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■お気に召すまま。■

草村悠太
【1388】【海原・みその】【深淵の巫女】

 あやかし荘の住人、柚葉。
 彼女は、狐である。
 しかるに、化けることができる。
 普段は脳天気で無意味にテンションの高い天然娘だが、化けたときの演技力は、彼女が女優にならないのを悔やみたくなるほどだ。

 そんな彼女が、同じ『あやかし荘』の住人、天王寺 綾と、のんびり縁側でひなたぼっこをしていたとき。
「なあ」
 ふと思いついたように、天王寺が声をかけてきた。
 べつに全うに働いているふうでもない彼女は、どういう訳か異常に金回りがよい。
「なにー?」
「柚葉ちゃん、あんた、「自分がもう一人いたらなー」って思うこと、ない?」
「えー?」
 首をかしげた柚葉に、天王寺は前を向いたまま、ぼんやりと続ける。
「だって、自分がもう一人いたらやで、一日のうちにできることが二倍になるやん?
 同じ日に二つ儲け話が転がってきても、両方取れるやん?
 二人の男前に同時に言い寄られても、悩まんですむやん?」
「ふーん…それで、一人ずつの綾ちゃんは、結局半分ずつの割り前で我慢するの?」
 さすがに狐だけあって、柚葉も損得勘定は苦手な方ではない。天然娘ゆえに、現実の損得に執着はしないのだが。
 柚葉の言葉で、うららかな陽差しを浴びる庭の方を向いたままの天王寺の眉間に、「ぐわっ」と縦皺が寄った。
「…柚葉ちゃん、あんた、たまによけいなことに気づくなー」
「えー? そうかなー。
 ボクはボク一人でいいよぉ。
 もう一人ボクがいたら、恵美が買ってきてくれる柏餅、半分コしなきゃいけなくなるもん」
「…そしたら恵美ちゃんは2コ買ってきてくれるわ。
 お人好しやねんから」
 柚葉にそう返してから、天王寺はごろりと後ろに身体を横たえた。
「あー。そやけどやっぱりアカンかあ」
 残念そうに、ため息とともに言って、天井を仰ぐ。
「必要なときだけ居ればいいねんな。要は」
 そんな存在を「もう一人の自分」と呼ぶのかどうかは大いに疑問だが、天王寺はごろごろとはしたなく畳の上を転がりながら、ぼやいた。
 ふわりと畳の上に伸びる黄金色の尾が目に入り、何となくつついて遊ぶ。
 ふかふかして気持ちの良い、柚葉のしっぽだ。
 と。
「おるやんか!」
「ひゃうっ!」
 やおら天王寺が大声とともにしっぽを鷲づかみにし、柚葉は頓狂な悲鳴を上げた。
 天王寺は柚葉のしっぽをつかんだまま、むくりと身体を起こしてくる。そして、
「柚葉ちゃん、あんた、化けられるよな」
なにかとてつもないものを思いついたような表情で、問いただしてきた。
「…うん」
「なんにでもか?」
「見たことあるものになら」
 答えると、天王寺は柚葉の両肩をガッシとつかんだ。
「柚葉ちゃん。一口乗らへんか?」
「…えー?」
 不安げに表情を曇らせる柚葉に、天王寺は満面の笑みを見せる。
「分かるやろ? 一日身代わりサービスをするんや。
 『一日署長』とかあるやん。あれの個人版や」
 だいぶ違うと思うのだが。
「…だってー。
 それって詐欺なんじゃないの?」
 さすがにすぐにはうんと言えない柚葉。
「柚葉ちゃん、あんた、そんな言葉どこで覚えたん?
 けどこれは、詐欺やないで。どうしてもはずせない用事が同時に飛び込んで来てもうた人に、両方のチャンスを与えたる仕事やがな」
「…そう…なのかなー…?」
 いまいち釈然としない表情で、柚葉。
 が、天王寺は彼女の肩に手を置くと、力強く頷いた。
「そうや。人助けやで。世のため人のためになる事業や」
「うん…じゃあ…やる」
 押し切られるようにして、柚葉はうなずいた。
「よっしゃ!
 そうと決まったら早速客集めやー!」
 天王寺はすぐに立ち上がると、自室に向かって駆けだした。
「人助けなんだよねー?」
 我ながら疑わしいと思わずにはいられない柚葉は、ウキウキ走っていく天王寺の背中に、自信なさげな声をかける。
「心配要らへーん!
 ウチに任しとき」
 意図が通じているのかいないのか。天王寺の返事は恐ろしく軽かった。



※ライターより※
 草村悠太です。
 柚葉が天王寺にそそのかされて、妙なことを始めました。
 外せない仕事のある日に家族サービスに行ってもらうなり、浮気のアリバイ作りに使うなり、お気に召すままにどうぞ。
 身代わり時間は午前10:00から午後8:00まで。
 明らかに限度を超えていると思うような依頼は、天王寺に却下されます(笑)。


お気に召すまま。

■あやかし荘、ご案内。

 東京都内、某所。
 長距離輸送のトラックやダンプが駆け抜けていく幹線道路をひょいとはずれ、ぼんやりした犬だったら迷子になりそうな、曲がりくねった通りをくねくねと抜けていく。
 正しい方向に歩けていれば、角を曲がるたびにコンクリートブロックの壁が生け垣に変わり、生け垣が油土塀に変わっていく。
 そして、車の騒音がのんきな鳥のさえずりやヒグラシの声や鈴虫の羽音に変わる頃、目の前にぽっかりと、嘘のように長い、時代がかった階段が現れるはずだ。
 丘の上に向かって、のんびりと昼寝をする大蛇のように緩くうねりながら登っていくその階段の先には、こんもりとした木々に埋まるようにして、今時珍しい傘付き電球をぶら下げた数棟の木造二階建てのアパートが建っている。
 無意味に広い敷地を囲う板塀にきられた門のわきには、丁寧な墨書で表札がかかっている。
 『あやかし荘』
 そしてそのさらに下には、少し日に焼けた半紙に、かわいらしい字でちょっとした自己主張が付け加えられていた。
 「空き室あります。 怪奇の類、応相談」


■深淵の巫女、上陸。

 晩春の、すこし色づいた陽差しが心地いい、ある晴れた日のこと。
 『あやかし荘』の前に、およそ不似合いな黒塗りの高級車が音もなく停まった。
 運転手が降りてきて、後部座席のドアを開ける。
「お客様。到着いたしました」
 丁寧に腰を折りながら、中の人物に告げた。
「あら。早いのですね」
 おっとりとした声とともに、中の人影が動く。
 そして。
 「お足元にお気を付けください」と、片膝をついた運転手に恭しく手を取られながら車中から姿を現したのは、何とも言い難い装いの少女だった。
 いったいどんな生地で仕立てられているのか、妙に硬質な印象を与える巫女服をまとっている。
 しかもその色は、夜の海にも似た黒。
 長く伸ばされたつややかな黒髪は腰の下まであり、切れ長の目に輝く怜悧な瞳も、黒真珠のような漆黒だった。
 陽に当たったことがあるのだろうかと思ってしまうほど抜けるように色の白い肌と相まって、彼女だけが辺りの景色からモノトーンのように浮かび上がる。
 歳は13、4に見えるが、その割に物腰はひどく大人びていた。
 泰然自若。そんな表現がよく似合う。
 仕草の一つ一つが、光の届かない深海をなだらかに流れる大海流を思わせる、決して崩れない自分だけのリズムをたたえていた。
 その、彼女が。
「ここですのね。
 まあ。穏やかで、良さそうなところですわ」
 古びた佇まいの門の前に立ち、何かに耳を澄ませる人のように、少し顔を上向けて呟いた。
 それから後ろを振り返ると、
「それほど時間はかかりませんので…
 お手数ですが、お待ち頂いてもよろしいかしら」
車の隣に控えている運転手に尋ねる。
 「かしこまりました」と答える声に、満足そうに微笑んで、少女は――海原 みそのは『あやかし荘』の門を抜けた。


「この度は、ご面倒なお願いをいたしまして。なにとぞよろしくお願いいたします」
 通された、『あやかし荘』の一室にて。
 向かいに座った柚葉と綾に、みそのは丁寧に頭を下げた。
「いえいえ。どんなご要望にもお応えしますよ」
 対する綾は、いつものいい加減な下着もどき姿ではなく、「持ってたのか」と妙な感心をしてしまうようなスーツを着こなしている。
 誠実そうな笑顔を浮かべる彼女は、普段のコテコテ関西弁も影を潜め、どこのキャリアウーマンかと思ってしまいそうだ。
 部屋の中で、ただ一人柚葉だけが、いつも通りのラフな恰好で座っていた。
「さぁ、柚葉さんも海原さんにご挨拶を」
 綾に促され、何よりも「さん」付けされたことに驚きながら、ちょこんと頭を下げる柚葉。
 みそのはおっとりと微笑むと、会釈を返してきた。
「柚葉様。よろしくお願いいたしますね」
「あ、はい。頑張ります」
 思わず、背筋がしゃんと伸びる。
 そんな柚葉の様子に、みそのは笑顔を深めた。
「それでは、さっそくですが」
 綾が手帳を開いた。
「ご依頼の件を、もう一度詳しくお聞かせいただけますか」


 『あやかし荘』の門の前に立ち、水の上を滑るように静かに走り去る黒塗りのハイヤーを見送って、
「はー! なんか緊張したー♪」
柚葉が大きくのびをした。
 それから、隣に立っている綾の手元に目を向ける。
 そこには、丁寧に折りたたまれた和紙の手紙。
 綾に「ご依頼の件を」と言われて、みそのがたおやかに微笑みながら差し出してきたのがこれだった。
「お手間を取らせては申し訳ございませんので、こちらにしたためて参りました」
 開いてみると、濡れたようにつややかな墨書で、柚葉に求めることが簡潔にまとめてある。
 曰く、
「柚葉様には草間零様に化けていただき、私と1日デートに付き合っていただきたく存じます。
 同年代の方との逢瀬は経験が少なくて寂しいものですから。
 逢瀬の道行きはお任せいたします。もちろん、逢瀬の間のお支払いは、私がすべて責任を持たせていただきますので。
 お礼は、お支払いとは別にさせていただきます。
 また、不躾ではありますが、『零』様にはぜひ盛装なさっていらしていただきたく存じます。
 私もそれ相応の装いで参らせていただきますので。
 それでは、僭越ながらまずは御準備金として、これをお納め願いたく存じます」
 柚葉と綾が手紙から顔を上げると、いつの間にか、テーブルの上に目の覚めるような瑠璃色の宝石が乗っていた。
 しかも並大抵の大きさではない。磨いたらそのままレンズに使えそうなぐらいの透明度とカラット数を持った、超一級品だった。
 その輝きに、目を奪われて言葉を失う二人に向かって。
「いかがでしょう」
 宝石の向こうから、みそのが微笑んだ。


 黒塗りの車は、もう曲がり角の向こうに消えていた。
 なんとはなく、小さなため息をもらす柚葉。
 それから、
「すごいよねー」
あのときの脅迫的なまでの宝石の輝きを思い出し、頭の後ろで手を組んで、綾を見上げた。
「まったくや。
 やっぱり、あるとこにはあるねんな。こういうモン」
 言って、無造作に手の中で宝石をもてあそぶ、綾。
「さ、柚葉ちゃん。
 デートは来週の日曜やで。一週間後やで」
「うん。楽しみだねー♪」
「…お気楽な返事してたらアカン。
 これから一週間、寝る間もないと思いや」
「…へ?」
「特訓や」
「デートの特訓ってナニ!?」
 面食らった声を上げる柚葉に、綾はどこかいじわるな笑みを向けた。
「柚葉ちゃん。お金もらってデートの相手するって事、なめたらアカンで」
「…えー…
 零ちゃんに化けて、普通に一日過ごしてくればいいんじゃないのぉ…?」
 おずおずと、柚葉。
 綾は一転、からりとした笑顔で彼女の頭をなでた。
「それはこの次したりぃ」
 言って、くるりときびすを返すと、『あやかし荘』に向かって歩き始める。
「みそのちゃん、いつも海の底で、おンなじ海藻がゆらゆらゆらゆらしとるのを眺めとるんやろ?
 たまのデートぐらい、ガッツーンと刺激的で派手なのにしちゃろ」
 そう続けながら、綾は柚葉を振り返ってウィンクした。
「名付けて、『その体験、プライスレス』作戦や!」


■その日のみその

 みそのは本革のシートに身を沈め、静かに目を閉じたまま、自分が少し胸を躍らせているのを感じていた。
 冷静沈着で、いつもペースを乱さない自分にしては珍しい。
 やはり落ち着きを失いきれない心のどこかで、そんなことを思う。
 街の喧噪もエンジン音も遠い、海の中をなめらかに滑っていく様なハイヤーの車中いるせいか、わずかな心の沸き立ちもはっきりと感じ取れた。
 みそのを乗せたリムジンの向かう先は、『あやかし荘』。
 一週間前の今日、みそのはやはり同じリムジンで、同じ『あやかし荘』に向かっていた。
 目的は、柚葉さんと天王寺さんが始めたという、ちょっと変わったサービスを依頼するため。
 依頼内容をしたためた手紙を読んだときの二人の表情は、いま思い出しても少し口元がゆるんだ。
 みそのはいつの間にか窓の外の景色を追っていた視線を、自分の手元に戻した。
 こうして静かな車中にいると、海の底を思い出す。
 人の身ではたどり着くことのかなわない、世界の深淵。自分の居場所。
 なだらかに巨大な渦を巻く海流の底の、光のない世界。そこに音もなく横たわる、遙か遙か昔からこの世界に存在した、名もない"神"。
 ゆっくりと大地が生まれ、そして死んでいく音さえ聞こえそうなその静寂の中で、"彼"の相手をすることだけが、みそのの役目だった。
 目覚めることのない夢の中、数千年間変わることなく環流し続ける潮に包まれて。
 それを厭うたことはない。ただ――――時には、少し奇抜な経験もしてみたかった。
 だから、柚葉にそれを頼むことにした。
 歳の近い、地上人との逢瀬。
 でも、男性は"彼"以外に考えられない。
 そこで選んだ相手は、零だった。
 草間 零。
 みそのの既知でもある「怪奇探偵」こと草間 武彦の、妹。
 普段あまり飾り気のない彼女に化けてもらうのに、わざわざ「盛装を」と注文を付けてしまった。自分自身、黒地に金糸で飛鶴の縫い取りがしてある中振り袖をまとっている。
 我ながら、気が入っていないと言えば嘘になるだろう。
 そこまで思いを巡らせて、また、いつの間にか視線が窓の外に吸い寄せられていたのに気付く。
 みそのは「ほぅ」と小さく息をついた。
 やはり、少し気が昂ぶっているようだ。
 周囲の様子は少しずつ、木々の数を増していく。
 幹線道路を外れ、幾たびか角を曲がり、リムジンが次第にその速度を緩やかなものにしていった。
 やがて。
 かすかなブレーキ音とともに、みそのを乗せた車は停まった。
 ややあってから、運転手がドアを開けてくれる。
 小気味よい音の後に、
「お客様。到着いたしました」
 その声に頷きで応え、みそのは車外に足をおろした。
 顔を上げた彼女の前に、『あやかし荘』が、晩春の陽差しを浴びてたたずんでいる。
 のんびりとした鳥の声に包まれた、広い敷地のそのアパートを見渡して。
 今日は、どんな一日になるのだろう――――
 海の底では抱くことのない期待感に、みそのは深く息を吸った。


■黒いハヤブサ

「お待ちしてましたよ、みそのさん」
 『あやかし荘』の玄関前。
 みそのが門をくぐり、近づいてきたのに気がつくと、スーツ姿の綾は軽く手を挙げてそう声をかけた。
「天王寺様」
 彼女のそばまで来て、丁寧に頭を下げるみその。
「本日は、よろしくお願いいたします」
 顔を上げて、肝心な人物がいないのに気がついた。
「…あの、柚葉様は」
 問いかけると、綾はちょっと困ったような表情で笑う。
「『零』さんですね。
 いまちょっと、最後の慣らし運転に」
「…慣らし運転…?」
 なんのことかと首をかしげたみそのの耳に、塀の向こうの路地から低い排気音が聞こえてきた。
「ああ――ちょうど、戻ってきたみたいです」
 塀の向こうをのぞき込もうとするかのように、ちょっと背筋を伸ばしながら、綾。
 その間にも、テンポの速いドラムのような排気音は信じがたい勢いで『あやかし荘』板塀を回り込み、
「――よっ! と」
やがて軽やかなかけ声とともに、黒い何かが門を突き抜けて『あやかし荘』の前庭に飛び込んできた。
「…まあ」
 さすがのみそのも、にわかには他に言葉がない。
 彼女の目の前にすべり込んできたのは、翼があるのではないかと思うほど軽快な、だが圧倒的な力強さを放つ、猛禽類にも似た黒い鋼の塊。
 そしてその背にまたがった、ダークグレーのパンツスーツの女性。
 みそのに気付くと、ポニーテールの黒髪を流れるように揺らして、サングラスの細面をこちらに向けてくる。
 その奥で、彼女が「にっ」と笑いかけてきたような気がした。
 バイクに乗った女の子登場。と言ってしまえばそれまでだが、それだけではない何かがある。
 思いもかけない登場の仕方と、思いもかけない鋼の獣の出現に、
「あの…零様…?」
問いかける声にも自信のない、みその。
 女性がちょっとサングラスを下げた。
 フレームの上からのぞくのは、煮詰めたワインのような色の、いたずらっぽい瞳。
「お待たせ、みそのちゃん」
 つややかな黒のバイクにまたがったまま、彼女は――――『零』は、みそのに手をさしのべた。
「麗人をお待たせするとは不覚ですね、『零』さん」
「そういわないでよ。
 この子にゴハン食べさせてたんだから」
 綾の言葉に、『零』がまたがったバイクのタンクをポンポンとたたきながら応える。
 「ね」と水を向けられて、みそのは我に返った。
 見とれていたのが半分、あっけにとられていたのが半分。
「ええ…あの…
 零様にこういうご趣味があったとは、存じませんでした」
 他になんと言いようもなく、規則正しい排気音を奏で続ける黒いバイクを見やり、とりあえずそう取り繕う。
 『零』はもう一度、サングラスの奥で笑った。
「キュートでしょ」
 キュートではない。間違いなく。
 すでにみそのの胸の中では、今日一日が同年代の少女同士の他愛ない思い出で終わるものではないということがひしひしと予感されていた。
「私、こういうもののことはちょっと分かりませんので…」
 いっそガソリンの流れを止めて黙らせてしまおうかと思いつつ、いつまでもバイクから降りる気配のない彼女を促してみる。
「零様、それでは、門の前に車を待たせてありますから」
「必要ないよ」
 あっさりと。
 『零』は笑顔でみそのの言葉を遮ると、タンクにあてていた手を差し出してきた。
「ほら、乗って」
「…私、和服なのですけど」
「わたしにしっかりつかまってれば大丈夫」
 ちょっとだけ強引に、手を引かれた。
 よろめくみそのを片腕で抱き留めながら、『零』が軽くバイクを倒す。
 おしりがシートの座面に触れたとたん。
「――ほら、大丈夫」
 すくい上げるように『零』はバイクを直立させ、みそのをリアシートに乗っけてしまった。
 ふわりと足が地面を離れる、流れるような一挙動。みその、言葉なし。
「みそのちゃん」
 『零』が呼びかけてきた。
「…はい」
「しっかりつかまって」
 両足を片側に揃えて流したまま、おずおずと『零』の腰に手を回す。
「みそのさん、笑ってー♪」
 綾が他人事じみた声を向けてきて、みそのは顔を上げた。
 「ぱちり」と、いつの間にやら向けられていたデジカメのシャッターが切られる。
――――ああ、私、きっとあの方には見せられない顔で映ってますわ…
 生きて戻ってこられたら、きっとメモリーに過電流をかけてデータを飛ばしてやる。
 のんきな笑顔でこちらに手を振る綾に、無言でそう誓ったみそのに。
「振り落とされないでね」
 『零』が脅し文句かと思うような一言を、優しい声で告げて。
「零様、私は初めてでわわわ――――」
 主のアクセルワークに俊敏な反応を見せた鋼のハヤブサは、重力を振り切るかのように力強く、大地を蹴った。


■カフェの二人。

 口当たりのいいカプチーノにひとくち口を付け、マーブル模様のミルクフォームがゆるゆると踊るカップに目を落としたまま、みそのは「ほぅ…」とため息をついた。
「どうだった?」
 向かいから声がかけられた。
 顔を上げてみるまでもなく、その主は『零』。
 「怖かった?」ではなく、「どうだった?」と聞くあたりが、もはや完璧に確信犯だ。
 零様って、もっと家庭的な雰囲気の方だと思ったのですけど…
 胸中でぼやきながら、カップから視線をあげるみその。
 オープンテラスの、白い丸テーブルの向かいから、『零』がいたずらめいた瞳を向けていた。
 天板の上へ両肘をつき、組んだ手の甲ですんなりしたあごを支えている。その奥に、スーツのポケットからサングラスがのぞいていた。
 テラスの手すりの向こう側には、あの黒いバイクが、主人の帰りを待つ従順な獣のように、たたずんでいる。
 地面すれすれを、滑るように駆け抜けていく鳥の背中にでも乗っているような――――みそのの胸に、体中を風が吹き抜けていくあの爽快感がよみがえってきた。
 それが表情に出たのだろうか。
 『零』がかすかに首をかしげる。
 みそのは小さく微笑むと、
「ちょっと、驚きました」
少し悔しいので、本当の気持ちそのままは告げなかった。
 その答えに、『零』が口をへの字に結ぶ。
「残念。
 みそのちゃんに新しい刺激をと、思ったんだけど」
「新鮮でしたし、刺激的でしたよ」
 自然と口元がほころぶのを感じながら、みそのは続けた。
「ただ…もっと、普通の一日になるかと思っていましたので」
「映画見たり、ショッピングしたり?」
「お茶をしたり、とか」
 付け加えるように、手にしていたカップを軽く持ち上げる。
「…その方がよかったかな」
 どこかさみしそうに、『零』はそう言って笑った。
 みそのはカップをテーブルに戻し、
「普通の方々の逢瀬は」
ちょっと改まった口調を向けた。
「このような風では、ないのでしょうね」
「そうだね」
「それこそ、映画を見たり、お買い物をしたり」
「テラスでカプチーノを飲んだり」
 『零』がほのかに湯気を上げるカップを指さした。
「いきなりバイクでさらったりはしない?」
「黒の振り袖を着てきたりもしない」
 みそのは微笑みを返した。
「だとしたら」
 カップを取り、顔の高さに差し上げる。
「次はどんなことが起きるんでしょう」
 『零』も笑顔を返してきた。
「みそのちゃん」
 言いながら、腰を上げた。
「今日は、何か起こるのを待つ必要は、ないんだよ」


■「イタリア坂」にて。

 ここは「イタリア坂」と呼ばれているらしかった。
 みそのと『零』が連れ立って歩くその通りは、確かに異国情緒あふれている。
 さっきのカフェは、この坂の一番下にあった。
 足下はアスファルトではなく細かな石畳で、通りの両脇に並ぶ建物も、石組みやレンガを模したカラフルな壁面の物ばかり。
 すれ違う人々も、やはりどこか着飾った女性や若者が多かった。
 が、その中でも、
「零様…目立ってますね。私たち」
濡れたようにつややかな黒の振り袖をまとったみそのと、きりりと引き締まったパンツスーツ姿の『零』は、ひときわ人目を引いていた。
「気になる?」
「…そうでもありませんけれど」
 『零』の言葉に答えながらも、みそのに備わった波動を感知する力が、周囲の雑音を運んでくる。
 ――うっお、マジ可愛いな、あの二人。
 ――でも謎の組み合わせじゃね? なんで振り袖とスーツよ。
 ――撮影? 何かの。
 ――なんだっていいじゃん。 声かけるか?
 みそのの唇から、かすかに剣呑なため息がもれた。
 遠くから懸想しているうちはいいですけれど。
 と、無言で告げる。
 本当に声をかけてきたりしたら、血流を操って脳貧血を起こさせてやりますからね。
「どうかした?」
 『零』がのぞき込むように声をかけてきて、みそのは振り返った。
「いえ…なんでもありませんわ」
 微笑みを返したとき、ふと、今朝からどこか違うと思っていた、その理由に気がついた。
「あの、零様。
 今日はリボン、されてないんですのね」
 いつもの白い大きなリボンが、ない。
 『零』はポニーテールにした髪に軽く手をやって、苦笑いした。
「うん…
 後ろにみそのちゃん乗ってるのに、ひらひらしてたら邪魔になるでしょ?」
 気を遣ってくれていたらしい。使いどころを間違っているような気もしたが。
「まあ…」
 みそのは口元に手をやって、小さく笑ってから。
「あら。
 それでしたら、新しいものをプレゼントいたしますわ」
 「ぱん」と軽く手を打って、目を輝かせた。
「え?
 いいよ、悪いし」
「ダメです。やはり零様には、トレードマークのリボンがなくては」
 言って、ためらう『零』の手を引くみその。
「…そういうもの?」
 何となくきまりわるそうな『零』に、みそのは自信たっぷりのうなずきを返した。
「そういうものですわ。
 さあ、行きましょう。今日の零様にぴったりなリボンをプレゼントさせていただきますわ」
「…うん」
 はにかんだように笑いながら、手を引かれるままに歩き出す、『零』。
 そんな彼女に、もう一度目を細めるようにして笑みを投げかけて、みそのは「イタリア坂」を上り始めた。


■公園の二人。

 二人を乗せたバイクは、広い公園の敷地に入っていくと、次第にスピードを落としていった。
 やがて、公園を突っ切るアスファルトと広い芝生の方へ向かう石畳の道が交差するあたりで、片側に寄せて停める、『零』。
 エンジンを切ってしまうと、同調していた鼓動が不意にとぎれたような、不思議な空白感がみそのを包んだ。
 『零』に促され、バイクを降りる。
 自分の足で地面に立つと、やはり「ふぅ」と吐息がもれた。
「ちょっと疲れた?」
 『零』の声に、顔を上げる。
「いえ」
 小さく笑いながら、首を横に振った。
 疲れてはいない。ただ、地に足がつけられると、やっぱりほっとする。
 『零』の方に目を向けたまま、スタンドを立てたバイクに寄りかかった。
 彼女の髪に結ばれたブルーベルベットのリボンが、なだらかな風に揺れているのが目に入る。
 遙か昔に絶滅してしまった文字に似た細い白の縁取り模様が神秘的なその生地に手を伸ばし、みそのは何となくそのはじっこを引っ張った。
「なに?」
 呼ばれたと思ったのだろう。『零』顔を向けてきた。
 みそのはにっこりと微笑むと、もう一度、くいくいとリボンを引いた。
「よく似合ってますわ、零様」
 少し誇らしげな口調で。
「フフ…ありがとー」
 『零』が笑顔を返してくる。
「これからどうしますの?」
「ゴハンに行くには、ちょっと早いんだよねぇ」
 尋ねるみそのに、『零』は軽く鼻の頭をかいた。
 目の前の芝生は広々としていて、向こうの方にはキャッチボールの家族連れ。
「鬼ごっこでもしよっか?」
 冗談めかして聞いてくる。
「私、走るのはちょっと…」
 答えたとき、風に乗ってみそのの耳に届くものがあった。
「…零様」
「え?」
「ほら…聞こえますか?」
 みそのが軽く空を指さすようにしてそう言うと、『零』は小さく首をかしげる。
「歌です」
「…ゴメン、聞こえないや」
 苦笑いを浮かべた『零』の腕をためらいなく取って。
「行きましょう」
「え? え?
 みそのちゃん、ちょっと」
 みそのは困惑声の『零』を引っ張るようにして、歌の聞こえる方へと歩き始めた。
 

「すごい…みそのちゃん、よく気付いたね」
 『零』が驚きの声を上げた。
 二人がバイクを止めたところから、ずいぶんと離れた場所。振り返っても、あの大きな鋼のハヤブサがどこにいるのか分からなかった。
 そこで、一組の男女が、けっこう本格的な楽器を持ちだして音楽を奏でていた。
 ギターをつま弾きながら力強いヴォーカルをつむぐ女性と、ドラムセットから生き物の鼓動のようなリズムを刻んでいく、男性。
 女性の声は低くて、でもとても透き通っていた。
 二人ともちょうどこちらに背を向ける恰好になっているので、みそのと『零』には気付いていないようだ。
「…上手だね」
「ええ…」
 少し離れたところに立ったまま、聞き入るみそのと『零』。
 やがて曲が終わると、みそのはぱちぱちと拍手をしながら二人の方に歩み寄った。
 女性の方が、ちょっと驚いたような表情で振り返る。
「とてもお上手でしたわ」
 みそのは彼女の前に立ち、胸の前で手のひらを組んだ。
 その言葉で、女性の口元が、少しだけ照れくさそうにゆるむ。
「ありがと。
 いつから聞いてくれてたの?」
「さっきからです」
 みそのに代わって、今度は『零』が答えた。
 「そう」と、女性が笑みを深くする。
「もし良かったら」
 みそのは彼女の瞳をのぞき込むようにして、言葉を続けた。
「もう少し聞かせていただけません?」
 女性が、ドラムセットの前の男性に顔を向けた。
 彼は「いいんじゃないのか」というように肩をすくめる。
「まいったなぁ…」
 女性は照れたように頭をかき、
「ま、ご期待に添えるかどうか分からないけど、どうぞ」
みそのと『零』に、座るようにと促した。
 二人がそれぞれ芝生に腰を下ろすと、男性の方がちょっと面白そうに笑ってから、手にしたスティックでカウントを取る。
 ささやかな野外コンサートが始まった。
 並んで座るみそのと『零』を包むように、スローだけれど凛としたヴォーカルが流れていく。

――きみという 歌を歌おう
  誰にも まねできないメロディ
  この不確かな世界の中で
  それだけが僕たちのしるべになる
  You're The One.
  別の道を歩き始めても
  僕たちは また会える――

 その、豊かなメロディに身を任せながら。
 みそのゆったりと目を閉じた。


■その日見た海。

「まあ…」
 今日一日で何度目か分からない驚きの声が、みそのの唇からまたもこぼれた。
 海の見渡せる、小さなレストラン。
 そのバルコニーに、みそのと『零』はいた。
 まだシーズン前だけあって、他にお客はいない。
 いくつかテーブルの出されたバルコニーは、二人の貸し切り状態だ。
 ゆっくりと海の向こうに沈む夕日を受けて、視界のすべてが緋色に輝いている。
 絵の具を流したような、水に溶けた炎のような、眩い色の海へ見入るみそのに、すぐ隣から『零』の声が聞こえた。
「みそのちゃんに、これを見せたかったんだ」
 満足げな呟き。
「海の上からちゃんと海を見ることって、逆にあんまりないだろうと思って」
「…ええ」
 みそのはうなずきながら『零』の方へ顔を向けた。
「気に入ってもらえた?」
「とっても」
 うなずくと、『零』はほっとしたように、そして本当に嬉しそうに、笑った。
「ですから」
 続けるみその。
「今度は私が、零様を深海底にご案内いたしますわ」
「う…
 それは、わたし死んじゃうし」
「黒塗りの水中メガネもご用意いたします」
「いや、あのね」
「イトマキエイにも乗せて差し上げますよ」
「…みそのちゃん、微妙に根に持ってたりする?」
 不安げに、『零』。
 そんな彼女の様子に、みそのはにっこりと微笑んだ。
 そして、
「いいえ」
首を横に振る。
 邪気のないその笑顔にほっとした顔を見せて、『零』はみそのをテーブルの方へ促した。
「みそのちゃんにとっては、家庭料理かも。
 シーフードだから」
 導かれるままにテーブルへつきながら、みそのは小さく笑った。
「二人一緒なら、きっとおいしいですわ」
 こぎれいなサロンを巻いたボーイさんが、テーブルに水を運んできてくれた。
 薄青いグラスの中で揺れる水の中に、残照のかけらのような緋色が瞬いた。
 

 今日だけですっかりなじんでしまった排気音が、みそのを包む。
 海の中とは違う軽快な浮遊感に身を任せたまま、みそのは『零』の身体にそっと腕を回して、目を閉じていた。
 すっかり陽は沈んでいて、吹きぬけていく風も少し冷たさを増している。
「みそのちゃん」
 額を預けている背中越しに、声がかけられた。
「海の上、渡るよー」
 その言葉に、そっと目を開けてみる。
 二人の乗ったバイクは、海の上を突っ切る長い橋にさしかかったところだった。
 橋を両端で支えている幾本もの太い橋脚が流れていき、やがて――――
「まぁ…」
視界を遮る鉄柱がとぎれると、目の前に深い藍色をたたえた海が広がった。
 そのビロードのような水面を、沢山の小さな明かりで輪郭を縁取った何艘もの船が行き交っている。
 空にはうすい和紙のような月。
「…きれいですわ」
 本当に海の上を走っているかのような、たとえようのない疾走感だった。
 そのつぶやきが聞こえたのだろうか。
 『零』が小さく笑ったのが分かった。
「さあ、みそのちゃん」
 バックミラー越しに、いたずらっぽい瞳を向けてくる。
「これで最後だから、振り落とされちゃダメだよ」
 言って。
 『零』はいっぱいにアクセルを開いた。


■今日という日の終わり。

 『あやかし荘』が近づいてきた。
 『零』が速度をゆるめ、低くなった排気音の合間に、気の早い夏の虫の声が聞こえてくる。
 やがて、二人を乗せたバイクは、スムーズに『あやかし荘』の前庭へと。
 傘付き電球が丸く光を投げる玄関前で、綾が待っていた。
 『零』が綾の前でバイクを止め、エンジンを切った。
「お帰りなさい、みそのさん」
 笑みを投げかけながら、手を取ってシートから降ろしてくれる、綾。
 その手を借りて再び自分の足で地面に立ったみそのは、胸の底から大きく息をついた。
 それから、バイクにまたがったままの『零』を見上げる。
「零様…本日は本当に、ありがとうございました」
 深々と、頭を下げた。
「わたしの方こそだよ」
 言いながら、『零』は自分の髪を結ぶブルーベルベットのリボンを軽く引っ張ってみせる。
「素敵なプレゼントまでもらっちゃったし」
「気に入っていただけたなら、よかったですわ」
「お互いに、ね」
 にっこりと、『零』が返してきたとき。
「お二人さん。こっち向いて笑って〜♪」
 綾が明るい声を向けてきた。
 振り向くと、出がけにも写真を撮っていたあのデジカメを構えている。
 みそのと『零』は、ちょっと視線を合わせてから、カメラに向かって微笑みかけた。


 みそのは綾が呼んでくれたハイヤーに揺られ、自然とやわらかな微笑みが浮かぶのを感じながら、目を閉じていた。
 膝の上には、帰りがけに綾から手渡された、しっかりした革作りのフォトケース。
 みそのはその表面を、指で優しくなでてみた。
 渡された時、「これ…?」と、ちょっと怪訝そうな顔で呟いた自分に、綾が答えた言葉を思い出す。
「朝撮った写真と、さっき撮った写真が入ってます」
「まあ…記念ですか」
「それだけじゃ、ありませんよ」
「え…?」
「朝よりも今の方が素敵な笑顔で笑ってるってことの、証明です」
 言いながら、綾はみそのの口元を指さしてみせた。
「その笑顔が、私たちのいちばんの喜びなんです」
 みそのはもう一度、口元がゆるむのを感じた。
 それから、大きく深い、息をつく。

 ――――ああ、今日はなんて、思い出深い一日だったんでしょう。 
 
 声にはせずに、そう呟いて。
 みそのはフォトケースを、そっと抱きしめた。


 End.



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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

1388/海原・みその(うなばら・みその)/女/13/深淵の巫女

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■         ライター通信          ■
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 えー…
 そんなわけで、草村悠太です。
 柚葉と綾の新サービスにご依頼いただきまして、ありがとうございました。

 しかし…誰なんでしょう、この人達は(苦笑)。
 自分で言ってちゃ世話ありませんが、こんなに零っぽくない零は初めて見ました。
 とにかくコンセプトメイクから入らなければいけない種類のお話なので、どんなデートにしようかと頭を悩ませた結果。
 「目が良くは見えない」「ものの流れ・波動を感知する力が強い」「普段は海の底(笑)」という設定を使いまして、「全身で感じるデート」にしようと。
 そこでバイクが登場したわけです。
 夕日とか音楽とか、強い光・強い音がエピソードに入っているのもそのためです。
 これでも、いちおういろいろ考えてはいるんですよ(天王寺と柚葉が)。
 その努力が、本当に「その体験、プライスレス」に結びついているかどうかは、みそのちゃんのみぞ知るという感じですが(笑)。

 心の底から余談ですが、『零』が乗ってたバイクにはモデルがあります。「ハヤブサ」というニックネームが付いているシロモノで、本当に「こんなのにパンツスーツの美少女が乗ってたらかっこいいなぁ」と思う一台です。
 が…なんだか二人がヘルメットなしで乗っているような気がするのは、きっと気のせいです。
 柚葉は大型二輪免許なんか持ってるのか…っていうのも、気にしてはいけません。
 ちなみに、このデートでの『零』の運転は、真似しないでください。
 二輪車は、ルールを守って末永く(笑)。

 それでは、新作でお会いできることを祈っております。
 ありがとうございました。 


                       草村 悠太