■【天極】トラック環礁航空戦■
商品名 アクスディアEX・デビルズネットワーク クリエーター名 ヘタレ提督D
オープニング
サーチャーのアベンチュリンだ。

諸君、我が軍はトラック諸島への進出を果たした。無事に補給物資も到着し、艦隊は万全の状態で決戦に臨む事が出来る。

アデレードテンプルムは現在、ニューギニアのポートモレスビー上空に駐留している。
恐らくはポートモレスビーを拠点に、まずトラックの我が艦隊を撃滅・しかるのちにパトモス本土へ向かおうとしているのだろう。
艦隊司令部はそう予測し、トラック諸島上空で敵の航空攻撃を迎え撃つ構えだ。

トラックへ襲来する敵は、かなりの数になるだろう。加えて、レギオン搭載型ネフィリムの存在も確認されている。厳しい戦いになるのは間違いない。


諸君らには護衛艦『あきつしま』と共に、遊撃部隊として作戦に参加してもらう。
我が軍の主力はゼカリアだが、諸君らの他にも魔軍……魔皇が作戦に参加しており、彼らの暴走を許すわけにはいかない。もし暴走を許せば、そこを突かれて全軍が崩壊する可能性も出てくるだろう。
そこで遊撃部隊……つまり諸君らの出番となる。諸君らは戦場を迂回し、敵部隊の後方に位置しているであろうレギオン部隊を撃滅するのだ。
敵は、かなりの戦力をレギオン部隊の護衛に配していると思われる。そのつもりで、作戦に当たってもらいたい。

なお、戦闘開始直前に『紫の夜』が発動される手はずになっている。
SFを恐れずに戦え。

諸君らの健闘を期待する。
シナリオ傾向 殲騎戦
参加PC 風祭・烈
天剣・神紅鵺
斑鳩・八雲
ロジャー・藤原
【天極】トラック環礁航空戦
トラック環礁航空戦

●ロジャー・藤原(w3h484)

 突っ込んだら負けなのだろうか。俺は作戦前、味方のある殲騎……というか魔皇を見ながらそう思った。
 またもや出てきたレギオン搭載型ネフィリム・ウォフ=マナフ級。魔属を暴走させるという厄介な代物を片付けるため、俺たちは二手に分かれていた。すなわち、護衛を引き付ける陽動部隊と、レギオン搭載騎を倒す奇襲部隊に。
 陽動部隊は、俺の他に斑鳩、殲騎が白を除く各色一騎ずつ、護衛艦『あきつしま』。
 奇襲部隊は、風祭に紫以外の殲騎一騎ずつ、そして……。
「ねぇロジャー。今上飛んでるあの殲騎って……」
 言うなコハク。俺は突っ込みたいところをギリギリ我慢しているんだ。
 一人だけ上空四〇〇〇メートルを飛行する男。仮面を被り、『ミカエル』と名乗ってはいたが、あの殲騎に乗る魔皇は……。
「……言わんとしている事は分からないでもない。でも、多分言ったら負けだぞ」
 何に負けるとかは分からないが、何となくそんな気がする。
「うーん、そうかなぁ」
 納得のいっていない声を出すコハク。
 ブリーフィングの時、風祭も何も言わなかった。斑鳩も同様だ。だから、気になっても口に出しちゃいけないのだろう。空気を読むぞ俺は。
「……でもやっぱり、気になるなぁ。えい」
 ノイズが入り、全員に支給された通信機が、通信を繋いだ事を示す。
「お、おい」
「ねぇ、ミカエルー。キミってさ、実はテロリストの天剣神紅鵺なんじゃないの?」
 少しの沈黙の後、ややくぐもった声が答えた。
『何勘違いしているんだね』
「ひょ。で、でもさ、装備とか、天剣君にしか思えないんだけど」
『何勘違いしているんだね』
「……」
 何つーか隠す気ねぇよな、絶対。
『ミカエルさんの正体については、この際置いておきましょう。私たちの任務は、味方の援護……レギオンの破壊なのですから』
 そこに、穏やかな声が割り込む。斑鳩の声だ。
『そうそう。良い事を言うね、君は』
「キミが言うなっ」
 そう言って、俺たちは笑いあう。およそ戦闘前とは思えないが、悪くないような気がするな。
『こちら「あきつしま」。ウェノ島の我が軍本隊が交戦を開始した。また、その敵にあって、後方の一部部隊が動かずに留まっているが、恐らくはこれが目標だろう。数は三〇前後!』
 笑い声を中断させたのは、『あきつしま』からの通信だった。敵……攻撃目標を発見したという旨の報告だ。
 レギオン搭載騎は機動性が低いため、後方に留まるのが常識的な行動だった。それにしても、三〇前後とは多い。
「いよいよだな。派手にやって、敵を引きつけてやろうぜ!」
『そうですね』
『そうだな』
 俺の殲騎・俺専用ディアブロが、軍から借りたゼカリア用ビームライフルを握り締める。殲騎にはFCS(火器管制装置)が無いので命中率は期待出来ないが、派手な光線で敵の目を引いてくれる事だろう。
『全騎、迂回コースを進撃し、作戦を開始せよ!』
 敵と鉢合わせしないよう、トラック環礁内を西から迂回して、環礁南端付近に位置する敵へ向かう。
 通信封鎖で連絡は取れないが、風祭の隊もすでに行動を起こしているはずだ。
 魔獣殻『エクスカリバー』をディアブロに装備させ、コハクに『祖霊の衣』を使用してもらい。加えて、暴走した時に備えて全員へDEX『真魔炎剣』を付与する。
 準備は万全のはずだ。
「ご招待した甲斐があったな。It’s show time!」

●斑鳩 八雲(w3d939)

 敵がいました。パワー級が四騎。こちらに気付き、手にしたボウガンをこちらへ向けようとしています。
 敵と遭遇した場所は、『あきつしま』の発見した目標から一〇キロメートルといったところでしょうか。
 まだ、僕の装備している魔皇殻では届きません。まずは近付かねば。
『攻撃開始!』
 僕たちに同行するイージス艦『あきつしま』が主砲射撃を開始します。四騎の敵は散開して回避しますが、その隙に僕らは敵へと接近し、真デヴァステイターを発射。
「避けられましたわ!」
 僕の逢魔・ティスホーンが叫ぶ。僕が攻撃した敵は、右に移動しつつ回避し、剣を抜いた。白兵戦を挑んでくる気ですね。
「ティスホーン!」
「承知しましたわっ」
 敵が接近してくる間に、ティスホーンが逢魔能力を発動する。『霧のヴェール』。
 僕の殲騎へ近付いた敵が、剣を振るう。だが、僕を包んだ霧は、敵の剣が当たる事を許さない。
 剣を外した敵へ、僕は真デヴァステイターを突き付けます。距離は……ほぼ、ゼロ!
「当たれっ!」
 僕は真デヴァステイターの引き金を引きますが、敵は咄嗟に身を逸らし、致命傷を避けました。それでも左肩の翼に命中、撃ち抜く事に成功します。
 しかし、敵もさるもの。少しだけ離れてから、再び斬りかかって来ます。
 僕はその攻撃を避け……もう一発。今度は、敵の頭部に命中。
 それでも敵は諦めないようで、再び攻撃をしてきました。
「……っ!」
 今度は、攻撃を右に動いて避けつつ、敵の背後へと回りこみ……
「真六方閃!」
 DEX真六方閃を使用します。僕の周囲から発射された六本の光線のうち、一本が敵を直撃。残り五本も方向転換して敵へ向かい……全てが命中。
 それが致命傷となったのか、敵は墜落していき……海面で爆発しました。
「一騎撃破しました!」
 ……そう報告してから周囲を見れば、周辺の空域に敵はいません。他の三騎も、仲間が倒したようですね。
 ですが、油断はせずにいきましょう。敵の増援が無いわけはないでしょうから。それに、そうでないと困ります。
 周囲を警戒しつつ待機していると、不意にティスホーンが呟きます。
「なぜ、今になってこんな大戦に……?」
 今まで、僕は局地戦にばかり参加してきました。それが、今回は総力戦です。僕は、しばらく考え込んでから、こう答えました。
「なぜ参加したか、ですか? さぁ……。あるいは僕も、歴史というものに名を残したいと、そう思ったのかも知れません」
「……」
 黙りこむティスホーン。
「……嫌でしたか?」
 しかし、彼女は温かい微笑みを浮かべると……、
「私は、八雲様についていくだけです」
「……ありがとう、ティスホーン」
 その時、『あきつしま』から敵の新手四騎が接近中と報告が入ります。
 敵には、小説のネタになってもらいましょう。僕は真怨讐の弓を構え、敵の新手が来る方向を見据えました。

●天剣 神紅鵺(w3d788)

 陽動部隊が敵を引きつけている間に、私は高度四〇〇〇メートルを維持したまま、目標の上空に到達していた。烈の奇襲部隊が来るまで、装置の破壊と敵の撹乱を行うためだ。
 玖参式百足砲改……一二〇ミリ砲弾を発射可能な武装。人類兵器なので射程も長い。……FCSが無いから、命中率は怪しいが。
 それにしても、眼下の敵集団は数が多い。ざっと数えただけで、ウォフ=マナフ級とかいうレギオン搭載騎が一〇騎以上、護衛のパワー級も一〇騎以上が確認出来る。
 今もロジャーたち陽動部隊が陽動を行っているはず。それなりの数の敵と交戦しているようだから、陽動が失敗したというわけでもあるまい。
 ……二段構えという事か。
 恐らく、レギオンを直接護る部隊と、やや離れて護る部隊の二つがいたのだろう。陽動されているのは後者、今私の眼下にいるのが前者か。
 さて、私は私の仕事をするかね。神属への揶揄を込めて『ミカエル』と名乗った私の……天剣神紅鵺の仕事を。
「装填完了。照準固定」
 眼下の連中は、まだ私に気付いていない。密かにほくそ笑んで、私は百足砲の引き金を引いた。
 耳に馴染んだ音と手に馴染んだ反動が、砲弾が吐き出された事を伝える。私の砲弾は、吸い込まれるように眼下の豆粒へと落ちていき……レギオン搭載騎の一騎を貫いた。初弾で命中とは、私もなかなかだな。
 突然味方が撃ち抜かれた事に動揺している事が、眼下の連中の動きから見てとれる。周囲を見回し警戒態勢を取っているが……どこから攻撃されたかも解らないとは、愚かだな。
 私は心の中で嘲笑しつつ、第二射を行った。
「……ちっ」
 次の射撃は外してしまったようだ。砲弾が海面に突き刺さり水柱を上げる。
 だが、まだ敵は私の存在に気付かない。そろそろ気付いても良さそうなものだが。
「右へ少し修正したほうがいいか」
 狙いを少しずらし、一発発射。今度は、レギオン搭載騎の頭部から下半身を貫通した。二騎撃破。
 この段になって、ようやく敵はこちらに気付いたらしい。上を見上げたあと、パワー級がボウガンを構えて上昇してくる。だが……。
 敵はあまり高度を上げないまま、その場に停止した。当たり前だ。高度四〇〇〇に、通常のネフィリムで到達出来るわけがない。私がこの高度に留まれるのは、偏に装備した翼……真機界統ベシ虚構ノ蝕翼のお陰だ。
 というわけで、私はまさに一方的な攻撃が可能なのだよ。
 敵が高度を上げきれず停止した瞬間に、私は百足砲を発射する。人類兵器は弾速が速いため、狙いさえ誤っていなければ、回避する術はパワー級には無い。
 砲弾がパワー級を貫く。
 敵はレギオン搭載騎を護る構えを見せた。私とレギオン搭載騎の射線上に割り込んできたのだ。なるほど正しい動きではあるが……時間稼ぎにしかならんよ。
 その時……パワー級の壁の隙間から、ウォフ=マナフ級のバックパックが青白く光り始めているのが見えた。

●風祭 烈(w3c831)

 俺に聞こえる音は、殲騎が水を掻き分ける音だけだ。
 奇襲部隊として行動している俺は、四騎の殲騎を率いて水中を進んでいた。
 陽動部隊が敵の護衛を引きつけている間に、俺たちがレギオン搭載騎へ攻撃する。そういう手はずだ。
 五騎から成る俺たち奇襲部隊は、紡錘陣形を取りながら戦場を迂回し、着実にレギオン搭載騎と思われる敵集団へと近付きつつあった。すでにDEX真魔炎剣も全騎に付与され、準備も万端。
「……あまり、こういうのは俺の性に合わないな」
 誰にともなく呟く。こういうのは、何だかヒーローらしくない。
 だが、その声を聞いていたのが……。
「いくら見苦しくても、生き残るためにあがきましょう。生きているのなら、次があるのですから」
 後ろの席に座る、エメラルダの声だ。
「……そうだな」
 今回は無理だが、生きていれば……。俺は頷いた。
「……そろそろ、目標空域の下に出ますわ」
 いよいよか。
「行くか。それぞれの信じるもののために」
 俺は通信回線を開き、他の奇襲部隊に告げた。
「全騎、攻撃開始!」
『了解!』
 僚機から返信が入るより早く、俺は海面へと飛び出していた。水しぶきが上がって一瞬視界を遮るも、上に見えるはレギオン搭載騎。護衛はいない……いや、いるにはいるが、ほとんどが明後日の方向に……
「烈さん!」
 エメラルダの鋭い声が飛ぶ。見れば、ウォフ=マナフ級のバックパックが青白く光り始めていた。あれは……神輝装置レギオン起動の証!
 突如、襲ってくる破壊衝動。修羅の黄金である俺に、抵抗する術があるわけもなく……。
壊したい!
壊したい!
コワシタイ……!
 その俺を、突然衝撃が揺さぶった。途端に気分が軽くなる。
「……?」
 見れば、奇襲部隊所属のペインブラッドだ。名前は……何といったっけ。
『大丈夫か!』
「あぁ、すまない!」
 事前にかけておいた真魔炎剣。それが役に立った。
「皆、大丈夫か!」
 通信回線を開いて呼びかけると、奇襲部隊の面子から答えが返ってくる。備え有れば憂い無し、だな。
「行くぞ!」
 真ドリルランスを構え、俺たちはウォフ=マナフ級の集団へと飛び込んだ。二騎目のレギオンが発動する、その前に。

●護衛艦『あきつしま』レーダー員(NPC)

 魔皇から奇襲成功の報告が入ると、CIC中が沸き立った。俺も例外無く快哉を叫ぶ。
 我が軍の本隊からは、戦況優位との連絡も入っている。厄介な神輝装置も潰した。この戦いは俺たちの勝ちだ。
 ……そう思っていた時期が俺にもあった。
「ん……? 何だ、これ」
 レーダーに巨大な影が映ったのだ。
 そこに、ミカエルとかいう天使の名を名乗った魔皇から連絡が入った。
『テンプルムが接近中だ』
 ……。
 ……。
 一瞬、何が起こったか解らなかった。ぶつん、という音と共に、レーダーがいきなりブラックアウトしたのだ。
 それだけではない。CICの各所から電子機器の機能停止などが告げられ、この薄暗い空間が、いきなり騒然となる。
「な、何だ……これ」

 戦いは、最終段階を迎えようとしていた。

                                       続く


●補足・レギオン抵抗の成否

 ロジャー→抵抗発生せず
 天剣→抵抗成功
 斑鳩→抵抗成功
 風祭→抵抗発生せず