新東京・デモンズゲート某所にあったテロリスト魔皇のアジトを、GDHP警備部警備第1課の特殊急襲部隊が急襲したのは4月のある夜のことだった。
「GDHPだ! テロリスト諸君、神妙に投降したまえ!!」
「リーダー! 逃げてください!! ここは俺たちが……!!」
アジト周辺はたちまち戦いの場と化した。銃弾はもちろん、魔皇殻による攻撃、果てはダークフォースやらシャイニングフォース(当たり前だが、これはグレゴールのGDHP隊員が使用した物だ)まで飛び交う始末。
だが数で勝っていたGDHP側がやがてテロリスト魔皇たちを制圧する。これにて一件落着かに思えたけれども――。
「リーダーが居ないぞ!!」
そう、このアジトに居たテロリスト魔皇たちを統率していたリーダーの姿がどこにもなかったのである。
「遠くまで逃げる暇はなかったはずよ! まだこの近くに居るはずだわ! ここから逃げるならあそこしか……!」
と言って駆け出したのは、魔機装鎧エステルに身を包む”ソードダンサー”なる二つ名を持つ少女――内海綺羅であった。
実はこのアジトの近くには、まるで迷宮のようになったエリアが存在しているのである。道幅は1人が通れる程度、やたらと入り組んでいて、崩れた壁や建物などで行く手が遮られていたり、時には道に穴が空いていたりもする。そんなエリアだ。
そこへ逃げ込まれたら、早いうちに捕まえないことにはそのまま逃亡を許すことになってしまうだろう。何としてもリーダーの身柄を確保し、逃亡を阻止せねばならない。
「くそっ! 僕はまだ捕まる訳にはいかない……!」
リーダーと呼ばれていた黒髪の青年は、今まさに件の迷宮たるエリアへ足を踏み入れようとしていた――。
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