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■草間氏が避難■

滝照直樹
【1219】【風野・時音】【時空跳躍者】
【データ修復中】
あやかし荘奇譚・草間氏が避難?

○風野・時音
風野時音は歌姫と散歩中であった。どうも、この近辺に異様な気を感じる。
そしてイヤな予感というのはよく当たるモノだと前に知った。
「喉が渇いたかな?」
時音は歌姫に尋ねる。歌姫はこくりと頷く。
「ジュース買ってくるからそこで待ってて」
彼は、公園の横を通る道路に、自販機を見つけたのでそこまでジュースを買いに行った。
しかし、注意を払って歩いていったのだが…公園からでる途中で何かの波動が彼を包む!
「これは対時空跳躍者捕獲器!」
捕獲器は、異能力者や人間が退魔剣士などを捕獲し殺害か服従させることに用いられるトラップだ。
鉄鋼糸で捕獲器を破壊し逃れる。しかし、手元が狂ったか、体に異変が起きる…。
「うわぁぁ」
…気がついてみると…
「ここってどこ?」
可愛い美少年の時音…10歳ぐらいになっていた。しかも記憶はその当時までさかのぼっている。
「魔は!異能者は?人間を守らなきゃ!」
念動鉄鋼糸を落としていることをしり、急いでつかむ。近くに、捕獲器の残骸が残っていた。
そして目の前に、和服姿の女性が居る。彼女は時音が叫んだことで急いできたのだが、状況がよくわかっていないようだ。
時音が居るはずの場所に、時音に似た美少年がいる…。奇妙な機械の残骸もある…。
「お…お姉ちゃんだれ?」
きれいな人だなぁと思いながらも、怖くて歌姫に訊いた。
その言葉は歌姫にショックを与えると同時に…こう思ったのだ。
(あの、変態幼なじみが何かしたんだわ!)
彼女は、10歳の少年に名刺のようなモノを渡した。「あやかし荘住人 歌姫」と書かれている。其れをまじまじ見ている時音を担ぐようにして急いで〈あやかし荘〉に戻った。

聞き耳をするシュライン。この狭そうで広大な〈あやかし荘〉で個人を探すのはかなり難しい。でも彼女には其れは簡単だ。耳などが良いからだ。
鋭敏な聴力と、いつも聞き慣れている足音などで草間を判別できると判断した。後ろで嬉璃が心配そうについてきている。
しかし、玄関先から急いで走ってくる音を聞いた二人は、いったん捜索はやめてそちらに向かった。
なんと、歌姫がものすごい形相で、10歳の少年を担ぎ、時音の部屋に向かっているではないか!
「お、おねえちゃん?」
少年が混乱しているのがわかる。
「誘拐でもしたのかの?」
嬉璃が歌姫の行動に疑問を持つ。
「…一難去ってもないのにまた災難?」
本当に歌姫が誘拐しているならただ事ではない。
「まずは…歌姫さんに事情を聴きましょう…」
「うむ…そうぢゃな」
嬉璃がさきに歌姫を追う。シュラインはもう一度あたりを確認してから…向かおうとした時…。壁からドアが音も立てず現れ…そのこら手がのび口を押さえられてしまった。
「むぐぐ!」
そのままシュラインはドアに引きずり込まれ、ドアは消えた。

一方、歌姫は時音の守衛室に入ってがっちりと鍵をかけた。またバリケードを作っているかのように大きな音がする。
「おい!歌姫!話があるんぢゃ!落ち着いてくれんか!」
ノックする嬉璃。すると
珍しいことに…一生無いであろう…歌姫がヘヴィメタルバンド『Blind Gurdian』を歌っている!英語なので嬉璃には全然わからなかったが…歌姫の歌によって周りが変化する能力が発動した。
歩に捕らわれた少年を助けるために、歌姫が銃を持って黒い塔にむかうという映画が上映された…。
「また、あの女がらみか!」
呆れるしかない嬉璃。ということは…少年は時音?
もうベタベタなのはいいとして、嬉璃は時音がピンチということを知る。下手をすれば、今回の迷惑モノ、歩がやってくる可能性は高い。
「しばし待っておれ!草間が近くに隠れているから彼奴を捜す!」
嬉璃は急いで草間捜しを再開した。
「おねえちゃん?草間ってだれ?」
時音が歌姫に訊いた。
歌姫は、紙に「探偵さん」と書いた。「今、何かの理由で隠れて居るみたい」と書き足した。
「ふーん…」
何となく納得する時音。
時音は記憶が遡っても歌姫が好きだったから信用した。しかし、記憶が戦争時の未来なので…
(「草間さんも異能者か人間に追いかけられているのかな?ならば僕も合流して一緒に逃げることにしよう」)
と考えた。
彼はそそくさと、念動鋼糸と部屋にある使えそうなモノを物色し始めた。

「どこだー!」
もう狂気のオタクになった歩に敵はいないと思われた。しかし!
廊下に写真が落ちていた…それは…『時音5歳』のロリロリ写真だった。彼女にとって超レアアイテムだ。
「あ!宝物めっけー!」
拾った瞬間…天井から日本刀の雨霰が降ってきた。
「うわあ!!」
奇妙なポーズで何とか攻撃をかわす歩。
「このブービートラップ…。時音ね!」
刀を抜くと今度は壁から、でかいボクシンググローブが出てきて彼女を直撃する。反対側の壁が鉄板になっており、かなりのダメージを被った。
「なかなかやるな…」
鼻血を出しながらにやりと笑う。
先に進むと…鉄鋼糸が張り巡らされている。
「ははーん。俺が念動弾でこれを切り裂こうとするか…さけると逆に罠が発動するって事だな」
「よくわかったね」
その先には10歳の時音がいた。しかも可愛い小学生の制服のコスプレをしている。
「時音!…か、かわいいい〜」
罠のことはお構いなくなった。もう可愛い時音に目を奪われた歩はただの馬鹿でしかなかった。
当然、罠に引っかかり。もう説明出来ないトラップの嵐をもろに受ける歩だった。

歩が目を覚ますと…
殺気だった5人が立っていた。殺されかけるしかつオタク扱いされた草間と、本当に彼を心配していたシュライン、捕獲器で子供になってしまった事と草間たちに迷惑をかけた事で怒る時音と歌姫。カメラを向けられた嬉璃…。
エルハンドは玄関の方で黙っていた。
完全に分が悪い…本当に分が悪い…歩は冷や汗をかく…。
「欲も俺を殺そうとしたなぁ〜。しかも零に……」
「武彦さんをオタク扱いしたわねー」
「元に戻った僕の剣で封印されたいかな?」
「カメラを向けた罪は重いぞ、小娘ぇ〜」
にじり寄る5人に、歩は退く。彼女はエルハンドに助けを求めるが…
「自分のまいた種ぐらい自分でしっかりかたつけろ。萌えの廃人」
神にまで見放されたら…もう人生終わった。しかも廃人扱い…。
「そんなのいやぁ〜!」
その叫び声が、彼女の断末魔となった(半殺しですみましたが)。

「すまなかった〜!」
草間はシュラインに土下座する。
「いいわよ…もう怒る気も失せたわ…」
管理人室でのんびりしたあと、草間とシュラインは事務所に戻っていった。
時音は、小鳥の檻にいる小鳥をみている。歩のなれの果てだ。能力を一時的に封印すると同時に、デリケートなカナリアに変化させたのだ。悲しく歩はぴーぴーと泣くしかなかった。
数時間後には、異能者との取引で釈放されることだろう。向こうも恥ずかしすぎて、
「今回はすまない…こちらで後処理はするから…信じてくれ…」
と謝罪したぐらいだ。
異能者部隊長がこんなのになってしまった部下に哀れみを感じる。
なんというか、この事件は単なるどたばたで終わった。


End?


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【0086 / シュライン・エマ / 女 / 26 / 翻訳家&幽霊作家+時々草間興信所でバイト】
【1219 / 風野・時音 / 男 / 17 / 時空跳躍者】
【1355 / 蒼乃・歩 / 女 / 16 / 未来世界異能者戦闘部隊班長】

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■         ライター通信          ■
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どうも滝照です。
このたび、『草間氏が避難?』に参加していただきありがとうございます。
蒼乃様のおかげで、思いっきりどたばたギャグになりました。こちらが考えた以上の行動お疲れ様です。
本当に心配しておられたシュライン様、如何だったでしょうか(滝汗
風野様は若干年齢を要望より下げました。先がおもしろいと思ったので。

作業中、笑いが止まらなかったです…。
ただ、蒼乃様が零ちゃんに「アレ」を伝授し、零ちゃんが実行した場合…。
考えただけでも恐ろしい…。
これからもよろしくお願いします。


滝照直樹拝