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<東京怪談ウェブゲーム ゴーストネットOFF>


雪で遊ぼう!

 SHIZUKUが街に降り積もった大雪を見て、「今日は雪で遊ぶの! これは決定よ!」との一言で、学園の広い校庭には大勢の知り合いが集まった。


 まずは遊びに使う雪を集める為に、みんなで雪かきを始める。降り積もった雪を、スコップを使って積み上げていく。高く積もっていく雪の山の上に、一人の女性が乗った。
「ふふふっ…。エントリーナンバー1番! 可愛いエルフの若奥様、あやこさんの登場よ〜!」
 派手なデザインの毛皮の服に、ミニスカートで美脚の素足を見せて、張り切ってビシッとポーズを決めて登場したのは藤田・あやこ。だが正面から飛んで来た雪が顔面を直撃し、雪の山から落ちる。
「きゃあああ〜!」
「ああ、ゴメンゴメン。雪かきに夢中になっていたんだよね」
 雫が苦笑しながら、落下したあやこの所へ行く。
 確かに雫はスコップを持っているが、周囲の人々は見ていた。あやこが登場した途端、顔をしかめた雫が大量の雪を掘って、あやこ目掛けて投げつけた瞬間を目撃してしまったのだ。
 ――が、情報通である雫の怒りを買うことを恐れ、黙って何事もなかったかのように雪かき作業を続ける。
「イタタ…。まっまあ大丈夫よ〜。私のようなエルフはホラ、太ももに羽を動かす力の源があるの。だから低速で空回り状態にさせると、そこから熱が生まれて体温があったかいのよ〜。人間も寒いと体が震えて、そこから熱が生まれてあたたかくなるのと同じ現象なの。だから冷たかったけど、寒くはないから平気よ〜」
 雪まみれになりながらも、あやこは太ももを雫に見せて微笑んだ。
 雫はソレを見て一瞬顔をしかめ、「チッ…」と舌打ちをしたものの、すぐに安堵したように笑みを浮かべて見せる。
「それなら良かった。でもまずは雪遊びで使う雪を集めるから、あやこちゃんも雪を掘ってね」
 スコップを押し付けられたあやこは、恐ろしげなオーラを出す雫に逆らえず、黙って首を縦に振った。
「よっよぉーしっ! バーゲン品に群がる人の山をかき分けて鍛えた主婦の腕を披露するわ! 雪かきは誰にも負けないわよ〜!」
 気合を入れて雪かきをはじめるあやこの姿を見て、雫は静かに呟く。
「お金持ちになっても、女性ってバーゲンには弱いんだね…」


 そして一通りの雪かきを終えると、あやこは元気よく挙手をする。
「みんな動いてたけど、体が寒いでしょ? ここはエルフの民謡を歌いながら、踊りましょう!」
「でもあやこさん、私、エルフの民謡も踊りも知らないのですが…」
 不安げなヒミコに向かって、あやこは大丈夫だと言うように自分の胸を叩いて見せた。
「ちゃんと教えてあげるわよ〜」
 まずはタライを用意してお湯を入れ、中に盃を浮かべる。その傍らで、歌いながら踊るのだ。
『丼鉢っちゃ浮いた浮いた♪ ステテコチャンチャン♪』
 戸惑いながらもヒミコは、あやこに教えられた通りに歌いながら踊る。
「そして最後にお湯を入れた盃を、一気に煽る! 寒い冬にはコレが一番よ〜」
「はっはあ…。そう、ですね…」
 確かに踊ったりお湯を飲んだおかげで体はあたたかくなったものの、イマイチ内容が理解できないヒミコだった。


「体があたたまったし、次は遊びましょうよ〜」
「それは良いけど、あやこちゃんは何かしたい遊びがあるの?」
 SHIZUKUに問いかけられ、あやこは眼を輝かせながら手を上げる。
「私は土竜雪合戦がしたいわ!」
「…何、それ?」
 嫌な予感しかしない――と言いたげなSHIZUKUに、あやこは説明した。
「まずはチームを作るの。そして雪を集めたあの山に、人が一人入れるぐらいの穴を掘るのよ。そこに入って、穴から顔を出す人に雪玉をぶつけるって遊びよ〜。制限時間以内に一人でも多くの敵に、雪玉をぶつけられた方が勝ち。つまり終わった時に、あまり雪をかぶっていない方のチームが勝利するのよ〜」
「はあ…、まあ良いけど。とりあえず雪の山には穴を掘らなきゃいけないのね?」
「ええ。それぞれ自分が入るぐらいの大きさで良いと思うわ〜」
 こうしてSHIZUKUが何人かの参加者を集め、二つのチームに分かれる。そして対面する二つの雪の山をそれぞれの領土として、自分が入れるぐらいの大きさの穴を掘り、雪玉も作った。
「準備は万端ね。みんな、上手く雪玉をよけられるかな〜?」
 穴に入ったあやこは、ワクワクしながら待機している。
 そして合戦を開始する合図の笛の音が聞こえたので、あやこは両手に雪玉を持ち、穴から上半身を出す。
「あやこ、いっきまー…痛いっ!」
 しかし穴から出た途端、集中して雪玉をぶつけられる。
 視界が雪で覆われている為にあやこは分からなかったが、ぶつけてくるのは若い女性ばかり。
「女の妬みって恐ろしい…」
 あやこと敵対するチームになったSHIZUKUだが、目の前の惨劇を見ては同情するしかない。
 ただでさえナイスなボディを持っているのに、派手な衣装を着て来たあやこは同性の妬みを買いやすかった。しかもあらゆる芸術方面に多才な上、一代で財を成している。こういった機会で狙われる理由は数多くあったのだ。
 やがて全身雪まみれになったあやこは、そのまま穴の中に倒れてしまう。
 その様子を見て、SHIZUKUは黙って両手を合わせた。


「つっ次は、スノーボード登り競争〜…」
 雪まみれで笑みを浮かべるあやこを見て、流石に雫、ヒミコ、SHIZUKUの三人は心配になる。
「だっ大丈夫?」
「あの、無理せず休んだ方が…」
「何か顔色、悪いわよ」
「大丈夫よ〜。それより今度はスノーボードに乗って、雪の山を登りましょう。滑り落ちたら、そこからやり直しよ〜。一番最初に頂上にたどり着いた人が、優勝ね」
 ガタガタと震えながらスノーボードを持って一生懸命に説明するので、仕方なく付き合うことにした。
「でもこのスノーボード、どうしたの?」
「まだ新しいみたいですね」
 雫とヒミコは新品同様のスノーボードを見て、首を傾げる。
「あやこちゃんが持ってきてくれたのよ。この遊びをやりたいからって」
 SHIZUKUが説明すると、雫は呆れ顔になり、ヒミコは苦笑した。
 派手な見た目や職業の割には、雪遊びを全力で楽しもうとしている子供みたいなところがおかしくもあり、また可愛くもあったからだ。
 高く積み上げた雪の山の下に、参加者達はスノーボードを持って集まる。
「他の人にぶつからないように気をつけてね〜。それじゃあよーい、ドンっ!」
 あやこの一声で、スノーボードに乗った参加者達は一斉に雪の山を登り始めた。


「ふう…、いっぱい遊んだわね〜」
「あやこちゃんって、結構体力あるんだね…」
 雪のカマクラの中で満足気なあやことは対照的に、三人はグッタリしている。SHIZUKUはかろうじて話せるものの、雫は蹲って俯いており、ヒミコも疲労を隠せない。
「みんな、元気ないわね〜。あっ、お腹空いた? ちょっと待ってて。良い物、持ってくるから〜」
 そう言ってあやこはカマクラを出て行く。しばらくして、大きなバッグを持って戻ってきた。
「お待たせ〜。カセットコンロを持ってきたの。お湯を沸かせるから、温かい飲み物と食べ物を作れるわよ〜」
「おおっ! ナイスよ、あやこちゃん!」
 SHIZUKU達の眼に、喜びの光が宿る。
 あやこはバッグからカセットコンロとやかん、そしてミネラルウォーターのペットボトルを取り出した。
「お茶とコーヒーがあるけれど、どっちが良い?」
「コーヒー!」
「SHIZUKUちゃんと同じく、コーヒーが良いな」
「私はお茶をお願いします」
「りょうかーい」
 あやこに淹れてもらった温かい飲み物を飲んで、三人はようやく一息つく。
「カップ麺も持ってきたのよ〜。みんな、どれが良い?」
 バッグから数種類のカップ麺を出して、三人の前に置いて見せる。
「あたしは醤油味!」
「あたしは味噌味が良いな」
「私はとんこつ味が良いです」
 ――そして数分後、四人は至福の表情でカップ麺をすすっていた。
「う〜ん、アツアツね〜。寒い冬はコレが一番!」
 あやこの言葉に同意するように、三人は黙って頷く。
 しかしふと、ヒミコが何かを思い出したように食べるのを中断する。
「…アレ? その言葉、さっき民謡を歌って踊った後も言ってませんでした?」
「あら、そうだっけ? まあ寒い時は温かい飲み物や食べ物がありがたいってことで、ね」
 茶目っ気たっぷりに微笑むあやこを見て、ヒミコも笑う。
「そうですね」


 こうしてみんな、雪を存分に楽しむことができたのであった。


<おしまい>


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【7061/藤田・あやこ/女性/24歳/ブティックモスカジ創業者会長、女性投資家】


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■         ライター通信          ■
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 はじめまして、ライターのhosimureです。
 このたびは依頼に参加していただき、ありがとうございました。
 おかげでSHIZUKU、雫、ヒミコ達は雪を充分に楽しむことができました。
 また機会がありましたら、お会いしましょう。