■零の誕生パーティ■
滝照直樹 |
【1219】【風野・時音】【時空跳躍者】 |
【データ修復中】
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零の誕生パーティ
1.あやかし荘の風野君
謎の手紙を受け取って首を傾げる風野・時音。内容を見ると、近頃かみついてくる変態に対しての武器と判断し持っておくことにした。
今日は歌姫とデートする約束で街を出かけるのだ。
過去に何があったかよく覚えておらず、一応自分は「天空剣」の門下生という立場だそうだ。いわゆる記憶喪失(しかもたちの悪い)らしい。其れもそうで、「時間矛盾」で本来なら存在しなくなるはずが、記憶喪失だけというなら御の字だ。最も其れは彼にとってあずかり知らぬ所だ。
ノンビリと、歌姫とデートを楽しんでいると、いかにも「怪しい」雰囲気を醸し出す占い師が、彼を指さした。
「お主…『毒電波系』な皆様からラブコール送られて人生螺旋階段の相がでまくっておるぞ!少年!」
風野はいきなり言われたことが厭なので、無視した。
「おい無視するな!ぐ!和服のお嬢!痛いぞ、その視線!」
尚も訴えようとしている占い師。しかし、歌姫が睨み付けるのですごすごと退散する。
「何だったのだろう?」
時音は歌姫に尋ねるが、彼女も首を傾げる。
「噂の、辻占い?」
そう言う感じで考えた方が気分的に楽だろう。
帰ってきた時に管理人の稲葉恵美から、草間零の誕生パーティがここで開かれることを聞いた。人を祝うことは好きな彼だから、参加希望する。
2.時音
時音は草間を道で見つけたので、声をかけた。
「草間さん」
「おお、風野か?どうした?」
「聞きましたよ、零さんの誕生会をされるそうで」
「…あやかし荘が会場だと、お前にもばれるな。しかし、お前なら安心できるし、祝い事は皆で分かち合った方が良い」
「色々大変のようですし」
「まぁな」
近くの喫茶店で珈琲を飲みながら会話が続く。
「零さんの好きなモノって何でしょう?分かりませんか?」
と時音は草間に訊いた。それに対しては本人も悩んでいるが…。
「掃除好きのほかは、普通の女の子だ。なので其れ相応のモノで良いだろうな…実際俺も何にすべきか悩んでいる」
「アクセサリーかぬいぐるみでしょうか?」
「そうだよな…」
流石に、新型掃除機をプレゼントするわけにも行かない。
30分ほど話をして、店をでる二人。ちょうど宝石店を見つけた草間はずっと指輪コーナーを見ていた。
時音も同じように草間と同じモノを見ていた。
零にとても似合いそうな、質素なデザインの銀の指輪。
こういった物は恋人に送るだけのモノでもないだろう。値段も手頃である。
時音は、邪魔しては悪いと思って
「それじゃ、草間さん。また後ほど」
と、いって立ち去った。
「ああ、またな」
草間は手をひらひら振って返事をした。
3.魔王退治
あやかし荘で、パーティが開かれる午前…。庭では要と夏紀が対峙していた。
怪しいオーラ爆発寸前であり、夏紀もやる気満々である。
のんびりと縁側でお茶をすする嬉璃と綾、エルハンド。毎度の事ながら、此処でどたばた事件が絶えることはない。
「お主か!吾輩の至高なる計画を邪魔する奴は!」
「要!お前には前に踏みつぶされたことがあるからな!それに全てお前の所為だ!草間さんは普通だ!」
「愚か者!あの男は『妹萌え』のキング・オブ・キングス!其れを分からないで何をほざくか!」
「勘違いしているだけじゃないのか!似非魔王!」
「なに!似非!吾輩は本当に魔王だ!」
どんな会話をしているのか全く分からない。
「平和だな」
剣客は一言呟いた。
「そうぢゃの」
「そうやねぇ」
嬉璃と綾は縁側で剣客の言葉に同意した。
「おっと、私は時間だ。もしもの時は時音を呼べば片が付くだろう」
「さよか、そうすることにする」
エルハンドは、ゆるりとたちあがり、自室に戻っていった。
相変わらず、謎の口論が続けられる。
小一時間…
いい加減、この二人の漫才を見飽きたので、綾が時音を呼んで事のあらましを告げた。
聞いた彼は眉一つ動かさず、
「任してください」
といった。
「たのむで〜」
綾が見送る中、時音は不毛な言い争いの中に静かに入る。
「おお!和服お姉さん萌えの風野!あの馬鹿者に萌えのなんたるかを叩きつけるのだ!」
要の挨拶は勘弁して欲しいと時音は思った。
「風野さん、あなたも萌え者だったのですか!」
「だから二人とも違うって…」
勘違い善良者にもほとほと困る。
「話の内容を聞けば、草間さんが妹萌えとかどうたらというらしいけど…そんなこと関係ないのではないか?」
「関係ある!」
時音の意見を真っ向から反対する魔王。
「要、あんたはそれでいいよ。中身が「萌え」だけという生き物だし…」
「お褒めにあずかり恐悦至極!」
勘違いしているようだ。すごく喜んでいる。
「水瀬といったね?要の作戦を邪魔していたらしいけど?」
「そうだよ?悪い?」
「其れは賛同している。しかし、会場前でするのは宜しくないな」
「そうだよな〜でも場所を変えようにも、この魔王が動かないんだ」
「そうだな」
二人して溜息をついた。
「要、君が計画した作戦を訊ねたいが?」
「風野さん!?」
「いいから…」
夏紀を制止して要に聞いた。
「ふはははは!よくぞ吾輩の作戦に興味を持つとは、流石萌え者の一人!話が分かるではないか!」
やはり馬鹿だ、と時音は溜息をつく。しかし、こっちは勝てる要素があるので「神格」の解放もしなくて済む。
彼が濃厚に草間にバイトをして零にプレゼントを贈る計画を話してくれた。確かに、それは(一応)良い兄を演じるには都合が良いだろう。
「ふー」
時音は溜息をついて、口を開いた
「要、君は一つ間違いをおこしている。その作戦が成功していると仮定していても、敗北している事を気が付かず」
「なに?」
「普通なら、最高のライバルと決めている「彼」がこの場にいない」
「!」
「そうすると、すでに彼には情報が入っているわけだ。未来を知っているかのように」
といって、時音は魔王にむかって封筒を投げた。受け取る要。
「ライバルからの返答だ。何故僕の手元に来たのか分からないけどね」
要は、恐る恐る封を開けて読んだ…。しばらくして彼は泣きながら(ありもしない)夕日に向かって走り出した。
「おのれ〜!またしても、またしても!」
と、敗北宣言ともいえる捨てぜりふを残し…。
夏紀は何が書いているのか気になったので、落ちている手紙をみた。
『ダメダメだね、要っち♪最後の極め!『微妙に足りないバイト代!足りない分は『お兄ちゃんっ☆』の愛情でフォロー』がないよ!』
沈黙する夏紀…。これ一枚で撃退したのか…と。
「あんな類に本気に相手していたら、身が持たないよ。僕も其れで苦労したから」
時音は夏紀の肩を軽く叩いて何事もなかったように立ち去った。
3.主賓登場
零は、あやかし荘に着いた。
しかし様子が違う。全て明かりがついていない。
「どうしたのだろう?」
不安があった。
兄が何気なく来いと言うことだけしか言わなかった。何があるのと問うとはぐらかされた。
いつものことだからあまり気にもしていなかったが、これは違う。
静まりかえったこの場所はとんでもない事になっているのではと考えてしまう。
恐る恐る玄関のドアを開けた。
「こんにち…」
すると、いきなり明かりがついて、クラッカーの音や「ハッピバースデー!」と大声で祝いの言葉の嵐が耳に届いた。
クラッカーの紙まみれになった零は呆然とする。
目の前には、草間や遠出をしていないはずのシュライン、みなもと焔寿達が待っていたのだ。
「これは?」
「零ちゃんの誕生日会よ」
「え?私」
「そうよ」
まだ状況を理解していない零にシュラインが優しく説明した。
みなもと焔寿、そして柚葉は、彼女の手をひっぱってこっちこっちと食堂に連れて行く。
と、食堂は豪勢な料理と、綺麗な飾り付けで誕生パーティという事が彼女にも分かった。
「皆さんありがとう」
零は驚きながらも、とても嬉しそうな笑顔で答えた。
時音と歌姫の歌をBGMにしてワイワイと盛り上がる。
焔寿の猫チャームとアルシュ、草間の赤猫は行儀良く椅子に座っていた。かなり賢いようだ。
草間はみなもが居ないと気づく。まぁ手伝いに専念するらしいから今厨房にあるのだろうと思っていた。
零と一緒に食事をして話をしていると、喉が渇いた。
「ウィスキーあるかな?」
テーブルを探したが無い。
「ここりあります」
みなもの声がした
「ああすまない…ってなんだ!その格好!?」
思わず、手にしたグラスを落としそうになった。
バニーガール姿のみなも。流石に不意打ちである。
「何故そんな格好…?」
「姉さんが、この服が良いって言うから…う〜ん」
3人して悩む。彼女は、この格好をしているのは、とても恥ずかしそうだから、兄妹はそれ以上聞かないことにした。
中盤、みなもが十八番の水芸で皆を驚かせる。極めは、リクエストした飲み物を「それ」で淹れるというものだ。焔寿の友達チャーム率いる猫たちは、時音の伴奏にあわせにゃーにゃーと歌う。なかなか可愛い。
プレゼントを贈る時間帯になった。
みなもは、海から採ってきた自然の宝石をビーズで結んだネックレス。形はいびつだが、心はこもっているのが分かる。時音は、くまのぬいぐるみ、焔寿は鍵のかけられるアンティークの小物入れ、シュラインは珈琲カップだった。他にも様々なプレゼントを貰う。
兄、草間のプレゼントは小さな箱だった。指輪ケースみたいだった。
「別に兄妹が指輪を贈るって言うのも悪くないかな…と思ってな…」
照れながら答える草間。まぁ思いついたのが指輪だったのは仕方有るまい。
「大切にするよ、兄さん。ありがとう」
にっこりと微笑む妹だった。
最後に零が、お礼の挨拶をして幕を閉じた。
誕生パーティがおわったあと、皆で片づけをして、おのおのが家路につく。
零はとても嬉しそうに軽い足取りで兄と帰っていった。
「また1年後が楽しみ」
零の言葉は幸せの気持ちが一杯だった。
End
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■ 登場人物(この物語に登場した人物の一覧) ■
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【0086 / シュライン・エマ / 女 / 26 / 翻訳家&幽霊作家+時々草間興信所でバイト】
【0759 / 海塚・要 / 男 / 999 / 魔王】
【1109 / 水瀬・夏紀 / 男 / 17 /若き退魔剣使い】
【1219 / 風野・時音 / 男 / 17 / 時空跳躍者】
【1252 / 海原・みなも/ 女 / 13 / 中学生】
【1305 / 白里・焔寿 / 女 / 17 /天翼の巫女】
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■ ライター通信 ■
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こんばんは
滝照直樹です。
『零の誕生パーティ』に参加してくださりありがとうございます。
また機会が有れば宜しくお願いします。
滝照直樹拝
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