謹賀新年

 宵に帳落ちたる、無音の時。
 唯、其処だけに響く。

 三百と六十五の日を緩慢に振り返る、除夜の鐘の音に誘われる様に。
 一つ、又一つと粉雪は降り落ちて。

 大地に白粉を施した、其れも軈て人の踏み締める温もりに、儚くも消えて逝く。

 総ては、百と八つへ、終わり無い回帰に巡る。

 穢れを祓い、今に残した物全て抱え。
 先に待つ未知なる出逢いを、祈る様に。

 軈て幾重にも抱えた荷が、此の足取りを鈍らせたとしても。
 手放せば舞う粉雪の様に、報われる筈の想いも無に帰すと言うのならば。

 響く音に背いて、一つばかり。
 負の業を胸元にそっと、壊れ物の様に仕舞い込む。

 どんな醜い願いも、恥ずべき想いも。
 何時の巡りに、赦される事も有るかも知れないから。

 唯、祈る。

 其の小さな手で、彼想いも余す事無く、掬い取る事の出来ますように。
■CHIRO■