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■遅れすぎてやってきたサンタクロース?■

滝照直樹
【0428】【鈴代・ゆゆ】【鈴蘭の精】
2月の中頃のことである。

「何、これは!」
と驚く管理人因幡恵美。
驚くのもムリはない。食堂に暖炉がいつの間にか設置されているからだ。赤煉瓦でかなり古いもの。ご丁寧に外に煙突も出来ている。
「まるでサンタさんが入ってくる煙突だね!」
柚葉がニコニコして暖炉を見ている。
「サンタさんが来るのですか!」
三下は喜ぶのだが、恵美のスルドイ視線に通常の半分ほど小さくなる。
「季節はずれも良いところぢゃが…ほれ落ち着け恵美…」
「私の許可無しで暖炉を設置するなんて!許しません!」
「まちーなぁ、恵美。いきなりって言うのもおかしいとちゃうんか」
どうもご機嫌斜めの恵美宥める嬉璃達。

この不思議な暖炉は一体…
遅れ過ぎてやってきたサンタクロース

1.〈あやかし荘〉に煙突??
暇なときは、いつも〈あやかし荘〉に向かう鈴代ゆゆ。あの場所は本当に居心地が良いのだ。
猫の里親探しの時もバレンタインの時もとても楽しかった。
また今日も、面白い事でもありそうな予感がする。そんな気分でスキップしながら目的地に向かう。
〈あやかし荘〉が見えてきた、でも様子が違う。
「煙突があるじゃない…。もしや!」
煙突といえば、サンタさんがおうちに入って、良い子にプレゼントをベッドにぶら下げている赤いルーズソックスに入れてくれるというクリスマスの代表的な物じゃない!と(一部違っているのはさておき)思ったゆゆだった。
そうと思ったら善は急げ!急な坂も踏ん張り気張りで駆けていった。
あの煙突のついた〈あやかし荘〉に向かって。

2.ゆゆちゃんかんげき〜
「サンタさんが来たってホント!?」
玄関先で鈴代ゆゆが遊びに来た。彼女の声が〈あやかし荘〉にこだました。ちなみにゆゆはしょっちゅう〈あやかし荘〉に遊びに来るので、此処の住人とはすでに顔見知りである。
ちょうど時音達が食堂に帰る途中だったので、皆は驚きのあまりその場で豪快にこける。
「こんちゃ、ゆゆちゃん。でも、何故、そんなことを知ってるの?」
柚葉が訊いた。
「だって、見慣れない煙突が有るじゃない?ひょっとするとサンタさんが来てるんじゃないかと思ったの!」
「確かに、サンタクロースさんだよ。時期外れも良いところだけど…」
「わーい、プレゼント欲しいなぁ〜♪」
「今は一寸止めていた方が良いとおもうよ〜」
喜ぶゆゆに、柚葉が忠告した。ゆゆは首をかしげる。
「食堂に行けばわかるから、ゆゆちゃん」
「う〜ん、わかった」
ゆゆは頷いた。

食堂では相変わらず、因幡恵美は怒っており、嬉璃も頑固な彼女に腹を立て、喧嘩になっていた。
「更に悪化しているわ…」
止めようと必死な三下の声も聞こえないようだ
「みなさん、何とかしてくださいよ〜」
「わかりました、三下さん」
時音が彼を押しのけるように『修羅場の危険区域』に入っていく、そして
「二人ともいい加減にして下さい!」
と一喝した。
恵美も嬉璃も二人とも我に返ったように、時音を見つめる。かなりご立腹の様子の時音。
「「ごめんなさい」」
二人とも〈あやかし荘〉の責任者として恥ずかしい行動に反省し、しょぼんと頭を垂れた。
ゆゆは因幡自身が怒っている最中だったらはしゃげなかったと、柚葉の忠告の意味をここで理解する。
「はい、さてサンタさんを起こしますか」
時音は、元の笑顔になりまだ失神しているサンタを武術でよく使う起こし方を用いて起こした。
「は!」
「気がつきましたかサンタさん」
「あ〜、儂としたことが〜。え〜今は何時かの若いの」
「すでにクリスマスは終わって2月下旬です」
「そうだった。そうだった。ありがとう若いの」
クリスマスが過ぎたのに遅れてきたことに慌てている感じがしない?
「ん?儂がおかしいか?こんな時期はずれに来るのが?」
とサンタが食堂に集まって居る人々に尋ねた。全員頷く。
「ほっほっほっほ。確かにおかしいな」
「どういう事です?」
「儂は、皆が思ってるように遅れてくるサンタじゃ」
「「はぁ?」」
皆は呆気にとられる。
それでも、本当のサンタクロースには変わりない。「サンタクロース歓迎派」である三下、柚葉、ゆゆは大喜び、因幡は怒り疲れから椅子にもたれノックダウン状態となった。
「しかし、理解に苦しみますが…って、まだ話の途中ですよ!」
時音がサンタに色々訊こうとするときに、歓迎派がサンタの周りに集まって
「「「プレゼントちょーだい!」」」
とはしゃぎ立てる。ゆゆと柚葉はいいとして…
「三下さんまで!」
時音は泣きたい気分だったが、歌姫がやってきて、彼の腕をとって首を振った。
「…ボクも我を忘れるところだった…ありがとう」
歌姫はにこりと微笑む。
「嬢ちゃん達、今はこの若い方とお話ししなくては行けないからプレゼントはもう少し待ってくれぬかの」
「「は〜い、サンタさん。そして時音さんごめんなさい」」
素直に、柚葉とゆゆは謝った。三下は時音の叫び声と同じタイミングでサンタが殴り飛ばしていたので、暖炉に埋もれている。
「…やっと、落ち着きましたね。事情を説明して下さい」
時音がサンタに椅子を差し出し、歌姫と綾がお茶の支度をはじめた。ゆゆと柚葉は時音とサンタの会話を聞こうとしてわくわくしている。
「ふむ、クリスマスの1日ですべてのプレゼントを贈れることは事実できんものじゃ。プレゼントがオモチャやお菓子だけならすぐかもしれん。しかし『気持ち』というプレゼントを配る時はクリスマスだけじゃだめなときもある。」
「『気持ち』ですか?」
時音は更に尋ねた。
「そうじゃ、皆が幸せになるために必要な良き「心」を配っているんじゃ。まぁ管理人の若い嬢ちゃんには悪いことをしたとおもう。無断で煙突は作る、途中で煙突に引っかかってしまったんじゃから」
「じゃ〜プレゼントは?」
ゆゆは割り込んでサンタに尋ねた。顔は不安そうである。
「ああ、心配することはない。ちゃんと欲しい物も用意してあるぞ、嬢ちゃん」
「やった〜!ゆゆ感激〜!」
「良かったね、ゆゆちゃん」
無邪気に喜ぶゆゆ達に、時音は少し心の平穏を感じた。

3.2度目のクリスマスパーティ
急遽、サンタの参上により宴会が行われた。バレンタインも過ぎたのでたいした物もないが皆が持ち寄ったささやかな食材で料理し、シチューは暖炉で作ることとなった。
「やはりシチューはこうした暖炉で煮込むと旨いんじゃよ」
「そうなんですか」
料理好きの女性陣はサンタの説明に感心する。
「暖かい暖炉を囲んで、温かいシチューをいただく。幸福な気分になるぞ」
彼が皿にシチューを盛り、彼女らに渡す。彼の言ったとおり、とてもおいしく幸せな気分になった。
「でも、サンタさんはこの後どうやって煙突からはいるのかな?」
ゆゆと柚葉は素朴な疑問を投げかけた。
「皆が寝静まったときに入るから、だいたい火は消えているんじゃ。それに目印もちゃんとつけている家はすぐにわかるからの」
「へぇ〜」
「おっとそうだ、プレゼントじゃな」
「まってました!」
サンタは、ポケットの中からちいさなサンタ袋をとりだした。ゆゆは大きく拍手する。
「中に手を入れてごらん」
ゆゆは袋の中に手を突っ込んでみる。何かがあたったのでつかんで取り上げた。
かわいい鈴蘭の模様の入った指輪箱だった。中には、同じような綺麗な鈴蘭の銀細工と綺麗な宝石で彩られた指輪が入っていた。
「きれい〜!前から欲しかったんだ〜」
「わぁ、スゴイ〜」
感激するゆゆ、それに驚嘆する柚葉。
「しかし、プレゼントといっても、高価な物…」
時音がサンタに尋ねた。
「彼女の気持ちが純粋故にその気持ちが完全に具現化したんじゃ。問題はないぞ」
と、サンタは答えた。
「じゃあ!次ボクね!」
柚葉が袋に手を突っ込むと、何か紙みたいな物をつかんだ。
「あ〜〜〜〜〜っ。大型遊園地の無料招待券だぁ!しかもいっぱいある!」
ゆゆも柚葉も大喜び。
三下がおずおずやってくる
「あの〜僕にも…」
「大人には何も効果がないんじゃな。子供に対して効果のある袋なんじゃ」
「そんなぁ〜」
そこで滝のように涙を流す三下であった。
「よしよし、泣かない、泣かない」
ゆゆは大泣きしている、だらしない男の頭ををなでてあげた。

時音とサンタが難しい話をしているので、その場から離れ窓を覗いてみる。
「雪がないなぁ、やっぱホワイトクリスマスがいいから…こうしちゃえ!」
彼女は幻影で、雪の積もっていく〈あやかし荘〉の庭を映し出した。
「みんな〜雪が降ってるよ〜」
ゆゆの声を聞いた住人達はぞろぞろと窓をみては感動する。静かに、窓の光で綺麗に光る雪がじょじょに庭を銀世界に変えていく景色を…。
「やはりクリスマスは雪だよな」
「雪と言えば、スノーボード行きたくなったね」
「スキーもいいよな」
「雪だるまつくりたーい」
和やかな会話が辺りを包んだ。ゆゆも満足げである。
「嬢ちゃん、楽しいかね?」
サンタがゆゆのところにやってきた。大泣きしている男を引きずって。周りにはなついている子供達もいる
「うん楽しい!」
「其れは良かった。嬢ちゃんのようなかわいい子とおしゃべりできるのもサンタとして誇りじゃよ」
「そうなんだ。じゃあいっぱいおしゃべりしよう」
ゆゆははしゃぐようにサンタに言った。
「そうじゃな〜なにがいいかの?」
「あの暖炉どうするの?」
「じいさんのお仕事が終われば、消えるんじゃ」
「ざんねんだな〜」
ゆゆはがっかりするが、サンタがこういった
「でも儂が来るときは、いつでも出せる便利な物じゃよ」
「ということはいつでも出せるんだ。よかった!」
「そうじゃ」
また元気な顔になるゆゆ。
「今度あたしの家にも…作って欲しいな♪」
ちょっとゆゆはこれは贅沢かなと思いながらお願いしてみた
「ああ約束しよう」
サンタは優しく微笑み、ゆゆの頭をなでながら承諾する。
「やった!」
「でも、悪いことをしたら煙突も作らないからちゃーんと良い子で居るんだぞ、ゆゆちゃん」
「はーい。約束するための指切りげんまんしよ〜」
二人は互いに小指をだしあって、指切りげんまんをした。華奢でかわいい小指と、しわが刻まれていながらも大きな小指…。

「あ!」
ゆゆは大きな声をあげた。
「どうしたんじゃ?」
「お礼言ってなかった。プレゼントありがとうございますサンタさん」
深々とお辞儀するゆゆ。
「ほっほっほ」
サンタは顎髭に手をやり笑った。
「ほんに、良い子じゃ、ゆゆちゃんは」
「くすっ」
そのあとは、サンタと一緒にパーティの中で思いっきり楽しんだ。

◆サンタさんさようなら
宴もたけなわ、サンタは暖炉前に立ち、
「本日は儂のためにご迷惑、そして楽しいパーティを催して下さりありがとう。さて、そろそろ儂はサンタの国に帰らなくてはいけない。また時が来れば会えることを楽しみにしてくだされ」
「ばいば〜い」
「ありがと〜」
子供達の声と、住人の拍手に対してお辞儀するサンタ。
「ではさらばじゃ」
そして彼は暖炉の中に潜り込む…暖炉はほのかに光ってサンタごと消えた。その光は、暖かく、心地よい物だった。

こういうクリスマスも良いのかもしれない…時季はずれのクリスマスパーティ…。

End

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【1219/風野・時音/男/17/時空跳躍者】
【0428/鈴代・ゆゆ/女/10/鈴蘭の精】


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■         ライター通信          ■
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『遅れ過ぎてやってきたサンタクロース』に参加して頂きありがとうございます。
ゆゆさん二度目の参加ありがとうございます。

では機会があれば、宜しくお願いします。

滝照直樹拝
20030222