■実録!三下さんの華麗なる受難■
皆瀬七々海 |
【0305】【エスメラルダ・時乃】【占星術師】 |
【データ修復中】
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実録!三下さんの華麗なる受難
●姐御登場☆
「それじゃ、椿くん。お大事にね」
長い銀髪を掻き上げながら、かの美しき占星術師は云った。
無論。云わずと知れたエスメラルダ・時乃、その人である。
「すみません、わざわざ・・・・・・」
柄にも無く気落ちした声で答えたのは、エスメラルダの弟分である時司・椿だ。さすがの椿も40度を超えた熱には体力が持たないらしく、呟くような小さな声であった。いつもの元気は微塵も感じられない。
今日はエスメラルダはあやかし荘に下宿している椿を見舞いに来ていたのだった。
「何言ってるの、具合の悪い時はお互い様よ」
とは云っているが、ここに来てからのエスメラルダは何一つしていない。
例えば・・・彼女もいない男(弟分だが)の部屋に見舞いに行った女が普通することといえば『おかゆを作る』とか、『洗濯する』とか、『掃除をする』などであろう。
ラッキーなシチュエーションが重なったりすれば、お約束のようなシーンが待っていたり・・・と、なるはずである。しかし、司令塔的な性格のエスメラルダが、自分から椿の身の回りの世話などする筈も無かった。いつも動いているのは椿のほうである。
本日も例に漏れず、エスメラルダの周りで、椿が「お茶、飲みますか?」とか、「部屋寒くないですか?」と、逆に世話をしていたほどだ。
「申し訳ないッス・・・」
姐さんの来訪に恐縮して椿が云う。
病人の自分が申し訳ながってどうするというのか。今の彼の状態はかなりの重症だ。男として情けない限りである。
「よくお休みなさい」
「はい、そうします。・・・帰り道は気を付けてください」
「あら・・・何故?」
椿の言葉にエスメラルダは首を傾げた。
「あ・・・いや、ここって色々あるンッすよ。独りでに部屋が増えてたり、人が居なくなったり、キメラが現れたり、昨日なんか、竜と格闘してたし・・・」
実に心配そうに椿は云った。敬愛する姉御が心配でならないと云った様子だった。その顔を見るなりエスメラルダはニッコリと微笑する。
「そんなことは私にとっては普通の事よ・・・そんな顔しないの」
キメラが出没し、竜と格闘するアパートを「私にとって普通」と云う日常が、どう『普通』であるというのだろう。彼女の場合、何を基準に普通と言うのかお聞かせ願いたいものだ。
しかし、それを受けて答えた椿の返答も『普通』ではなかった。
「そ・・・そうッスよね・・・姐さんを心配するなんて、僭越でした。すみません」
そういって椿は頭を下げた。
この姐御あれば、この舎弟ありである。
「じゃあね・・・」
短く別れを告げるとエスメラルダは玄関へと向かった。
●ライバルは少年?
何処までも続く長い廊下をエスメラルダは歩いたが、一向に玄関につかない。同じような木枠の窓が延々と続いている。その窓からは、徐々に柔らかくなってゆく午後の冬の陽射しが降注いでいた。
凛とする寒さに、ほのかな暖かさが加わり、春の訪れを感じさせる。花のほころぶ時期も近いらしい。
外のそんな様子に、エスメラルダは至福の笑みを浮かべた。
そうこうしている間に角を曲がる。この角の先は玄関だ。
しかし、いつもと違い、玄関のさんざめく様子がエスメラルダには気になる。エスメラルダは話し声のするほうに目を向けた。普段は音も無く静かな玄関周辺が騒がしい。訝しく思ったエスメラルダは立ち話をしている少女に声を掛けた。
「どうなさったのかしら・・・管理人さん」
風雅な声音に微笑を乗せて、エスメラルダが云った。
「あ・・・お帰りですか?」
エスメラルダの姿に目を留め、苦笑の混じったような声で云ったのは、管理人の因幡恵美である。その隣には、見知らぬ少年と意味ありげなニヤニヤ笑いを浮かべている幼女が立っていた。
こちらをチラッと見ると、少年はペコリと頭を下げる。幼女のほうは無視であった。
「こら、嬉璃ちゃん!・・・あの、ちょっとね・・・困ったことになっちゃって」
幼女の態度を咎め、肩をすくめて恵美が云った。
「三下さんが居なくなったそうなんです・・・」
そう云ったのは少年だ。
童顔で華奢な体つきや可愛らしいと言ったほうが似合うような優しげな雰囲気は女の子のようにも見せていた。しかし、おっとりした中にも意志を感じさせる瞳が男の子であることを物語っている。
「違うのじゃ、居なくなったのではない」
「居なくなったって、どういう・・・」
エスメラルダが言いかけたところで、風采の上がらなそうな青年が何処からとも無く現れた。
・・・と同時に
「ぃぃいいや〜〜あああああああああ・・・・・・・・・・・・」
と叫び、消える。
少年は飛び上がらん程に驚き、目を白黒させた。一方、エスメラルダの方はと云うと、叫ぶ青年の残像をじっくり眺めていた。
玄関から数メートル先にある扉の前で、スーツを着た男がけたたましい悲鳴を上げながら扉の向こうへと消える。
おや?と思うと同時に、男の姿が扉の前に現れた。
そして、またまた・・・悲鳴。
「ぃぃいいや〜〜あああああああああ・・・・・・・・・・・・」
「喧しいの〜ぅ」
嬉璃は吐き捨てるように云った。
「さ・・・三下さんが・・・」
「居なくなったのではないぞ。攫われたのじゃ」
にべもなく嬉璃は少年の言葉を否定した。
「えぇッ!だって・・・」
「彼奴等の陣地に踏み込んだ形になっただけなんじゃろうが、虐めが大好きな彼奴等には関係無い。多分、今ごろ三下を痛ぶり抜いておるじゃろうな・・・」
嬉璃の言葉に驚いた少年はあんぐりと口を開け、未だニヤニヤ笑いを止めない嬉璃を注視した。
「彼奴等は『いじめられっ子来々・嫌がらせ推奨・悶絶上等☆』がポリシーじゃからのぅ・・・」
「悶絶ぅ!!・・・悶絶って・・・そんな」
「三下に運が無かっただけじゃ・・・いや、三下ごときに運なぞ求めてはかえって不憫かの」
うんうんと頷く嬉璃である。恵美もそれに倣って頷きかけ、慌てて否定した。
「三下さんにだって『運』ぐらいありますッ!」
「今、自分も頷きかけたじゃろう」
鋭い突っ込みに恵美は仰け反った。かなり痛いカウンターアタックである。
二人のやり取りの横で、先程の少年が怒りに肩を震わせていた。
「そんな・・・酷い!」
ぐっと握りこぶしを固め、決意に満ちた瞳を皆に向けた。
「僕が行きますッ!」
「遮那くん、本当ッ!!」
遮那の言葉に恵美が瞳を輝かせた。
「だって恵美さんが困ってるのを、いつまでも放っておけません。相手の正体が分かってれば、まだ何とか耐えられると思いますし」
遮那はドンと痩せた薄い胸を張って云った。
片や恵美の方は、『行け逝け☆我らがヒーロー!』と奉丈遮那(ほうじょう・しゃな)の無謀なる挑戦に瞳でエールを送っていた。
「まあ、あなた場所は分かって?」
エスメラルダは少年に微笑みかける。
「いいえ・・・」
エスメラルダの言葉に真摯な瞳を曇らせ、困ったように云った。
「それでは行けないわね・・・えっと、あなた・・・」
「僕、奉丈・遮那と言います」
「では遮那さん。何か他の方法は思いつきますの?」
「僕にはこれしかないんですけど・・・・・・」
そう云って遮那が取り出したのは、太陽の絵が描かれたタロットカードであった。それを見るとエスメラルダは「おや?」と云った顔をした。遮那の真剣な眼差しに好感を持ったのか笑みを浮かべる。
「いい案ですわね」
「はい。これには自信があります!」
やや、頬を紅潮させ、遮那は云った。
カードを扱う技術は一級だが、遮那は話術などの技術はまだまだ未熟である。自分と同じ占術師の道を先に歩む先輩が目の前に居るとはつゆ知らず、意気揚揚とカードをシャッフルし始めた。
その手付きをエスメラルダは隙無く観察した。
開かれたカードは「11」剛毅(STRENGTH)。活力と牙を抜かれたライオンのカードで、勇気・自信・偉大な力・決断・行動と危機に直面する事を示唆している。人間の精神力の強さや確固とした意志と行動力で困難に立ち向かう姿を意味するのだが、今回は逆位置で出ていた。
「う〜ん・・・つまり、外圧に屈伏するということ。欠乏。無気力。力の乱用。弱さ。不意打ち。卑怯。無駄なあがき。陰険な振る舞い。挫折する愛・・・・・・三下さんが危なーいッ!」
「違うのよ!」
エスメラルダの制止する声も聞かず、「じゃあ行ってきまーす。三下さぁ〜ん!」と叫ぶや否や、遮那は御不浄に飛び込んでいった。
「あらら・・・」
呆気にとられていたが、つい恵美は呟いてしまった。
「『11』剛毅(STRENGTH)ね・・・確かにそうなんだけど。もう既に危機には直面していると思うの・・・・・・間違ってますかしら?」
展開されたカードを拾い、エスメラルダは読み上げた。
「いいえ。あれからもう2週間だから、あるならあったで、もう何か起きてるかと思うわ」
恵美がエスメラルダの問いに答えて云った。
「正解は無気力に既に陥っている人物『三下さん』の気配及び残り香のような物に注意し、追えということね・・・まだまだ読みが甘いわね」
フッと笑むとエスメラルダは扉の前に落ちている鞄を見つけ、そこまで歩いていった。
かなり使われてズタボロになった鞄が落ちている。それは薔薇の芳香にまみれていた。
「これは…落し物ですね。お届けしないと・・・・・・」
小さく呟いたエスメラルダはトイレのドアを開けた。
「用足しかの?」
エスメラルダのふいの行動に、嬉璃がニヤリと笑う。
「私がトイレなんて行くと思います?」
嫣然とした表情でエスメラルダは云った。
「はぁ・・・・・・」
エスメラルダの問答無用の笑顔に恵美は言葉が出なかった。
●六芒星(ヘキサグラム)の未来たち
タロットカードの導きで異空間へたどり着いたエスメラルダは、まず、遮那を探すことにした。
あの勢いではきっと何処かで行き詰まり、迷子になっていることだろう。そうエスメラルダは考え、カードを取り出した。
剥き出しの岩肌の床ではカードが汚れてしまう。エスメラルダは手の中で、シャッフルし、カードを切る。
開かれたカードは17番目のカードで、星(THE STAR)だった。意味は希望と内面を照らす明かりを象徴している。
つまり、ネガティブな三下を探すより、『遮那を探す方が早い』と出たのだ。
「まぁ・・・」
カードを見るなり、エスメラルダは微笑んだ。
遮那のことがダイレクトに出たからだったが、見事に自分の読みが当たったからでもあった。
一見、このカードは指示のカードとも云えなくないが、『遮那は星だ』といっているような感じがしないでもない。実際、遮那のとはそのような意味だ。
遮那の名は大毘盧舎那(遮那)仏から来ている。遮那とは仏の世界の太陽のことであり、仏界の太陽とは光明が遍く照らす(仏の智慧と悟りの功徳の)光のことである。一切が仏の智慧によって存在し、生き続ける(輪廻)エネルギーの転換を示しているのであるが・・・若き占星術界のホープ(星or恒星)が遮那(太陽)とは気が利いているとしか云い様が無かった。
「さて行きましょうか」
エスメラルダは呟くと、星のカードを右手に持ち、左手にはポケットから取り出したローズマリーの香を持つ。
美しき銀の占星術師は香をカードに振った。そして、カードを宙に投げる。宙を漂い、ふわりとエスメラルダの周囲を一周すると、右手の洞窟を進み始めた。
●来迎降臨!カードの女王と赤薔薇肉鎧騎士団
「遮那さぁ〜〜〜〜ん(泣)」
エスメラルダが三下の元にたどり着いた時、三下は檻の中で蹲って泣いていた。
「やっと助けてもらえると思ったのにぃー」
二十歳も過ぎた大人が情けなくもべそをかき、しゃくりあげている。
三下の隣では、見事に捕まった遮那少年が倒れていた。
「独りはいやだよ〜〜〜ゥ!」
「こんばんわ、よい夜ですね」
と云って、見るものを魅了する微笑でエスメラルダは話し掛けた。ポカンと口を開け、予想もしなかった人物の登場に三下は暫し目を奪われた。
「だ、誰?」
「月が無いのが残念ですが…」
エスメラルダは優雅な足取りで檻に近づき、そう三下に声を掛けた。月が出ているどころか、今はまだ昼過ぎである。せいぜい時間が経っていたとしても3時ごろのはずだ。
「あのう・・・ここはどこでしょう?」
鼻をスーツの袖で拭いながら、三下はエスメラルダに訊ねる。
「それは・・・カードだけが知っています」
テンポの狂った奇妙な会話が繰り広げられているというのに、三下は一向に気が付かない。何とも間抜けた会話だった。
首に巻いたエメラルドグリーン色の布地に天使の絵が描かれた正絹のスカーフを外し、エスメラルダは三下の目の前の床に広げた。そして、頼まれもしないのにカードをシャッフルし始める。
床にペタと座り、三下は檻越しにカードを見つめた。
「このカードは・・・」
エスメラルダはカードを見つめた。
開かれたカードは『1』の魔術師(THE MAGICIAN)の逆位置である。
意味は詐欺師。ペテン師である。
つまり、薔薇の間の住人のずるさや腹黒さに堪え、悪い変化や悪い判断を受け入れ、利用され、弄ばれる場所だとここを暗示している。
KeyWordは「打算」
文句無しの大当たりである。ここまでくると完璧。パーフェクト。商店街のお姉ちゃんの作り笑いとともに聞こえる『オメデトウゴザイマ〜〜ス☆』の嘘っぽい声とカランカラ〜ンという葬式の鐘の音にも似た音が聞こえてきそうだ。
「何なんですか?」
一抹の不安を感じた三下はすかさず訊ねた。
「いえ、お話しない方がいいわね。これは…。さて、私はそろそろ帰ります。三下さんへ鞄を届ける為に来ただけですから・・・」
「え?助けに来てくれたんじゃなかったんですか?」
今にも泣きそうな声で三下が云った。
「助けて欲しいのですか?」
「勿論ですよぅ!」
「意味がよく分かりませんが・・・ええ構いませんよ」
「本当ですか!」
「別に、あやかし荘の方々に依頼されたわけではありませんが・・・ここはあなたの部屋なのでしょう?なのに、何故ここから出たいなどと・・・」
意味が分かりかねますと、エスメラルダは首を傾げた。
エスメラルダの言葉に打ちのめされ、三下の顔は更に紙のように白くなった。
「依頼・・・されたんじゃないんですか?」
「ええ、そのような話は『一言も』伺っておりません」
妙にそこだけきっぱりと、しかもきっちりとエスメラルダは言い切った。
「皆、酷い!!」
うあ〜ん!と三下は泣き始めた。蹲ったままの体勢で泣いているので、泣くたびに三下の尻がピコピコと揺れた。とても見苦しく、辛い眺めだったが、エスメラルダは涼やかな笑顔を崩さない。
「ではついて来てください」
泣く三下を無視して、もと来た道を歩いていこうとする。もしかしたら、三下が居なかったとしても探さずに帰宅していたかもしれない。三下は置いてかれまいと急いで立ち上がった。
「遮那さんは置いていってもよろしいのかしら?」
「えっ?・・・あッ!」
そんな三下を眺めやり、エスメラルダは云う。
「遮那さんを忘れるなんて」
「エスメラルダさんだって、ぼくらを置いてこうとしたじゃないですかぁ」
「ほほほ・・・・・・万物は流転していますのよvv」
あさっての方向を見てエスメラルダは云った。かの美しき占星術師は下界のことに囚われない性質(たち)なのか、悠然と微笑む。
「いいんだ・・・僕なんか」
「まぁ、悲観的になるのは財務整理が終わってからになさいな」
・・・とまた意味不明なことを云う。三下はボロボロになった(元々、そうだったが・・・)スーツの袖で鼻水を拭う。エスメラルダに背を向け、イジケポーズで遮那を揺り起こした。
「遮那さぁ〜〜ん、起きてくださいよ・・・」
「うーん・・・はッ!こ、ここは?」
「僕だって分かりませんよう」
「さ、三下さん!」
ガバッと遮那は飛び起きる。エスメラルダの姿を見つけ、立たない腰を引きずってにじり寄った。
「悪魔・・・あれは悪魔ですよ!」
「まぁ・・・どうなさったの?遮那さ・・・・・・」
エスメラルダの言葉を遮るように、鋭い雄たけびが上がった。
『ぼ・く・ら・のーッ!『薔薇の間』へよぉ〜こそッvv』
うおおおおッ!とか、わあああッ!と云う喚声に二人は振り返った。その時、三下と遮那の心に湧き上がった奇妙な感情に名を付けるのなら、言い知れぬ恐怖というのが相応しい。エスメラルダにいたっては、夕暮れ時の涼風ぐらいなものだったろうが・・・
岩盤が迫り出した天辺に、一人の男が立っていた。そこには盛り上がった筋肉をより美しく見せるため、奇妙なポーズを決る三下・・・もとい、三下顔のマッチョマンが屹立していた。天を射すよな腕の動きに歓声が上がる。
顔には気色悪いほどのポジティブスマイルを浮かべていた。噂通りである。
ざわざわとさざめく気配に耳をすませば、『ドゥ〜イ、ドゥ〜イ』と声がした。それに合いの手を入れるように『アイアイアイアイァ〜〜〜』という声も聞こえる。
どうやら今回のテーマソングは『荒らしのマッチョマン』ヴェル○ァーレ風テクノヴァージョンらしい。・・・とくれば、先程の『ドゥ〜イ、ドゥ〜イ』という輪唱は『Do it!』のことだろう。彼等の云いたいことが分かって、遮那は非常に嫌な気分になった。
当の三下オリジナルに至っては、それ以上である。
例えて云うならば、叫び散らした挙句マッチョ三下のどてっ腹に中段の蹴りを叩き込み、泣き喚いて頭突き連打を喰らわせたい気分だった。しかし、それも萎え、また座り込んでしまう。基本形が弱虫な三下に反抗心が芽生えたとしても、一瞬で消え去る海の泡より儚いものであろう。
そんな二人の周囲を華麗なクイックターンで旋回しつつ、マッチョ三下軍団は歌い上げていた。
♪荒らしのマッチョマン×2
厨房マッチョマン×2
今夜は眠らせないでぇ〜☆ カキコカキコvv
Good〜(^^)b 愛・鍵(KEY)
アイアイアイアイァ〜
BAD スレ 破ァァッ!
アイアイアイアイァ〜
ユーモア・バナー(バナー)
ハロー・マスター・ジャンキー☆(ジャンキ〜†)
ギコ猫 スレタテ 止めれなッい〜♪
喜悦の表情でマッチョ三下はくねくねと躍りまくる。その度に腰蓑と胸に飾ったレイが揺れた。
きらり☆と光る白い歯。闇に乱れる艶やかでしなやかな肌には薔薇の刺青。しかも、それはワセリンでぬめっている。盛り上がった筋肉がムキムキと動くのを見ると、三下は泣き顔になった。
何処から見ても、フラダンスの衣装を纏ったボンレスハムである。無論、ダンスビートはフラではなく、扇情的なテクノだ。しかも、不○家のペコちゃん級の愛くるしい瞳でやられたら堪らない。
とてもとても熱く・・・・・・激しい†(死)
「わぁーっ!」
「五月蝿いーっ!」
三下と遮那は頭を抱えてへたり込んだまま動けずにいた。
「声が野太いよ〜(泣)」
「何の歌ですの?」
いともあっさりエスメラルダは言った。
『ぬ・・・なぁに〜ィ!』
ニッコリと笑って質問をしたエスメラルダに、三下マッチョは愕然とした。こちらは嫣然と微笑み返す。
「わたくし達はこれから帰還しますの・・・邪魔しないで下さいね」
『ここでは仲間外れはタブーって、知ってるかい?』
「いいえ」
『帰さないといったら?』
「帰れますわ・・・」
自身に満ちた表情でエスメラルダは云った。
『出来なかったらどうするのかなぁ〜vv』
三下マッチョはガハハッと哄笑した。
「カードも私も嘘は付きませんわ」
エスメラルダは言い放った。瞳を染めた軽蔑の色は三下マッチョを気色ばませるのに十分だった。
「いらっしゃいな・・・」
エスメラルダはカードを広げた。そう口火を切ったのが戦い(カーニバル)の始まりだった。
肉の鎧を纏った漢たちがエスメラルダに殺到する。大地を蹴ると同時に突進してくる。クルリと身を反転させるとエスメラルダは後退する。エスメラルダのウエストより太い足が宙を凪いだ。
「わたくしたち、暇人じゃありませんのよ」
そう云って赤き華を描いた退魔用カードを前に突き出す。
「恐怖と驚愕の道化師。幽界の民よ退きなさい!」
「いやあああだよォォォォ〜〜〜ん」
カードを嫌がり仰け反りながら、三下は増殖し、更に仲間を増やそうと蠢いた。
「まったく・・・ゴキブリみたいな方々で困りますわねぇ」
おっとりとエスメラルダは云いながら、肉鎧軍団を優雅に避ける。
「困りますねって・・・エスメラルダさん」
遮那は懇願するように云う。目は潤んでいた。
「大丈夫ですわ、方法はありますのよ」
「じゃあ、早くやってくださいよう!」
立ち上がりながら遮那は云った。
「あなたの力が必要ですのよ・・・座っていらっしゃったから、待ってましたのvv」
これまたのんびりとエスメラルダは云う。
「ま・・・待って・・・た?」
「えぇ、そうですわ・・・・・・これです」
エスメラルダの差し出したカードは星(THE STAR)。
「希望・・・ですか?」
遮那はカードを見つめた。意味が分かりかねているよな表情をエスメラルダは覗き込んだ。
「ちょっと違いますわ」
「だってこのカード・・・・・・」
「状況によって意味は変わりますのよ。直感だけではダメです。最も大切なのは的確な判断と導きですわ。意味に踊らされてはいけません」
エスメラルダは三下もどき達に向き直る。
「さあ、行きますよ。あなたも星(THE STAR)のカードを出してくださいね」
「はい」
エスメラルダの指示に従って、遮那はカードを取り出した。
それをきっかけにエスメラルダは詠唱をはじめた。
「汝が守護の子を守れ、星の光よ。導きは汝が世の為に。廻れ、時の円環。我が訴えを聞き届けよ」
二つの札は光を導き放った。閃光が網膜を焼く。魂の芯から発する熱さが遮那の身体を支配した。
「あ・・・熱ッ!」
「堪えなさい!あなたも使えるのよ」
「え?」
星見の力だけだと思っていた遮那は驚いてエスメラルダのほうを見た。
「あなたは・・・・・・の意味を考えたことがあるの?」
「何・・・聞こえな・・・」
更に強い光が遮那の脳裏を瞬いた。気をとられ遮那は聞き損ってしまった。奔流は三人を押し流した。
●天上の花園茶房
淡い光を放ち、雪色の妖精はカップの縁に座った。
「そこから降りて頂戴」
その穏やかな声音に反応した小妖精は草色の足をカップソーサーの上に降ろし、甘やかな音声で駄々を捏ねた。
「だめよ、エスメラルダさんが来るの・・・え?・・・あと30秒よ。怒ってもダメ」
時を忘れた何処にもあって、何処にも無い喫茶店の女主人は妖精をたしなめた。手元に置かれたカードを見つめ、微笑む。そのカードは太陽の描かれたタロットカードだった。
―― 今日もお疲れ様、エスメラルダ・・・・・・星は見つかったようね
優曇華の花がほころぶような笑みを女主人は浮かべた。そして、そのカードでタペストリーに触れると、カードは消えた。それと同じ模様がタペストリーに浮かび上がる。幾千もの華と幾万の星が描かれた美しい織布だ。
ややあって、エスメラルダは女主人の言ったとおり、30秒でこの喫茶店に現れた。
「香織・・・いつものいただけるかしら?」
「えぇ、勿論よ」
香織と呼ばれたこの店の主人はニッコリと笑った。
溜息を一つ吐くとエスメラルダは、ふと壁に飾られた織物に目を留めた。
「あら・・・これ・・・なぁに、香織は知ってるのね。いやだわ」
エスメラルダは苦い笑いを浮かべて云った。
「私が分からないことなんて無いわよ・・・ここに描かれないもの以外わね、でも女子トイレに出れて良かったわ」
「それを言わないで・・・香織ったらいやね。ここに描かれないものなんて無いでしょうに・・・」
呆れたと云った風にエスメラルダは肩を竦めた。
すべては地球(ほし)だけが知っている。幾千億もの時間(光)。
そして奇跡は今日も舞い降りた。
END
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■ 登場人物(この物語に登場した人物の一覧) ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
0305 /エスメラルダ・時乃/女 / 25 / 占星術師
0506 / 奉丈・遮那 / 男 / 17 / 占い師
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■ ライター通信 ■
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こんにちわ、朧月幻尉です。
今回のお話はいかがでしたでしょうか?
シリアスキャラだと思っていたエスメラルダお姉さまがギャグに挑戦・・・感慨深いものがあります。難しい(汗)
椿君、風邪だったんですねぇ・・・(爆)<<こらこら(^^;)
またも香織マスターを出してみましたvv
丁度、同時参加された遮那くんが占い師だったのでこんな形になりました。遮那くんサイドの話も、ちょっとこちらと違っているので、よかったら検索して読んでみてください。
では、また会いましょう!Ciao☆
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