江戸艇花柳 あやかし奇譚
■オープニング

 柳は緑、花は紅。
 初夏の風が表通りを駆け抜けようとも、色無き風が物悲しく吹き荒ぼうとも、ここにあるのは穏やかなぬくもりと春の陽だまり。
 春を売る、ここは色里、花の街――江戸艇花柳。

 大門の奥に並ぶ廓屋の一角に、この里一番の古い見世がある。中は広くて廊下にはいくつも障子戸と襖が並んでいた。
 そこに、一人の艶やかな娘が立っていた。
 見かけない顔だから新しい妓だろうか。化粧もしていないようなのに、透き通るように綺麗な白い肌と濡れた紅い唇が妙になまめかしくて、椛はわずかに息を呑んだ。
 女の自分でも思わず見惚れてしまうほどの美少女だったのだ。傾城に登りつめるのもそう遠くは無いかもしれない。
 その娘が、長襦袢姿で立ってた。
 まだ大門も開いてはおらず見世の開く時間でもなかったから、別段その事に問題はない。
 ただ、娘の立っていた場所が問題であった。
 いつからなのかは椛も知らない。
 自分がこの廓屋へ訪れた時には既にそうだった――襖や障子戸の並ぶ廊下の奥にポツンとある、開かずの木戸。
 その奥に何があるのかはわかわない。
 ただ、時折奇妙な音が聞こえてくるだけだ。
 ずるずると何かを引きずるような音。それから、カタンと乾いた木のぶつかる音がする。
 札の貼られたその木戸には、しっかりと鍵がかけられ、かすがいでしっかり柱に止められていた。
 外には窓もなく、いや、あった筈の窓は板でふさがれ釘を打たれていた。
 中に入ることは出来ず、誰かが破って入った形跡もなかったが、時折奇妙な音がする。
 けれど誰もそれについて触れることはしなかった。
 ねずみか何かのいたずだろう、ぐらいに思っているのかもしれない。
 それは椛がそうであったからだが。
「ここに……」
 娘が、椛に気付いて振り返った。
 まるで、この木戸の奥にある部屋に用があるとでも言いたげな目で、木戸に手を伸ばしている。
 椛は困ったように首を傾げて彼女に近寄った。と、その時。
「開けてはならん!」
 振り返った先で怖い顔をして、この遊女屋の遣り手婆、梅が立っていた。
「その部屋には縊鬼が住み着いておるのじゃ」


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■ライターより

<募集要項>
■江戸艇−花柳に、お客、或いは花魁役としてに赴き(強制召喚され)
■開かずの木戸を開いて縊鬼を退治し、娘の用事とやらを手伝ってあげてください。
■娘はその部屋で探しものをしているようです。
■退治する方法はお任せします。
■時空艇詳細については▼こちらを参照ください。
 >>http://omc.terranetz.jp/creators_room/room_view.cgi?ROOMID=1559

※縊鬼:首を括って自殺した人の怨念が鬼となって蘇ったもの。
 自分が自殺した時の光景を夜毎繰り返し、
 縊鬼に出会った者は皆、首をくくって死ぬことになると言われている。


<プレイングについて>
■お客として来られる場合は、どんな“役”で時空艇−江戸に登場するか
 ※江戸時代の“役”なら、町人・農民・忍者・侍なんでもOKです。
■どうやって縊鬼を退治するのか
□以上を中心にお願いします。
■また、黒目かつ黒髪以外の方には、信仰宗教に関わらず必ずキリシタン狩りの踏み絵があります。
 ※その時の反応も是非お願いします。(江戸艇パスポートをお持ちの方は不要です)

■尚、妓楼が舞台である為、敵娼、或いはお客について希望があれば明記ください。

 ※指定可能NPC
 『時空艇−江戸』(斎藤晃WR)
  「楓」「椛」「梅」「柊」「楸」「杜」
 『怪聞奇譚怪奇通り』(緋烏IL)
  「蒼月・上総」「化野・兵衛」「北城・善」「皇・翠明」「ルシアス」
■怪聞奇譚怪奇通りについては▼こちらを参照ください。
 >>http://omc.terranetz.jp/creators_room/room_view.cgi?ROOMID=1447

 ※お友達同士での参加の場合は、その旨お書き添えください。
 ※人数調整の為、ご希望に添えない場合もございます。予めご了承ください。
 ※お任せでも構いません。


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