なつきたっ!〜黒一点の夏休み〜
日差しの高い夏の日に女だらけの園に男が一人
羨ましいという光景かもしれないが
実はそうでもない
アバンチュールとは程遠い一日が始まった
〜ノリと勢いで〜
「『どっきどき☆女だらけの夏休みだよ!? SG隊合同訓練改め!! 女だらけの水着一本勝負! (ぽろりもあるかも!?)』なんだよな?」
「そうよ、一語一句略すつもりはないわ」
「略すとかどうかじゃなくて、何で俺も呼ばれてサーシャのオイルを塗らなきゃならないんだよ‥‥」
浜辺のパラソルの下、無防備に寝転ぶSG隊隊長であり今回の企画の主犯‥‥もとい発端者のサーシャ・バレンシアは問いに答える。
オイルを塗っているのはサーシャよりも年下の少年、山戸沖那だ。
もちろん、男であり企画の趣旨から外れていると感じるのも当然だろう。
「荷物持ちやらなんやらは必要でしょ? 一緒に連れてきてもらってボクの体を触れるんだから感謝して欲しいよ」
「触られるって!? ばっ、ばかっ、そんなこというなよ。意識するだろうが」
オイルを塗っていることを意識にしないようにしていたのか、あえて意識させるようなことをサーシャがいうと沖那は急に顔を赤くして俯きだした。
「ふふふ、相変わらず可愛いところあるわね‥‥ちょっと、クレアー。ナンパしてくる男の人を張り倒しちゃだめよ」
沖那をからかって満足げにしていたサーシャは視線の先でエミリア・リーベルからダイバースーツをはがされるクレア・アディに注意をする。
「クレア‥‥はじめの合同訓練を真に受けていたんだな。あ、でもビキニ着ているんだ」
ダイバースーツのしたに隠されていたビキニ姿のクレアをじーっと沖那はみていた。
「沖那、全身塗るまでは余所見しちゃだめだよ」
沖那を後ろに見ながら命令を出すサーシャは胸に不安のようなもどかしさを抱いている。
それが『嫉妬』と呼ばれる感情だと気づくのはまた後の話だった。
〜バーベキュータイム?〜
「荷物が重いと思ったら、殆ど飯かよ‥‥」
沖那は荷物の中から肉や野菜をだしながらはぁと息をつく。
「おきなー、あっちで遊ばない?」
「いや待て‥‥これから昼の準備があるからさ‥‥」
スクール水着で胸元に『えみりあ』とゼッケンのようなものをつけたエミリアに腕を引っ張られた沖那は汗をたらした。
包丁をもっていなかったのが幸いだが、エミリアの無邪気な笑顔をみていると危険な予感がする。
「ん〜、じゃあエミリアも手伝うよ〜♪」
「手伝ってもらえるのは嬉しいけどよ‥‥さすがにそのロングソードはやめてくれ、まな板さら真っ二つになる」
笑顔で取り出したロングソードを沖那はエミリアに下げさせた。
浮世離れした生活をしていたらしいエミリアの行動は時に微笑ましいが、恐ろしいときの方が多い。
「火の用意はできたが、焼くものの用意は終わったか? まったく、先ほども私に声をかけてきた男がいたが身の程を師って欲しいものだ」
バーベキュー台の用意をしていたクレアが首を鳴らし腕を回しながら沖那の方へ近づく。
その後ろで伸びている男の山を見る限り何かしらあったことは明らかだ。
「あいつら死んでいないよな?」
「サーシャから注意されているからな、エミリアによってきたヤツもついでに締めて置いた。案ずるなスピニングトーホールドで固めただけだ」
沖那からの問いかけにクレアはさらりと答える。
なお、スピニングトーホールドとは仰向けに寝ている相手の片足のひざ裏部分に対面にある自分の足を差込んで相手の足を地面と水平に折りたたみ、両手で相手の足首とつま先をつかんでそこからテコの要領で膝と足首を極めるという足関節技の一種だ。
つまりは足払いで仰向けに倒した後に追い討ちを仕掛けたことになる。
沈んでいる男達は皆、その痛い関節技をしかけられたのだが、何故だろうか顔がとてもいい笑顔だった。
「加減してあれなのか‥‥恐ろしいヤツだな。食材はすぐきる」
沖那が急いで包丁を使い食材を刻む。
「中々だな、肉は私に任せろ、これでも軍隊出身でサバイバルには慣れている」
(「バーベキューはサバイバルとは違うんだけどな‥‥」)
沖那は内心そう思いながらも口には出さずに作業に戻った。
「つまらないの〜」
「きったのをそっちで用意されている網の上においていけ、そうすれば焼ける」
半端にされたエミリアが頬を膨らませているとクレアがすぐさま指示をだす。
「はーい♪ えいえい」
自分でもやれることがあるといわれたエミリアは嬉しそうにクレアの言葉に従って切られた野菜や肉を焼き始めた。
仲のいい二人であり、髪の色さえ同じであれば姉妹に見えるかもしれない。
サーシャの遂行しているSG計画で集まった二人らしいが、沖那は一人だけその縁と関係のない存在だった。
「なんか、やっぱり俺一人だけ浮いているんじゃないか?」
思わずそんな言葉を口にしているとサーシャが焼き始めた野菜や肉の匂いに吊られて姿を見せる。
「順調そうね。料理もできる男の子がいると楽できていいわ」
「‥‥お嬢のところにいればこうなるよ‥‥おかげで今も一人暮らしで困ってないから楽なんだけどな」
聞かれたかと思って沖那は一瞬警戒するも、サーシャは微笑を浮かべて眼鏡を治した。
「ねぇ、沖那‥‥」
「なんだよ」
「出来上がったら隣で食べてもいいかな?」
「‥‥好きにすればいいだろ? 止めるやつはいないんだからさ」
沖那にだけ聞こえるような声でサーシャが少し見上げながらささやかなお願いをすると、沖那も同じように小さな声で答える。
少しだけ頬を赤くしながら、沖那の答えを貰ったサーシャは嬉しそうに微笑むのだった。
〜日は沈み‥‥夜が来る〜
「あっという間だったな‥‥」
沖那は昼食の後にビーチバレーやエミリアの希望で砂でお城を作ったりと浜辺の遊びに引っ張りまわされていた。
そして、朝のときのようにパラソルの下にいるサーシャの元に戻っている。
「そうだね、いろいろあったけど息抜きになったんじゃないかな?」
「サーシャ自身はこのノリと勢いの企画をやって気晴らしになったのか?」
年下ではあるが自分よりも背が高く、どこかたくましくも見える少年の視線がサーシャの心を熱くした。
周りにいるのが気心しれた仲間であるとしても、この心のままにサーシャは動けないでいる。
本当の旅行の目的が沖那との距離を少しつめた付き合いをしようとしたものなのは秘密だった。
「どうした? 熱中症にでもなったか?」
気づけば黙って考えをめぐらせていたサーシャの顔を沖那が覗き込んでいる。
息が届き、顔を少し伸ばせば唇を奪えそうなほどに近かった。
「何でもないから離れなさいよ。ほ、ほら夕日が見えるわ」
このままキスをしたいという衝動を抑えてサーシャは沖那を押しのけ水平線に沈もうとしている夕日を指差す。
沈みゆく太陽は眩しい光りから暖かい赤に変わっていき美しかった。
「ボク達はこれからどうなるんだろうね? またこうして皆そろって太陽は見えるのかな?」
沖那に聞いてもどうしようもないことなのだが、去年まで共に戦った親友と今は一緒にいられないこともあって不安がサーシャを襲っている。
「見るためにも、頭がしっかりしてくれないと困るぜ? できる限りの協力はしていくけどさ」
不安を察してか沖那がサーシャの頭を撫でながら答える。
「そうだね、ボクが皆をひっぱらなきゃ‥‥けど、勝手にボクの頭を撫でるとは改造される覚悟できているということだね?」
素直に頷いたが、すぐにサーシャは眼鏡を光らせ、形容しがたい笑みを浮かべた。
手にはどこに隠していたのかドリルとスパナが握られている。
「ちょっと、勘弁してくれっ!」
「逃がさないわよ、丁度試してみたいアイディアが浮かんだんだからね」
沖那は身の危険を感じて思わず逃げだすも、その後ろをサーシャは全力で追いかけていくのだった。
〜夕日を眺めて思い一片(ひとひら)〜
(「兵士として戦う以外考えず生きてきたのに恋人も仲間もすべてを失い、すべてをぬぐいきれていないのにまた戦場で戦っているか‥‥」)
沖那とサーシャが追いかけっこをしているとき、夕日を眺めていたクレアは一人思いをめぐらせる。
能力者になった経緯もこの部隊に参加した経緯も流されてばかりだったような気もする。
(「私自身で決めた道というのは本当にないのか‥‥これから見つけなければならないのか、なんともいえないな」)
本当に道を選んだということがあるのかとクレアは自分に問いただしてみるが、答えは見つからなかった。
「クレアー、皆帰るみたいだよ〜」
「ああ、そうか‥‥すまないな。夕日を見て少し考え事をしていたんだ」
エミリアに腕を引っ張られていることにようやく気づいたクレアは意識を戻して謝る。
「考え事? エミリアもね。『姉が帰ってくるまで優しさを忘れず空を守る約束』を夕日に誓っていたよ」
「そうか、誓いを立てるのはいいことだな‥‥」
笑顔で答えるエミリアの頭をクレアは撫でて純粋な力の強さを感じていた。
夏の海で三人の女子がそれぞれの思いを抱く。
その思いの先にある道を彼女達はしっかりと見つけていた‥‥。
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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業 】
ga6139 /サーシャ・ヴァレンシア/ 女 / 20 / サイエンティスト
gb6122 /クレア・アディ / 女 / 22 / スナイパー
ga7258 /エミリア・リーベル / 女 / 20 / エクセレンター
ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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どうもお世話になっています橘真斗です。
このたびは発注ありがとうございました。
3人での楽しい(?)海での思い出作りと共に、これからについての展望を少し書いてみましたがいかがでしょうか?
NPCでの活動もちょっと停滞気味で申し訳ないです。
これからも何かしらのイベント類でお世話になれたら幸いです。
それでは運命の交錯するときまで御機嫌よう。
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