なつきたっ!SOS〜ドライブをしながら過ごす夏〜
その日、恋人は休みだった
折角のチャンスを逃さないように準備を進め、ドライブに出かける
二人だけの小さな冒険が始まろうとしていた
〜懐かしのあの場所へ〜
「風が気持ちいいでありやがるです」
助手席の窓から身を乗り出したシーヴは流れ去っていく風を身に受けて目を細めたです。
「あんまり身を乗り出していると危ないよ」
運転席にいるのは年上の恋人で、名前はライディ・王。
初恋の相手でいろいろあったですが、今は婚約までしてくれた大切な人です。
初めて座る助手席に戻り、シートベルトを締めると不思議な気分。
「この助手席、シーヴより先に座った人がいやがるんですよね‥‥ちぃとばかし悔しいです」
運転席に座り、ハンドルを握る彼の横顔を見ながらシーヴはモヤモヤした気分になりやがるです。
仕事でアイドルを送り出したりしているのはわかってやがるのですが、それはそれこれはこれ。
「あははは、でも仕事以外で乗ったのはシーヴが初めてだよ。それは保障する」
ライディが目を細めながら優しい言葉をかけて来るとシーヴの心はドキドキしやがるです。
こういうときにいい顔しやがるのはズルイです、ライディ。
「あ、例のお店が見えてきたね」
シーヴの気持ちを知らないライディはそのまま進行方向に視線を戻すと目的地である海の見える丘の目印でもある喫茶店を見つけたです。
一年前の二月にバレンタインのイベントが行われた場所であり、恋が実ってから訪れた場所‥‥。
「ここであのときの公開録音がされて、去年の九月にお月見した場所でやがるですね。昼間は初めてなんで、変った感じがするです」
思い出のある場所に再び訪ねれてシーヴは嬉しかったです。
満月を見ながら肩を抱き寄せてくれたライディの手の暖かさまで思い出せてくるってモン。
「着いたよ? 少し早いからお弁当食べる前にちょっとあるこうか?」
「あ、そうするです」
道幅に車を寄せて路上駐車をし終わったライディに声をかけられてシーヴはハッとして車を降りたです。
〜お弁当を食べよう〜
公園というほど出来上がっていない丘をシーヴはライディと一緒に歩いたです。
手にはしっかり早起きして作ったお弁当のバスケットを握り締めて‥‥。
「ライディはこの場所から中国の方をみていたですね?」
「うん、そうだよ‥‥ラジオをはじめる前にとにかくここまで逃げてきた感じで‥‥。
何をやっていいか何もわからなくってさ。ここに来て風を浴びながら中国の方を何となく眺めていたんだ」
寄り添いながらも手をつないで歩くライディの顔は寂しそうだったです。
「ライディはあんまり自分のこと話さねぇですから、シーヴはよくわかんないです。折角恋人や‥‥婚約もしたんですから、もっといろいろドンとこいです」
寂しい顔のライディを見ているのはシーヴをつれぇですから、手をぎゅっと握って元気づけたです。
握るシーヴの手にはエイジア学園都市の出店で買った指輪と今年の六月にライディからプレゼントされたダイヤの指輪。
大切な思い出もありやがるですが、昔をもっと知りたいです。
「少しずつ、機会を見つけて話していくよ。約束する」
ぎゅっと握った手をライディもぎゅっと握ってくれました。
「ここ、丁度よさそうです」
結構歩いたところに一本だけ木が立ってやっがったんで、木陰にシートを敷いてお昼にしようとシーヴは思ったです。
バスケットの中から畳んでおいたビニールシートを敷いているとライディはじっと木を見ながら立ち止まってやがったです。
「どうしたです?」
「これね、昔俺がここに着たとき彫った奴なんだ。あるラジオを聴いて元気を貰ったその日にね‥‥そっか、この木だったんだ‥‥」
シーヴがライディの傍までくるとライディは木の幹を指差していたです。
そこには『希望をありがとう、俺も人々に希望を与える存在になりたい』と英語で彫られてたです。
「ライディの決意表明でありやがるですね。ライディのことまた一つ知れたです」
「じゃあ、お昼にしようか‥‥いろいろおかず作ってきたんだね」
ライディの原点をまた一つ知ってシーヴは嬉しくなりました。
「おにぎりはちゃんと梅干はねぇですよ。不恰好なのはこれから練習してなんとかするです」
ライディが嫌いな梅干を覗いたおにぎり、ライディが好きなたこさんウィンナー、玉子焼き、ポテトサラダ。
そして、シーヴがライディに教えてもらって唯一しっかりできる料理の餃子です。
シーヴ自身も朝起きてこれだけ作れたことにびっくりしてるですが、きっとライディのためと思ったからですね。
「全部おいしそうだよ。見た目じゃなくて、なんか雰囲気というか‥‥シーヴの気持ちが伝わってくるというのかな‥‥」
コメントが上手くいえないけど、頬をぽりぽりと掻いている姿を見て照れているのがわかってホッとしたです。
「どうぞ、遠慮なく食べるです。ライディは忙しく働いてるンで栄養つけなきゃダメです」
シーヴが勧めるとライディは遠慮なくおにぎりや餃子に手をつけておいしそうに食べてくれました。
これが幸せってヤツなんだとシーヴは感じたです。
「あ、ライディお残ししてやがるです」
ライディの口元に残っているご飯粒を取ってシーヴはパクりと食べたです。
こうしていると母様みたいな気分になりやがるですね‥‥。
「あ、えーっとシーヴ‥‥今日はちょっと大胆?」
シーヴがそんなことを考えているとライディの方は目を丸くして驚いたようにシーヴを見ていたです。
何か変なことをしやがったですか?
ただ、口元についていたご飯粒を食べただけです‥‥。
口元についた‥‥食べた‥‥。
「う、ライディの馬鹿ですっ!」
無意識で行った行動に気づいたシーヴは恥ずかしさのあまりにライディを叩いてしまったです。
ごめんなさい‥‥。
〜食後に一息〜
昼食も済ませ、風も涼しいのでしばらく景色を満喫することにしたです。
「ライディを膝枕するです?」
「え、いいの? ちょっと夢だったりしたから嬉しいな」
作戦成功。
背丈の高いライディの頭をシーヴが撫でようとすると大変でやがるのです。
こうすれば頭を撫でれるので決意してよかったです。
「思い出の場所でのんびり出来てよかったです。二人っきりで外にでるのも久しぶりでやがるです」
ライディは芸能界の仕事、シーヴは傭兵として活動しているから時間が合わないのは仕方ないですね。
仕事には参加して少しでも一緒の時間を多く作ってみているですが、それはそれこれはこれ。
「去年みたいにお月見はちょっと厳しいかな‥‥やりたいけれどね」
景色を見ながら涼しい風を受けているとライディがポツポツと話し出したです。
「これも新婚旅行で世界を回るためへの布石と考えるしかないかな?」
「仕事も大事ですが、無理して倒れたらシーヴ泣くですよ」
ダイヤモンドの指輪も給料三ヵ月分と聞いて、シーヴの稼ぎより少ないのが身に染みたです。
頑張り屋のライディだから、苦労も人一倍すると思うですが、心配になるです。
「シーヴを泣かせたら”お義兄さん”に殺されそうだよ」
ライディは苦笑しながらいうですが、大兄様が怒ったら本当に怖いですからあながちハズレとはいえねぇですね。
「ねぇ、シーヴ‥‥これからもよろしくね? あんまり恋人になってからこうした時間作れなくて申し訳ないんだけど」
「何をいうですか、シーヴこそライディに手間とかかけてねぇか心配なくらいです」
「好きだよ‥‥」
膝枕の上で景色をみていたライディがシーヴを見上げて微笑んでくれたです。
優しくて暖かくてその笑顔だけでもシーヴは元気になれるです。
「シーヴも好き‥‥で‥‥」
けど、シーヴが答えようとしたとき、ライディは目を閉じて寝ていたです。
もうちょっと、雰囲気考えて欲しいですが疲れてやがるから仕方なし。
「気持ちよさそうに寝てやがるですね‥‥えっと‥‥ちゅっ」
憎らしく思いながらも、可愛い寝顔をしているライディにシーヴはキスしたです。
初キスの場所で初キスとは違う関係になったキスは味が変わった気がしたです。
「う‥‥シーヴ、何をやっているですかね‥‥恥ずかしいです」
またもや無意識に大胆なことをした自分が恥ずかしくなりやがったんでしばらくそのまま照れていたです。
「今日は本当にありがとうです‥‥ライディ」
不意打ちのキスをされながらも寝ているライディの頭をシーヴは起きるまで撫で続けたです。
この夏の大切な思い出できました
━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・
登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛
【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / クラス 】
ga5638 / シーヴ・フェルセン/ 女 / 18 / ファイター】
ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛
発注ありがとうございました。
いつもお世話になっています、橘真斗です。
このたびは普段かけないシーヴさんの視点で執筆をしてみました。
フルでシーヴさんをやろうとすると中々口調が難しいでやがるです。
感情の変化をオープンにするためこのような感じとなりましたがいかがでしたでしょうか?
CTSのPCさんを相手にこの様な物をかけたことを嬉しく思います。
それでは、またの機会がありましたら宜しくお願いします。
橘真斗
|