■IGNITED.【ゼカリア強奪阻止】■
商品名 アクスディアEX・デビルズネットワーク クリエーター名 UNKNOWN
オープニング
今回の依頼は、現在デモンズゲートを通過中の輸送列車、及び目標に搭載されている積荷の護衛です。

目標の積荷はゼカリア、及びイレーザーナイツ仕様殲騎。
それぞれ2つずつが異なるコンテナに搭載されています。
詳細なスペックは後述しますが、ゼカリアは特務軍がとあるエースパイロットの為に仕様変更を施した貴重な機体です。失うわけにはいきません。

列車の敵勢力圏への突入まであと17分。
ここから出動したとして、7分で列車に、11分で敵勢力圏に到着します。
列車の到着までに、可能な限り敵勢力の撃破を。また、通過中の敵攻撃からの防御もお願いします。

尚、今回護衛する必要があるのは積荷だけではありません。
源運輸の協力によって受領した輸送列車ですが、今後もルートを変えて物資輸送に使用されます。
列車の破壊、及び運行に支障をきたす損害が起きた場合も失敗となります。

時間がありません。今回はブリーフィングを排し、資料の配布のみとさせていただきます。
シナリオ傾向 戦闘・奪取阻止【殲騎使用可】
参加PC ヒシウ・ツィクス
月村・心
天剣・神紅鵺
百地・悠季
刹那・アイオーン
東雲・風伯
IGNITED.【ゼカリア強奪阻止】
IGNITED.【ゼカリア強奪阻止】
───暗部

「入ってくるべきじゃなかったんだよ、坊主」
殴られた。そう気づいた時には、月村・心(w3d123maoh)と逢魔ノルン(w3d123ouma)はコンテナの冷たい感触に身を横たえていた。
「言うなれば今回の“ハズレ”か?正義感があるのは良いが、残念だったな。手ぇ出すモンにはちゃんと気をつけねぇと」
野太い男の声。揶揄するような気配も無く、ただ真実を述べている感じだ。
「何………」
「まぁ、殺しゃしねぇ。事が終わるまで眠っててくれよ」
「待て、何が………」
「………皆嘘八百って事さ」
月村達が入ってきたコンテナの開閉口が、音を立てて閉まる。
内部を白々と照らすコンソールには、4機の、完全に機動可能なコンディションを示す緑色のマークが幾つも照っていた。
「ゼカリア、殲騎………!!」
「おい、誰かこの二人を保護しておいてくれ。下手に外部に知られるのは、不味い」
「分かりました。………失礼します」
その尻尾が、インプの物であると分かったのは
二人ともが半ばほど眠りに落ちてからの事だった。


───【目】

「此方八条………【ウォッチャー】、対象の様子は」
八条が手元の無線機を通し、上空に意識を向ける。
特に意味は無い。しかしその対象が“其処に居る”事が、その行動の理由になっていた。
【ウォッチャー】と呼ばれる物………高々空偵察仕様のイレーザーナイツ仕様殲騎を駆る物は、其処に居る。
「動きを見るに楽な手合いだ。………あまり手馴れは送り込んでこなかったらしい」
「数は?」
「此方に直接向かってくるのは一機、後は列車の護りだ」
「………成る程。楽な手合いと言う訳か」
柊機は既に砲撃位置を整えている。
先行する機体が一機ならば、むしろ張り巡らした罠は贅沢過ぎた。
「………現在1352時において、契約は完遂。私は当該戦域を離脱する」
「了解した。感謝する、【ウォッチャー】」
最後まで姿を見せなかった協力者を心中で見送りつつ。
八条は、敵影の到着を待つ───



───点火

(この依頼、どうにも腑に落ちない点が…。個人的に少し疑っているメンバーも、同行者として居る事だしな)
魔皇や逢魔の事を3年前から調べていたヒシウ・ツィクス(w3b715maoh)
彼にとって、この依頼は納得のできる物ではない。
「ともかく、今はコイツで飛ばして、相手の迎え撃つ体勢を整えさせない…!」
しかし、納得のできる考察を組む暇も無い。真テラーウイングを以て敵勢力圏に向かうが、残り時間は6分………
見えた。かつては大きかったであろう半壊した駅舎の影に、バスターライフルを構えた殲騎らしき機影が過ぎる。レールからは遠い位置だ。
と、突如吹き上がった黒煙に視界がブラックアウトした。
「煙幕か………時間が惜しい!」
構わず、【真旋風弾<スケイルシュート>】を撃ち出すヒシウ。
乾いた衝撃音が幾つか生じ、黒々とした煙幕の中からも手ごたえが感じられた。
しかも敵機は自分が張った煙幕の所為で気づいていないのか、日を受けた機体が残す影が、くっきりとその姿と位置を示している。
「………」
否、敵の強さが情報通りなら、そんなヘマはしないだろう。
時間の限界さえなければ、強行を避けるべき相手だ。
積極的に仕掛ける手を止め、煙幕から脱して柊機を狙う。
居た───線路の上、列車に対して真正面に立っている為、煙幕から現れた此方の動きには気づいていない。
【真狙撃弾<スナイピングシュート>】を放つべく、ヒシウは殲騎の右腕を掲げ、
「これは………!?」
突如、その挙動が停止した。
途中まで上がった腕の隙間から、何やら黒い物が付着しているのが見える。
「タール!?煙幕の成ぶ───」
刹那、横殴りの閃光がヒシウの意識を闇へと落としていった。

殲騎は外骨格を魔力によって動かす構造をしている。
よって、内部破壊等はあまり意味を成さない。
しかし、逆に言えば箱型構造をしている殲騎という機構は
“隙間に物が詰まる”と、途端にその構造的欠陥を暴露してしまう。
ヒシウの機体を止めたのは、煙幕のとなって機体を取り巻いた高粘度のタール系炭素質。
この場合、殲騎が通常の金属のように駆動熱量を帯びないことがネックとなった。
一度安定してしまえばカーボン以上の高度を誇るその炭素組織は、液化して殲騎の各間接部に進入、外装同士を接着し、更に行動を阻害したのだ。

そして、残された時間は瞬く間に過ぎていった。



───口火

東雲・風伯(w3k525maoh)は嘆いていた。
何って、敵が居ないのだ。
上空からの攻撃に耐えられるよう4両目の屋根に乗ったはいいが、通過していくのは寒風のみ。鳩一匹として近づくものは無い。
「何故だ」
何故ってアンタ。敵は殲騎ですから。待ち伏せですから。
もっとも、逢魔の朝霧(w3k525ouma)は、そう暇でも無かった。
「何でボクばっかりぃぃぃぃぃぃっ!!!!」
ドカドカと手にした銃を撃ちまくる、対象は、地雷。
地雷と言っても八条が仕掛けたのはただの地雷ではなく、列車の挙動に反応して爆弾を投擲するタイプの簡単な仕掛け爆弾である。
簡単なレーザー測計儀とバネ仕掛けがあれば作れるような代物だ。
もっとも、機構が単純であればあるほど発見も難しい。
探知できない以上、巧妙にカモフラージュされた地面から打ち出される爆弾を、次々に撃ち落していかなければならないのだ。
右と思ったら左、左と思ったら右。しかも設置した者の底意地の悪さが2重3重の弾幕となって襲い掛かる。
「御師様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
彼は相変わらず屋根の上で陣取っている。勿論、トラップさえも襲い掛かるものは無い。
しかし、このトラップもしばらくして止んだ。
次いで現れたのは、純白の砲身だったが………



───燃焼

砲身から閃光が溢れる。
今にも列車の機関部を貫こうとする真バスターライフルの光芒。
百地・悠季(w3e396maoh)とその逢魔ヘラルディア(w3e396ouma)の駆る殲騎が真ディフレクトウォールを展開していなければ、たちまちの内に列車は動きを止めていただろう。
彼女らが防衛のウエイトを列車の方に定めていたのが功を奏した。
その影を乗り越えるようにして、刹那・アイオーン(w3j720maoh)とその逢魔ヱルンスト(w3j720ouma)の駆る殲騎が今し方真バスターライフルを放ったばかりの柊機に迫る。
「ハッ、数ぐらいは揃えて来いよやぁっ!!」
「っ!!」
刹那の放った真クロムブレイドの斬戟をすり抜けるように、砲身が刹那機の顎を捉える。右肘に装備するタイプの形式を取った事が、逆にリーチの差を生んで死角になった。
直後にヱルンストが【氷の壁】を張っていなければ、次いで放たれた【真撃破弾<ブレイクシュート>】が二人ごと列車を襲っていただろう。
伊達に戦場を越えていないという事か、柊機は魔皇核による攻撃手段をほとんど喪失したにも関わらず一切退く気配を見せない。
そして、その機体は、レールの上に位置したまま………
「そうそう、襲撃が成功できると思う訳!」
「悠季様、取り付かれる前に」
百地が真魔力弾を放ち、柊機が列車に取り付くのを防ぐ。
しかし、僅かに遅かった。
真ディフレクトウォールを乗り越えて魔力の弾丸が柊機を打ち据える直前。
その砲身は、確かに外装を貫いて列車の機関部を抉っている。
「えーい、うっとおしいわね。だから、魔皇も逢魔も天使も嫌いなのよ!」
「このっ!!これ以上やらせないよっ!!」
百地、刹那両名の機体が柊機を狙う。
「ほざくなぁっ!!」
真ディフレクトウォールで薙ぎ払い、先頭車両の上に陣取る柊機。
更に百地が真ワイズマンクロックを、刹那が真クロムブレイドを用い、柊機に攻勢を掛ける。
しかしその時、ヒシウを撃った“1発目”の真バスターライフルは、既に充填を終えていた───



───裏切り合うも多性の怨

「逢魔の調子が悪いとは、良く言ったものだねアマツルギ君」
「………貴様」
列車が行動を停止した直後。
想定とは違うが“予定通り”行動を開始しようとした天剣・神紅鵺(w3d788maoh)の機体が、突如羽交い絞めにされた。
いつの間に現れたのだろうか………黒い殲騎は、天剣機をしっかり抱えて離さない。
「何、誰だと問いたいのならお答えしよう。仲間からは【天啓博士(ドクトル・イルミナトゥス)】と呼ばれている」
「邪魔だ。殺されたいのか」
「はっはっは………それは2重の意味でNOだ」
羽交い絞めの状態から指を2本開いてみせる黒い殲騎。
「一つは、私がまだ余生を求めているという事。もう一つは、君に私は殺せないという事だ」
あっさりと答えてみせた【天啓博士】が、今度は天剣機を抱えたまま殲騎を飛行させる。
「裏切り者の制圧………私が受けた依頼は、其れだけでね」
「何………ぐっっっっっっ!!!!」
抱えられた状態での【真衝雷撃<バッドライトニング>】を受け、天剣は機体と共に力を失っていく。
薄れ行く意識の中、目に映った物は………
「まぁ、後は“彼ら”に任せておきたまえ………卑しくも騎士仕様機と専用機だ。前大戦の残り滓等に負けんよ」
コンテナが開いていく。
中から姿を現したのは、異常な数のエネルギーチューブを繋いだゼカリアが2機。
そして、滅殺騎士団(イレーザーナイツ)仕様殲騎。
全ての機体の、その右肩には【禁衛機師団】の旗印───赤い剣と、鋼の腕が刻まれている。
「………何……だと…」
「まだ分からんかね?君達の真実の任務は“輸送”ではなく“護衛”………彼らと、彼らの殲騎、そしてゼカリアが“護られている”と思わせる為の策、あれらは………」
言わば“獲物”の皮を被った“狩人”なのだよ。と
天剣は崩れ落ちる意識の中で微かにそれを聞いていた。

そして起こる砲声は、依頼を受けた魔皇達の誰の耳にも届かなかった。




───焼滅

「馬鹿な、コレは………!!」
自慢の罠が次々に焼き破られていく。
圧倒的な力の差が目の前に迫っている。
柊機はとうにその残骸を魔の炎の上に曝していた。
増援を呼んだはいいが、その増援すら次々に損傷を受け、撃破されていく。
「コレだけの、力……くっ!!」
一歩後退した脚が、ゼカリアの放ったDF付与済みの自己鍛造弾によって砕かれる。
防御に構えた腕が、肩が、次々に砲火によって打ち砕かれていく。
それは紛れも無い、殲騎の人類兵器からの敗走。
イレーザーナイツ仕様殲騎も元を正せば人間のテクノロジー。
「…………人間………こうも恐ろし───」
砕かれる。消えていく。壊れていく。

それは紛れも無く、敗北であった。


───排気

「先ずは本件についてお詫びをしなければなりませんね」
サーチャーが告げる。それはつまり、隠された事についてだ。
「輸送対象であったゼカリア、イレーザーナイツ仕様殲騎は、確かに稼動可能な状態でした。
 しかし、これは通敵行為による作戦の失敗を恐れての秘匿です。魔皇様方を騙そうとした訳ではありません。
 もし裏切りの様子も無く、通常通り運行して敵陣を突破できていれば、こんな事にはならなかったのですが………
 次回からは、我々の情報以外にも十分注意してください。敵は、テロリストだけではないようです」
一枚のフィルムが白い幕に映される。
其処に映っていたのは、長大なライフルにも似たレンズを持った、イレーザーナイツ仕様殲騎。
「今回の作戦によって存在が確認された機体です。
 兵力派遣会社『魔女の窯』の諜報担当との事です………が、何の所以かこの機体はテロリストの味方になるような依頼ばかりを請け負っているようなのです。
 以前発生した地下侵攻への迎撃の際も、この機体によって味方の行動が露呈していた可能性があります」
プロジェクタの光が落ちる。暗闇の中で、サーチャーの声だけが響いた。

「何を信じるのか。それは魔皇様方にお任せします。………少なくとも我々は、今の世界の為に、戦っていると信じていますが」