■【瑠璃・紫の夜】ラインホールド・決戦!■
商品名 流伝の泉・ショートシナリオEX クリエーター名 みそか
オープニング
<広島テンプルム>
「そもそも、我らはどのような存在なのか? 神帝様亡き後直面させられた課題は、我らにとって余りにも重く、そして苦しいものだった。
 だが、皆考えてみて欲しい。神帝がいようといまいと我らの志に代わりはないのだ。我らはすなわち、人を正しい方向へと導いていく存在! ‥‥それだけである。
 皆よ、思い出して欲しい! 我らが来る前の世界がどれほど腐っていたか!! 資本主義という人の腐った世界、社会主義という人ながらにあさましくも神の平穏を目指した世界、愚かな独裁者が愚民を制する世界! どれも腐っていた!! 神から与えられし人の分際でありながら、強者はのさばり、弱者を切り捨て、そして殺しあう! その世界にどれほどの愛があろうか? 平穏があろうか!?
 我らはいわばこの世界にやってきた津波と箱舟である。人類を再びやりなおさせる天からのつかいである! ‥‥そして、それを防ごうとする魔に属する者は、腐った世界に染まりきったまさしく悪魔!! 滅せねばならぬ存在である!
 皆、ついにこの時がやって来た。これまで魔に属する者に舐めさせられてきた辛酸、今こそ晴らそうではないか!! 今回の戦いに敗北は許されぬ。最強部隊ラインホールドが、諸君らの進む道を‥‥神の名のもとに照らすであろう」
 アークエンジェル・ウェイブの演説に、集まったグレゴール達は皆一旦静まり返り‥‥そして、爆発した。

<広島テンプルム・某所>
「やれやれ、やっと終わりましたか。‥‥まったく、長いんですよ本当に」
 耳をつんざくような歓声に、ゲシュタは全く耳を貸そうともせず、今回の戦力分布を決定する。
 現在広島テンプルムに在する戦力は他テンプルムからの増援も合わせ、ネフィリムにして120! もちろんこの全てが前線に出られるわけではないが、相当な戦力を相手にぶつえることができる。部隊を分けながら‥‥彼は笑いが止まらなかった。
「さぁ、魔に属する者よ。あなた達にはこの広島テンプルムから素敵な鎮魂歌をおくってさしあげましょう。‥‥さあ、レイヌ。いこうじゃないですか。楽園と歌われた瑠璃を今度こそ壊しにね! 『新生』ラインホールドは、決して負けることなどないのですから!」

<広島テンプルム・ネフィリム格納庫>
 集まった十機の精鋭に、それを取り囲む広島テンプルムのグレゴールから熱狂の声が絶え間なく響いた。
「洋平、あなたは‥‥」
「タニア‥‥わかってるよ。でも、僕は戦わなければならない。グレゴールではなく、この広島テンプルムを守る‥‥君を守る一人の人間として!」
『能書きは済みましたか洋平? あなたがどう戦おうとこっちは知ったことじゃありませんけどね、今回の戦い‥‥もしまたあなたが手を抜くようなことがあればウェイブ様はあなたの大切な恋人を殺すつもりでいますからね。‥‥決して! 決して手を抜くなよ!! ましてこの私に‥‥‥‥わかっているな!!』
『言われなくてもわかっているゲシュタ。だが、もしタニアを‥‥無力な者を手にかけようというのなら、それが誰であろうとも僕はそいつを倒してみせる!』
 歓声が機体まで轟く中、二人のグレゴールは互いに無線機を通して言葉を交わす。その言葉はどちらも相手に対する蔑意と怒りに満ちており、一触即発の雰囲気すらある。
『二人ともいい加減にするんだな。今回はこのシヴァが一番槍を務めさせてもらう。‥‥ヴァーチャーに乗った今、貴様らに俺は決して引けは取らない』
『そうであってくれるとありがたいんですがねシヴァ。‥‥ま、落とされても構いませんがせいぜい二機は道連れにしてくださいよ』
『何を‥‥!!』
『いい加減にしろ貴様等! いいか、今回の戦い、貴様らの圧倒的勝利をもとに作戦を練ってある! 勝つことは当然、そして‥‥‥‥魔に属する者を殺しこい! それだけだ』

 ネフィリムでの殴り合いにまで発展するかと思われた二人の口論は、ウェイブの怒声によってかき消される。ラインホールド隊は皆、最後の戦いへ赴く緊張からか舌打ちを放ちながら期待を空に舞わせた。
『さあ、いきましょう! ラインホールド隊出撃!! ‥‥魔に属する者を殺すため、そして人を支配するため、せいぜい頑張ろうじゃありませんか!! 魔に属する者のバカどもにはには人の支配は重すぎますよ!』

<瑠璃>
「広島テンプルムがこの瑠璃に向かっている。今回お前達に担当してもらいたいのはヴァーチャー三機を含むラインホールド隊12機。厳しい戦いになると思うが、なんとかこいつらを撃退して欲しい。‥‥魔凱を12組貸し出す。‥‥‥‥正直これで精いっぱいだ。何とか‥‥やつらをこの瑠璃に近づけさせないでくれ」
 ヴィルは必死に動揺を隠そうと掌にたまった汗を拭いながら、魔皇達に魔凱を手渡していった。
シナリオ傾向 魔凱殲騎戦
参加PC 筧・次郎
レイ・オオギリ
御鏡・裕
新居・やすかず
凪刃・凍夜
御堂・陣
陣内・晶
六堂・京
白神・朔耶
立木・舞亜
ヤスノリ・ミドリカワ
天狼寺・瑛斗
【瑠璃・紫の夜】ラインホールド・決戦!
「いよいよ決戦の時は来た! ここに集いし者のなかにはラインホールドに因縁あるものがおるだろう。私もその一人だ。瑠璃防衛では洋平にゼロ距離射撃を敢行し落とされ、結界強化戦でも落とされてしまった‥‥だが今日この日が撃墜と言う忌まわしき記憶の最後となるはずである! 作戦を冷静に遂行せよ。ならびに総員‥‥死ぬな! 生きて勝利の祝杯を挙げようぞ! 私がおごってやる!!」
 ヤスノリ・ミドリカワ(w3f660)は自らの眼下に広がる十二機もの‥‥瑠璃に存在できる魔凱殲騎の半数もの部隊を視界に、恒例ともなった演説をおこなって仲間と自らの感情を鼓舞する。因縁深きラインホールド隊との決戦に望む以上、並大抵の決意では生き残ることはできないということを彼自身よくわかっていたのだ。
「ヤスノリ様、おごるといっても‥‥‥‥予算がありませんけど‥‥」
「心配するな。この戦いで全員生き残ったなら、あの悪名高き瑠璃の会計も打ち上げ代くらい出してくれるだろ」
 ヤスノリ家の財布の紐を預かっている存在として、奢るという発言に対して苦言を呈した逢魔・メグミ(w3f660)であったが、無線機から流れ出した冗談めかした御堂・陣(w3c324)の声によって、決戦を前にして小さく胸をなでおろした。
「打ち上げ会費の心配もいいが、とりあえずそれは生き残った後で考えないか? この戦いで生き残ることが出来るかは正直な所分からない。‥‥でも生き残り、そして勝ってみせる!」
 決戦前に心を落ち着けたいのか、殲騎に取り付けられた無線機からは絶え間なく声がもれていた。六堂・京(w3d605)や魔皇達は自らの中にある恐れや不安を打ち消すために、ただ決戦のときがくるまでしゃべることをやめない。

「皆さん、長話はこのあたりで打ち止めにしておきましょうか。敵に通信が漏れたら厄介ですし‥‥‥‥どうやら本日のVIPさんたちが到着されたようですからね!」
 良くも悪くも人間らしさを出す魔皇達に筧・次郎(w3a379)はやれやれとため息を吐くと、視界の遥か先に待望の黒い『点』を確認する。迷うまでもない。徐々に輪郭をはっきりとさせるその姿は間違いなく‥‥
「シヴァとかいうグレゴールが搭乗しているヴァーチャーですか。初劇で撃破できないと敗色濃厚ですね」
「そうそう。だからこそ私たちがやらないと‥‥ね!」
「ですね‥‥これで最後にならないように‥‥力を振り絞っていきますか!!」
 自分たちに死をもたらす存在と十分になりうる敵を前に、御鏡・裕(w3a812)と逢魔・涼子(w3a812)は互いに声を掛け合って殲騎を前に進ませる。
「御鏡さん、移動するのはもう少し待ってください。まずはディフェンダーの方が攻撃を仕掛けます。‥‥さあ、皆さん。いよいよですが戦いに赴く準備はよろしいですか? 帰るならこれが最後のチャンスだと思いますが」
「まさかここまできて帰るっていう選択肢はありませんよ‥‥。でも僕が魔凱殲騎に乗るなんて、本当に世も末ですね。まあ任された以上はやるだけやってみますよ。‥‥陣内晶、一世一代の大アバレだ!」
 全体の状況を素早く判断し、味方部隊に的確な指示を送る役目であるコマンダーという役割についた新居・やすかず(w3b135)はいきりたつ御鏡を一旦静止させると、初撃を仕掛けるディフェンダーへ声をかけた。陣内・晶(w3c605)は苦笑いを浮かべながらもその指令にいち早く反応し、もはや確実に確認できる一機のヴァーチャーと、その後ろから迫ってきている十一機のラインホールド隊を見据える。
「‥‥さあ、いよいよこの時がやってまいりました。いかに魔凱とはいえヴァーチャー三機相手にそんなに長くはもたないなんて、賢明な皆さんなら既にご存知でしょうけどね。先ほど御鏡さんも申しましたが、初撃であのわかりやすい敵を撃墜しないことにはこちらに勝ち目はありません。失敗したならあとはただ敗戦必至の無意味な抵抗なんて、何とも興の冷める戦いに巻き込まれてしまいます。‥‥話が長くなりすぎですか? わかりやすく言いましょう‥‥‥‥作戦開始の時間です!! せいぜいこの戦いを最後まで楽しもうじゃありませんか!」
 感情を抑えきれないように興奮した筧の声がスピーカーから轟き、ディフェンダーを構成する殲騎たちが一斉に前方へ躍り出る。狙うは、一番槍を狙い考えなしに突撃してくるヴァーチャーの早期撃墜!!

『はっはぁああ!! 魔に属する者よ、貴様らなど所詮人に毛が生えた程度の下等種族に過ぎん! このシヴァが、貴様らを冥土に連れていってくれる!!』
 手柄を急ぎ、目を血ばらせながらラインホールド隊の統率を無視して先走るは広島グレゴールNO2、シヴァであった。ヴァーチャーは得物を握り締め、今にも切りかからん勢いで突き進んでいる。
『ゲシュタ様‥‥シヴァ様は少し突出し過ぎでは‥‥‥‥』
 あまりにも隊の統制を乱す行動に、ゲシュタのファンタズマ・レイヌは疑問の言葉を投げかける。総合力で勝負すれば敗北の可能性は薄い。しかし何故自らの主は敗北を招きかねないような愚を黙認するのか。
『いつもの通りの模範解答ですねぇレイヌ。敵が伏兵も罠もなしで攻めてくるとは正直考えにくいでしょう。‥‥ですから、罠の解除役に一人突撃してくれると非常にありがたいわけです。奴も力だけはありますから何機かは道連れにしてくれるでしょうしね』
 ファンタズマからの質問に、ゲシュタは無線機の電源を切ってさも当然のように説明をはじめる。
 彼が危惧していたのはインプ魔凱殲騎であった。姿がなく突然襲い掛かってくるその能力はラインホールド隊にとって最も注意しなければならない脅威である。並びに、他にも罠がある可能性は極めて高い。それを‥‥たかだか一人の馬鹿を犠牲にするだけでなくせるというのなら、それは彼にとって十分戦略と呼べるものであった。
 ‥‥だから話が終わる頃にはファンタズマは無言のまま、シヴァ機撃墜後のことを考えていた。
『シヴァさん。一番槍なんて格好つけたんですからせいぜい頑張ってくださいよ!』
 無線の電源を入れ、シヴァに声を送るゲシュタの声はどこか嬉々としていた。数々の戦いの中で、彼『ら』の心はどこか崩れかけていたのかもしれない。

「命を絶つことは何と楽しい。奪い合うことはそれよりも尚‥‥。くっくくくく‥‥‥‥」
 筧もこの戦いに喜びを感じずにはいられなかった。無論、彼とて戦いを恐れていた時期はあった。‥‥だが、いつから彼は慣れてしまったのだろうか? そして命を奪い合うことが楽しくなってしまったのだろうか?
「推奨射撃接点まで‥‥残り‥‥八秒‥‥七秒です」
「おっと、嬉しさのあまり時間を忘れてしまうところでした。この戦いが終わったなら正確無比な時計でも購入しましょうか。‥‥きれいに砕け散ってくださいよ!!」
 逢魔・鳩(w3a379)のカウントが終わると同時にレプリカント魔凱殲騎から無数の弾丸が発射され、ヴァーチャーめがけてつき進んでいく。
『愚かなり魔に属する者よぉ!! この力の前には、神に選ばれしこの力の前には、何人たりとも無力なり!!』
 刹那、魔凱殲騎の集中攻撃を切り抜けて、硝煙の中から目を覆いたくなるような光に武器を包ませたヴァーチャーが現れる。武器は筧の殲騎の肩口を切り裂き、ついで突き出された足は殲騎を海面に叩きつけた。
「うろたえるな! ディフェンダーは最初の作戦を予定通り遂行しろ!」
「‥‥レイ、そのヴァーチャーは早目にコンビネーションで撃破しようじゃないか!」
 だが、レプリカント魔凱殲騎が沈んだ海へ追い討ちをかけようと狙いを定めたシヴァへ、その海中から二筋の攻撃が放たれた。六堂と天狼寺・瑛斗(w3i745)は、狙撃の成功を確認するや否や素早く海から浮上して、浮き足立つ魔皇軍へ指示を送る。
「もちろん! こいつらに‥‥ゲシュタに俺達の力をみせつけてやる!!」
 先ほどまで筧の殲騎の肩に片足を置いていたレイ・オオギリ(w3a594)操る魔凱殲騎が唸り声をあげ、ヴァーチャーへ向けてその魔皇殻を振り落とす! 鋭い音と衝撃が両者の身体へ伝わり、力と力のぶつかり合いは両者の機体を弾き飛ばした。
「大丈夫かレイ!?」
「今まで散々煮え湯を飲まされ続けてきた相手じゃが、今度はわしらが煮え湯を飲ませてやろうかの。‥‥逃さん!!」
 だが、組織的な編成を形成している殲騎と、単機で突っ込んだネフィリムでは状況がまったく違う。レイの殲騎を天狼寺が受け止め、ヴァーチャーへ白神・朔耶(w3e749)が放ったワイヤーが巻きつき、ネフィリムのバランスが大きく崩される。
「あらら‥‥みるからにチャンスよ〜〜」
「わかって‥‥‥‥!!」
『なめるなぁ魔に属する者ぉ!!』
 白神は逢魔・鵺(w3e749)の進言に従って追撃を仕掛けようとしたが、ヴァーチャーはワイヤーを握ると、あらん限りの力で殲騎を振り回す。
「ふん、それくらい‥‥甘く見ているのはどっちじゃ!」
 殲騎はすぐさまワイヤーを手放し、姿勢の崩れを最低限に抑える。さらには続けざまに投げられた魔皇殻はヴァーチャーの頭部を貫いた! ヴァーチャーは力なく海中に落下していく。
「ずいぶんあっけないですね。この調子で‥‥」
「ハルナ、油断は禁物だ。最後の一機がいなくなるまで気を抜くな! ‥‥こちらアタッカー班、シヴァ撃破に成功した。今からそっちの援護に向かう!!」
 あっけない幕切れに呆然とする逢魔・ハルナ(w3c324)を一喝すると、陣は殲騎をラインホールド本隊へと向けた。

●(残機、神帝軍側:11機  魔皇軍側:11機 不明機:両陣営1機)
『さあさあさぁ、考えてみればあなた達とは長い付き合いになりますがこのあたりでお互いの関係も終わりにすべきじゃないですかね!!』
「まったくもってその通りだな。その声‥‥聞くだけで耳が腐りそうだ!」
 ゲシュタのヴァーチャーから放たれた一筋の光条が凪刃・凍夜(w3b167)の魔凱殲騎を包み込み、防御力に長けるはずの装甲を突き破る。
「凍夜、ヴァーチャーが持っているものはバスターライフルより撃つ間隔が短くて、威力も強い武器みたい。予想次発発射可能時間まで‥‥三分!」
「まったく、よく敵は次から次へと厄介な武器を開発してくれるな」
 距離をおいた場所から放たれたにもかかわらず機体を揺らすその衝撃と、逢魔・琉璃(w3b167)からの報告に、凍夜は額から流れ出す汗と鮮血をぬぐうことも忘れて必死に回避行動をとっていた。
「凍夜さん、そっちに洋平が‥‥他、援護を!!」
 新居からの報告に凍夜の眼光が一気に鋭さを増し、殲騎の銃口がたった一機のヴァーチャーへ向けられる。幾多の弾丸を切り裂いて現れたその機体は、最強に最も近いグレゴール、洋平!!
「‥‥っ、洋平。悪いが今回、まともにお前と勝負するつもりはないんだよ!」
「だあぁあ!! 超援護攻撃ぃい!」
 洋平の襲来に凍夜は迷わず背を向け、後退を図る。そしてその間隙を縫って晶が放った矢が、ヴァーチャーの胸当ての部分を掠める。ヴァーチャーは凍夜の追撃をやめ、今度は晶の殲騎へと向き直った。
「あれだけ気合を入れてみたのに効いてないみたいですねぇ。‥‥まずい、リアンナさん。逃げましょう!!」
 横合いから不意をついた攻撃にもかかわらず、ほとんど効いている様子の見えないヴァーチャーの様子と、自らが置かれている状況を晶の頭の中でほどよくミックスさせると『撤退』という二文字が鮮烈に浮かぶこととなった。
「まったく、マットの上ならばこんな奴らなどすぐさま3カウント取ってやりますのに‥‥後方にヴァーチャー、左右に敵ネフィリム、正面に一機、いずれも‥‥!!!」
「どうやらきょうは厄日みたいですね。‥‥リアンナさん、ビットとベホ○ミ(癒しの歌声)の準備はいいですか!!?」
 逢魔・リアンナ(w3c605)の声を聞かずともわかる自らの状況に、晶は自らの頭をぽりぽりと掻くと、意を決したように叫び声をあげた。せわしないかのんびりかのどちらに分類されるかといえば、間違いなく後者に分類されるであろう彼であったが、この状況でどのような行動を取るべきなのかということは十分に理解していた。
「了解です!! 手の空いている他の機体が援護にかけつけるまで‥‥旅の終着駅をこんなところにしないためにも‥‥絶対に切り抜けてみせます!!」
 リアンナの声が轟くとともに魔凱殲騎からビットが放出され、前方の殲騎へ強力な集中攻撃を打ち込んでいく。爆発した真ワイズマンクロックは爆煙をもたらし‥‥彼の殲騎は行く手を遮っていた正面のネフィリムと共に、力なく落下していった。
「陣内さん!! ‥‥魔も神の徒も、戦い以外の道も探し始めた。それでもまだ命令に従うだけなのか!? 中井洋平!!」
『だが‥‥‥‥』
『あなたは黙っていなさい洋平!! 魔に属する者よ、せいぜい吼えるがいい! 色ボケ馬鹿がとるべき手段は、生き残る手段は命令に従うのみなんですよ。‥‥さあ、戦いの中でその命を落せぇ!!』
 追撃に行こうとしないヴァーチャーを尻目に、逢魔・翠玉(w3f353)は素早い動きで晶の殲騎を受け止め、そして洋平へ向けて叫んだが、返ってきたのは彼の声ではなく、ゲシュタの下卑な嘲笑と、彼の殲騎へ向けられた砲門であった。翠玉は晶の殲騎を離さぬまま、二機のヴァーチャーを睨み据える。
「ゲシュタアアァァ!! 空色の翼は倒すべき敵が居る限り、幾度でも舞い戻る! 空騎士と共に!! きょうこそお前が創りだす、ふざけた世界に終止符をつけてみせる!!」
 レイの殲騎が轟音をあげ、突き出されたシューティングクローはヴァーチャーを弾き飛ばす! シヴァを撃墜したことによって、アタッカーに配属されていた殲騎が大挙して押し寄せてきたのだ。
『っ、ちぃ! シヴァの奴、一機しか道連れにできませんでしたか。洋平、何をぼさっとしているんです!! 早く援護に‥‥‥‥』
「そうやって決して自分の手を汚さず、仲間を貶す戦い方‥‥‥‥反吐が出るんだよ!!」
 真シルバーエッジが光り輝き、魔凱殲騎が猛烈な速度でヴァーチャーへと向かっていく。烈火の如く放たれた咆哮は、レイの周囲の雑踏を吹き払った。
 ‥‥そして、鳴り響いたのは耳を劈く金属音。そして、魔凱殲騎の右腕が海面に落下した音であった。
『っ、勘違いしてもらっては困りますねぇ‥‥‥‥貴方が何度舞い戻るのかは知りませんが、真っ向から突っ込まれてヴァーチャーが負けることなど有り得ないんですよ!!』
 ヴァーチャーは脇腹部分に深い傷を負いながらも、引き抜いた鋭い刃で魔凱殲騎の腕を切り捨てたのだった。
「まだだ、まだ‥‥俺は終わっていない!!」
「熱くなりすぎるなレイ!! こいつが一人で倒せるくらい弱かったら、誰もこいつを恨んでなんていない!」
 殲騎の片腕を失い、大きくバランスを崩しながらも尚咆哮を轟かせるレイの横へ、天狼寺が無線機で話し掛けながら機体を寄せる。レイもその声に諭されたのか、先ほどの激昂が嘘のように天狼寺の殲騎と共に後退していった。

『洋平‥‥‥‥』
『わかっているよタニア。でも僕は‥‥何が正義であれ、今は進まざるを得ない!!』
 ゲシュタからの援護要請に、洋平は下唇を噛みながらも機体をもう一機のヴァーチャーへと向ける。
「悪いな、お前の相手はこの俺だ! ヒーローは敵が強ければ強いほど燃えるんでな!」
 だが、ヴァーチャーの援護を、星の雫によってうっすらと輝く亜音速の機体が阻止する。陣は真クロムブレイドの一閃でヴァーチャーの注意を自らに向けさせると、真デヴァステイターで牽制を行う。
『陣さん、できれば戦いたくはありませんでしたが‥‥立ちふさがるのなら!!』
 だがその程度の牽制など洋平はものともせず、ネフィリムに囲まれて動きの鈍った魔凱殲騎へ一気に距離を詰める。轟音と共にクロムブレイドは弾き飛ばされ、殲騎の胸部に深い傷が記された。
「その程度か洋平!? どれだけ実力があるのかは知らないが、戦いに迷いのあるような奴に、俺は負けるわけにはいかないんだよ。多くの仲間が俺達の勝利を願ってる。それに応えるのがヒーローって奴さ! こんなとこでやられたら、すっぽかしてきたゲヘナの皆に顔向けできないからな。‥‥いつも通り行くぞ、ハルナ!!」
「ハイ! 陣様の力と私の想いが合わされば‥‥Jブレイカーは無敵なんです!」
 だが、陣と逢魔・ハルナ(w3c324)は意識が飛びそうになるほどの衝撃の中、素早くシューティングクローを構えなおすと、渾身の気迫と力を込めてヴァーチャーを逆に弾き飛ばした。‥‥だが、ヴァーチャーはすぐに体勢を立て直すと、陣の魔凱殲騎めがけて突進していく。
「悪いな、メインイベントは最後にとっておくタイプだからな。‥‥戦術的後退をさせてもらう!」
 速さだけならナイトノワール魔凱殲騎のほうが上である。陣は素早くたてなおすと、後退を開始した。

●(残機、神帝軍側:10機  魔皇軍側:10機 不明機:両陣営1機)
「ラインホールド、お前たちに敗北っていう事実を受け入れさせてやるよ!」
 真デヴァステイターが火を噴き、パワー級ネフィリムの分厚い装甲を貫いていく。だが両陣営の戦力数が同等である以上、コマンダーとして支援攻撃にあたっていた彼の殲騎も乱戦に巻き込まれ、全面に押し出される形になってしまっていた。
「背後から敵! ‥‥絶対に勝利を掴んで帰ろ、六堂」
「もちろんだ。こんなところで倒れて‥‥たまるか!!」
 己の背後で必死にナビを続ける逢魔・八条光希(w3d605)から報告に、六堂は迷うことなく真クロムライフルを逆に持ち、腕と胴の隙間からネフィリムを打ち抜く。放たれた衝撃はパワーの頭部に命中し、敵はがくりと体勢を崩したかと思うと、そのまま落下していった。
「どうだ! これで‥‥‥‥!!」
『よくも味方機を! 沈めええぇええ!!』
 だが、六堂が勝利の凱歌をあげる暇もなく、今度は正面からネフィリムが突っ込んでくる。光り輝いたネフィリムのその腕は、魔凱殲騎の装甲を、非情なまでに深く貫いた。
『ハハ、どうだ魔に属する者よ!!!』
「‥‥残念だったな。‥‥俺達の役目は‥‥‥‥コマンダー‥‥だったんだよ!」
 勝ち誇るネフィリムを尻目に、六堂は力を振り絞って両腕でネフィリムの腕を掴み取る。続いて八条が忍び寄る闇を展開し、ネフィリムの注意を‥‥後方からほんの少しだけ逸らした。
「六堂、指示を感謝します! これで最後ですよ!!」
 ネフィリムの後方から亜音速の速さで近づいた御鏡の殲騎が放った真パルスマシンガンの弾丸が、ネフィリムを貫いていく。‥‥そして六堂の殲騎とネフィリムは、そのまま海面へと落下していった。
『一機撃墜おめでとうございます! お仲間を犠牲にして勝ち得た撃墜マークはさぞ心地よいものでしょうね!!』
「‥‥っ‥‥ここまでですか‥‥」
 御鏡が下卑な声とヴァーチャー特有の唸り声に気づいた時、彼の殲騎と身体はヴァーチャーから放たれた猛烈な光に包まれ‥‥海に落ちていった。
「メグミ、ビットを放出してくれ!! ‥‥こいつを、仲間を笑いながら倒していくこいつを‥‥‥‥俺は看過するわけにはいかない!!!」
 最大数放出されたビットが攻撃動作から抜けきれぬヴァーチャーを取り囲み、一斉に射撃攻撃を浴びせていく。予想外の集中砲火に、黒煙をあげてよろめくヴァーチャー! 誰の目にも撃墜は間近に思えた。
『神輝掌!!』
 だが、攻撃に注意を傾けてほんの一時ではあったが注意が散漫となったヤスノリの殲騎をネフィリムの光輝く右腕が貫いたのは、ヴァーチャーが衝撃に耐え切れずに撃墜される、ほんの少し前であった。
「‥‥無念‥‥‥‥だ。メグミ‥‥‥‥君と‥‥未来を‥‥」
 ヤスノリが操る殲騎もまた、黒煙をあげて力なく海面に落下していった。

●(残機、神帝軍側:8機  魔皇軍側:7機 不明機:両陣営1機)
「後方に一機きてるわよ〜」
「鵺、御苦労じゃ。‥‥一気に決めるぞ!!」
 魔凱殲騎が空中で回転すると、シャンブロウ型のパワーに任せて後方につけていたネフィリムを弾き飛ばす。
「‥‥終わりだ!!」
 そして姿勢制御もままならない敵ネフィリムを、凍夜の魔凱殲騎が携えた真グレートザンバーが一刀のもとに切り捨てる。爆音が轟き、ネフィリムはまっさかさまに落下していった。
「これで数の上では互角になりました。戦局は‥‥危ない!!」
『愚かなり魔に属する者ぉ!! この俺があの程度で撃墜されたとでも思ったかぁ!!』
 相克の痛みを感じた琉璃の言葉が終わるや否や、唐突に海面が盛り上がり、その中から銀色に光り輝く刃と撃墜されたはずのヴァーチャーが現れた。なぎ払われた刃は凍夜の殲騎に僅かな回避しか許さず、殲騎の両足を切断して海中に落下させる。
 疑問に思っていたことではあったが、この激しい戦局の中、海中に落下した敵の撃墜確認をする余裕など、どの陣営も持ち合わせていなかったのだ。
「凍夜! ‥‥それならば、今度こそ貴様を海の藻屑と‥‥邪魔をするなぁ!!」
 仲間の撃墜に、白神は激昂して体勢の整わぬヴァーチャーへと突撃を敢行するが、それはパワー機の捨て身の防御によって無効化された。パワーは黒煙をあげて落下していったが、彼女の殲騎も深手を負わされて撤退を余儀なくされる。
『その機体を逃がすな! 前方を固めるんです!!』
 だが、ゲシュタ率いるラインホールドが安易な撤退を容認するわけがない。前方にパワーを配備させ、そのパワーは殲騎のコクピットめがけて腕を光り輝かせる。
「ここで、こんなところで‥‥このわしがただ敵に背を向けて撤退するとでも思ったかぁ!!」
 白神が取ったものは、祈りではなく三本の魔皇殻であった。突き出された武器と気概はネフィリムのそれと交錯し、両機とも海へ落下していった。

●(残機、神帝軍側:6機  魔皇軍側:5機 不明機:魔皇軍1機)
『ハハハッツハアアァァ! 見たか魔に属する者よ、この力が選ばれし者の力!! 藻屑と成り果てるがよい!』
 海面からゾンビのように復活を遂げたシヴァは、口元に狂気ともとれる笑みを浮かべて次々に殲騎へ攻撃を仕掛けていく。
「これ以上‥‥やらせない!!」
 狂人と成り果て、ただ人を殺すことを純粋に楽しむシヴァに、立木・舞亜(w3f353)は普段の彼女からは想像もつかぬほど厳しい表情で大鎌を振り落とす。ヴァーチャーは素早く回避行動をとったが、魔凱殲騎のショルダーネイルから放たれた弾丸は大鎌の横刃に命中し、斬撃の軌道を変更させ、ヴァーチャーの肩口に深々と食い込んだ。
『その程度か魔に属する者ぉ!! 致命傷を外したのが‥‥!!』
 だが、言ってしまえばその程度である。この戦いにおいては撃墜程度のダメージを与えなければ相手は衝撃を気迫で巻き返してくる。優しさゆえ、コクピットを狙えなかった舞亜に、ヴァーチャーの拳が振り落とされた。
「後退してください立木さん。こんな戦いに狂った奴の相手は‥‥あなたではつらすぎます」
 新居が放ったミサイルがヴァーチャーに命中し、シヴァは拳を振り落とせぬままに弾き飛ばされる。新居はそのまま前進すると、舞亜を後退させ、ヴァーチャーと一対一の状況で向き合った。
「相手はラインホールド隊、しかも、傷を負っているとはいえヴァーチャーか‥‥。でも大丈夫、今回もきっと僕は生きて帰れる」
「ねえ、やすくん?あたしも生きて帰りたいんだけどな。生きて帰れるのが、やすくんだけってのは不公平なんじゃない?」
 いうなれば絶望的ともとれる状況に、新居と逢魔・ミルダ(w3b135)は自らと自らのパートナーに言い聞かすように言葉を紡いだ。
 そして数秒の静寂の後‥‥ヴァーチャーへ向かってたった一機で突撃する!!
「がああぁぁああ!!」
 咆哮と共にぶつかった初撃、そもそも遠距離攻撃を得意とする彼の機体に勝ち目などあるわけがなく、発射したミサイルは回避され、かわりにヴァーチャーから突き出されたミサイルが殲騎ののど元を狙う!
「あなたは強いかもしれませんが、頭は少し悪いみたいですね! ‥‥相打ちなんて御免ですが‥‥落させてもらいます!!」
 ヴァーチャーが突き出した刃が殲騎を貫く間際、新居は何とディフレクトウォールを投擲し、先ほどの舞亜の攻撃で傷ついたヴァーチャーの右腕を肩口から武器ごと弾き飛ばした!
『おのれええぇぇええ!!』
「これで、終わりだああぁああ!」
 予想外の攻撃に激昂し、左手に握った短剣を振りかざすシヴァ! 新居は構わず懐に飛び込むと、零距離から、ありったけのミサイルをネフィリムのコクピットめがけて打ち込んだ!! ‥‥左手が殲騎を突き破り、新居の殲騎もまた、落下していった。
『ははっ!! どう‥‥だ! これで‥‥ぇ‥‥‥‥』
「すいませんねぇ。生命力という点ではゴキブリの右に出るものはいないんですよ!」
 コクピットを露にされながらも辛うじて撃墜を免れたシヴァに、同じく海面から再び現れた筧から非情な攻撃が加えられる。
「だめです筧さん、殺しちゃ‥‥殺しちゃいけません!!」
 しかしパルスマシンガンから攻撃が放たれる間際、舞亜の殲騎がヴァーチャーを側面から弾き飛ばし、シヴァをコクピットから脱出させることによってヴァーチャーを撃墜させ、自らの殲騎の機体に弾丸を受ける。
「あなたは‥‥!!」
 筧の喉のすぐ下にまで、吐き気のような気分と罵詈雑言の類の言葉がダース単位でこみ上げてくる。だが、同時にこんなところで言い争っていたとしても埒があかないという認識と、舞亜の仲間である晶の逢魔に回復されたという事実からの負い目、そして何より密からの報告が、喉元まででかかっていた彼の言葉をすんでのところで飲み込ませた。
『ブラスとウェイブが争い、両者戦死。広島テンプルム崩壊』
 という報告に。

●(残機、神帝軍側:5機  魔皇軍側:5機)
「はははっ!! くくく‥‥!! やりましたよ皆さん!! どうやらこの戦争、私たちの勝利みたいですねぇ! それにしてもざまぁないですねゲシュタ! あなたたちは‥‥」
『だからどうしたというんです?』
 予想だにしていなかった、彼からすれば目の上のたんこぶが一気に数十と取れたような報告に、筧は先ほどまでこみ上げていた吐き気も忘れて狂気乱舞する。‥‥だが、いつの間に周波数を合わせたのか、魔凱に積んであった無線機から放たれた、久しぶりに聞くグレゴールの言葉は、ひどく落ち着き払っていた。
『好都合じゃないか。ここでお前たちさえ殺せばこの私が広島の長だ。‥‥別に今更ウェイブに思い入れなんて微塵もないんだからなぁ!』
 衝撃の報告はヴァーチャーの耳にも届いたが、ゲシュタを含むラインホールド隊はその報告に動揺するどころか、かえって奮い立つ。もうあの恐怖政治をしいていたウェイブはいない! この戦いに勝利すれば自分たちこそが、選ばれた自分たちこそが、全てを支配できる!!
「人間止めた癖に人の上に立つなど反吐が出ますね。僕らはお互いバケモノ同士、憎み合い殺し合うのが似合いです!!!」
『ああ、殺しあおうじゃないか筧次郎!! この永遠とも思える快楽、絶頂! お前にもわかるだろうが!! さようならだ!!』
 魔凱殲騎から放たれた無数の爆薬とヴァーチャーから放たれた一条の光は交錯し、互いの機体を打ち抜いた。
「ははは!! ゲシュ‥‥タァ‥‥‥‥」
 筧は最後まで口元に笑みを浮かべたまま、静かに海へと沈んでいった。

●終幕(残機、神帝軍側:5機  魔皇軍側:4機)
『どうやらこの私の勝ちのようだなぁ!! さあレイヌ、次はどうすればいいかのナビを‥‥』
『終わりに‥‥しましょう。ゲシュタ様。‥‥私は‥‥‥‥もう‥‥もちそうに‥‥ありません‥‥』
 一騎打ちを制したゲシュタは、己の背後から聞こえる弱弱しい声を耳に、初めてその顔に恐怖を浮かべた。‥‥当然の話であった。これだけ衝撃を受ければ、自分はともかくファンタズマが無事でいられるわけがない。
『狂気の‥‥数々‥‥終わりに‥‥しましょう‥‥‥‥。自らを回復するシャイニングフォース‥‥使わない‥‥私の‥‥抵抗‥‥』
『馬鹿を言うなあレイヌ! お前がいなければ、選ばれし、せっかくここまで登りつめた‥‥!!』
「ゲシュタアアァァ!!! 天狼寺さんの志を引き継ぎ、お前を討つ!! 今まで苦しめた人たちに詫び、そして‥‥砕けろォ!!」
「ゲシュタ! お前のふざけた考え! 行動! すべて! このJブレイカーが壊してみせる!!」
 理由は違えど最早動かない二機のヴァーチャー、天狼寺の命がけの引き付け策により救援に行けないパワー、怒りと悲しみに震え、拳を振り落とすレイと陣!!
『馬鹿な‥‥この私が‥‥‥‥ぁ‥‥‥‥』
 二機の殲騎から放たれた攻撃は、ヴァーチャーを中に乗っていた二人ごと貫き、長かった戦いの終焉を告げたのであった。

「どちらかの完全消滅なんて安直な道で、ほんとに幸せになれるのですか? 相手が消えた後に残る胸の蟠りを、一生背負う気ですか!? 目を覚まして‥‥」
 洋平が動けなかった理由。己を盾のようにしてヴァーチャーの前に立ちふさがった舞亜の言葉の前に、洋平もまた、がっくりと膝から崩れ落ちた。
『僕は、僕はああぁぁぁ!!』
 ウェイブ、ゲシュタの死。‥‥全てが終わったことからか、少年は年相応の幼い声で、ただコクピットに顔をうずめてなきじゃくったのであった。




 残ったラインホールド隊はいずこへと撤退していった。
 広島テンプルムは洋平と魔皇の共同管轄となり、マザーと感情集積路一機を除いて完全排除となった。恐怖政治の終わりに人々は狂喜し、戦いは一応の終局を迎えたのであった。

 これから先のことについては、現在洋平と瑠璃側で協議を行っている最中である。

<戦果報告、神帝軍側:撃墜9機 大破3機(撤退)  魔皇軍側:撃墜九8機 大破4機>

 ‥‥以上! 作戦は成功した。諸君らの健闘に感謝する!!