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<東京怪談ウェブゲーム 界鏡現象〜異界〜>


Episode.23 ■ 狂気の闇、動き出す魔族







■□Aポイント・建設中のビル□■





「悪いが、出し惜しみは無しだ」武彦が銃を構える。

「どうすると言うのかしら?」エヴァが挑発する様に武彦へと問い掛ける。「さっきの攻撃であばらが三本は折れてる。そんな状態のユーのスピードじゃ、私の攻撃は避けれないわ」

「なら、攻撃させなきゃ良いだけの話だ」武彦が独特な形をした銃を構えて撃ち出す。

「速い…っ!」エヴァが思わず言葉を漏らす。大鎌を持ったまま武彦の攻撃を逃れる様に身体を動かすが、あらゆる場所から反射してエヴァへと向かって跳弾が襲い掛かる。「跳弾…!」

 エヴァが跳弾の軌道を見極め、後ろへと下がる。が、更に後方へと何発かの銃弾が打ち込まれる。武彦は銃のマガジンをその場で即座に入れ替え、再び銃を構える。その間の時間差を埋めるかの様に、二回の跳弾を利用して狙われた銃弾がエヴァを追い詰める。逃げれる方向を絞り込まれたエヴァは近くにあった柱を背に隠れる。

「柴村!」

「―解ってるわ」百合が銃を持った手を上げ、一発の銃を放つ。空間を転移された銃弾が、エヴァの眼前に突如姿を現し、エヴァがそれをギリギリで避ける。

「チッ、厄介ね…」エヴァが隠れる事に意味がないと知ると、大鎌を持ってスピードを上げ、武彦や百合へと間合いを詰めに走り出そうと柱から飛び出る。「いない…!?」

 エヴァが柱に隠れ、出て来るまでの一瞬で、武彦と百合が空間転移をしてエヴァの更に奥にあった柱の影から姿を現す。

「チェックメイトだ」

 武彦が銃を構え、姿を現したエヴァへと三発の銃弾を撃ち出す。

「くっ…!」エヴァが気配を察知し、一歩早く動き出す。三発の銃弾を大鎌で二発、その場で防いでみる。が、もう一発が来ない。「がっ…!」

 不意に背後からエヴァの肩へと銃弾が襲い掛かった。それでも倒れず、エヴァは再び距離を取る様に後ろへと飛ぶ。

「反射的に身体を逸らした…、さすがね。もしあと一瞬でもその判断が送れていれば、心臓部を撃ち抜けるコースだったのに」百合が冷静に呟く。

「くっ…」

 本来なら、銃弾など零鬼兵の持つ超再生能力の前に、一瞬の痛みで静まる。だが、武彦の持つ銃は呪物。再生能力でなんとか銃創で済んでいるものの、それがなければあっさりと身体に毒が回るかの様に自由を奪われていた。エヴァはそれを身を以って知る事になってしまった。

「さすがだな。この銃弾を身体に受けても動けるか…。だが、次はない――」

「―そこまでよ」

 武彦に百合、そしてエヴァが同時に振り返る。そこに立っていたのは、一人の少女だった。真っ白な服を着て、ぬいぐるみを抱えている。少女は三人が振り返ると同時に、口元をニヤリと歪ませた。



■■Bポイント・廃校体育館■■




 激しい戦いが続く。ヘゲルを使ったスノーの攻撃が連続してファングの身体を凍りつかせ、徐々にファングの動きも鈍くなる。翔馬がそのチャンスを逃すまいと、再び大剣を振り翳し、ファングへと襲い掛かる。

「くっ、おのれ…!」

 ファングが真空刃を出してそれに応戦しようとするが、翔馬の攻撃の方が一歩早く、ファングの身体を捕らえる。

「ぐっ!」大剣の衝撃がファングの身体を吹き飛ばすかの様に後ろへと押し出す。あまりの衝撃に、思わずファングの体勢が崩れる。

『今やで、スノー!』

「エッジ…!」

 再びスノーの言葉と共に周囲の凍りが牙を剥く。体勢を立て直せないままのファングの身体へと凍りの刃が襲い掛かる。

「やったか!?」

「うおおぉぉ!」

 ファングの身体に氷の刃が突き刺さろうとしたその瞬間、ファングが地面を強く殴りつけ、その衝撃で放った真空波でスノーの放った氷の刃を相殺した。

『なんちゅう力しとんねん…。バケモンやな』

 ヘゲルの言葉を他所にスノーが再び鎌を構える。

「…クソ、あれだけ攻撃与えても押し切れねぇのか…」

 翔馬がスノーの隣りへと退き、息を整える。

『無理は禁物でござる、翔馬殿。この融合状態は翔馬殿の身体には負担が大きいでござる』

 スサノオの言う通りだった。翔馬の息が乱れ、異様なまでの汗をかいている。融合状態は翔馬の体力を著しく貪るらしい。そして、疲労の色が色濃いのは翔馬だけではなかった。スノーもまた、珍しく肩を上下に揺らしながら息を整える。

 だが、ファングもまたかなりの疲労を見せている。互いに残されたフルパワーでの攻撃は一発ずつ。誰もがその事を感じ取っていた。

「―そこまでよ」




―――

――






「ようこそ…」

 少女がニヤリと歪な笑みを浮かべて美香とユリカに声をかける。

「…ここは…?」

 美香が困惑しながら周囲を見回す。先程までいた場所から、一瞬で場所も空も変わっている。瓦礫と化し、数年も放置されたかの様に風化して崩れている様なコンクリートのビル達。そして、空は夜とは言い難い、真っ黒くペンキで塗り潰したかの様な黒さ。星も雲も存在しない、そんな歪な光景が広がる。

「あの子の能力、かもね」ユリカが少女を睨み付けながら呟く。

「ご名答。この世界は私の能力によって造り上げられた世界。全てが私の意のままに行える世界よ…」少女がニヤリと笑う。

「悪趣味な世界ね」ユリカが呟く。「でも、ここが何処だろうと関係ないわ。術者のアンタを倒せば、能力は消滅する」

「あなたは、私達の敵なの?」美香がユリカの前に手を出して尋ねる。

「…敵か味方か、そんなものは利害関係に過ぎないわ…」少女がクスクスと告げる。「そう考えるのなら、今は敵と思ってくれても結構よ」

「…だったら、アンタをこの場で倒す。それで間違いはなさそうね」ユリカが腰を落とし、構える。「美香、能力が解らないわ。後方から援護をお願い」

「うん、解った」

 ユリカが腰を落とし、静かに膝を曲げる。その直後、ほんの一瞬で少女へと間合いを詰め、鋭い膝蹴りを脇腹目掛けて打ち込む。が、当たる寸前で少女がユリカの目の前から姿を消す。

「―ッ!?」

「こっちよ」少女が数メートル横へと一瞬で移動したかの様に移動する。「せっかくだけど、もう“全員集まった”みたいね」

 少女がそう言って振り返ると、武彦と百合、そしてスノーとヘゲル、翔馬とスサノオが何もない場所に忽然と姿を現した。

「…な、何だここ…」武彦が周囲を見回して口を開いた。「どういうつもりだ!?」

「草間さんに、皆…?」

 思わず美香も呟く。そんな美香の横へとユリカが一度下がる。

「―よくやってくれた」カツカツと歩く声が聞こえ、一人の男がその場に姿を現した。「何人かはお逢いした事もある様ですね」

 現われたのは、中性的な顔立ちをした若い男。日本人ではないであろう、銀髪に碧眼。この全ての事件に美香が巻き込まれる発端となった廃工場での事件。そしてその後、IO2の使者として再び一度美香達の前に現われた男、シンが闇の中から現われた。

「お前は…――」

「―シン、さん?」

 事態を飲み込めていない中、武彦と美香が思わず声をあげる。

「お久しぶりですね」

 ニッコリと笑ったシンが、軽く会釈をした。

「どういうつもりだ! あとちょっとであのファングってヤツを…!」

「それはそうね。こっちもエヴァを追い詰めた所だったのに…」

 翔馬と百合が交互に口を開く。スノーは何も言わず、ヘゲルを握り締めて構えたまま、いつでも戦闘体勢に入れる様に腰を落としている。

「その様ですね。全てこの使い魔から話しは聞いてます」

 シンが少女の頭を撫でると、少女が笑みを浮かべる。

「シン、だったな。お前もIO2に所属していると言っていたが、“虚無の境界”と結託しているって事か?」

 武彦が睨み付けながらシンに向かって尋ねる。

「勘違いしないで頂きたいですね。私…いえ、我々は今回、貴方達の味方であると思って頂きたいのですがね」シンがにっこりと微笑む様に答える。「ただ、あそこで虚無の境界の主力とも呼べる人間を倒してしまったら、我々の思惑から外れてしまうのです」

「思惑…?」

 美香が確かめる様に呟くと、シンが再び静かに頷いた。

「IO2の上層部と虚無の境界は、我々の世界に干渉し過ぎました。その制裁を受けるべき人間を炙り出さなくてはいけません。彼らの“策略”がある程度進んでもらわない事には、IO2の上層部の首謀者が解りません」

「どういう事ですか…?」

「我々は魔族。魔神と呼ばれる、そこのユリカと同様に、異界の住人です」

「――ッ! やっぱりね…。さっきから不思議に思ってたのよ…、その匂い。私達の様に魂を召喚された存在とは違う、もっと濃い匂い…!」

「生きた時代が違いますが、同族ですからね。故郷の匂いに気付きましたか」

「何が何だか解らないわね…」百合が溜息混じりに呟いた。「ここに呼んだって事は、説明してもらえるのかしら?」

「えぇ、もちろん」



 ―戦闘に突然の終止符を打った、シン。そして、ユリカと同じ世界から来た“魔族”。裏に眠っていた様々な陰謀が、シンの口から語られようとしていた…―。





                                         to be countinued...


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ご依頼有難う御座います、白神 怜司です。

やっと黒狼の話しから出てきた“魔族”が繋がります…!
前々回全てバレたらどうしたものかと冷や冷やしましたが、
今回のお話から場面が変わっていきます…!

私が楽しんでどうするっていう話ですよねー←

お楽しみ頂ければ幸いです。

それはそうと、今回表記の間に改行を入れて、
戦闘シーンを読みやすくしようと思って入れてみました。

いかがでしょうか?

それでは、今後とも是非宜しくお願い致します。

白神 怜司