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<東京怪談・PCゲームノベル>


――懺悔に教会――



 その白い教会の中には、沢山の、あらゆる人の記憶が保管されている。
 何処にどのようにして保管されているか、また、何故そのような物が保管されているのか、その辺りの事は、知る人しか知らないし、だいたいそんな事を言い出したら、保管されているということは、誰かがいつか利用するためなのではないか、とか、何かのためなのではないか、とか、だったらそれは何のためなのだ、とか、どんどん気になり始めたりして、話が前に進まないので、詮索しない方がいい。
 とりあえず今日、管理人は、その中にある記憶の一つを、作為的に、あるいは無作為に取り出した。
 何故なのか、であるとか、取り出してどうするのか、とか、むしろ管理人って誰なのだ、とか、そう言う事は、やっぱり今は、詮索しない方がいい。
 語られるべきは。
 管理人によって取り出された、ある二人の青年の、こんな話。



××アシンメトリー××



「あれ? 遥風・ハルカだ」
 スタッフの一人が、そんな事を言った。
 水野・まりも、あるいは、その「中身」である、布市玄十郎は、スタッフの視線の先を見て、見覚えのある人物を見つける。H2とかいう、若手のダンス系ユニットの内の一人の姿を、見つける。
 遥風ハルカ。
 やんちゃな子供がそのまま歳をとっているような童顔は、ニットキャップを眼深に被り、歩いている。
 布市はH2の二人の事を、「面倒臭い方」と「面倒臭くない方」という認識で覚えていた。
 そもそも、誰が一番面倒臭いかといえば、8歳で稀代の天才少年歌手としてデビューしながら、14歳の時に事故で生死に関わる重傷を負い、何がどうなったかどういうわけか、「伝説の天才俳優だが酒と賭け事がガンで身を持ち崩した布市玄十郎(ぬのいちげんじゅうろう:愛称フッチ:享年58歳」の魂が代わりに入り込んで、それにより、外見ピチピチ14歳中身はムンムン58歳という得体の知れない存在となってしまった自分、なのだけれど、そのことに微かにでも気付きかけている人物、つまり、あの少年の相方は、面倒臭い男だった。
 そっちはそっちでいろいろあったのだけれど、つまり、二人居る内の一人が面倒臭いならば、もう一人は面倒臭くない方でいいや、と、そんな自分が覚えやすい分類でカテゴライズした結果、彼は、面倒臭くない方、という認識に落ち着いた。
 面倒臭くない方の少年は、買い物でもしていたのか手に何処かのショップの紙袋を下げて、映画の撮影に気付く様子もなく、通り過ぎて行こうとした。
 けれど。
 そこでケータリングが運ばれて来た。
 物凄く美味しそうな匂いが、辺りに、漂った。
 だいたい、本当に今回の映画のケータリングは、美味しいので、匂いに、間違いはない。
 そしたら、通り過ぎて行こうとしていたハルカが、振り返った。
 目が、合った。
「あ」と、彼が、言った。
 そしてそのまま、どういうわけか、近づいて来た。


××


「空きなんだよね。共演者がまだ、ちょっと、到着してなくて」
 アウトドアチェアーみたいなのに腰掛けた水野まりもは、可愛らしい笑顔を浮かべながら、そんな事を、言った。
 間近で見る彼は、男の自分が言うのも何だけれど、小柄で目とかくるん、としていて、何かだいぶ可愛くて、なるほどアイドルってこーゆーもんなのかー、とか、これが人気アイドルのオーラかーとか何か、漠然と考えたりした。
「美味しそうな匂いにつられちゃったんだ?」
 まりもは、ころころ、とからかうように、笑う。
「はい、つい。何か、すっげえ美味しそうだったから」
 って、ちょっと恥ずかしげな笑いで誤魔化したりして相槌を打ち。
 つつこのまま談笑、とかで終わっては駄目だ、と自らを奮い立たせる。
「いやまあ、あと、ちょっと、まりもさんと話したいこともあったし」と、本来の目的を口にした。
「どういうこと?」
 すっかり笑ってない真顔の、きょとんとした顔に見つめられ、何かちょっと、慌てた。
「いやあの、相方の、事なんですけど」
「相方……あー。ユニットのもう一人の方だよね。彼が、どうかしたの」
「覚えて、ますか?」
「まあ、顔くらいは」
「あ、そうですか」
「どうして?」
「いやあの、仲とかいいのかな、ってちょっと思ってたんで」
「どうして?」
「いや。何か、そうなのかなって」
「どうして、そうなのかなって、思ったの」
「いやまあ、何となく、すけど」
「ふうん」
 と、言う彼の顔は、普通の顔だったけれど、可愛らしい顔した人の真顔ってわりと怖いっていうか、あれ? 今さっきまでの元気な笑顔なんでした? みたいな、もしかしてさっきまでの全部嘘でした? みたいな、そんな不安を感じる。
「怒って、ます?」
「いや、怒ってないけど。話って、何? それって僕で力になれること?」
 とか、良く考えてみたら、水野まりもは、全然自分より年下だったはずで、そりゃあキャリアは上なのだろうけれど、最悪、三歳くらいの差なら、同年代ってくくりになる事はあれど、こんな随分年上の人を相手にするような威圧感というか、圧迫感を放出してくるなんて、実は凄い人なのかも知れない。と。
 失礼な話、その時始めて、ハルカは、思った。
 そして、これはいよいよ、相方の事をこの人に聞いてみるべきだ、と思った。
「あの何か、最近俺の相方、おかしいんすよ」
 って言ったハルカの顔を、ぼーとかまりもが、見てくる。
「ん?」
 暫くして、言った。
「いや、何か、相方がおかしくて」
「うん、聞いたけど」
「はい、言いました」
「それで?」
「いや何か、それってまりもさんとカンケーあるんじゃねーかなあーとか」
「……ん?」
「いや何か、まりもさんとカンケーあるんじゃねーかなって」
「うんいや聞こえてるけど」
「だって……聞き返してくるから」
「うん、ほら、聞こえてても、意味が分からないってこと、あるじゃない」
「まーあるけど」
「それだよね完全に」
「何かこないだ、喋ってたじゃないすか。二人で」
「そうだっけ」
「そしたら何か、その時、相方の様子が、すっげえおかしくて」
「そうなんだ」
「そしたら何か、それ以来、相方の様子が、すっげえおかしくて」
「ねえ何か、漠然とハルカさん、同じとこぐるぐるしてる気がする」
「違いますよ、良く聞いて下さいよ」
「っていうかさ、どうおかしいわけ? 漠然とおかしいって言われてもさ、分からないよ」
「何か」
 と、ハルカは、拗ねた子供みたいな顔で、言った。「何か、すっげえ怒ってくるんすよ」
「……ん?」
「いやだから、何かすっげえ怒って」
「うん、分かった。そのくだりは、もう、いいよ」
「だったらその、ん? って言うのをやめて貰えますかね」
「じゃあ、それは何か、ごめん」
「あれなんですよね。アンタと喋った後、すっげえ相方が苛立ってて。こう、何も言わないんすけど、背中が既に怒ってるっつーか。わー機嫌悪ィーみたいな。でもまー何か、突っ込んで聞いたら、絶対もっと怒ってくるし、放ってたすよ。まー別に、そのうち治るだろーとか思って。わりとそういうタイプなんで、あいつ」
「うん」
 目元に視線を落とし、ケータリングのシチューをぐるぐる、とかかき混ぜながら、まりもが頷く。「なるほどね」
「でも、何か。それから、わりと絡んでくるようになったんすよ、あいつ」
「ん、意味が分からない」
「だから、いいすか。まりもさんと喋って、その日はすげえ何か、機嫌悪くて、苛立ってるって感じで」
「うん、そこまでは、分かる」
「で、それ放置してて、暫くしたら機嫌治んじゃねえか、とか思ってたら、余計悪化して、最近ではあいつ、俺に絡んでくるんす」
「うん、そこから一気に意味が分からなくなった」
「何がわかんないんすか」
「っていうか、何でハルカさんに、絡むの」
「ですよね。いや、ほんとそう。何でなの。何で俺に絡むの」
「んー分かんない」
「だいたい、最初のそれは何なんすか。何喋ってたんすか」
「まー」
 とチラ、とまりもはハルカを見やり、また、顔を伏せる。「別に他愛もない話だったんだと思うんだけど」
「何でそれであいつが苛立つんだよ」
「まー。僕が思うに」
「はー」
「歌の事じゃないかな。ほら、やっぱり、同じ歌い手として、こう言っては何だけど、僕と彼では、何ていうか。レベルが、違うから」
「あー結構嫌な感じすね」
「だよね。でも、そういう感じを彼も、その時、受け取ったのかも」
「あー。負けるか、みたいな?」
「んーそうそう、実際、負けてるしね」
「いや別に、勝ち負け、ないでしょ、それ」
「って、彼も思ったのかも、その時」
「あー」
「だから、何か、こう、歌い手として、苛立ってたんだろうね、その時はね」
「うん、あり得る。あいつ、プライド高いとこ、あるし」
「うん」
「で、何で俺に絡むんすか」
「うんだから、そこから全然分かんない」
「もしかして、俺が自分の足枷になってる、とか思った、とか」
 軽く口に出してしまった思い付きが、自分に跳ね返って来て、ハルカは、自分で自分の言葉にぞっとした。
 そういう事ならこんな所で暢気に人生相談している場合では全然なくて、早急に、相方と話合わなければいけないのではないか、という予感がする。
「俺、ちょっと、やっぱり相方に聞いて」
 と、立ち上がりかけて、でもやっぱり、と座りこむ。
「も、無駄なんだよな」
 だいたいそれで解決しているならば、こんな所で、こんな人に、回りくどく話など聞いていないのだ。
「無駄? どうして?」
「はー何言ってんの、って、怒られるだけだから」
「言わないんだ?」
「言わないんす。でも、絶対確実、何か、絡んでるんです」
「ハルカさんの気のせい、ではなくて?」
「絶対誰が見ても、絡んでるようにしか見えないっす」
「何か、あるんだろうね」
「何か、あるんだと思う。でも、全然分かんない」
「無理矢理、僕のせいとかにしちゃうくらいだもんね」
「いやでもだって、あれ以来おかしいんだから、原因がそこにあるかも、って思うの、当然じゃん」
「いや絶対それは、何か違う理由があるんだと思うよ」
「そうかなあ」
「心当たりとか、ないの」
「心当たり……」
 とか何か呟いて、考えるように俯いたハルカは、んーと唸った後、「結局、あれなのかな。俺の事、もー本気で面倒臭いだけなのかもな」とか何か、ポツン、と言った。
「ハルカさん……」
「はい」
「可愛いね」
「は?」
「だって本気で面倒臭いって言ったって。何でそう思うのよ」
「あいつと、俺とは、本当に、違うから」
「うん、知ってる。っていうか、今日知った。ハルカさんは、可愛い」
 って自分こそ凄い可愛い顔して何言ってんですか、みたいに、呆れた顔でその言葉を聞き流し、ハルカは、続ける。
「今までは、違うからこそ、いーんじゃねーか、とか思ってたし、あいつもそう思ってくれてるに違いないって、信じる事が出来てたんだけど。最近のあいつの態度見てたら、それ俺の勝手な思い込みだったのかも、って。ずっとあいつはただ、我慢してただけで、本当はその違いが、我慢ならないのかも、って」
「違い、ねえ」
「俺はあいつが、俺と違うってとこが、わりと好きだったんだけど。興味もあったし。だからこそ知りたいし、いろいろちゃんとコミュニケーション取りたいし。俺、心の何処かで、あいつは、本当は言いたいことがあっても、ちゃんと口に出せないだけなんじゃないかって。言ってないだけで、ちゃんといろんな感情があって、いろいろ考えてはくれてるんじゃないか、って。でも、本当のとこは、実際に何もなくて、どーでもいーから、言わないのかなって」
「でも、文句がない、っていうのは、良いことでしょ。文句がないから言わないのかも知れないじゃない。別に、君には、文句はないわけで。いちいち文句つけられたり、突っかかられたりするよりは、良くない?」
「でも。文句がない、と、どーでもいーは、見た目一緒だけど、中身、全然違うし」
「まあ。でも、分からなきゃ、どうせ、一緒だし」
「それじゃ嫌なの。どっちなのか、ちゃんと知りたいんすよ、俺は。いちいち、突っかかられたいし、文句だって言われたい。だって、俺ら、二人でH2なのに」
「あー面倒臭い感じだね」
「やっぱ、面倒臭いのかな」
「うん可愛いけど」
「俺、わかんねえもんだって。思ってるのに、口に出さないとか、考えられない。何もないから黙ってるんじゃないの。それ以外に、黙ってる理由って何なの」
「んーまーそれはあれだよね。ぶつかり合いたい人と、極力ぶつからないように過ごしていこうとする人の、埋められない溝っていうか」
「どうせ、俺になんかは、理解して欲しいと思ってないからでしょ。口に出さないのは、そういうことでしょ。結局、軽蔑してんだよ、あいつは俺を。騒がしい、バカだ、って」
「むしろ、憧れてるのかも。ハルカさんのそういう所に」
「ない。絶対ない。だったら絶対、そうするもん。だって、そうだろ。そっちに憧れてんなら、そうすりゃいいじゃん」
「って感じでこー、ガツガツ喋るんだね、ハルカさんはね」
「そう。そしたらあいつは、引くわけ。さーって、びっくりするくらい、俺を置いて、引いていくわけ。そしたら俺は、益々何か、ムキになっちゃって、だって、それ以外の方法、知らないんだもん。多分、どんどん煩いわーとか、面倒くせーって、軽蔑して、嫌われてんのかも知れないけど、でも、騒ぐ方法しか、ぶつかっていく方法しか、俺、知らないんだもん」
「あー。タイプ違い過ぎて、修復できないやつだね、それね」
「そしたら益々あいつは、くだらねーみたいな、面倒臭そうな空気とか出して来て、でも、口に出して主張とかはしてこない。空気だけ出してくるんす。正直、あの空気、ヘコむんすよ。よっぽど俺に何かを言っても理解しない、と思ってるのか、そもそも、何かを言おうと思うくらいに、俺と繋がったりぶつかったりしたい、と思ってないってことなのか。なのに俺ばっか必死になって、馬鹿みてぇじゃん。何これ、って。すっげえヘコんでくる」
「うん、可愛いよね」
「だからあれだよね。何か、良くフィクションとかでは、全然タイプ違うからこそ、上手くいく、みたいな話あるけど。あれ、嘘だわってすっげえ思った。だって、共通の言語っていうか、共有出来るリアクションっていうのが、本当にないんだもん。どうしてこいつはこーゆー時、こういうリアクションするんだって、あんまりにもわかんねえから、推測のしようねえし。他人だったらおもろいわーって見てられるけど、相方がそれって、正直俺、しんどいっす」
「まー同じ空気って、大事だけどね」
「でしょ」
「うん」
「俺ら、駄目でしょ」
「深く、関わらなきゃいいんだけどね。相方は相方として、仕事上の付き合いだって、割り切って」
 まりもがそう言うと、途端に分かってますけどね、どうせ俺は子供ですけどね、みたいな拗ねた表情で、ハルカが俯く。
「うん」とか何か、反抗心丸出しっていうか、納得してないの満開で、頷いた。
「まー結局、それだよね。先輩とかにも、それ言われたんだよな。ハルカがちょっと、引いてみればいいのに、って」
「ふうん、先輩?」
「まー。最近仲良くして貰ってる先輩がいるんすけどね。その人らに」
「ちなみに、先輩って、男なんだ?」
「まー、男っすね。見た感じ、どっちか分かんない顔してる人ですけど」
「美形なんだ?」
「美形っすね」
「美形が好きなんだ?」
「はー好きとかは別に。どっちかっていうと、可愛い子が好きです」
「じゃあ、僕のこととか、好きなんだ?」
「はーこれ、何の話っすか」
「先輩と仲いいんだ?」
「はい」
「ふうん」
 と、まりもは、ちょっと笑いながら、頷く。「そうなんだ」
「え、何なの、その意味深な笑み」
「意味深な顔してた?」
「してたよ」
「気のせいなんじゃない」
 って言ってる顔は確かに、すっかり真顔なのだけれど。
 だからもう、ハルカは何も言えないのだけれど。
「めちゃくちゃ仲いいんだ? いろいろ、相談したりとかして」
「まー。いろいろちゃんと聞いてくれるし、意見も言ってくれるし」
 と、指で数えながら言って、「一緒に居て心地良くて、大好きかな」と、納得したように、言った。
「ふうん」
 また、ちょっと笑いかけたけど、慌ててひっこめました、みたいな表情をしたまりもは、「ヒカルさんもそれ、知ってるんだよね」と、徐に、言った。
「まあ、二人とも知ってる先輩だから」
「ふうん、そう」
「うん」
「じゃあまた、僕にも相談しに来て」
「え?」
「面白かったから。また、相談しに来て」
「でも、相談って言っても、今日も全然何も解決してないんだけど」
「解決は出来ないよ」
 まりもは、さっぱりと、言う。「二人にしか、無理だもん」
「で、す、よ、ね」
「解散とか、考えてるの?」
「わかんない、正直。どうなるか」
「それくらい深刻に悩んでること、言ってみたの?」
「まだ」
「まだ?」
「まだ、言ってないっす。その前にあの空気で、ヘコたれちゃうんす」
「ねえ、ハルカさん」
「はい」
「抱きしめて、いいかな」
 とか言ったまりもの顔をぼーっと眺め。
「でもあれっすよね。一回ちゃんと、やっぱり話した方がいいんすかね」と、迷える子羊みたいな瞳で、言った。
「うん。いつかはそうしなきゃいけないと思うんだけど、もうちょっと様子見てみたらいいんじゃない」
「そうかな」
「うん、その方が面白いから」
「人が真面目に言ってるのに」
 と、俯いた瞬間。
 ふわ、と頭を本当に抱きしめられてしまった。
「よしよし、頑張れ」
 小さな手が、髪の上を滑っていく。
 三つ年下のガキに何されてんだろーとは、ちょっと思ったけれど、何だかお爺ちゃんに抱きしめられているみたいな、奇妙な安堵感も、感じた。


××


 と、布市が我慢できずにそんな行動に出た所で。
 共演者の女性が、それは何か今売り出し中だとか何だとかのアイドルの女で、布市からしてみたらただのガキにしか見えない女なのだけれど、とにかく、そのアイドル女が、遅刻したくせに、ぶりっ子満開の顔で「すいませーん」とライトに入って来たので、遥風ハルカとの会話は、中断するしか、なかった。
 気に食わなかろうと、仕事は仕事。
 しかも、布市に来た仕事なのではなく、これは、水野まりものための仕事なのだ。
「じゃあ、そろそろ行かなきゃ。また、いつでもいいから、連絡してね」
 そう言って、携帯番号の書いた名刺を、ハルカへ差し出す。
「あー、どうも」
 それを、懐きたいけどまだ警戒してる犬、みたいに受け取った少年、ハルカを、何とも愛しい気分で、ちょっと、眺めた。

 その日、布市玄十郎の中でのH2のカテゴライズは変化する。
 面倒臭い方と、可愛い方。と。










    END








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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 5548/ 遥風・ハルカ (はるかぜ・はるか) / 男性 / 18歳 / 職業:自称マルチアーティスト】
【整理番号 4691/ 水野(仮)・まりも (みずの?・まりも) / 男性 / 15歳 / 職業:MASAP所属アイドル】