね」と頷くと、竹取姉弟の方を向いて詳しく説明する。
 今のクリスマスは、実質的に2日間で構成されている。クリスマスの前日である『クリスマスイブ』、そして本番の『クリスマス』。学生はこの日を境に冬休みに入ったりするので、大人たちよりも親しみのある行事であるといえる。特に曜日のこだわりはなく、休日でも祭日でもない。世界的な文化を柔軟に取り入れる日本風味のクリスマス……それが今回のお勉強となる題材だ。

 「じゃあさ、めぐるが着てるっていう赤い服っていうのは?」
 「それは『サンタクロース』というおじさんの服なんです。」
 「クリスマスに関係のある人物の扮装……なるほど、そういうことか。」

 赤い服に白い毛といえば、サンタさん。勘のいいめぐるは商売のことまで考えて分析をしているようだが、この場合は季節感を演出するためと捉えた方がスマートかもしれない。クリスマスという行事に、マスコットとなる人物のサンタさん。姉弟は「なるほど」と頷いた。
 そこに美菜がたくさんのシンボルを紹介する。サンタさんがたくさんのプレゼントを詰めた大きな袋に、それを運ぶためのそり。お供のトナカイは赤い鼻が特徴……と説明していたが、この聞き慣れない動物名で引っかかりそうになったので、勝矢が「外国の鹿っぽい感じ」と微妙なフォローをした。そんなサンタさんのお仕事は、クリスマスという特別な日に子どもたちへプレゼントをあげること。でもたった一晩で全世界の子どもたちに配るのは無理なので、そこは友達同士でプレゼント交換したりするとまとめた。

 「しっかしお前、よどみなく喋ったなー。たまに感心する。」
 「何言ってるの、パパ? 自分で言ってたくせに!」

 勝矢は『こりゃいかん』という表情で、さっきの話を記憶から掘り起こす。まさか今の説明が、未来の自分の受け売りだったとは。柄になく慌てる姿をみんなに見られ、しばし気まずい思いをする父親であった。

 基礎知識が備わったところで、ゆ〜なはみんなを大学の購買へと案内した。百聞は一見にしかず。なんでも大学部の家政科系部活動が製造したというクリスマス用品があるという。研究熱心なめぐるは興味津々。ゆ〜なの後について「早く早く」とみんなを急かすかのように歩く。友人はおろか、姉までもが「あんなめぐるは珍しい」というほどだ。
 購買の入口前には特設レジが設置されており、手作りのグッズを買う人はここで会計を済ませるようだ。お目当てのコーナーはそれほど大規模ではないが、いろんなものが並んでいる。誰でもサンタさんになれるコスチューム一式から、最近では女の子向けのミニスカートタイプまで品揃え抜群。かわいいトナカイの帽子や雪だるまの形をしたミトン、なぜか羊の角つきもこもこマスクまである。さすがの秋山父娘も「なんで羊?」と首を傾げたが、めぐるがたいそうお気に入りのご様子だったので、あえて声には出さなかった。
 せっかくここまで勉強したのだから、最後はその集大成としてパーティーをしようという話になった。場所は、神聖都学園の大学の講義室。この時期は積極的に使うゼミもなく、すんなり借りることができた。そうと決まれば、ここでグッズを買おうという流れになるのは当然である。めぐるは、堂々とお気に入りのもこもこマスクを手に取った。

 「俺、どうしても、あれをかぶるめぐるが想像できない……」
 「双子の私がかぶったら、めぐるのイメージになるじゃない!」
 「その、なんていうのかな。オーラが違うだろ、オーラが。」

 この言葉はかぐらを怒らせるのには十分すぎた。この後、他の3人が無視するほどの壮絶な口ゲンカが店先で幕を開ける。
 今でさえこんなに盛り上がっているのだから、当日も盛り上がること間違いなしだ。


 その夜、周囲の協力もあってかぐらと仲直りした勝矢は、珍しいことに隣に住む科学者・知久に呼ばれた。どうやら帰宅する頃を見計らって待ち伏せをしていたらしい。いつもなら隣人とは思えないほどあつかましく家に上がりこんでくるというのに……体育会系隣人はいぶかしげな表情を浮かべる。

 「ふーん、知久さんがそんな手の込んだことするのって、なーんかおかしいんだよねぇー?」
 「じゃーん。ボクだよ、ボク。今まで知久さんと一緒にいたんだー!」
 「刹利くんじゃない! なんかあたしも驚くツーショットねー!」

 傍らにいた美菜も声を上げた。刹利と知久……あまり接点のなさそうなふたりだが、意気投合する何かがあったらしい。刹利は続ける。

 「勝矢クンから聞いたんだよ、くりすますの話!」
 「じゃあ、学校まで来ればよかったのに……みんないたんだぞ?」
 「でもね、ボク『ほわいとくりすます』を目指そうと思ってさ。知久さんと打ち合わせしてたんだ〜」

 猫目の少年が瞳を輝かせながら、夢のような計画を披露する。
 なんでも「雪の降るクリスマスは貴重だ」と知った刹利は、何が何でもホワイトクリスマスを実現させるために知久の家を訪れた。その目的とは、雪降らし装置を作ってもらうこと。もちろんただの装置ではない。実はこれ、フワフワしたわたあめやマシュマロを作り出す特注品。刹利の期間限定の能力、そして知久の無駄な知能があれば実現できると踏んだらしい。もうすでに設計図は完成し、明日からは試作品を組み立てる段階に入るという。

 「雪はいいよねー。ボク、雪の降るとこにいたんだよー。冷たいのに、何かあったかい気持ちになれるし。」
 「お前、ホント猫みたいな奴だなぁ。」
 「雪かと思ったら、甘いお菓子だったら、みんなもっと幸せになれるよね、きっと。空からのプレゼントを届けるって、このやり方しか思いつかなかったんだー。」
 「刹利くん、うまく知久さんの興味を引くとこ突いたねー!」
 「おお、ネコ型少年。また閃いたぞ。マシュマロふわふわ加工の部品はだな……」

 科学者もノッてきたらしく、打ち合わせも忙しそうだ。勝矢は「あんまり無理すんなよ」と刹利をいたわり、そのまま家に入っていく。彼が夢見るホワイトクリスマスは、果たして実現するのだろうか?


 クリスマス当日。この日はある意味で「発表会」だ。
 かぐらはちっちゃなサンタさん、めぐるは上から下までまるっきり羊のようなコスチューム。美菜はトナカイで、勝矢はスノーマン。そこにゆ〜なが、黒地に雪景色が映える着物で静々とやってきた。それを羊のめぐるがエスコート。どこまでも大人びたことをするめぐるだが、今回は扮装しているせいか、どうにもマヌケに見えてしまう。こうしてクリスマスパーティーが始まった。
 それぞれに持ち寄った飲み物をグラスに注ぎ、まずは「メリークリスマス」のかけ声で乾杯。ノンアルコールシャンパンを飲むのも、一年を通してもこの日くらいのもの。なぜか勝矢は「そうそう、この味!」と言いながら飲んでいた。かぐらやめぐるにしてみれば、お茶や和菓子といったものが並ばないパーティーは珍しい。何を飲むにしても色を確認し、何を食べるにしてもよく味わう。その場にいる誰もが新鮮に思うパーティーは続いた。

 そのうちプレゼント交換が始まる。ゆ〜なはみんなにプレゼントを用意していた。
 かぐらには「かぐやひめ」の萌える絵本、めぐるには「竹取物語」の書籍というキャラクターに沿ったプレゼントを。美菜には雪の結晶の模様が入った巾着の小物入れ。勝矢には「パパの威厳を」という意味も込めて参考書。しかも中身が苦手な数学だと聞き、もらった方は「大変結構なものを」と苦笑いしていた。もちろんゆ〜なが、勝矢の苦手教科を知らないはずがない。見事なオチに周囲からは笑いが起きた。
 ゆ〜なへのプレゼントもある。竹取姉弟からは、ふかふかの白ウサギのぬいぐるみ。秋山父娘からは、雪だるまの装飾がかわいいアロマキャンドル立て。ゆ〜なはみんなにお礼を述べると、部屋に飾ることを約束した。
 そんな時、豪快に扉を開ける音が響く。講義室に猫……の耳をつけた刹利がやってきたのだ。実はこのアイテム、勝矢からのプレゼント。あのお勉強の時、ちゃっかり刹利の分まで買っていたのだ。少年はみんなを外へと誘う。そこには知久と、無駄に大きな扇風機のような装置が待っていた。これが例の機械らしい。

 「ちょっと小さくなったけど、あま〜いほわいとくりすますができたよ〜! 知久さん、お願いしま〜す!」
 「よし、皆の者。この靴下を持っておけ。そこに雪を積もらせるぞ……スイッチオン!」

 機械がうなりを上げて勢いよく動き出したかと思うと、みんなの頭上にふわふわと白い雪が舞い落ちてきた。これが刹利の『ほわいとくりすます』である。降っている範囲はイメージよりもぐーんと狭まってしまったが、見上げればちゃんと雪に見えた。しかもそれは特殊な製法で作られた靴下に吸い込まれるように入る。

 「猫もウサギも跳ねて喜ぶ雪だよー!」
 「あっ! これ、甘いじゃない!」
 「姉さ〜ん、雪が甘いわけない……って、あれ? 甘いぞ、これ!」

 かぐらとめぐるのやり取りを聞いて、刹利も鼻高々。思わず知久とハイタッチした。
 確かに雪を降らせる規模は制限されたが、わたあめやマシュマロを作る部分は問題なし。ふたりは誰もが喜ぶ雪がお手元に届くシステムをちゃんと作り上げていた。

 「メリークリスマスだね!」
 「ああ、メリークリスマスだな!」

 この後は刹利と知久もパーティーに加わり、さらに賑わうだろう。今年のクリスマスも楽しく暮らせそうだ。


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号/ PC名 /性別/ 年齢 / 職業】

2803/月夢・優名  /女性/17歳/神聖都学園高等部2年生
5307/施祇・刹利  /男性/18歳/過剰付与師

(※登場人物の各種紹介は、受注の順番に掲載させて頂いております。)

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■         ライター通信          ■
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こんにちは、市川智彦です。今回は「俺も娘も17歳?!」でクリスマス!
年末の忙しい時期だからこそ、こういうイベントで盛り上がりたいですねー。
皆さん、ちゃんとケーキ食べましたか? 楽しまないと損ですよ、損!(笑)

ご参加の皆様、今回もありがとうございます。これからもご近所異界をよろしくです。
また勝矢や美菜たちの巻き起こす珍騒動や、別の依頼でお会いしましょう!