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■あやかし荘TV取材■

滝照直樹
【0506】【奉丈・遮那】【占い師】
【データ修復中】
あやかし荘TV取材

■会議なんですけど…
こまった顔している、恵美さん。
「はい、困ってます」
寂しい顔をして食堂を眺める恵美さんです。昼間なので人がいないのです。
「だよねー」
柚葉ちゃんも退屈気味。
頭の切り替えで、のんびりとお茶を啜る。
「大変なことになってますね」
稽古から戻ってきた剣客エルハンドが入り口から現れる。
「おかえりなさい」
「たしかTV取材とかって聞きましたけど」
「ええ…でもこの状態では」
「まぁ、仕方ないですね…お昼ですし」
「ええ、もう少し待ってみます。頼りになる人が来るのを」
エルハンドにもお茶をすすめた。快諾するエルハンド。

●何となくお似合いです
「テレビっ!テレビ!たのしそう!」
「そうですね」
鈴代ゆゆと奉丈遮那は道の途中ばったり出会い、この事件(?)に相談役として〈あやかし荘〉に向かいながら喋っていた。どちらも学生服なので、仲の良い友達に映る。
「でもゆゆさんも映るの?」
「と、とーぜん!」
やる気120%のゆゆをみて、遮那は苦笑している。
「何か悪いです?」
「いえ、何でもないですよ」
「顔に書いてるもん。ぜったいなにかある」
「え?」
焦って手を顔にやる遮那。ゆゆは其れを見て笑う。
ヒョッとして恵美が好きだということがばれたのではと?
我に返った彼は自分の行動を笑わずにいられなかった。
本当に仲の良い感じで歩く二人。
(「僕は誰が好きか分かってますよね?」…分かってます、遮那君。)
あやかし荘についた二人は、食堂で年寄のようにのんびり人を待っている恵美と柚葉、剣客を見つけるのであった。

■順調な会議?
遮那と恵美、時音と歌姫、ゆゆと柚葉、エルハンドが食堂にあつまったが…
「もう少し待っていたいけど」
あまり困ってないように…いや半ば諦め口調の恵美が呟いた
「では、僕たちだけで話をして見るのはどうでしょう?」
遮那が提案する。
「そうですね…。もう嬉璃ちゃん達の一通りの意見は聞いているし」
恵美が遮那の提案に賛同した。
「僕と歌姫さんは映りたくないから。映りたくない人をどうするかを決めましょう」
時音はあらかじめ自分の意志を伝えた。
「じゃあ管理人室に移りますか?」
皆は食堂を後にしたとき、
「ただいまですぅ…」
丁度、管理人室に向かう一行の目の前に、惨敗兵の姿をした三下が帰ってきた。
生傷があるところを見ると…またやっかいな事件に巻き込まれたようだ。
「大丈夫ですか?」
恵美が事情を聞くとたんに、鼻水を垂らしながら大泣きで
「管理人さぁん!聞いて下さいよ〜」
と、子供のように駆け寄る三下。
だが、素早く時音と遮那が回り込み、三下をひっつかみ、
「「仕事がうまくいかないと言うのは、いつものことではないですか?」」
と同時に喋った。
「ひいいい」
彼の姿はもう、有名な写真『発見された宇宙人』に見える。
「三下さん、今から大事な話があるのですよ」
遮那がいった。
「「TVがくるんだよ!」」
ゆゆと柚葉が付け加えた。
「なので、色々お話しする事がありますし。ジャーナリストの三下さんなら良いアドバイスが聞けると思うのですが」
恵美が更に三下に言った。
三下自身はTV局の者ではないが、ジャーナリストの端くれ(一応、あくまで一応)。碇編集長に雑用など任されている中でも様々な裏事情などは、今のメンバーの中でも詳しいはずだ。
「わかりました!が・頑張ります!」
何を頑張るというのだろう。もしや中継車でも押して進めるとでも言うのだろうか?
「決まりですね」
誰が言うともなく、管理人室に集まっていく。三下は捕獲状態のまま引きずられていく。
「自分で歩けます〜〜〜」
管理人室には、TVショッピングを眺めていた嬉璃が
「お、首尾はどうぢゃ?」
「お話しできる方が集まって下さいました」
「ふむそれはよかったの」
ピッっとTVの電源を切り、嬉璃が中にはいるよう示唆した。
「「「おじゃまします」」」
コタツは4人しか座れないので嬉璃は恵美の膝にすわり、時計回りで恵美、ゆゆ、歌姫、遮那と言った具合に座る。柚葉と時音とほか二名は壁にもたれ、座ることにした。三下は猛者2人に挟まれている状態だ。

有志での会議は滞りなく進む。
簡単に〈あやかし荘〉の庭と管理人室、一般の人の住居部屋を撮影してもらえばいい。
ただ、この建物についての資料などを引っ張り出して、再編集し、TV局に渡さなければならない。
遮那は、逆に危険なのはTV局の人たちだと言った。
「やはり、〈あやかし荘〉は色々でますから、危険地区を絞って行かないと思います」
「確かにそうぢゃ」
「心霊スポットにはしたくないからね〜」
嬉璃とゆゆ、柚葉は同意した。嬉璃は恵美の意見を尊重する事に心がけている。
「問題は、この建物の歴史の書物を探さないと」
「…大掃除することになりそう」
時音が呟く
「大掃除というなら、三下さんの部屋の方と思いますけど…」
遮那が時音に突っ込みを入れた。
「ぼ…僕の部屋そんなに汚いですか?」
「「「「うん」」」」
「うわーん!」
三下はまた滝のように涙を流しながら泣く。
「こやつの部屋掃除は後にして資料を探さないことには…遮那、文献の場所を突き止めてくれぬか?」
「え?あ、はいかまいませんよ。直ぐに見つかると思います」
嬉璃は遮那に占いで探して欲しいということだ。
「場所がわかったら、空間干渉を用いて素早くとればいいのですね」
「そういうことぢゃ」
時音が嬉璃に尋ね、嬉璃は頷く。
携帯用の水晶玉を取り出し、念じる遮那…。〈あやかし荘〉全体を見るかのように文献の有可を探す。
「見つかりましたが。やっかいなことに奥の倉にあるようです」
「確かにやっかいぢゃ」
「大丈夫ですよ。僕が行きますから」
時音は立ち上がり、
「地図を書いてださい」
時音の指示に遮那は従う。書き終わった地図を時音は受け取り、そこに小さい針のような光刃で発見場所を突き刺した。
「これでよし」
小さい光刃で空間を斬り、小さな空間亀裂に手を伸ばす。
古ぼけた本がでてきた。3冊ぐらいある。そこには光刃の針が刺さっていた。
『あやかし荘の間取りと歴史』と書かれたものだ。
「ほうほう」
嬉璃は感心する。
「じゃー…三下さんに編集してもらう!」
ゆゆが大声で提案した
「え!僕ですか!」
しかし、今自分が抗議しても…通らないし、ヒョッとすると自分に期待されている事もあるので。
「わかりました!頑張って編集して見せます!」
胸を叩いて快諾する。が思いっきり叩いたので咳き込んでしまった。
「あーあ、一寸格好良かったのに〜」
残念がるゆゆだが。
(それは無茶な注文でしょう)
「それもそうね♪」

●遮那と恵美と…
こんどはTV担当との打ち合わせアポイントメントを取る為に恵美は、TV局の佐伯に電話した。
「はい…そう言うことなので宜しくお願いします」
電話を切って緊張の溜息をつく恵美。楽しい緊張も気持ちが良いのだが。
遮那は彼女が1人になっているのを見て、近寄る。
「あの、恵美さん」
「はい」
「しばらく大変になりますね」
「そうですね…インタビューなどありますし、一緒にタレントさんとお話しすることがありますから」
其れを聞いた遮那は複雑な心境だった。「いらない虫(男)」がつかないことを祈る…。
「そうそう、僕もTV局の打ち合わせの時に一緒にいても良いですか?」
「…はい良いですよ。遮那くんがいてくれると助かります」
恵美の快諾に頬を染める遮那。
「あ、あのえっと、これお守りです。本番で上がらないための」
遮那は小さな巾着袋のようなものを取り出す。ほのかにハーブの香りがしている。
「首にかけて、香りを嗅げば落ち着きますよ」
「ありがとう、遮那くん」
「いえいえ」
又赤面する遮那。
ふと恵美は肩に何か落ちてきたとおもって振り向いた…
其れは蜘蛛だった。
「きゃあ」
恵美は驚きのあまり遮那に抱きついてしまった。
完全に思考崩壊の遮那。もう動けない。というか生きて天国に逝けた。
しばらくそのままでいたいと…。ああ、時の神様時間を止めて。
「あ、ご、ごめんなさい」
「い…いいえ、大丈夫ですか?」
「あ、はい、だ、大丈夫です」
お互い赤面して、目を合わせる勇気がない。
「あ…あの、打ち合わせの時一緒にいてくださいね、…お願いします」
「…は、は…はい」
今日は運が良いかもしれない、そう思った遮那だった。


■ぺんぺん草の間大掃除作戦
「三下さんの部屋は正直〈魔界〉です」
遮那は断言した。
「先ほど、僕も見ましたが…確かに掃除しないことには」
時音が同意する。
「酷い〜」
三下は抗議するが事実そうだ。
「私の部屋も汚いことになるのだが…」
「エルハンドさんは魔法使いでもあるし、あの状況が普通じゃないですか?少し整頓するだけで十分と思います」
遮那がフォローに入った。
「三下さん部屋は…歯ブラシが汚い洗濯物の中に…、飲みかけの牛乳がチーズになっているのですよ。布団の下は…キノコが生えているのではと…」
「もういいよ…ききたくない」
ゆゆは聞いただけでおぞましく、耳をふさいだ。
「早速、男達だけで大掃除に取りかかりたいと思います」
遮那と時音が三下の部屋に向かった。
「あまり使いたくないけど…」
時音は光刃を召還し…
「汚いと判断した物を片端から原子分解した方が楽かも。でも…汚い物を斬るのはいやだなぁ」
「『つまらぬ物を斬ってしまった』とかいって、うやむやにしてしまいましょう」
時音と遮那は互いを見て笑った。
「さてはじめますか」
「まってくださ〜い!」
三下が制止するが、時すでに遅し。
時音は光刃を振るって、あらゆる「ゴミとして認識された」物を塵にした。
そのあとに、業務用掃除機で、塵を吸い取る遮那。
うぃぃんと、掃除機の音が虚しく聞こえる。
とりあえず、見た目は綺麗になった。家具もあるし仕事用の道具や書類もある。
「ましになりましたね、さぁ行きましょう」
二人は何事もなかったように立ち去った。
「ああ〜布団〜背広が〜」
三下の声が廊下でこだました。
「どう…なったの?」
ゆゆが恐る恐る尋ねる
「もう問題ないですよ」
二人はさわやかに答えた。
教訓:整理整頓はきっちりと。


■打ち合わせ
三下が〈あやかし荘〉の草稿を仕上げてまもなく、佐伯とTV局員がやってきた。
恵美の側に遮那がおり、嬉璃は怖さのあまりどこかに身を隠している。
時音と歌姫はというと、柚葉とゆゆのお守りをしている。
「えーと、この背景と、廊下ですね。あと、事情で危ないところもあると言うことも了解しました。実際の放映時間よりかなりかかりますが、草稿の出来がいいのでこちらとも大助かりです」
「ありがとうございます。ではまず…」
打ち合わせが始まった。

●遮那くんはりきる
佐伯と恵美のやりとりを側で聞いて、メモを取る遮那。周りに簡単設備のカメラ組がいるので用心しなくては。各所の撮影ポイントをカメラマンが尋ねてきたので、遮那は計画通りに「霊現象」がでない位置を案内した。前準備に遮那とエルハンドで魔法の特殊マークしている。
三下もやってきて、AD達と会話しているようだ。あの会社で下僕として…いや、しごかれている分、下手なジャーナリストよりは対応できるではないだろうか?
打ち合わせは終わり、休憩に入る。
遮那は恵美と昼食を摂ることにした。
「緊張しますね」
「ええ、僕もです」
「TVに出るのは初めてだから、大変です。まだ、タレントさんが誰か分からないのも気になります」
「佐伯さん吃驚させようとしているのでしょうか?」
「かもしれませんね」
恵美はクスクスと笑う。
遮那はそんな彼女の姿が好きだった。
「でも、遮那くんがいてくれるおかげで、私は心強いです。ありがとう」
「そ…そんな」
恵美の感謝の言葉で、照れ笑いする遮那だった。
先日のことを思い出すと又赤面してしまいそうである。

■リハーサル〜
佐伯が恵美にある男を紹介した。
「リポーターをつとめるタレントの葛城輝さんです」
「葛城です、宜しくお願いします」
「あ…あの、こちらこそ…よ、よろしくお願いします」
恵美は緊張のあまり、ぎこちない挨拶をしてしまう。
遮那もゆゆも彼の登場は驚いた。
かなり人気タレントである。昼のドラマのほか、夜の人気ドラマでも引っ張りだこの実力派男優だ。
恵美は実は彼のファンであり、ゆゆも柚葉も「サインちょーだい!」と駆け寄りたい気分。
遮那の心理は『顎が外れて口が閉じない』といったところだ。
俳優のことには疎い時音にはどうでも良いことだが、有名人が来ていることで興味は少なからずある。この風景を歌姫と2階で眺めている。
恵美はドギマギしていたが…ふと遮那がくれたお守りの香りがした…。気分が楽になる
(ありがとう遮那くん)
感謝一杯の気持ちで遮那を見つめる恵美であった。
リハーサル前の打ち合わせは何のトラブルもなく、スムーズにすすんだ。
佐伯が大声で叫ぶ。
「リハーサル行きます!」

「良き建物を探そう!第一回目は、東京●◎にある〈あやかし荘〉です」
葛城のトークが冴える。
案内役として、恵美が登場し、葛城といろいろな会話をしながら、庭や建物内を案内していく。
途中で出会う住人達もカンペ使用のもと、会話が進む。
三下の草稿の効果もさることながら、その場にいる参加者はなかなかの演技であった。
リハーサルは無事終了した。
「では20分休憩の後、本番行きます〜」
佐伯の合図で、緊張の糸は切れた。
この合図の元、恵美とゆゆ、そして柚葉は葛城にサインをねだりに行く。
三下にとって、独占インタビュー出来る格好のチャンスなので飛び出していった。

■後日談
放映日、食堂に大型スクリーンが設置され、皆が集まった。
練りに練って計画していたおかげで、編集処理も良かった。
皆は番組が終わると、皆は拍手喝采した。

数日後、見物客がぞろぞろ来るわけだが…その4割が恵美目当ての男だ。
遮那の不安は的中した。
「どうしよう!どうしよう!」
心配になって来ている遮那はあわてふためいている。
「まぁこうなってしまっては仕方あるまい落ち着くのぢゃ」
嬉璃がたしなめる。
正門から入れないので、時音の空間移動で帰ってきた恵美とゆゆ。
「大丈夫ですか?」
「大丈夫じゃないよ〜!!」
「此処まで反響があるとは…」
皆でう〜んと悩む。
「あ、そうだ!」
ゆゆが、何かひらめいたようだ。
しばらくすると、人混みにもまれて、へとへとであるが、嬉しい顔をした三下が帰ってきた。
「特ダネつかんだので、編集長から褒められました〜!」
彼の勤めるアトラス出版社で葛城の独占インタビューが載ったからだ。実は、葛城はどのインタビュー取材にもでていなかったのだ。常に拒否していたが三下の熱意に負けたのだ。
「良かったですね!」
皆は三下を褒めた。
ゆゆは、ドアの向こうにいる男性陣を見てから、
「良かったついでに、人助け行ってらっしゃい〜」
「え??」
彼女に玄関から放り出された三下…。
「何したの?」
恵美が尋ねた。
「秘密♪ゆっくりとお茶でもしましょ★」
何のことが分からないが、恵美以外は「いつものこと」だろうと気にしないようにした。
恵美達は管理人室に向かった。

じつは、ゆゆは待ち伏せしている男性陣に三下が恵美に見える幻影をかけたのだ。
三下の断末魔ともいえる悲鳴が聞こえたのは言うまでもない。


End

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【0428/鈴代・ゆゆ/女/15(10)/高校生(鈴蘭の精)】
【0506/奉丈・遮那/男/17/占い師】
【1219/風野・時音/男/17/時空跳躍者】
※番号順です。
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■         ライター通信          ■
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あやかし荘TV取材に参加して頂きありがとうございます。
ゆゆ様と時音様は私のシナリオに良く参加して下さりいつもありがとうございます。
遮那様お久しぶりです。今回は如何でしたでしょうか。
エルハンドについてですが、私のあやかし荘では補助NPCとして存在しております。
あやかし荘用サンプルに記載されておりますのでご参考の程宜しくお願いします。

では、また機会があればお会い出来れば幸いです。

滝照直樹拝
20030310