■【天極】悪魔たちの戦い■
商品名 アクスディアEX・デビルズネットワーク クリエーター名 ヘタレ提督D
オープニング
サーチャー・アベンチュリンだ。

トラック環礁に、アデレードテンプルムが進攻してきた。
紫の夜の最中に飛び込んでくるとは、我々にみすみすチャンスを与えているようなものだな。
この機を活かさない手は無い、そうだろう?

だが、テンプルムの出現と同時に、パトモス軍の電子機器に異常が発生している。……敵は、テンプルムに電子機器を作動不能にする神機装置でも積んでいるのだろうか。
現状では、ゼカリアも艦隊も戦力外と言わざるをえない。彼らは電子機器の使用を前提としているからだ。
……今にして思えば、テンプルムが紫の夜の最中に来るという危険を冒したのは、我々の主力を為す人類兵器の無力化が出来るからなのかも知れないな。

今まともに戦えるのは神属……そして、諸君ら魔属だけだ。
諸君らの手で、この作戦に決着を着けよ。私は力になれないが、諸君らの無事を祈っている。

必ず生きて帰れ!
シナリオ傾向 殲騎戦、テンプルム攻略戦
参加PC 風祭・烈
天剣・神紅鵺
斑鳩・八雲
百地・悠季
ロジャー・藤原
【天極】悪魔たちの戦い
悪魔たちの戦い

●天剣 神紅鵺(w3d788)

 テンプルム出現時からの人類兵器の異常。それは、我々の手元の通信機とて例外ではなかった。
 やれやれ……借りたいものがあったのだがな。仕方無い。私は殲騎フィンスタニストリューグビルトの機首を返すと、友軍……パトモス軍の空母へと向かった。
 音速での航行も可能な真機界統ベシ虚構ノ蝕翼の力によって、一瞬で空母の甲板上に降り立つ。
 空母の甲板上には、補給中だったのだろう、ゼカリアやその武装などが無造作に置かれている。
 これは好都合……私は甲板上に目を走らせ、それを見つけた。
「借りていくぞ。……聞こえてはいないと思うがな」
 ゼカリア用ビームライフルを手にとる。
 再び飛び上がって、今度はテンプルムのほうを目指そうとしたところで、歌が聞こえてきた。あまりに場違いだし、通信機は使えないはずだが……。そう思いつつも声と歌詞を聴いて、私は納得する。逢魔ティスホーンの声で、歌詞の内容を要約すると『テンプルム突入を試みる』といったものだ。つまりこれは、セイレーンの能力『伝達の歌声』なのだろう。
「集結地点へ向かうかね」
 速度を出し始めた私の目の端に、ネフィリムの攻撃に反撃すら出来ないゼカリアの姿が映った。

 テンプルムに程近い集結地点で我々を待っていたものは、テンプルムからの攻撃だった。目を凝らして見ると、三連装と思しき兵器が外壁にかなりの数設置されており、銃口からは白色の弾を連射して弾幕を形成している。
 ならば、まずはアレを破壊する。機銃の射程外まで退いてから、我々は身振りで確認した。通信機は無いから細かい詰めは出来んが……意思が通じるだけでも良いとしよう。さすがに、ここに集っているのは歴戦の魔皇だ。
 私は、真ヘレティックテンタクルの触手からアヴェンジャー改を受け取ると、騎体を紫色の空へと滑り出させる。
 かなりの速度を出してテンプルムへと接近しつつ、アヴェンジャー改を構え……引き金を引いた。
 吐き出される三〇ミリ弾が機銃群を撫でていくと、外壁に据えつけられたそれらは、瞬く間に残骸へと変わる。敵機銃も私を狙って攻撃をしてくるが、高速で動いている手前、そうそう当たるはずもない。
 ……最も、そのために私も狙いを付けられんのだが、元々FCSなど無いから、仮に狙いを付けられても精度は高が知れているだろう。
 攻撃している私の脳裏に、先ほどのゼカリアの姿が思い出された。FCSを無くしたぐらいで反撃すら出来なくなるとは。
「FCS頼みであの体たらくか……。目視で十分だろう? あんなデカい的など」
 弾幕を避けて動き回りつつ、私はテンプルムを周回する。全体の機銃を破壊するつもりだからだ。
 引き金を引く。打ち出された弾は、テンプルム外壁へと吸い込まれていった。

●百地 悠季(w3e396)

 まぁ、あれね。神帝軍のしつこさには、いい加減うんざりしてるって事。
「これだからもう、天使も魔皇も逢魔も嫌いなのよね!」
 機銃の射程外から、あたしはうんざりしつつテンプルムの外壁を見やった。すでに外壁に設置されていた機銃の一部は、味方……ミカエルとかいう、正体バレバレの魔皇によって破壊されている。さっきは酷い弾幕だったけど、これなら少しはラクかな。
「うぅ、悠季様」
 あたしの後ろから、情けない声。あぁ、あたしの逢魔のヘラルディアか。
「何、ヘラ?」
「わたくしの事も嫌いなのでしょうか……?」
 あー……この声色はアレね。見なくても分かる。涙目になってるわ。
「大丈夫よ。ヘラが……というよりは、この魔の力が好きじゃないだけだから」
 そう言って、彼女の勘違いを訂正しておく。
「そ、そうなんですか……」
「そうなのよ」
 答えつつ、あたしは周囲を見回した。味方は殲騎が九騎に強化型ネフィリムが四騎。合計一三騎……どこかの宗教では良くない数字なんだっけ。まぁ、あたしたちにはピッタリよね。
 ミカエル騎があたしたちの所へ戻ってきた。彼の戦果なのだろう、外壁に据えつけられた機銃は目に見えて損害が大きい。
 頃合いかな。あたしが心の中でそう思った時、他の皆も動き始めた。突入だ。
同時に、あたしは上級DFを発動した。自身の動きを四〇秒間、八倍に強化する……『超狼風旋』。
「いくわよヘラ!」
「かしこまりました、悠季様!」
 言葉と同時に、背部に装着した魔皇殻・真ハイマットウイングを展開する。一対だった翼が、五対の鋭利な翼へ。
「GO!」
 騎体が空を翔ける。八倍の速度を得たあたしの目の前に、いっきに巨大なテンプルムの外壁が広がった。
 遅まきながら放たれる弾幕を、あたしは残像を残しつつ避けていく。
 そうして十分に外壁まで近付いたあたしは、ヘラへ次の指示を飛ばした。
「ヘラ、合わせなさい!」
「かしこまりました!」
 殲騎の両手を突き出す。
「マルチターゲットロックオン……フルブラスト!!」
 その指先から発射するのは、上級DF『超魔力弾』。魔力で構成された白色のミサイルが、一気に一〇発、テンプルム外壁……機銃群へと吸い込まれていき……、
「イクスプロージョン!!」
 爆発。
あたしの『超魔力弾』は、機銃群を吹き飛ばして弾幕に死角を作り出す。
「次!」
 真ブーステッドランチャーを構えて、弾幕の死角から発射した。外壁を破壊するために。
 しかし……外壁は思ったより頑丈なようだった。
 その時、あたしの騎体の横を一筋の光が通過する。これは……斑鳩騎の真バスターライフルね。
 その力強い光は外壁へと突き刺さり……いや、ダメ。まだ、完全に突入口を開けるには到ってない。あと一押しか。
 そこへ、ドリルランスを構えてロジャー騎が突入する。
 あたしの攻撃と斑鳩騎の攻撃で脆くなった外壁へ、ロジャー騎のドリルランスが突き刺さった。ドリルランスの刀身が回転し、外壁を突き崩していく。
 そして、穴が穿たれた。ドリルで掘る勢いのまま、ロジャーがテンプルム内へと突入していく。あたしはそれに続こうとして……目の端に捉えた。数騎のネフィリムがこちらへ向かってくる。あたしたちを妨害するつもりか。
 だが、そのあたしの視界を、パトモス軍のディアブロが遮った。通信は出来ないけれど、その動きだけであたしは理解する。
 名も知らない二騎のディアブロに殿を任せて、あたしたちはテンプルムへと突入した。

●???(NPC)

 私は、今までマティア様に忠誠を誓ってきた。魔皇の破壊衝動を暴走させる神機装置『レギオン』は、その集大成となるはずだったのだ。
 だが、連中は私の作品を打ち破った。それも何度も。
 ……私はマティア様からも、同胞からも役立たずの烙印を押された。全て、あの忌々しい魔属のせいだ。
 私は最後のチャンスとして、今回の作戦を認可された。
 電子機器を機能不全に陥らせる神機装置『アールマティ』。敬虔の名を冠した私の最高傑作が、今まさに私の勝利を目前としている。
 その勝利を邪魔させるわけにはいかない。
 私の勝利を、邪魔させるわけには。

●斑鳩 八雲(w3d939)

 僕たちは、大きな扉の前にいました。
 テンプルム突入から数十分。敵の伏兵のせいもあって、味方は殲騎五騎・強化型ネフィリム二騎にまで減らされていましたが……。
 僕らの目の前には、豪奢な作りの大扉。殲騎も楽々通れそうな大きさを持つ、重厚な扉でした。
 恐らく……ここが目的地なのでしょう。
「ティス……。苦労をかけますが、頼りにしてますよ」
 後ろのティスホーンに声をかけます。僕の大切な女性は、その言葉にくすっと微笑んだ……気がしました。
「あら、苦労をかけている自覚はおありでしたのね」
「あぁ、うん。一応は……」
 ここで、お互いに噴き出します。
 あぁ、これだ。ティスと一緒なら、どんな敵が出てきたって大丈夫だと思える、この感覚。
 大丈夫、どんな敵が出てきたって。
「いきましょう、ティス」
「えぇ!」

 扉が、ギギギと音を立てつつ、徐々に開かれていきます。
「……これは」
 扉の奥に広がっていたのは、正しく広大という表現がピッタリくる空間。濁った白さを持つ壁面と殲騎に乗っていても『高い』としか表現しようの無い天井。さらに空間の 奥には、禍々しい輝きを放つ、大型の建造物があり……。
「八雲様、あれを」
 ティスの声に僕は視線を正面へと向けると……そこには、立っていました。
 パワー級のネフィリムよりも角ばった両肩に、翼のような装甲。片手には槍を、もう片手には盾を持った白き神機巨兵。……ヴァーチャー級ネフィリム。その白い騎体は光り輝く膜を纏っています。
『あれは、SF「魔障壁」……いえ、恐らく最上位の「魔障聖壁鏡」ですわ』
 頭の中に響くエメラルダさんの声。『伝達の歌声』ですね。
 それはともかく。SF『魔障聖壁鏡』は、六分の間自身がSFを使えなくなる代わりに全てのDFを撥ね返す防御系DF。いきなり、こちらのDFが封じられましたか。
「大戦での被撃墜無し。……ティス、零式。年季の違いというものを見せてあげましょう」
 僕はヴァーチャーを見据えつつ、真ショットオブイリミネートを構えました。

●風祭 烈(w3c831)

 おもむろに俺たちへと突っ込んできたヴァーチャーは、味方の強化型ネフィリムをその槍で一突きにした。

 テンプルム最奥部で、俺たちとヴァーチャーの戦いが始まった。しかし……。
「つ、強い!」
 俺たちは苦戦を強いられていた。こちらは六騎、敵は一騎。それでも、全く歯が立たない。
 斑鳩・ミカエル――というか天剣、百地が援護し、俺とロジャーと強化型ネフィリムで前衛を担当するのが、こちらの基本スタイルだった。
 だが、ヴァーチャーは巧みに機動して、俺たちの後方……援護射撃している面子を狙ってくる。
「くっ! 間に合えぇ!」
 俺たちの間をすり抜けて天剣騎へと急接近したヴァーチャーへ、俺は急いで向き直って真ステイクランチャーを発射する。杭をばら撒いて牽制だ。その牽制射撃をヴァーチャーが盾で受けた隙に、天剣騎は後退した。
 退きつつも天剣騎は砲弾を放つが、しかしそれはヴァーチャーの槍の一閃に阻まれて爆発する。
 だが、俺はそこが好機と突っ込んだ。すでにかけてあったDF超狼風旋と、腕から突き出した真アクセラレイトドリルで一気に加速し、爆発の煙で一時的に視界が奪われているであろうヴァーチャーへ……当たれ!!
 しかし、その突撃は、盾でドリルをいなされて不発に終わった。
「くっ!」
 真アクセラレイトドリルの備えるブースターは、軌道の急変更を可能としている。軌道を変えて急激にヴァーチャーから離脱した俺のすぐ後ろに、槍が突き立てられる。
 急旋回したところで、今度視界に入ってきたのは真デヴァステイターで牽制しながら突撃するロジャー騎と、その牽制に乗じるカタチで薙刀……シャイン・タクトを振るおうとヴァーチャーへ接近する強化型ネフィリム。ヴァーチャーが床から槍を引き抜く一瞬の隙を突いた攻撃だ。
 しかし敵は、流麗な動きでロジャーの接近戦用の得物・真ドリルランスを盾で弾くと、続く味方ネフィリムのシャイン・タクトを槍でいなした。
 ……その時、ヴァーチャーを覆っていた輝きが失われていく。SFの効果が切れたか。ならば!
「次は使わせない!!」
 他の仲間もそう思ったのだろう、百地・斑鳩の騎体から合計二四本の光線が放たれる。SF超十二閃だ。
 ヴァーチャーは最初のうちこそ後退しつつも光線を回避しようとしていたが……不意にその回避機動を止めた。回避し切れなかった十数本の光線を盾で受け止める。
 その敵の行動に、百地は何かを掴んだのだろうか。彼女の騎体は真ブーステッドランチャーを連続発射する。その弾は、ヴァーチャーへと……いや、その背後の建造物へ向かっていた。
 百地の弾が、確実に建造物を撃ち抜く。直後、不気味に輝いていた建造物の光が、失われていった。
『よし!』
 百地の声が俺の耳に入ってくる。あれ、通信機が復旧している……?
 ……あぁ! あの建造物が、こちらの機械を狂わせていた元凶だったのか!
 
 だが、まだだ。まだヴァーチャーが残っている!

●ロジャー・藤原(w3h484)

「決めちゃえ、ロジャー!」
 コハクがそう言うと同時に、俺の殲騎が携えていた全ての魔皇殻が消失した。代わって俺の手には、一本の巨大な剣の重みがずしりと圧し掛かる。コハクが逢魔能力『霊魂の剣』を使ったのだ。
 装置を破壊されたヴァーチャーは、俺たちを睥睨する。まるで『装置の恨み』とでも言いたげに。
『いくぜ!!』
『おう!!』
 風祭の声に皆の返事が重なった。
 まず仕掛けたのは天剣だ。
『何かする前に何も出来なくする。このアーリマンから贈り物をしてやろう。……縛れ、超蛇縛呪!』
 上級DFによって、相手を拘束する黒色の光線がヴァーチャーへと伸びる。敵はそれを防ぎ損ねた。……つうか天剣の偽名変わってねぇ?
『ロックオン! フルバースト!!』
『僕如きが上級DFを……。でも! 当たれ!!』
 次に仕掛けるのは、百地と斑鳩か。百地が上級DF超魔力弾を、斑鳩が上級DF超撃破弾を。白色のミサイル一〇発が、攻撃を防ごうと展開されていた翼を破壊し、紫色の爆発がヴァーチャーを包み込む。
 ここで、風祭が少し膝を屈めた。
『吹けよ勝利の風よ』
『グゥレェェート……ダァァァッシュ!!』
 エメラルダの声に風祭の声が続き、彼の騎体が消えた。DF超獣牙突だ。
 急所を狙う一撃が、身動きの取れないヴァーチャーを捉えた。だが……紫色の爆発に包まれながらも、奴はまだ立っている。
 大した耐久力だ。さすがにヴァーチャー級か。
だが!
「真魔皇殻を霊魂の剣にして攻撃力四倍! 更に、いつもの八倍の超両斬剣を加えたら、ヴァーチャー! 貴様を上回る三二倍の攻撃力だ!」
 騎体を、あの紫に向かって翔けさせる。超狼風旋で加速されている俺の殲騎は、瞬く間に紫の中へ突入し、ヴァーチャーを捉える。
「これで、最後だぁぁぁ!!」
 俺は、三二倍の剣を振り下ろした。


 戦いは終わった。
 アデレードテンプルムは落ち、パトモス軍の『天極作戦』は、終わりを告げたのだ。
「名残惜しいけど、さよならだ」
「うるさい!」
 墜落したアデレードテンプルムを一瞥しながら呟いた俺の頭を、コハクが叩く。
「いてっ。何だよ!」
「何だよじゃないっ。何が三二倍だ! ロシアのロボットみたいな理論唱えるな!」
「いいじゃねぇかよ!」
そんなやり取りをしていると、通信機から笑い声が漏れた。
「あは、ははは」
『はははは』
いつの間にか、俺たちは皆で笑いあう。このトラックの海の上で。
戦争は終わっていない。だが、しかし今確実に一つの強大な敵を倒したのだという充実感と共に。

                                        終