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■遅れすぎてやってきたサンタクロース?■

滝照直樹
【1219】【風野・時音】【時空跳躍者】
2月の中頃のことである。

「何、これは!」
と驚く管理人因幡恵美。
驚くのもムリはない。食堂に暖炉がいつの間にか設置されているからだ。赤煉瓦でかなり古いもの。ご丁寧に外に煙突も出来ている。
「まるでサンタさんが入ってくる煙突だね!」
柚葉がニコニコして暖炉を見ている。
「サンタさんが来るのですか!」
三下は喜ぶのだが、恵美のスルドイ視線に通常の半分ほど小さくなる。
「季節はずれも良いところぢゃが…ほれ落ち着け恵美…」
「私の許可無しで暖炉を設置するなんて!許しません!」
「まちーなぁ、恵美。いきなりって言うのもおかしいとちゃうんか」
どうもご機嫌斜めの恵美宥める嬉璃達。

この不思議な暖炉は一体…
遅れ過ぎてやってきたサンタクロース

1.ホントにサンタ?
食堂には様々な思いで緊張していた。まずは因幡が怒り心頭ということ、柚葉と三下は純粋にサンタさんと思いこんでいること。比較的冷静な判断をしようとしているのは嬉璃と綾。歌姫は、ある人の助けを求めに食堂を後にした。
不思議な点を上げるなら、いつ〈あやかし荘〉で、このサンタらしい人物が何のために暖炉つき煙突を作ったのか、本当にサンタなのか。
因幡恵美はこのサンタを泥棒扱いにて警察に届けるか、〈あやかし荘〉を知る能力者達に始末してもらうか考えている。彼女をなだめるのは嬉璃だった。
「泥棒なら警察に突き出します」
「まて、こんな手の込んだ泥棒が居るか?暖炉作って、サンタの「こすぷれ」をするなんて。第一、昨日の今日で作れるわけ無かろう。頭を冷やさぬか」
「では、この人は正真正銘のサンタさんですか?」
「そうとはいっておらんわい」
三下は二人のやりとりを止めようとしたが…
「まぁまぁ、おちつい…」
「「だまってなさい!」」
恵美と嬉璃との怒号で、今度は2.5cmほどのミニチュア並に小さくなる。
しばらくしてから、歌姫は鼻歌交じりで風野時音をひっぱってきた。状況をつかめない時音は従うばかりである。
「楽しげに鼻歌歌うとは…ふぅ」
「いいじゃない。冷静に判断できる人が来たんだし!」
ため息をつく綾に柚葉がたしなめた。
「いったい何が遭ったのですか?因幡さんから恐ろしいほどの殺気がでているのですが…」
普段おとなしく優しい管理人の変貌した姿が目に入って時音自身も驚いている。
「簡単に説明すると、あそこで気を失っているじいさんが、本当にサンタか泥棒かでもめているんや」
「なるほど…納得。とにかく身元を調べないことには、判断が付きませんね」
「免許証とかもってんかな?サンタの免許」
「さぁ…。今の【時代】では確かサンタクロースの免許があったと思いますが」
「TVでみたよ〜」
「…では、調べてみますか」
因幡と嬉璃の言い合いを無視し、時音は失神中のサンタらしい人物の懐を調べた。
確かにサンタクロース免許証と暖炉設置特級資格カードをもっている。
「本当のサンタさんですね」
しかしそんなにすぐわかって良いのだろうか?首をかしげる時音。
「この暖炉設置特級資格カードってなんや?」
綾が、気になったカードの裏面を見てみる…。
「わからん!何やこの文字!」
書いている裏面の言語が日本語でもなければラテン語でもない。とにかくこの地球上に存在する発音、読解可能の言語ではないようだ。
「一応…物知りっぽい人って…今のところエルハンドさんしかおらへんな」
「彼に聞いてみますか」
ぞろぞろとエルハンドの部屋に向かう。
エルハンドは事情を聴いた後このカードを調べた。解読には1分もかからず、皆にサンタクロース専用暖炉を作る資格兼免許証で裏面は失われたサンタ語で注意事項が書かれていると説明してくれた。
皆は礼をして、その場を去った。
「じゃ?本当にサンタさんなんだ!」
柚葉は大喜び、歌姫も『あわてん坊のサンタクロース』を歌う。
「しかし、今頃来たと言うことは、大遅刻ですよ?」
「そうやな〜」
「とにかく本人から事情を聞きますか?」

2.ゆゆちゃんかんげき〜
「サンタさんが来たってホント!?」
玄関先で鈴代ゆゆが遊びに来た。彼女の声が〈あやかし荘〉にこだました。ちなみにゆゆはしょっちゅう〈あやかし荘〉に遊びに来るので、此処の住人とはすでに顔見知りである。
ちょうど時音達が食堂に帰る途中だったので、皆は驚きのあまりその場で豪快にこける。
「こんちゃ、ゆゆちゃん。でも、何故、そんなことを知ってるの?」
柚葉が訊いた。
「だって、見慣れない煙突が有るじゃない?ひょっとするとサンタさんが来てるんじゃないかと思ったの!」
「確かに、サンタクロースさんだよ。時期外れも良いところだけど…」
「わーい、プレゼント欲しいなぁ〜♪」
「今は一寸止めていた方が良いとおもうよ〜」
喜ぶゆゆに、柚葉が忠告した。ゆゆは首をかしげる。
「食堂に行けばわかるから、ゆゆちゃん」
「う〜ん、わかった」
ゆゆは頷いた。

食堂では相変わらず、因幡恵美は怒っており、嬉璃も頑固な彼女に腹を立て、喧嘩になっていた。
「更に悪化しているわ…」
止めようと必死な三下の声も聞こえないようだ
「みなさん、何とかしてくださいよ〜」
「わかりました、三下さん」
時音が彼を押しのけるように『修羅場の危険区域』に入っていく、そして
「二人ともいい加減にして下さい!」
と一喝した。
恵美も嬉璃も二人とも我に返ったように、時音を見つめる。かなりご立腹の様子の時音。
「「ごめんなさい」」
二人とも〈あやかし荘〉の責任者として恥ずかしい行動に反省し、しょぼんと頭を垂れた。
「いきなり出来た煙突のことも、あのサンタのことも身元がわかりましたし、怒っているだけじゃ何も進みませんよ」
「は…い」
「儂もわるかった」
嬉璃は恵美にぴたっと抱きつく。この行動はおそらく仲直りの仕草だろう。
「はい、さてサンタさんを起こしますか」
時音は、元の笑顔になりまだ失神しているサンタを武術でよく使う起こし方を用いて起こした。
「は!」
「気がつきましたかサンタさん」
「あ〜、儂としたことが〜。え〜今は何時かの若いの」
「すでにクリスマスは終わって2月下旬です」
「そうだった。そうだった。ありがとう若いの」
クリスマスが過ぎたのに遅れてきたことに慌てている感じがしない?
「ん?儂がおかしいか?こんな時期はずれに来るのが?」
とサンタが食堂に集まって居る人々に尋ねた。全員頷く。
「ほっほっほっほ。確かにおかしいな」
「どういう事です?」
「儂は、皆が思ってるように遅れてくるサンタじゃ」
「「はぁ?」」
皆は呆気にとられる。
それでも、本当のサンタクロースには変わりない。「サンタクロース歓迎派」である三下、柚葉、ゆゆは大喜び、因幡は怒り疲れから椅子にもたれノックダウン状態となった。
「しかし、理解に苦しみますが…って、まだ話の途中ですよ!」
時音がサンタに色々訊こうとするときに、歓迎派がサンタの周りに集まって
「「「プレゼントちょーだい!」」」
とはしゃぎ立てる。ゆゆと柚葉はいいとして…
「三下さんまで!」
時音は泣きたい気分だったが、歌姫がやってきて、彼の腕をとって首を振った。
「…ボクも我を忘れるところだった…ありがとう」
歌姫はにこりと微笑む。
「嬢ちゃん達、今はこの若い方とお話ししなくては行けないからプレゼントはもう少し待ってくれぬかの」
「「は〜い、サンタさん。そして時音さんごめんなさい」」
素直に、柚葉とゆゆは謝った。三下は時音の叫び声と同じタイミングでサンタが殴り飛ばしていたので、暖炉に埋もれている。
「…やっと、落ち着きましたね。事情を説明して下さい」
時音がサンタに椅子を差し出し、歌姫と綾がお茶の支度をはじめた。ゆゆと柚葉は時音とサンタの会話を聞こうとしてわくわくしている。
「ふむ、クリスマスの1日ですべてのプレゼントを贈れることは事実できんものじゃ。プレゼントがオモチャやお菓子だけならすぐかもしれん。しかし『気持ち』というプレゼントを配る時はクリスマスだけじゃだめなときもある。」
「『気持ち』ですか?」
時音は更に尋ねた。
「そうじゃ、皆が幸せになるために必要な良き「心」を配っているんじゃ。まぁ管理人の若い嬢ちゃんには悪いことをしたとおもう。無断で煙突は作る、途中で煙突に引っかかってしまったんじゃから」
「じゃ〜プレゼントは?」
ゆゆは割り込んでサンタに尋ねた。顔は不安そうである。
「ああ、心配することはない。ちゃんと欲しい物も用意してあるぞ、嬢ちゃん」
「やった〜!ゆゆ感激〜!」
「良かったね、ゆゆちゃん」
無邪気に喜ぶゆゆ達に、時音は少し心の平穏を感じた。

3.2度目のクリスマスパーティ
急遽、サンタの参上により宴会が行われた。バレンタインも過ぎたのでたいした物もないが皆が持ち寄ったささやかな食材で料理し、シチューは暖炉で作ることとなった。
「やはりシチューはこうした暖炉で煮込むと旨いんじゃよ」
「そうなんですか」
料理好きの女性陣はサンタの説明に感心する。
「暖かい暖炉を囲んで、温かいシチューをいただく。幸福な気分になるぞ」
彼が皿にシチューを盛り、彼女らに渡す。彼の言ったとおり、とてもおいしく幸せな気分になった。
「でも、サンタさんはこの後どうやって煙突からはいるのかな?」
ゆゆと柚葉は素朴な疑問を投げかけた。
「皆が寝静まったときに入るから、だいたい火は消えているんじゃ。それに目印もちゃんとつけている家はすぐにわかるからの」
「へぇ〜」
「おっとそうだ、プレゼントじゃな」
「まってました!」
サンタは、ポケットの中からちいさなサンタ袋をとりだした。
「中に手を入れてごらん」
ゆゆは袋の中に手を突っ込んでみる。何かがあたったのでつかんで取り上げた。
かわいい鈴蘭の模様の入った指輪箱だった。中には、同じような綺麗な鈴蘭の銀細工と綺麗な宝石で彩られた指輪が入っていた。
「きれい〜!前から欲しかったんだ〜」
「わぁ、スゴイ〜」
感激するゆゆ、それに驚嘆する柚葉。
「しかし、プレゼントといっても、高価な物…」
時音がサンタに尋ねた。
「彼女の気持ちが純粋故にその気持ちが完全に具現化したんじゃ。問題はないぞ」
と、サンタは答えた。
「じゃあ!次ボクね!」
柚葉が袋に手を突っ込むと、何か紙みたいな物をつかんだ。
「あ〜〜〜〜〜っ。大型遊園地の無料招待券だぁ!しかもいっぱいある!」
ゆゆも柚葉も大喜び。
三下がおずおずやってくる
「あの〜僕にも…」
「大人には何も効果がないんじゃな。子供に対して効果のある袋なんじゃ」
「そんなぁ〜」
そこで滝のように涙を流す三下であった。
「大人になると…純真な想いは、悪い欲望となる。良い方向も悪くなる…悲しいことじゃがの」
と、サンタは時音に言った
「悲しい事ですね」
「しかし、其ればかりで嘆いてはならん。そのために儂はここに来た。おまえさんが悲しみの心の声が聞こえたからな…」
「え?」
「おまえさんが苦しんでいる声を聞いたからここに来た。本来の目的はそれじゃ。独りですべてを解決しようと言うのは不可能じゃよ」
「…」
老人の言葉に沈黙する時音。
「大きな傷を癒すには、確かに時間がかかる。しかし、自分独りではその傷はふさがらんて…」
時音はふと歌姫と目があった。歌姫は微笑みながら彼を見つめている。
「おぬしが体験したつらい出来事を〜どんな物かしらんが〜少しでも癒そうと支えてくれる人がいるだけでも、幸せと思わなくてはな」
サンタは歌姫を呼び寄せた。
「後はお嬢さんの役目じゃ。儂はほかの人たちに幸せな心を届けるとするよ」
と二人の肩をたたいて、なついている泣いているだらしない大人を引きずって子供達とともに、パーティの中に入っていった。

そこにはぎこちないが、想い合う男女だけとなった。

◆サンタさんさようなら
宴もたけなわ、サンタは暖炉前に立ち、
「本日は儂のためにご迷惑、そして楽しいパーティを催して下さりありがとう。さて、そろそろ儂はサンタの国に帰らなくてはいけない。また時が来れば会えることを楽しみにしてくだされ」
「ばいば〜い」
「ありがと〜」
子供達の声と、住人の拍手に対してお辞儀するサンタ。
「ではさらばじゃ」
そして彼は暖炉の中に潜り込む…暖炉はほのかに光ってサンタごと消えた。その光は、暖かく、心地よい物だった。

こういうクリスマスも良いのかもしれない…時季はずれのクリスマスパーティ…。

End

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【1219/風野・時音/男/17/時空跳躍者】
【0428/鈴代・ゆゆ/女/?/高校生】


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■         ライター通信          ■
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『遅れ過ぎてやってきたサンタクロース』に参加して頂きありがとうございます。
近頃戦闘系ではなく、こうしたほのぼの系になっておりますが如何でしたでしょうか?
私のNPCエルハンドがちょこっとでましたのはご愛敬で。


では機会があれば、宜しくお願いします。

滝照直樹拝
20030222