■強敵包囲■
商品名 アクスディアEX・デビルズネットワーク クリエーター名 緋翊
オープニング


「そう言えば、クレスイング……お前の旧友、パトモス議員をやっていたんだっけか?」
「……」


 また始まった―――

 そんな暗鬱たる思いに捕らわれながら、気乗りしない声で返答する。
「ライル、だったか。随分と頑張ってるみてぇじゃねぇか?」
「……それが、何か」
「いやな、指揮官殿が気に入らないって洩らしてたぜ」
「そうですか」
「どうする?ライル議員を消せ、なんて事態になったら」
「………」
 問うて来る声。


 内心でぎくりとしながら、彼は機体を動かす。
「ま、それが気に入ら無ぇなら出撃しないなり、反旗を翻すなりすれば良いさ。後で菓子折でも持って謝れば組織も許してくれるだろ」
「……そのような組織は、聞いた事がありません」
「そうかい?俺ぁ別に、そんなもんで良いと思うがね……尤も、俺は菓子折を買う機会は与えてやらんが」
「ええ……貴方を敵に回して、後日生きて謝罪に行けるとは思えない」
「は」

 会話に飽きたのか、「彼」は機体を大きく後ろへ跳躍させた。
「……話題も止まっちまったか。それで―――」

 ゆっくりと。
 クレスイング・サウスマンの前で、彼の上官は背後を向いた。
「兄ちゃん、無事かい?」
「あ、ああ………」
 その、のんびりとした問いに答える声。
 見れば後ろに、立ち尽くす殲機が一機居た。
「お仲間か、それとも北からの来訪者か……ま、深くは問うまいよ」
「貴方達は……」
「『絶勝を望む翼』。平たく言えば――」
「き、貴様等!テロリストが何故日本国の兵を庇う!?」

 会話していたところに、目前のゼカリアから響く声。

「……とまぁ、そんな者だ。やっぱりお前さんは北の者か」
「……」
「無視しても良かったんだが、弱い者虐めが嫌ぇでな」
 言って、「彼」は目の前のパトモス軍を睥睨した。
 数にして十数のゼカリア。圧倒的に不利だ。
「さて。それじゃクレスイング、此処は引き受けたぜ」
「な……それはいけない、少将殿」
「最近な、“ですくわーく”で鬱屈してたんだよ」
 不貞腐れたように、「彼」の機体がこちらを振り向く。
 ………こうなると手が付けられない。
「分かりました……ですが保険は置いていきます」
「応。悪ぃな」
「いえ……それでは、お気をつけて」

 そう告げ、緑の敵ゼカリアが場を離脱した。
「ま……待て!」
 慌てて叫ぶが、しかし誰も動かない。
 ………否。
 目の前の脅威を目にして、動けないのだ。


 

 彼等ゼカリアの前には、殲機の他に二つの脅威。

 ――――二匹の竜が鎮座していた。


「馬鹿な……」
「へへ、凄ぇだろ?」
 驚愕する自分達に、応える敵の殲機。
 ……先程逃走した緑のゼカリアが、何かを施したのか。
「クレスイングの機体のSFで手懐けたのよ。ま、安心しな、……手前等の相手は俺だけだ」
「何?」
 思わず耳を疑う。
 当然だ。神機傀儡にすら脅威である竜を目の前にして、その脇に居る何の変哲も無いディアブロのみが敵であると言われて、誰が信じよう。
「貴様、何者だ!?」
「ふ、俺か?―――人呼んで、和製ミヒャイル・ヴィッドマン」
「戯言を言うな!」
 かっとなり、思わず一歩踏み出してしまう先頭の一機。
 
 一秒後に、細切れに解体された。

「な……!?」
「ま、それくらい凄いってことよ」
 ざ、と。
 既に気を呑まれかかっている軍勢へと一歩踏み出す。
「『絶勝を望む翼』少将、早瀬・誠だ……死にたい奴から来い」
 己の所属と名を告げると同時、そのディアブロの姿が霞んだ。
 凄まじいまでの速度を以って、戦闘を開始する。
「す、凄い……過激派魔皇とは、これ程に」
「おい兄ちゃん!死なないよう、竜の後ろにでも隠れてな!」
「り、了解した!」
 その鬼神の如き戦い振りに圧倒されるように、追われていた殲機―――日本国所属のそれが、後退する。


 敵は混乱したままに、数の優位も敵わず狩られて行く。
 楽な任務であったはずなのに、どうして―――
「はっはぁ、足り無ぇな!俺を殺したければゼカリアの百や二百は持ってきやがれ!!」

 それは流石に死ぬでしょう、と突っ込む者も居ない。
 ただ、彼。
 早瀬・誠が定めた戦場には逃げ惑う悲鳴だけが跋扈している。

「つまらんな!骨のある奴は居ねぇのか、パトモスよぅ!!」
「くそっ……落ち着け、当座の敵はたったの一機だぞ!?訓練通りにやれば勝てる!」
 豪快に、犬歯を剥き出しにしながら戦う修羅は止まらない。
 ……数による優位性とは、現実において易々と無視できるファクタではない。御伽噺や神話に出てくる英雄の如き者など、存在し得る筈が無いのだ。
(それなのに、この状況はどういうことだ!?)
 このままであれば、全滅は時間の問題だと理解しながら。
 狩り出す立場であったはずのパトモス陸軍の面々は、必死の抵抗を試みていた―――

 
シナリオ傾向 シリアス、戦闘系
参加PC 錦織・長郎
ジザ・ヴィリアム
御堂・陣
天剣・神紅鵺
ライヒス・ハイデッカー
無常・刹鬼
強敵包囲







【1】



「……見えた。あれだね」
 ―――機体を急がせながら、戦火を見詰め。
 応援に駆けつけた殲機の先頭、錦織・長郎が呟いた。
「僕はゼカリア部隊の建て直しに行かせて頂くよ…」
 何気ない雑談のように、気軽にちら、と背後を見る。
「んじゃ、報告にあった殲機の相手は俺がさせて貰うぜ!」
「では俺は、それらのサポートに……竜まで居るんだ、油断は出来ない」
 その声に応えるのは、御堂・陣とジザ・ヴィリアムの二人。
 いずれも既に魔皇殻を装備し、臨戦態勢の構えである。
「結構。それで―――ああ、すまないね。君は、」
「アイゼン・ブラウと云う……宜しく」
 そして―――殿を守るガンスリンガーから、静かな声。


 火急の救援要請を受けてこの場に来られたのは、この四機のみ。
 その四機が、戦場へと駆けていく――――






【2】



「……来たな」
 そして―――彼らが戦場へ到達するのとほぼ同時。
 嬉しそうに、機体の視線を東の方向へ向けて誠が動きを止めた。
「ゼカリア全機、その機体から離れろ!」
「……へぇ?」
 そして、その戦場へよく響く男の声。
「さて、何が来るか……」
「―――おおお!!」
 気楽に呟くディアブロへ、真ドリルランスの一撃が振り下ろされ、
「……良い力だ」
 それを、受け止める。
「へっ!」
 結果に落胆せず、その攻撃者――ディアブロだ――陣の機体が、誠のそれと相対した。
「さぁ、おっさん!瑠璃の空を駆けたエース、御堂陣様が相手になってやるぜ!」
「僕らは今の内に体制を立て直そうね……ジザ君、援護を」
「了解!」
「では―――くっくっく、覚悟は良いかね?」
 ジザに言うや否や、長朗の機体が真狼風旋の効果で掻き消える。その到達点は―――
「ち――おい兄ちゃん、気をつけろ!!」
「何!?」
 ……果たして、日本国所属魔皇の背後である。
 続いてその意を掴んだゼカリア隊が彼に従い、彼を包囲した……否。

 綻びが、まだ微妙に残っている。
「くっ……」
(そう。当然、君はそこから逃げるね)
「ここから、逃げるしか―――」
「なワケ無ぇだろう、馬鹿野郎っ!」
 ―――しかし。
 何処までも澄み切ったその長朗の戦術を、意外にも誠が制した。
「竜から離れるな!俺ぁ頭は悪いが、死地に飛び込む奴は叱るぞ!」
「あ……」
 言われて気付く。竜の加護無しに、自分は生きられない。
 そして自分の背後に居た殲機が……いつの間にか、自分の逃げる先で腕を組んで待っていた。
 ぞくりと、敵の狡猾さに背中が粟立つ。
「うあ……」
「……中々、どうして。聡いみたいだけれど、残念ながら見逃せないのだね」
「は……面白ぇ!―――骨がありそうだ」
 首一つ動かして、誠と長朗が短く言葉を交わす。
 そして目の前には、追いついてきたジザと、陣の機体。
「どうだい、兄ちゃん達?パトモスなんか捨てて、俺の所へ来ねぇか?」
「冗談!俺の矜持は安く無ぇし、何よりおっさんが敵だってのは明白だろうが!」
「別にパトモスが正しく、日本国が悪いとは俺は思っていない!だが貴様らの道理に反した行動は許さねぇ!」
 軽口に返ってくるのは――快刀乱麻を断つが如き、清々しいまでの拒絶。
「残念……ちぇ、俺の方への増援は無しかよ」
 いじけた様に呟いて、覚悟を決めた早瀬・誠。
「否、そうでも無いぞ」
「同感。僕もパトモスが嫌いでね」
 しかし、神は彼をすら捨て置かなかったか。



 彼の言葉に―――無数の槍の雨と、至上の破壊を齎す極太の光が応えた。






【2】


「……離れて!」
「っ、言われるまでも」
「無ぇ!」
 殺気を察知できたのは、百戦錬磨の経験が教えた直観か。三機が、急速離脱。
 その跡を真バスターライフルの光が蹂躙し、更に空から槍が注ぐ!
 見れば―――アイゼンの機体、そして上空に現れた黒い機体が放ったものらしい。
「アンタ等、俺の……」
「味方だ。私は反パトモス活動及び北海道の傭兵もやっているモノでFragment of eXile総統の天剣神紅鵺だ。我が理想故に貴君等に味方する」
「同じく、反神属部隊『暁の旅団』頭目のライヒス・ハイデッカーだ。思うところあって協力させて貰う事にしたよ」
 上空から彼、天剣の。背後からアイゼン――否、ライヒスの声明が告げられた。
「これは……参ったね、獅子身中の虫か」
「ああ、コイツはマズイかもな……行くぜっ!」
 戦況の変転に苦笑を浮かべる長朗の横を、即決速攻の覚悟で陣が駆ける。
 ドリルランスを矛に、真狼風旋で誠の機体へ肉薄する!
 それを見て、悠然とした構えで誠が迎え撃つが―――あろうことか、陣は己の矛を敵に到達する直前で送還した。誠が気付いたときには遅く――陣は、誠の機体にがっしりと組み付いていた。
「……っ、成程!?」
「ああ、狙いはこれさ!竜もこう密着されちゃ動けまい……!」
 負傷を恐れず、彼は急上昇、錐揉み降下、急加速、地面への激突等を繰り返す!
「ハルナ、しっかり掴まってろよ……行けるな!?」
「ええ、陣様!思いっきりぶん回して下さい!私は絶対に負けません!」
「成程……つまりよ、逢魔の我慢比べか!」
「へ……ウチのハルナはかなりタフだぜ?」
 そんな会話を続け、激突が続く。
「くそっ、これは意外な妙手だな……おい、天剣と、ライヒスか!俺を撃て!」
「本気か?」
「俺はジョークと饅頭が嫌いだ!」
 陣の戦法に舌を巻き、何故か誠は味方に向かって己を撃て、と告白する。
 ………そこに虚偽は無い。
「良かろう」
 頷き、天剣が真ファナティックピアスを投擲。無数の槍撃が降り注ぐ!
「ちっ!」
 それをまた、野獣の如き敏捷で素早く陣の機体が回避。誠の機体にその雨が注がれた。
 誠の機体は―――陣と同じく致命傷には遠い。
「機体は頑丈でね……」
「…化物め!」
「―――あんな無茶をする君もね。厄介な要素は消えてほしい」
 悪態をついて再び突撃する陣の機体を、しかし遠距離からの射撃でライヒスが縫い止める。
 スラスターライフルの連射が、その背中を……
「させるか……!!」
 穿たない。
 真音速剣が可能にする高速斬撃の極みで真インスタビリティを振り回し、ジザが己の身を盾と成す!
「へ、信頼してたぜ?」
「彼の相手は俺が!そこのテロリストは頼みます!」
「あいよぉ!」
 弾かれたように背中を合わせた二機が、逆方向へ加速した。
「……良いだろう。元より連携を絶ちたかったんだ。ライヒス・ハイデッカーが、全力でお相手する……グラシャボス?」
「心得て居る。天剣か早瀬が傷ついたら知らせよう」
「頼むよ……本気で行かないと、首が飛ぶ!」
「心意気は認めてやろう――クラン!」
「ええ。敵が密集するか、DFを使おうとしたら教えます……首が飛ばないよう、頑張って?」
「ああ……破滅を呼ぶ踊り手の異名、伊達では無いと教えてやる!」
 互いに逢魔へ言い含め、苛烈な銃撃戦を開始する。速射性に優れる真アンアヴォイダンスを手に、真フレイムレイダーで基本能力を強化しライヒスの機体に迫るジザと、
「手強い……君は、危険だな!」
 敵が己だけを狙うことで、ある意味での封殺を図りつつ。スラスターライフルの連射とディフレクトウォールの連携で対抗するライヒスが神速で戦場を疾駆する!
「ふむ……では私は、雑魚を蹴散らすか」
 上空からその様を睥睨して、天剣もまた敵を駆逐するために行動を開始する。
「――穿て。狂気の貫通者よ」
 真幻魔影を以って混乱させている敵ゼカリアの群れへ、仮借無き魔皇殻の雨。
「まだ終わらんぞ?」
 その結果を見ず、急降下しヘレティックテンタクルの触手で猛威を振るう!
「否、それは調子に乗りすぎだね」
 ――が、その十三対の殺意。
 真シューティングクローで、長朗のヨルムンガルドが受け止める。
「楽な包囲かと思えば、色々面倒な事が…これも貧乏籤ですかねえ」
「全く以って同感だね。ゼカリア各機、工作員の捕獲は任せるよ。くれぐれも慎重に……僕も手伝ってあげたいところだが、目の前の敵はどうやら僕以外では歯が立たない。幾行、状況把握は任せたよ」
「了解」
 嘆息を洩らす己の逢魔に同意しつつ、牽制の一撃で天剣を後退させる。
「貴様でも役者不足では?」
「いやいや、役不足だと信仰しているね」
「…やらせんよ。速さの違いを見せてやろう」
「余も神紅鵺も貴様等如き相手に倒れる訳にはいかぬ。我等は理想に拠って立っておるのでな」
 他愛ない会話の内にも、天剣の逢魔エルヴェイルの放った重力の檻を放ち、幾行が氷の壁で相殺している!
「ふむ、僕単機で当たって正解か……強いね。惜しむらくは、君が悪だということか」
「片腹痛いな。正義も悪も、側面とタイプが多過ぎる。故に争うのだろうに!」
「違いない!」
 両者が、激突した。


「さて……まだやるのかい?」
「当然!」
 その戦況の中で、誠もまた陣に動きを縫い止められている。
「タフだな、アンタ……」
 目の前の敵に言い知れぬ恐怖を感じながら、しかし陣は退かない。異様な、まるで殲機と言うより、過去に存在した、神の十三使途と相対しているかのような―――
「……お前さん、強大な敵との戦いに慣れてるな?普通は規格外の相手と当たったら、一瞬で負けるもんだがね」
「へへ…魔凱に乗ったこともある。舐めるなよ」
「うお、そいつは羨ましいな!」
 子供のように無邪気な声が、響く。
「……っと、此処は戦場だったな。悪ぃ悪ぃ……怖いかい、兄ちゃん」
「怖いさ」
「じゃあ何故逃げない?」
「そりゃ―――その恐怖の倍は、楽しいからよ!!」
「良く言った!」
 




 仮初めの、苛烈な均衡。
 ―――それを崩したのは、その場の誰でもなく。





「我の様に密やかには渡れぬか……それも致し方無し」

 地中から突如現れた、一機のペインブラッドだった。
 その機体は真下から出現し、マルチプルミサイルの火力で敵ゼカリアを牽制する。
「貴様……何者だ!」
 ライヒスと激しい戦闘を繰り広げながらジザが吼える。
「貴様らに名乗る名は無い……強いて名乗るなら、我は『死』だ」
「戯言を!」
 その合間に再び機体が潜り、次に日本国所属の殲機のほぼ真下から出現した。
「日本国魔皇並びに逢魔よ。我はお前達を迎えに来た。この死地より逃げたくば、我が殲騎に乗れ」
「な……何を言っている!?」
「疑うか……ふむ」
 嫌疑の声に思案すると、「彼」は手近なゼカリアに目をつける。
「―――大地に身を委ねるまでも無い」
 呟き、無造作に燕貫閃を付与したDヘッドスマッシャ―でその胸を貫いた!
「なっ……」
「我は味方だ…その機体も限界だろう、こちらへ来い」
 有無を言わせない。その行動は存外に早く、戦場は拮抗していた―――
「良く分から無ぇが……保護者の登場かい。良いぜ、連れて行け。俺は楽しい喧嘩が出来た」
「『絶勝を望む翼』、同胞は確かに受け取った。礼を言う」
「応よ」
 ……ここで幸運だったのは、早瀬・誠が些事に拘らない男であったことだろう。彼は純粋に数に劣っていた者を助けただけで、それ以上の興味など無かった。
「ではな」

 瞬きの間に現れた乱入者が、瞬きの間に消える。
「ゼカリア……ち、もう攻撃能力も残っていないか!」
「ジザ君、落ち着いて……こうまで妙な膠着状態にあるのは、奇跡的だった」
「……さて、どうするよ?ここらで分けにするかい?」
 意外にも、そう提案してきたのは目前の誠だ。
 先ほどの珍事で、これも奇跡的に、奇妙に皆が動きを止めていた。
 否。既に誰もが疲弊し、このまま行くと戦場はどう悲惨に転ぶかも分からない―――
「……潮、だろうね。僕らはともかく、ゼカリアは確実に……」
「そうかい」
 ふぅ、と息を吐いた長朗の台詞を鵜呑みにして、彼は戦闘の緊張をあっさり解く。
「楽しかったぜ……お前さんたち、名前は?俺は早瀬・誠だ」
「パトモス魔軍諜報部、錦織・長郎。次は、殲滅するよ」
「……ジザ・ヴィリアム。同じく、次は斃す」
「へっ、そして俺は」
「お前さんは名乗りを最初に挙げただろーが……まあ良い。それじゃ、お三方。腑抜けしかパトモスにはいねえと思ったが、安心したぜ?……じゃあな」
 そう言って、颯爽と誠が竜を従えて去っていく。ライヒスと天剣が、それに続いた。
「全く、強いテロリストは嫌だね……早く腑抜けて欲しいものだ」
「ゼカリアは、小中破含めて五機が生存………辛勝かねぇ?」
「言いえて妙だ、陣君」
 のろのろとこちらへ戻ってくるゼカリアを見ながら、長朗と陣が何と無しに呟く。




「なかなか酷い戦場だったな……クラン」

「……本当に」




 ―――ぽつりと洩らしたジザの言葉が、その場に立つ者全ての感慨であった。






「さて……今日は助かったぜ。礼を言う」
 その頃やや離れた地で、誠が助力してくれた二人に礼を言っていた。
「早瀬氏」
「ん?」
 気持ち良さそうに笑う『絶勝を望む翼』少将に天剣が、
「我々に物資・装備を融通してくれないか? 交換条件は我等の全面協力及びそちらの望む条件を受ける」
「……へぇ?やっぱり、苦労するかい?」
「ああ」
「オーケイ、良いぜ。なら付いて来い」
「即答か……だが助かる、早瀬・誠」
「僕からも―――良いかな?」
 許諾する誠に、同じく今回味方したライヒス。
「反パトモスは大いに結構だが、今反パトモスを掲げるのは神帝軍にとっての益になりかねない。奴らを倒すまでの間だけでも、パトモスとは手を組むべきじゃないかい?」
「ははっ……正論だ、ライヒス」
 その忠告に、またもや微笑む初老の武人だった。
「だが……北なんかはどうだい?もうじき、放っておいても日本国とパトモスは争う……その後のことを考えたら、やっぱり俺の組織も日和見はしねぇさ。とっぷ・しぃくれっとだがな。今のところは、日本国と秘密裏に組むかも知れねぇってよ」
「……初見の僕に言って良いの?」
「うーん……バレたら怒られるが、なに、お前さんは味方してくれたしな」
「…単純だね」
「かもな……だが、お前さんレヴェルの助力ならいつでも喜んで受けるぜ?」
 清々しいまでに、真っ直ぐな物言いだった。
 これが同じテロリスト、しかも幹部クラスの者なのか――思わず苦笑する。
「縁があって、気が向いたらね」
「オーケイ、オーケイだ……さあ!茶でも飲むか?ん?」


 ……パトモスを斃さんと、命を削り戦い続ける者達。






「貴方の名は……無常・刹鬼!?では、あの暗部の…」
「然り……しかし、知っていたか。我の悪名も大分高まったと見える」
「……」
「…嫌われたものだな、同胞。尤も、我を知っているのなら無理も無いが」
「いや……私はそうは思わない。ダーティな仕事は、それは貴方の嗜好か?」
「否。それが最良であると信じるが故」
「―――なら、やはり貴方は私の同胞だ。日本国を想う、な」
「……これはまた。嬉しいことを、言ってくれる」


 そして、正当なる日本を名乗り偽りの統治者を倒さんとする北の者。


「さて…どこに行く?貴様達が望む場所へ運んでやろう」







 その灯は、未だに消えそうには無かった。




【了】