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<東京怪談ウェブゲーム アトラス編集部>


ホテルといえば定番のあれです
●オープニング【0】
 冬が去り、春が来て、ゴールデンウィークが過ぎ去ったら梅雨が待ち受けていて、じきに夏がやってくる。1年というのは本当にあっという間だ。
「だからもう、夏に向けて特集の準備始めておかなきゃいけないのよ。すぐ来ちゃうから……お盆進行も」
 と言うのは月刊アトラスの編集長である碇麗香だ。ゴールデンウィーク進行が終わってすぐなのに、今からお盆進行を睨んでスケジュールを進めてゆかねばならぬのは大変なことである。
「一応考えてるのは、ちょっとしたホテルガイドなんだけど。夏の旅行の」
 ……えーと、すみません麗香さん。月刊アトラスって旅行雑誌でしたっけ?
「やーね、うちが普通のホテルガイド作る訳ないでしょ。うちなんだから当然、幽霊の出るかもしれないホテルとかよ」
 なるほど、それは実に月刊アトラスらしい。まあ、書かれる方にとってはえらい迷惑だが。
「当然はっきりとした場所はぼかして書くわよ。というかそう書いて」
 こっちが書くのか!!
「そうよ。だから手分けして取材行ってもらおうとしてるんじゃない。一応今3つ候補あるんだけど、好きな場所選んでいいわよ。1つ目が都心のビジネスホテル。2つ目が山手線の外側にある旅館。3つ目が、んー……休憩もあるホテル」
 ……3つ目のホテルだけちょっと特殊分野のような気がしないでもないが、候補になってるということはどれも何か曰くがある場所なんだろう。そこを麗香に突っ込んでみると――。
「ああ、やっぱり気になったのね。1つ目は上の方の階だけなんだけど、窓の外から誰かに見られてる感覚があるんですって。2つ目は夜寝てると、部屋の中でばたばた走り回る音が聞こえるそうよ。3つ目は……泊まってると、中年女性の幽霊が出てきて恨めしく宿泊客を見てることがあるって話ね」
 3つともそれぞれに現象が異なっている。ともあれ、いずれも直接的にどうこうされるという感じではないのがまだ救いだろうか。
「それじゃあ好きな所選んで行ってきて」
 にっこりと笑顔で言い放つ麗香。さてはて、どこを選んだものか――。

●まずは資料を読んでみる【1】
「……ほんと、面白いこと考えるわね」
 くすっと笑みを浮かべ、碇麗香の方へ向き直ったのはミネルバ・キャリントンである。そして机に近付き、そこに置かれていた資料の束を3つ取る。
「はい、どうぞ」
 と言って、自分の分を除く資料の束2つを同じくこの場に居た明姫リサ・明姫クリスの姉妹へと差し出すミネルバ。ちなみに2人がここに居るのは、従姉であるミネルバが誘って連れてきたからである。
「よそと同じことやってもしょうがないのよ、この出版不況だと」
 しみじみと言った麗香の言葉に、ライトノベル作家であるミネルバは強く納得する。本屋などでは一見たくさんの本や雑誌が出ていて勢いあって儲かってそうに思えるかもしれないが、それはあれだ、数打ちゃ当たる的な方針を取っているようなもので。数出して売って当面の利益を確保するものの、ヒットする物がないと抜本的な解決にはならない。なのでまたたくさん数を出して……という繰り返しに陥る可能性があったりなかったり。
「こういう企画が上手くゆけば、まとめて単行本にしたりとか新たな展開も考えられるしね」
 ぽんぽんと手にした資料を叩きながら麗香が語る。さすがは月刊アトラスの編集長、あれこれと考えているものだ。
 そんな麗香の言葉を聞きながら、資料に目を通す3人。記されているのは各々のホテル名と住所と地図、そして先程麗香が説明した通りどのような現象が起こってるかといった事柄である。
 3人は黙々と資料を読んでいるが、よくよく見るとクリスだけ時折資料から顔を上げて、ちらちらと姉のリサや従姉のミネルバの方を見ている。と思いきや、自分の身体の方をじーっと見ていたりと、微妙に挙動不審。
「どうしたの?」
 クリスの様子にリサが気付き声をかけた。それを聞いてミネルバの視線も資料からクリスの方へと移る。
「どうしたって言うか……」
 クリスはリサとミネルバを交互に見てから言葉を続けた。
「……姉さんもミネルバさんも、相変わらず凄い格好だなって思って」
「「凄い格好?」」
 声がはもり、互いの格好を見合うリサとミネルバ。リサはといえばよく見る格好のライダースーツ、もっとも胸元を大きく開けているので素肌の露出が大きい訳だが。ミネルバもミネルバで、上は胸元の辺りがぱっくり開いていて、下も両方の太ももが露出していてとなかなかの格好である。
「大胆と言われればそうかもしれないけれど」
 リサがクリスの方を見ながら答える。
「クリスの格好もある意味大胆だと思うわよ?」
「えっ?」
 意外な言葉が返ってきて驚くクリス。
「あー……そうよね、ベクトルは違うけど大胆よね」
 ミネルバもまたリサの言葉に同意して頷く。
「えっ、えっ……?」
 リサとミネルバ2人から同様に言われ、戸惑いつつも心外だといった表情を見せるクリス。
「……だって私の方が肌の露出は少ないじゃないですか。ですよねっ?」
 クリスが同意を求めて急に麗香へと話を振った。
「へっ? え、ええ、うん、そうね。肌の露出では、そうかも」
 麗香も急に話を振られながらもクリスに対応した。少し歯切れの悪い答えではあったが。
「ほら、そうだって言ってるじゃないですか」
「けれど、身体にフィットしている度合だとクリスの服が一番じゃない? へそも浮き出てるしね」
 麗香の言葉を元に反論してきたクリスに対し、リサもまた冷静に再反論を返す。身体にフィットした服を着ているということは、それだけぴたっと身体のラインも出てくる。それはそれでまた注目を浴びる格好である訳で……。
「じゃあ、他の人にも誰が一番大胆か聞いてみましょう」
 少しむっとした様子でまたクリスが返す。と――その時である、編集部に新たな訪問者があったのは。
「やっほ〜っ! 久し振りに遊びにきたよ〜っ!!」
 そう言いながら編集部にパタパタと駆け込んできたのは白銀の髪の小学生――海原みあおであった。当然ながら視線が一斉にみあおへと注がれる。
「ん、何、どうかしたの? 何かあったの?」
 きょとんとしつつも皆の顔を見回すみあお。するとクリスがちょうどよい所に来たとばかりに、先程の質問をみあおに向けてぶつけてきた。
「あのね……この3人の中で誰が一番大胆か言ってみて?」
「この3人で?」
 目をぱちくりさせたみあおであったが、ともあれ順番に3人の格好を見てゆく。そして少しの思案の後に口にした言葉は――。
「ん〜、3人とも大胆じゃないの?」
 しれっと言い放つみあお。それを聞いた麗香が思わず吹き出した。クリスはというと動きが固まっている。
「はい答え出たわね。3人とも大胆、と」
 笑いながら麗香は皆にそう言うのであった……。

●調査希望先を言ってみる【2】
「脱線しました、すみません……」
 クールダウンしたか、クリスは皆にそう言ってからまた資料へと目を通し直す。今さっきやってきたみあおも資料を手に取ると、さっそく興味津々といった様子で読み始めた。
「へ〜、ホテル取材やるんだ〜? みあおもやりたいな〜」
「ま、それは場所次第ね。で、どう、希望は決まった?」
 みあおに言葉をかけてから、麗香は他の3人へと尋ねる。
「旅館……が気になるわ。私はそこに行くことにするわね」
 最初に答えたのはリサであった。他の2人からは異論は出てこない。
「でも、都内の旅館というのに泊まったことはないのだけど……」
 どんな所なのかと尋ねるような視線をリサが向けると、麗香が説明してくれた。
「結構意外な所にあったりするのよ。昔から営んでて、今でも街中にあったりとかね。中には外国人観光客向けに特化したりとかもあるらしいわ。でもまあ、そこは都心から少し外れて緑もある静かな所だったと思うけど」
「そうなの。うーん……いいお風呂でもあればよいのだけど」
 と言いながら、この辺は行ってのお楽しみであろうとリサは思った。
「1泊2食付きだったはずだから、食事もあるわよ」
 麗香がそう付け加えると、ふと思い出したようにクリスが口を開いた。
「そうなんですか。姉さんは今、家を出て1人暮らししていますから、ご飯が出るのはいいですね」
「心配しなくても、ちゃんと食べてるから」
 リサが苦笑いでクリスに言った。苦笑いなのは、3食食べていても食べる時間帯にひょっとしたらずれがあるからかもしれないが……それはリサ本人が語らぬ限りは分からぬことだ。
「では……姉さんが旅館へ行くのでしたら、私はビジネスホテルに行こうかと」
 クリスが選んだのはビジネスホテルであった。やはりこれにも異論は出てこない。
「上の階へ泊まれるよう、そこだけは注意してね」
「はい」
 麗香の注意にクリスがこくんと頷いた。ともあれこれで旅館とビジネスホテルが埋まった訳だから、残るミネルバが選ぶのはおおよその見当がつくというものだ。
「なら私は『休憩』のあるホテルに行かせてもらうわ」
 そう麗香へ告げるミネルバ。予想通りの流れであった。
「……それにしても日本は不思議ね」
「何が不思議なの?」
 ミネルバのつぶやきに麗香が反応した。
「それ専門のホテルがあることが。私の国では、そういうことは自宅や一般のホテルを使うもの」
「んー……日本の住宅事情が関係しているのかもね、その辺りは」
 ミネルバへそう答える麗香。するとその時、みあおが声を発した。
「あっ、みあおもその休憩も出来るホテル、希望っ!!」
「えっ?」
 麗香が驚いたようにみあおのことを見た。麗香だけじゃない、クリスもリサもミネルバも一斉にみあおを見る。それはそうだろう、場所が場所だけにみあおが入れるような所でなく……。
「……他の所にしたら?」
「大丈夫っ! ちゃ〜んと問題なく出来るからっ!! あ、それと碇、三下のレンタルきぼ〜っ!!」
 眉をひそめ他の所へ変えるよう言う麗香に対し、みあおはにっこり笑って自信たっぷりに言い放つのであった。

●旅館で夜を過ごしてみる【4A】
「ふう……いいお風呂だったわ」
 湯上がり赤ら顔で部屋に戻ってきた浴衣姿のリサ。件の旅館に宿泊し、美味しい夕食後に檜の風呂へと入ってきた直後のことであった。
 リサが通されたのは2間続き間になっている和室であった。1人で泊まるには少し広いと思えるが、逆に贅沢感を味わえる部屋であるとも言える。
「他にお客さんも居ないせいか、ゆったりと使うことも出来たし……」
 夕食時、ついてくれた仲居からリサは少し話を聞いていた。それによると、今日の客はリサだけだということと、そんなに賑わっている旅館ではないが途切れず客が来てくれているので長年営業が続けられていることが分かった。
「……知る人ぞ知る旅館、ということなのかしら?」
 仲居の話を思い返しつつ、リサは浴衣の胸元の崩れを直しながらつぶやく。浴衣の大きさを胸の方で合わせたものだから、だぼついて全体的に着崩れやすくなっているのだ。
 そしてフロントにマッサージを頼むと、奥の部屋に敷かれていた布団に横になって待つリサ。これもまた話を聞く手段の1つではあるが、それ以前に実際問題リサは最近肩が凝って仕方がなかったのだ。まあ原因の1つは自分でも分かっているのだが……。
 20分ほど経ったろうか、ようやくリサの部屋にマッサージ師がやってきた。40代後半くらいの中年の女性である。リサは女性に部屋に入ってもらうと、症状を伝えてさっそくマッサージを始めてもらうことにした。
「はあはあ、肩凝りですか。大きい方は結構な割合でそう仰られますねえ」
 女性はそう言ってから、まずリサの肩へと触れる。
「あー、これは凝り固まってますねえ。ちょっと他も見てみますね」
 そして肩から手が下の方へと順次降りてゆく。背中、腰回り、臀部に大腿部、足の裏などなど、と。
「お客さん、お仕事で何か肉体を酷使しておられませんか?」
「……ええ、まあ」
 心当たりあるリサは素直にそう返す。
「身体の不調というのはですねえ、直接にその部分を使用しているから起こるのもありますが、別の部分の不調が作用して影響を与えていることもあるんです。お客さん、ここ最近妙な体勢を取ったことはありませんか?」
「あった……かも」
 これもまた心当たりがあったので、リサは布団に横になったまま頷いた。
「じゃあそれかもしれませんねえ。その部分を庇って、負担が肩や他の部分に出てるんでしょう。順番に解してゆきますから、リラックスしててください」
 女性はそう言ってようやく本格的にマッサージへと入っていった。
「……んっ。……あっ……そこ……」
 女性のマッサージに身を委ねるリサの口から思わず声がこぼれ出る。ここだという部分を的確に解してくれているのだから、声くらい出ようというものだ。
「あ……そこっ……いいっ……! ……はあ〜……」
 リサの口から溜息が漏れる。言っちゃ何だがこういうひなびた旅館に、こういうよい腕前のマッサージ師が居るとは……何とも東京は広いものだ。
 1時間半後、マッサージ師が帰ってから1人きりになったリサは、茶を飲みながらしみじみとこうつぶやいた。
「肩が……凄く楽になっちゃったわ……」
 少し前まで感じていた肩凝りの辛さなどどこへやら、肩に乗せられていた重りが全て取り払われたような気分をリサは感じていた。楽になったのは肩のみならず、背中や腰回りなど身体全体的にそうであった。
「……ほんと上手だったわね、あの人……」
 もしこれで、噂通りにばたばた走り回る音が聞こえなくとも、個人的にはあのマッサージの女性に出会えただけでも大収穫であったかもしれない。しかし本来の目的はあくまでもばたばた走り回る音。リサは茶を飲み干すと、隣の部屋との間にあるふすまを閉めて、軽くなった身体を再び布団へと横たえて眠りについたのであった。
 それから――何時間経ったのだろうか。マッサージを受けたためかぐっすりと眠っていたリサの耳に、ばたばたと走り回る音が聞こえてきたのだ。気のせいなどではない、確かに続き間である隣の部屋から聞こえてくる。
 リサは布団をそっと抜け出すと、這うように隣の部屋との間を仕切っているふすまに近付いてゆき、耳を当てて様子を窺った。
 ……間違いない、隣の部屋から走り回る音は聞こえている。リサはふすまを少し開けて、隣の部屋を覗き込んでみた。
 するとどうだ、隣の部屋では着物姿でおかっぱ髪の女の子が1人でぐるぐると走り回っていたではないか。
(幽霊? あ、ううん、ちょっと違う……?)
 リサはその女の子から霊的な物を感じ取った。だが幽霊のようには思えない。
 と、その時だ。女の子が不意に止まって、リサの居る方をじーっと見つめ出したのは。
「誰か見てるだか? オラの姿が見えてるんだべ?」
 女の子はリサの居る方へ向けてそう語りかけた。
(……気付かれてる……?)
 このまましらを切り通す方法もあったが、下手な小細工をすると相手を怒らせてしまう可能性もある。それを懸念したリサは、ふすまを開いて素直に自分の姿を晒すことにした。
 そしてふすまは開かれ、リサの姿が女の子にも露となる。女の子はしばしリサをじーっと見つめていたが、やがてにぱっと笑みを浮かべてこう言った。
「なーんだ。お姉ちゃん、オラのこと見えるんだべな――」
 その笑みは決して敵対的なそれではなく、明らかに友好を求める物であった。

●後日談【5】
 3日後――月刊アトラス編集部に、改めて全員が集まっていた。報告自体は各々宿泊翌日に行っていたのだが、今日の集まりはそのまとめと新たに判明したことを伝えるための物であった。
「まず最初に、ちょっと見てもらいたい写真があるんだけど」
 麗香はミネルバとみあおにそう言い、パソコンのモニタに1枚の画像を表示させた。
「あら……」
「あ〜っ! この顔〜っ!!」
 それぞれ反応を見せるミネルバとみあお。表示された画像は、パンチパーマをかけた中年女性の顔写真だったのだ。
「どうやら見覚えあるみたいね。言ってみて」
「あの夜に見た幽霊だわ」
「パンチパーマだったよっ!」
 麗香の質問に対し、ミネルバとみあおが口々に答える。
「三下くんもそうだって言ってたし、どうやら間違いないようね。この女性はね、あのホテルの前のオーナーよ」
 淡々と事実を告げる麗香。ええと、それって、まさか……?
「調べてみたらね、前のオーナー行方不明になってるらしいのよ。田舎に引っ込むだなんていい口実よね」
 そう麗香が皆に説明する。
 さて、オーナーが変わったのはリニューアルオープンの頃。リニューアルオープンの時には改装工事が行われていた。そして幽霊が見ていたのはベッドの下……。
「そうそう、三下くんは気分が悪くなったって早退したから」
 麗香がそうしれっと言い放つ。……どうやら三下は気付いてしまったようだ。
「ともあれ、ネタがネタだけに、これはちょっと使えるか分かんないわね」
「え〜、使えないの〜? せっかく記事として成立するよう、成仏させないように気を遣ったのに〜」
 みあおが抗議の声を上げたが、事が事だけにこれは難しい。
「で、ビジネスホテルの方だけど、これはこれでオカルトじゃなく、単なる覗きよね」
「位置関係から考えて、その可能性が高いと思います」
 クリスが麗香へきっぱりと言い切った。確認出来なかったので想像になってしまうが、恐らくはビジネスホテルの向かいなどにあるビルのどこから部屋から望遠鏡や双眼鏡を使って覗いているのであろう。敏感な者であればそれに気付くだろうし、上層階ゆえにまさか覗かれているとはすぐに考えが回らないものだから、幽霊か何かと勘違いしてしまう訳だ。
「これはホテルに伝えて対処してもらった方が早いわね。マジックミラーにすれば問題解決だと思うけど」
 マジックミラーにすれば外から見れば鏡のように見えて、中からは普通に素通しで外が見える。金はかかるが、ホテルとすればそれがベターな選択であるだろう。
「そして旅館だけど……」
 最後に麗香はリサへと向き直った。リサは真夜中に部屋で走り回っていた女の子に会って、言葉を交わしてきていたのだ。
「これってあれよね、座敷童子でしょう?」
 座敷童子とは家に住み着くある種の精霊的存在で、座敷童子の住む家は繁栄するなどと伝えられている。その外見の多くもリサが見たような女の子みたいな感じで、同じくリサが聞いてきた旅館の経営状態を鑑みてみると繁栄するという伝承から外れているようにも思えない。
「実際、座敷童子が住むと言われる旅館は存在しているのよ。しかし東京にもあったのねえ……」
 しみじみとつぶやく麗香。そしてリサへと指示を与える。
「相手が相手だけに、記事を書く時は怖がらせるように書いちゃダメよ。あと、座敷童子だって明確に書くのも避けておきましょ。下手に客が増えると、座敷童子が出てゆきかねないもの」
「ええ、了解です。それじゃあ、記事を書いたらミネルバさんに添削をお願いしようかしら……」
「それは喜んでさせてもらうわ」
 リサがミネルバの方をちらっと見て言うと、ミネルバはにっこり微笑んで答えたのであった。

【ホテルといえば定番のあれです 了】


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【 整理番号 / PC名(読み) 
                   / 性別 / 年齢 / 職業 】
【 1415 / 海原・みあお(うなばら・みあお)
                   / 女 / 6? / 小学生 】
【 7844 / ミネルバ・キャリントン(みねるば・きゃりんとん)
                / 女 / 27 / 作家/風俗嬢 】
【 7847 / 明姫・リサ(あけひめ・りさ)
              / 女 / 20 / 大学生/ソープ嬢 】
【 8074 / 明姫・クリス(あけひめ・くりす)
     / 女 / 18 / 高校生/声優/金星の女神イシュタル 】


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■         ライター通信          ■
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・『東京怪談ウェブゲーム』へのご参加ありがとうございます。本依頼の担当ライター、高原恵です。
・高原は原則としてPCを名で表記するようにしています。
・各タイトルの後ろには英数字がついていますが、数字は時間軸の流れを、英字が同時間帯別場面を意味します。ですので、1から始まっていなかったり、途中の数字が飛んでいる場合もあります。
・なお、本依頼の文章は(オープニングを除き)全7場面で構成されています。他の参加者の方の文章に目を通す機会がありましたら、本依頼の全体像がより見えてくるかもしれません。
・今回の参加者一覧は整理番号順で固定しています。
・大変お待たせいたしました、調査に向かう場所によって内容が異なるお話をここにお届けいたします。結局は3カ所全部調査したことになりますね。
・一応ホテルガイドという企画において使用出来るネタは1/3という確率になってしまったのですが、休憩もあるホテルの件については麗香のことですから恐らくは警察の捜査の進み具合を見て、別ネタとして再利用することになるでしょう。
・明姫リサさん、4度目のご参加ありがとうございます。記事という観点と、それから個人的事情という観点の両方で当たりを引いたのではないかなあ……と思いました。肩凝りは辛いですからねえ……時によっては頭が痛くなったり、気持ち悪くなったりもしますし。
・感想等ありましたら、お気軽にテラコン等よりお送りください。きちんと目を通させていただき、今後の参考といたしますので。
・それでは、また別の依頼でお会いできることを願って。