ちーむ・かわうそ?
ダイジェストコミック+挿絵+ゲームノベルサンプル
ももいろ・こむぎいろ
神聖都学園。
新学期を迎えた、学生達は春のうららかな午後にあくびをしたり、意気込みを込めて勉学に励んだり、様々な顔を見せている。
鷹月・紬(たかつき・つむぎ)は全ての授業が終わって、元気よく背伸びをした。
「うう〜ん。おわったぁ!」
と、緊張と倦怠感が連続して起こる拘束時間。
「さ〜って。今日はなにしようかなぁ。多分ケイは閉じこもって何かやって居るんだろうし」
と、放課後何をしようか考えていなかった。
「紬、紬!」
友人が声をかける。
「なに?」
「新しい、ケーキ屋さんできたって! しかもこの近くに!」
「え? ほんと! わたしいく!」
と、いつもの様に過ぎる日常。
勉強して、鷹月・ケイの店の手伝いをして、そしてこうして友達と遊ぶ。
色々過去に様々な経験をしたが、彼女には其れを思わせる雰囲気はない。友達の一部は知っているかもしれないがあえて口に出さない。
「おいしいねぇ」
「評判通りだよ」
普通の女子高生が甘味処巡りをする。
ファッションのこと、色恋沙汰のこと、噂。そんな話ばかり。それでも幸せなのである。
「きいて、きいて、何か神聖都で有名なイキモノが居るんだって」
と、友人が言った。
「え? いるの?」
「皆気が付いていないのか、良くわかんないんだけどさ。色々不思議な事件で見かけるらしいよ」
「おばけ?」
「いやちがう。何なのかよく分からないけど……」
と、なにやらおかしな話になってきた。
紬も何かしら興味が湧く。
「名前とか分かる?」
紬が訊いた。
「知っている人は、なんかさー "ナマモノ"とか"小麦色"とか言って、名前わかんないんだよね」
と、しょんぼりする友人。
GOFFのモバイル対応サイトでも、ナマモノスレッドがある。そこでも、名前が出ることがない。管理人が書き換えているのだろうか。
「紅茶、お代わりしようかな」
と、紬がウェイトレスを呼んだ。
其処までは良かったのだが。
「またねー」
友達と別れる紬。紬だけ独りぼうっとしていた。すると何かをみつけた。
煙草を買って、なにやらうきうきしている30歳の男。草間武彦だ。
おそらくパチンコに勝てたのだろう。それらしい紙袋を持っている。さほどモノは入っていないが、おそらく懐に収めたのだ。
「あ! 草間さん!」
紬は見とれているよりも早く、草間を呼んだ。
「はあ? ああ、紬か、なにしてんだ?」
|Д゚*) おお! かわゆい
「草間さん。お久しぶりです。あの……」
「なんだ? 又事件依頼でもあるのか? 俺は今忙しい」
「いえ……、単にお話ししたいだけです」
と、キラキラとした瞳で訴えている。
「それならOKだ」
邪険にも出来ないため、世間話ぐらいならする。
まだ、紬は足下にいる"アレ"に気が付いていない。
|Д゚) ?
そう、草間の足下に立っている。大きさ60cm程度の小麦色だ。
|Д゚) かわいい
と、一言。
|Д゚) たけぴー たけぴー
「なんだ? ナマモノ」
と、草間が下を向いて訊いた。
|Д゚) こげんかわいいおにゃのこと知り合い?
|Д゚) それって、え……
鈍い音がした。
草間のげんこつが"アレ"にクリーンヒットした。
「単に数回事件に関わっただけだ!」
|Д゚) おぅのぅ!
たんこぶが10cmぐらい出来ている。
紬は固まっている。
やっと其れを視認できた。
先ほどうわさ話であったアレなのか?
色々突っ込むどころがある、その存在に向かい、震えている。
|Д゚) ちゃー
|Д゚*) かわいい
|Д゚) かわうそ? の かわうそ? なのだ
|Д゚) よしなに
「きゃああ! かわいいい!」
|Д゚)!
紬が小麦色を抱きしめた。
なにやら、乾いた音がする。
|Д゚) ぎゃああ!
彼女は恐ろしいほどの馬鹿力。10kgの米袋を片手で5km走行も軽いかもしれない、との噂。
油断したかわうそ?はそのまま彼女のベアハッグに、涙を流しながらじたばたしている。
「おいおい、死なないだろうけど、死んでしまうぞ。紬我に返れ!」
草間が、ナマモノを引っ張った。
面白くのびるかわうそ? お餅みたいに良くのびる。
「この子は草間さんの知り合いですか? もしくはペット?」
「ちがう、俺の所は動物園になっているが、ちがう。只の連れだ」
|Д゚) がくぶる。ばがぢから こわい
のびたまま、蛇のようにとぐろを巻くナマモノ。
「かわいいなぁ」
|Д゚) しゃー!
威嚇する小麦色の蛇みたいな変なモノ。
「うう」
「どうやらこいつに嫌われたっぽいな」
草間は苦笑した。
それからというモノの……
「かわうそ? あそぼー!」
|Д゚) いやー!
紬は中庭にいた小麦色を追いかけることが多くなった。
「いいなぁ 紬。アレと仲良くなって」
ふつう、かわうそ?はそうそう人に懐かないらしい。
かなり彼の頭の中で、好みがあるのだ。その辺も結構謎。
紬は、アレを知るために、色々調べた。
あやかし荘の人々から聞き込み。というか、SHIZUKUから訊くか、長谷神社の茜に訊けば結構早く済むのだ。
そして、今日の目星はついた。
天空剣道場の縁側で茶をすすっている、袴姿の男性の膝元に、小麦色はいた。
|Д゚) よっしー
「なんだ?」
|Д゚) すとかーされてりゅの
「またか……? いやストーカーとか言い方悪いだろう。おまえは人気があるんだから。素直に喜べ」
と、かわうそ?を撫でる。
|Д゚) むう……
「かわうそ?〜おかしたべよー」
紬が道場に現れた。
|Д゚) きたー!
かわうそ?は 男性の後ろに隠れてがくがく震えている。
「あ、すみません! おじゃまします! あ?」
「ああ、キミか」
「お久しぶりです、織田先輩! 雰囲気変わりましたね!」
影斬こと織田義明、そして鷹月紬は先輩後輩だ。それに神聖都は幼少中高大がエスカレーター式とも言える巨大学園だ。何かのきっかけで、知り合っているのだ。もちろん危険な不思議事件などで。
|Д゚) !? 知り合いだったなぅー!?
かわうそ? 大ピンチ。
影斬はこの件について、紬の味方になる。100%の確率で。
|Д゚) こわい、紬、怖い
がくがく震える小麦色。
「ぎゅー させて ぎゅー」
もう我慢なら内容で、両手をにぎにぎしている。
|Д゚) いやー!
ちなみに、紬の周りには猫の一匹も近寄らない。
抱きしめの地獄を本能で知ったのだ。
|Д゚) カバディ カバディ
「ははは、仲が良いな」
笑う影斬。
|Д゚) ちゃう! なかよくない!
「だいじょうぶだよー あそぼー」
紬、何故か棒読みで呼びかける。
彼女が彼に触って和める日は来るだろうか?
多分無い。
そう、彼女が何故動物などに嫌われる性格かを……自覚するまでは。
(C) 2006 Terranetz corporation. All rights reserved.