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■お気に召すまま。■

草村悠太
【1219】【風野・時音】【時空跳躍者】

 あやかし荘の住人、柚葉。
 彼女は、狐である。
 しかるに、化けることができる。
 普段は脳天気で無意味にテンションの高い天然娘だが、化けたときの演技力は、彼女が女優にならないのを悔やみたくなるほどだ。

 そんな彼女が、同じ『あやかし荘』の住人、天王寺 綾と、のんびり縁側でひなたぼっこをしていたとき。
「なあ」
 ふと思いついたように、天王寺が声をかけてきた。
 べつに全うに働いているふうでもない彼女は、どういう訳か異常に金回りがよい。
「なにー?」
「柚葉ちゃん、あんた、「自分がもう一人いたらなー」って思うこと、ない?」
「えー?」
 首をかしげた柚葉に、天王寺は前を向いたまま、ぼんやりと続ける。
「だって、自分がもう一人いたらやで、一日のうちにできることが二倍になるやん?
 同じ日に二つ儲け話が転がってきても、両方取れるやん?
 二人の男前に同時に言い寄られても、悩まんですむやん?」
「ふーん…それで、一人ずつの綾ちゃんは、結局半分ずつの割り前で我慢するの?」
 さすがに狐だけあって、柚葉も損得勘定は苦手な方ではない。天然娘ゆえに、現実の損得に執着はしないのだが。
 柚葉の言葉で、うららかな陽差しを浴びる庭の方を向いたままの天王寺の眉間に、「ぐわっ」と縦皺が寄った。
「…柚葉ちゃん、あんた、たまによけいなことに気づくなー」
「えー? そうかなー。
 ボクはボク一人でいいよぉ。
 もう一人ボクがいたら、恵美が買ってきてくれる柏餅、半分コしなきゃいけなくなるもん」
「…そしたら恵美ちゃんは2コ買ってきてくれるわ。
 お人好しやねんから」
 柚葉にそう返してから、天王寺はごろりと後ろに身体を横たえた。
「あー。そやけどやっぱりアカンかあ」
 残念そうに、ため息とともに言って、天井を仰ぐ。
「必要なときだけ居ればいいねんな。要は」
 そんな存在を「もう一人の自分」と呼ぶのかどうかは大いに疑問だが、天王寺はごろごろとはしたなく畳の上を転がりながら、ぼやいた。
 ふわりと畳の上に伸びる黄金色の尾が目に入り、何となくつついて遊ぶ。
 ふかふかして気持ちの良い、柚葉のしっぽだ。
 と。
「おるやんか!」
「ひゃうっ!」
 やおら天王寺が大声とともにしっぽを鷲づかみにし、柚葉は頓狂な悲鳴を上げた。
 天王寺は柚葉のしっぽをつかんだまま、むくりと身体を起こしてくる。そして、
「柚葉ちゃん、あんた、化けられるよな」
なにかとてつもないものを思いついたような表情で、問いただしてきた。
「…うん」
「なんにでもか?」
「見たことあるものになら」
 答えると、天王寺は柚葉の両肩をガッシとつかんだ。
「柚葉ちゃん。一口乗らへんか?」
「…えー?」
 不安げに表情を曇らせる柚葉に、天王寺は満面の笑みを見せる。
「分かるやろ? 一日身代わりサービスをするんや。
 『一日署長』とかあるやん。あれの個人版や」
 だいぶ違うと思うのだが。
「…だってー。
 それって詐欺なんじゃないの?」
 さすがにすぐにはうんと言えない柚葉。
「柚葉ちゃん、あんた、そんな言葉どこで覚えたん?
 けどこれは、詐欺やないで。どうしてもはずせない用事が同時に飛び込んで来てもうた人に、両方のチャンスを与えたる仕事やがな」
「…そう…なのかなー…?」
 いまいち釈然としない表情で、柚葉。
 が、天王寺は彼女の肩に手を置くと、力強く頷いた。
「そうや。人助けやで。世のため人のためになる事業や」
「うん…じゃあ…やる」
 押し切られるようにして、柚葉はうなずいた。
「よっしゃ!
 そうと決まったら早速客集めやー!」
 天王寺はすぐに立ち上がると、自室に向かって駆けだした。
「人助けなんだよねー?」
 我ながら疑わしいと思わずにはいられない柚葉は、ウキウキ走っていく天王寺の背中に、自信なさげな声をかける。
「心配要らへーん!
 ウチに任しとき」
 意図が通じているのかいないのか。天王寺の返事は恐ろしく軽かった。



※ライターより※
 草村悠太です。
 柚葉が天王寺にそそのかされて、妙なことを始めました。
 外せない仕事のある日に家族サービスに行ってもらうなり、浮気のアリバイ作りに使うなり、お気に召すままにどうぞ。
 身代わり時間は午前10:00から午後8:00まで。
 明らかに限度を超えていると思うような依頼は、天王寺に却下されます(笑)。


お気に召すまま。

■あやかし荘、ご案内。

 東京都内、某所。
 長距離輸送のトラックやダンプが駆け抜けていく幹線道路をひょいとはずれ、ぼんやりした犬だったら迷子になりそうな、曲がりくねった通りをくねくねと抜けていく。
 正しい方向に歩けていれば、角を曲がるたびにコンクリートブロックの壁が生け垣に変わり、生け垣が油土塀に変わっていく。
 そして、車の騒音がのんきな鳥のさえずりやヒグラシの声や鈴虫の羽音に変わる頃、目の前にぽっかりと、嘘のように長い、時代がかった階段が現れるはずだ。
 丘の上に向かって、のんびりと昼寝をする大蛇のように緩くうねりながら登っていくその階段の先には、こんもりとした木々に埋まるようにして、今時珍しい傘付き電球をぶら下げた数棟の木造二階建てのアパートが建っている。
 無意味に広い敷地を囲う板塀にきられた門のわきには、丁寧な墨書で表札がかかっている。
 『あやかし荘』
 そしてそのさらに下には、少し日に焼けた半紙に、かわいらしい字でちょっとした自己主張が付け加えられていた。
 「空き室あります。 怪奇の類、応相談」


■時音、(また)ひっぱたかれる。

 たわんだ竹が跳ねるように。
 時音は一気に跳ね起きた。
 まず目に飛び込んできたのは、見慣れた和室の情景。
 誰もいない。
 雨が降っているらしく、遠い雨粒の音だけが部屋に満ちていた。
 視線を下に向けてみる。
 目に入るのは、布団と、なぜか浴衣姿の自分の上半身。
 そこまでしてみて、ようやく自分がいつの間にか布団に寝かされていたらしいということに思い至った。
 が、いったいいつから、どうしてというところが思い出せない。
「…僕は…いったい…?」
 呟きながら、確かめるように自分の顔を片手でなでた。
 と。
「あれ、時音さん。
 もう起きて大丈夫なんですか?」
 聞きなじんだ声が後ろからかけられた。
 振り返る。
 ふすまのところに恵美が立っていた。
「…恵美さん…
 ここって…」
「『あやかし荘』」ですよ。歌姫さんの部屋。
 見覚え、あるでしょ?」
 「歌姫の…」と、確かめるように繰り返す時音。
「覚えてないんですか」
 恵美は彼の枕元にしゃがみ込み、ずれた枕を直しながら口を開いた。
「時音さん、倒れてたんですよ。
 血だまりの中に」
「…倒れてた…」
 うなずきが返ってきた。
「ここのところ時音さんを見かけないって、この前から歌姫さん、探して回ってたんです。
 そうしたら、ここからけっこう離れた神社の境内で倒れてたって」
 恵美はそこまで説明してから、「でも、気がついて良かったです」と笑顔を浮かべた。
「…すみません」
「あんまり歌姫さんに心配かけたらダメですよ」
 申し訳なさと照れくささに頭をかいた時音に、諭すように告げて。
「じゃ、歌姫さん、呼んできますね」
 恵美は立ち上がった。


「さて…」
 恵美に淹れてもらったお茶を片手に、嬉璃は鷹揚に口を開いた。
「説明してもらおうかの、時音」
 時音が意識を取り戻してから三十分ほど。
 恵美に呼ばれ、戦場に在る三下以外、『あやかし荘』の面々が歌姫の部屋に集まっていた。
 布団の上に身を起こした時音を真ん中に、その枕元に歌姫がいて、足下に柚葉がいて、柚葉の隣には恵美が座っていて、綾は部屋の壁により掛かって時音の方を向いている。
 嬉璃は一人、窓辺に立って、湯気の立つ湯飲みをくゆらせていた。
「説明と言われましても…」
 皆の視線が集中する中、居心地悪さに身じろぎをする時音。
「ここ一週間ほど、歌姫への日参をやめたな。
 別にそれ自体は悪いことではないが、おかげで歌姫はずいぶんと気をもんだ」
 窓の外へ向けていた顔をくるりと時音の方へと戻し、嬉璃が続ける。
「何かあったのではないかと心配した歌姫は、ここ数日取り憑かれたように方々を歩き回り、お前を捜し続けた。
 そしてついに二日前、とある神社の境内で血へどの海に沈むバチ当たりを見つけた――――つまり、お前ぢゃ」
「…はい」
 恐縮して、時音は布団の上でうつむいた。
「それからは何かと慌ただしかったの。
 半狂乱の歌姫を鎮め、医者を呼び、お前を『あやかし荘』に担ぎ込み、穢した境内を清めて、くたばりぞこないのお前にも念のため禊ぎを取らせた。
 ああ…医者には診察代の他に往診費まで取られてしまったの。
 ま、お前には関係なかろうが」
「…すみません」
「別に責めてはおらんぞ。どういう理屈で往診費が5万もかかるのか、疑問ではあるがな」
 答えようのない嬉璃の物言いに、言葉無く縮こまる時音。
 その様子を見かねてか、綾がちょっと面倒くさそうに助け船を出してくれた。
「嬉璃ちゃん、とりあえずその辺のことはエエがな。
 本題に入ろ。
 時音はん。ここんところ『あやかし荘』に来んかったのは、なんかワケあってかいな?」
「訳は…」
 言いよどむ時音に、再びみんなの目が集まった。歌姫が勇気づけるように肩をなでてくれる。
「いえ、皆さんにこれ以上迷惑をかけないようにと…僕なりに考えた結果なんです」
 その手をそっと包み込むように握りながら、時音は答えた。
「迷惑?」
「…僕がいると、皆さんを危険な目に巻き込んでしまいます」
 自嘲気味に笑いながら。時音は手のひらに包んだ歌姫の手を、そっと、自分の肩から離させた。
「だから…僕はもう、『あやかし荘』には…」
 言葉がとぎれる。惹きつけられるように、歌姫の顔を見つめずにはいられなかった。
 視線が合う。漆器のようにつややかな黒の瞳が揺れ、そして。
 歌姫が、たもとを押さえて右手を振り上げた。
「――――!!」
 言葉もなく、躊躇もなく。
 なんだかいつか食らったことのあるような平手打ちが、時音の頬に炸裂した。
 普段ならいざ知らず。
 大量吐血と五日以上に渡る隠遁生活とで耐久力が底をついていた時音の意識は、あっさりと張り飛ばされる。
 ひらひらと、舞い落ちる木の葉のように暗闇へ沈む意識の中。
「ホンマ、水くさいなー」
「とにかく静養させんとの。
 歌姫、縛ってもかまわんから監禁しておけ」
 時音の耳へ最後に届いたのは、何とも不穏当な一言だった。


■愛と縄と友情

 たわんだ竹が跳ねるように。
 時音は一気に跳ね起き――――ようとして、
「うわっ」
無様に布団の上へ転がってしまった。
 目に飛び込んできくるのは、見慣れた和室の情景。
 誰もいない。
 手をついて身を起こそうとしたが、なぜか腕が動かない。
「…あれ?」
 布団の上へ腹這いになったまま、首をねじ曲げて自分の背中を見てみると。
「なぜ…?」
 後ろ手に回された時音の両腕が、えらく厳重に縛られていた。おまけにその結び目からは太い荒縄が伸びていて、床の間の柱にぎっちり結びつけられている。
 起きあがろうとした時音を引き倒したのも、この縄らしい。
 連鎖的に記憶がよみがえってきた。
「そうだ…僕は『あやかし荘』に担ぎ込まれて、歌姫に平手打ちを食らって…」
 薄れゆく意識の中で、嬉璃が「縛ってもいいから監禁しておけ」と言っていたことを思い出す。
 と。
 からりとふすまが開く音がして、時音はそちらへ身をよじった。
「お、やっぱり脱走しようとしとるやん」
「ホントだー。 くくっといて正解だったね、歌姫♪」
「……」
 そこに立っているのは、今さら名前をあげつらうまでもない、『あやかし荘』の面々。
 各々に言いたいことをいいながら、部屋に入ってくる。
「皆さん…あの、これは…」
「んー? ちょっと縛り加減が強いかいな」
「いえ…加減がどうとかいうことではなく…」
 そもそもなんで本当に自分が縛られていなくてはならないのか。
 時音としてはそっちの方に納得がいっていない。
 綾と柚葉が、布団の横にしゃがみ込んだ。両手を縛り上げられたまま、とりあえず掛け布団の上に上体を起こす時音。
「あんな、時音はん」
 歌姫が時音の身体を支えるようにして横に座るのにあわせて、綾が口を開く。
「はじめに一つ。
 あーんま他人行儀なことしてたら、可愛げなくなるで」
「え…?」
 何のことかと、眉根を寄せた時音に。
「ボクたちは友だちだーってコトだよー♪」
 柚葉が飛び込むようにして抱きついた。
 元気いっぱいのタックルを受けて、時音は軽くよろめく。
「ええ?
 …あの、違うよ、歌姫」
 膝に抱きつくきつね娘の姿に、反射的に、隣で自分を支えてくれている最愛の女性へ言い訳を。
 歌姫は「分かっています」と言うように、にっこり微笑みかけてきた。
「ま、そういうこっちゃ」
 ざっくばらんにあぐらをかいた綾も、にやりと口元に笑みを刻む。
「迷惑かけたりかけられたり。
 それが友だちやんか、な」
「…ですが…」
「時音はん。もうちっとウチらを信用しぃ。
 時音はんほど強くはないけどな、だからって友だち見捨ててコソコソ生きたいと思うほど弱くもないねんで」
「天王寺さん…」
「何も、これはウチひとりの意見やないねんで。
 嬉璃も恵美も三下はんも、気持ちは一緒や」
「ボクだってだよー♪」
 布団の上の時音の膝に抱きついたまま、柚葉が元気よく手を挙げた。
「…はい」
 照れくささに、時音はちょっとうつむきながら答えた。腕が動かせたら、頭をかいていただろう。
「よっしゃ。納得したなら、縄は解いたるさかい」
 言って、綾は軽く目線で歌姫に合図した。こくりとうなずいてたもとから裁ちばさみを出すと、時音をほだす縄を切っていく歌姫。
 やがてずいぶんと念入りに巻き付けられていた縄がすべて取り払われると、時音はようやく自由になった両腕を軽くさすった。
「ほな、お医者はんは二週間安静にしとけゆうてたから。
 ゆっくりしてくんやで」
 散らばった縄の残骸をかき集めて、綾が立ち上がる。
「………はい」
「…なんやねん、そのいつも以上に長い「間」は」
「いえ…二週間あれば…」
「また変なヤツらに居場所を突き止められる、かいな」
「…たぶん」
 あきれたような口調で言いながら長い髪に手ぐしを入れる綾に、時音はうなずきを返した。
「そんなん、どうせほっといたかて来るやんか」
「今までは、僕が動けましたから…撃退のしようもありました」
 認めたくはないが、今の自分には異能者や刺客達と渡り合うだけの力はない。
 小柄な柚葉を抱きとめてさえ、よろめいたのだから。
 察したように、歌姫が横からそっと肩を抱いてくれる。
 綾もちょっと眉根を寄せ、天井を睨んだ。
「ふん…
 ま、分の悪い勝負と分かってて突き進むのは、おもろないな」
「やっぱり、僕が」
 立ち上がろうとした時音は、歌姫と柚葉の二人にたやすく押さえつけられてしまう。
「見てみぃな。そないフラフラで何する気やねん」
「せめて、『あやかし荘』以外の場所に姿を見せてないと…」
「カムフラージュか…やけど、今の状態じゃ、襲ってくれ言うてるようなモン――」
 と。
 そこまで言って、ふと綾は動きを止めた。
「…どうかしましたか」
 問いかける時音に、「あんな」と人差し指を立てた。
「囮がいればいいんちゃうの」
「まあ、そうも言えますけど、そんな人――」
 そこまで言って、時音もまた動きを止める。
 それから、二人そろって柚葉の方へと顔を向けた。
「…なにー?」
 何となく不穏な空気を感じて、おずおず時音の膝から離れる柚葉。
「化けられる、んでしたよね、柚葉さん」
「ああ。奇遇なことに、身代わりアルバイトを始めたとこやしな」
「…えー…」
 フトンから離れようとして、今度は「はっし」と歌姫に足首をつかまれてしまう。
「僕の姿になっていただいて、ちょっと都内一周してくる、なんて、頼むことは?」
「そりゃ、商売やもん。
 イヤとは言えんわな」
「ボク、時音に化けたって、手から蛍光灯みたいの出せないよー…」
 『光刃』のことを言っているらしい。
 が、不安げに眉を下げた柚葉に、時音は優しく笑いかけた。
「大丈夫ですよ。『光刃』は心の力の具現化ですから。他の人に託せば、遠隔操作ができます」
「おお。リモコン『光刃』かいな。
 ええなぁ、柚葉」
 言いながら、ヤバイぐらいにさわやかな笑顔を浮かべる、綾。
「…良くないぃぃ…」
 すでに半泣きでうずくまるきつね娘の頭を、彼女は優しくなでた。
「そない心配せんでも、柚葉…」
 そして一言。
「骨は拾ったる」
 自分のしっぽを抱くようにしてさめざめと泣く柚葉の姿に、時音の良心はちょっと痛んだ。


■『時音』の災難。

 柚葉が時音に化け、囮役として方々をうろついてくることが決まった、その次の日。
 時音は布団の上に上体を起こし、背中を優しく歌姫に支えてもらったまま、目の前の『時音』に見入っていた。
「へぇ…」
 思わず、呟きがもれる。
「本当に、どっちが僕だか分からないぐらいですね」
「そうやろ? 柚葉ちゃん、褒められてんで。
 よかったなぁー」
 頭のてっぺんからつま先まで。まじまじと見つめてそう評する時音の言葉に、綾は少し手を伸ばして『時音』の頭をなでた。
「…はうー」
 だが、当の『時音』は手放しで喜べないらしい。
 化けてはいるものの演技に入っていない分、柚葉の地が出ていた。
 何となく全てをあきらめたような表情で、はらはらと涙を流している。
「柚葉、三下はんみたいやで」
 揶揄する綾の言葉に、後ろで聞いている時音の方が微妙に傷ついた。
「さて、時音はん。
 リモコン『光刃』の方、頼むわ」
 言いながら背中を押す綾に促されて、『時音』が時音の枕元に来る。
「そこに座って、少しじっとしててくださいね」
 時音はそう言ってから、『時音』の額に手を伸ばした。
 目を閉じて、『光刃』を形成する力の一端を、『時音』の中に移し替える。
「…はい、もういいですよ」
 時音が手を離すと、『時音』は予防接種を終えた子供のように、「ほーっ」と大きく息をついた。
「なんや、もうおしまいかいな」
 拍子抜けしたような、綾。
 時音は笑顔を返しながら答えた。
「はい。『光刃』の力を丸ごと託す訳じゃありませんから。
 柚葉さんに託したのは、言ってみればスイッチです」
 「スイッチ?」と、『時音』がかわいらしく首をかしげる。
「柚葉さんが『光刃』を発動させようとする思念が、僕に伝わるようにしました。
 ピンチになったら、『光刃』の力を意識してください。その思念を辿って、僕が柚葉さんの手元に『光刃』を顕在化させます」
 ざっくりとした時音の説明に、「ホンマにリモコンやなぁ」ともらす綾。
「それで大丈夫なのかなぁ…」
 『時音』は不安げに、自分の手のひらを見つめた。
「それで勝てそうにもない相手が来たら、無理をしないで変化を解いてください」
「うん…」
 うつむき加減にうなずく『時音』。
 時音はなんだか複雑な気分で、『時音』の肩を励ますように叩いた。


 それから、小一時間ほど後のこと。
 とほほー。
 『時音』は電車に揺られながら、胸の中だけで涙混じりのため息をついた。
 出がけに綾に釘を刺されたことを思い出す。
「柚葉ちゃん、分かってると思うけど、『囮』やねんからな。
 ちゃんと目立ってこんとイカンで」
 目立て、と言われても困る。まさか人通りの多いところでいきなり『光刃』を振り回し始めるわけにもいかないだろうし。
 仕方ないので、とりあえず人の多い場所に行こうと、『時音』は新宿に向かっていた。
 人がいなければ囮の役目を果たせないし、人が多い分かえって物騒な異能者に見つかりにくいはず。
 そう思っての選択だったのだが。
 それが全くの裏目に出ることを『時音』が知るのは、それほど先のことではなかった。


■伏兵

「はふー…」
 『時音』は新宿御苑のベンチに腰を下ろすと、深く息をついた。
 時計を確かめると、午後三時を少し回ったところ。
 時期も時間も中途半端なせいか、あまり人は多くない。
 池の畔を取り囲む遊歩道に面したベンチからは、だいぶ緑の強くなってきた桜並木が見渡せた。
 新宿駅に着き、いつ異能者の集団に襲われるだろうと戦々恐々としながら、人混みの中を歩き始めたのが一時間ほど前。
 なるべくさりげない風を装いながらも、足は自然と静かな方、緑のある方へと向かっていた。
 そうして、新宿御苑にたどり着いたのが三十分前で、このベンチに腰を落ち着けたのがたった今だ。
 『時音』はもう一度、胸の奥から息をつく。
 これからどうしようか、と考え始めたところで、『あやかし荘』を出るときに綾に渡された携帯電話が鳴った。
 着信音がわざわざ「行きはよいよい」に設定されているのは、何かのいやみなのだろうか。
「もしもし」
「おー、柚葉、生きとるか」
 電話に応えると、綾の気楽な言葉が返ってきた。
「…綾さん、縁起でもないことを言うのはやめてください」
 ここにはいない相手に、つい半眼になる。
 綾はカラカラと笑ってから、続けてきた。
「ゴメンゴメン。柚葉のことが心配でな。
 で、今どこや」
「新宿御苑です」
「一人か?」
「当たり前じゃないですか」
「いや、そういう意味やのうてな。
 刺客とか襲撃者とか、来とらんのかいなってコトや」
 物騒な言葉に、『時音』は思わず辺りを見回した。
 のんびりと散策するカップルや、老夫婦や、ベビーカーを押した家族連れや、ちょっとけだるそうに歩いているサラリーマン風の男性や、対照的に明るい学生のグループや…
 そんな人たちが、目に入ってくる。
 怪しいと言えば怪しいような気もするし、全然怪しくないような気もする。
「…たぶん、大丈夫だと思います」
 とりあえずはっきりしているのは、今のところ襲撃は受けていないということだ。
「そうかー。そら何よりやけど、柚葉ちゃん、ちゃんと目立ってるか?」
「…隠れてはいませんけど」
「引っ込み思案やなぁ。
 ちょっと『光刃』でも振り回してみ」
 引っ込み思案かどうかの問題ではないし、『光刃』は「ちょっと」で振り回す代物でもない。
「無茶言わないでください」
「試験やがな。いざって時にホンマに『光刃』が出せるのかどうか、試さんならんやろ?」
 突っぱねた『時音』の言葉も、綾は簡単に丸め込んできた。
「う…まぁ、それは」
「な、ホラ。どうせ新宿御苑なら、大した騒ぎにはならんやろ。
 花見の余興や思われるくらいや」
 それはどうかと思ったが、確かに確認はしておきたい。
 『時音』は「分かりました」と言って、時音に教わったとおり、『光刃』の力を意識してみる。
 集中しようと軽く目を閉じて、何度も見たことのある時音の戦いを思い出す。
 と――――
「柚葉さん、敵襲ですか!?」
 えらく泡食った声が受話器から響いてきて、『時音』ははっと瞼を開いた。
 自分の右手の中に、ほの青い光の束が生まれていた。
 重さがないのに確かな質量を感じる、光の剣。『光刃』だ。
「うわぁ…」
 思わず声を上げながら、手の中の『光刃』に見入ってしまう『時音』。
「柚葉さん、相手は何人です? 異能者ですか!?」
 電話口から、時音がもう一度せっぱ詰まった声を向けてくる。
「え…あ、ゴメン。
 ちょっと実験してみただけ」
 『時音』は我に返り、そう答えた。
 その言葉に安堵の息をついた後、
「なんだ…おどかさないでくださいよ」
苦笑混じりに、時音。
 後ろで綾が爆笑しているのが聞こえた。
「へへ…ゴメン」
 『時音』は『光刃』を解放した。結束を失った光の束が、のどかな陽差しに溶けていく。
「今のところ、何事もないですか?」
「うん。今のところね」
 時音の言葉に答える『時音』。
 その姿を無機的に見つめる電子の瞳があることになど、『時音』はなんの注意も払っていなかった。


■遁走者と追跡者。

 十分ほど、時音と他愛ない話をしていてから、携帯電話を切った。
 囮だなんだとは言うようなものの、きちんと気にかけてバックアップしてくれている。
 そのことに少し勇気づけられ、『時音』はベンチの上で大きくのびをした。
 怯えていたときは辺りの景色を楽しむ気持ちのゆとりなどなかったが、今はちょっとその余裕が出てきている。
 新宿の次は、どこに行こう。なるべくいろんなところを回って、囮役を果たさないと…
 そんなことを考えながら、ぼんやりと目の前の池や葉桜の並木を眺めた。
 ゆるい晩春の風にふかれながら、のどかな風景を楽しむ。
 ほんのちょっと休むだけのつもりが、いつの間にか三十分近い時間が経ってしまった。
 それが、油断だった。
「時音ぇッ!」
 いきなり後ろから刺すような鋭さで名前を呼ばれ、ビクッと肩を震わせて振り返る『時音』。
 と、同時に。
 夕立のような音を伴って、腰掛けたベンチの周りに降り注いでくる思念制御の矢の嵐。
「うひゃあっ!」
 情けない声を上げ、『時音』は頭を抱えた。
 時音の周囲15センチの空間だけを残して、矢の形を採った破壊の意志が、ベンチを粉々の木片に変えていく。
 永遠にも思えるような数秒のあと。
 矢の嵐が終わったのを知って、全身に木くずを浴びた『時音』がおそるおそる顔を上げると、
「時音…!」
目の前に、何とも言い難い表情をした少女が立っていた。
「え…え…?
 歩…?」
 どうにかそれだけ口に出す、『時音』。
 やおら、少女――――蒼乃 歩は、『時音』の胸ぐらをつかみあげた。
「時音…お前、なんだッ! 今の反応は!
 隙だらけじゃないか!」
 目を白黒させる『時音』を揺さぶって、歩が声を荒げる。
「何にツッこんでるんだか知らんが、お前もたいがいだと思うぞ…」
 その後ろで、なぜか豊田君が呆れ顔を浮かべていた。
 どうしてこの二人が一緒にいるのか。訳が分からない。
 『時音』は歩の手から逃れようともがいたが、外見が時音でも中身は柚葉だ。能力的には、時音の年齢の青年の平均と大差ない。
 じたばたする『時音』に、愕然としたような哀れみの表情を浮かべる歩。
「時音…お前、なんてナマり方だ。
 これで式 顎に勝ったっていうのか?」
 言って、半ば放り出すように『時音』を解放した。
 ぼろぼろになったベンチにうずくまり、ケホケホと咳き込む『時音』を見下ろしながら、
「人間達になんて囲まれて暮らしてるから、そうやって鈍っていくんだ…」
底知れない怨嗟を込めて声で呟く。
「歩…何しに…」
 のど元を押さえながら、歩の顔を見上げた。
「決まってる」
 歩は決然と答えた。
「お前を未来に連れ戻しに来た。
 異能者の訓練キャンプで、一から鍛え直してやるからな!」
 冗談ではない。
 時音の話に聞くような戦闘天国になった未来世界の、しかも「訓練キャンプ」なんてものに放り込まれたら、柚葉は半日で廃人になるだろう。
 『時音』は心を決めた。
 しゃがみ込んだままで息を整え、歩が腕を掴もうと手を伸ばしてくるのを視界の端に納めた。
 『光刃』の力を意識する。
 歩の指が、自分の腕に触れた瞬間。
「えやっ!」
 気合いの声とともに、下から伸び上がるように『光刃』を振るう。
 へろりっ!
 音が聞こえそうなほどのへなちょこな斬撃。
 それでも、手が触れるほど近寄っていた歩は、とっさに大きく一歩飛び退った。
 その一瞬を逃さずに。
 『時音』はくるりと歩に背を向けると、一目散に駆けだした。
 後ろで歩が何か言っているような気がしたが、振り向くことはできない。
 人生最大級の速度で、新宿御苑の中を突っ走った。

 
「ああ、待てコラ時音ーッ!」
 時音が必殺の距離で自分に『光刃』を振るってきたこと。
 そしてその『光刃』が、とてもじゃないが信じたくないほど萎え萎えな一撃だったこと。
 そのWショックから三秒で回復すると、歩は怒声を上げた。
「風野さん、速えーなー。
 もう見えなくなったぞ」
 かたわらで他人事のように感心した声を上げる、豊田。
 歩はあらゆる恨みと八つ当たりを込めて、彼を睨み付けた。
「お前ら人間が、時音をあんな風に変えてしまったんだッ!」
「そっか。全人類を代表して謝ろう。
 すまんな」
 あまりにもあっさりと。
 豊田が深々と頭を下げてきて、歩は振り上げた拳のぶつけどころを無くされてしまった。
「く…ッ
 お前はどうしてそう、俺のタイミングをいちいち…」
 そこから先が上手く言葉にならない。
 歩はいらだたしげに手を大きく振ると、
「とにかく、追うぞッ!」
時音の走っていった方を指さした。
「見つかるかぁ?」
「見つからなかったら、代わりにお前をキャンプに放り込んでやる!」
「…それもアリかな」
「アリかな、じゃないッ!」
 変なところで記者魂を発揮する豊田を怒鳴りつけ、歩は時音の後を追って走り始めた。


 『時音』が、ポケットから「行きはよいよい」が流れていることに気付いたのは、周りの様子がさっきまでとは違っている場所まで来てからだった。
 足をゆるめ、恐る恐る後ろを確認してみる。
 まばらに行き交う人々の中に、歩の姿はなかった。
 疲労がどっと『時音』に襲いかかる。フラフラと芝生の上に座り込み、携帯電話を引っ張り出した。
「もしもしぃ…」
「ああ、柚葉さん。
 良かった…なかなか出ないんで、心配しました」
 時音の声だった。
「うっうっ…時音ー。
 助けてー…」
 思わず泣き出してしまう、『時音』。
「どうしたんです? さっきの『光刃』、今度は本当だったんですか?」
「歩ちゃんがー…」
「歩が!?」
 名前を出しただけで全てを悟ったのだろう。受話器の向こうで、時音も面食らった声を上げていた。
「それはまた…やっかいなヤツが来ちゃったなぁ…」
「どうしよー…」
「…勝てそうですか?」
「ムリだよっ!」
 ぽつりと聞いてきた時音に、『時音』は悲鳴のような声を返した。
 「やっぱり」と、時音が苦笑いしているのが分かった。
「今、どうなってるんです?
 電話してるってことは、捕まってはいないんですよね」
「うん…何とか振り切ったトコ。
 まだ新宿御苑にいるんだけど…」
「分かりました。無理しないでください。
 誰かその辺の人に化けて、歩をやり過ごして戻ってきてください」
「うん…ゴメンねー…」
「なに言ってるんですか」
 時音の声は優しかった。
「また明日も、お願いするんですから」
 そして底知れず、絶望的だった。


「ああーッ! ちくしょぉッ!」
 歩は拳を天に振り上げて、口汚いののしり声を上げた。
 時音を見失ってからすでに一時間以上。
 この広い新宿御苑の中で、二本の足と二つの目だけでたった一人の人間を捜そうという方が無理だった。
 「目」の数を増やそうとした豊田の当初の行動は、まったく的を射ていたわけだ。
 つくづく、そう認めさせられてしまう。
「あーあ…キャンプ行きかな、オレ」
 その、駆けずり回る歩に平然とした顔でついてきている豊田が、ぼつりと。
「黙れッ!」
 とりあえず殴っておいた。
 それから、未練たらしくもう一度公園の中を見渡す。
 見える範囲に時音の姿はない。
「…くッ」
 苦鳴がもれたのを聞きつけたのか、
「嫌われてんなー、蒼乃」
豊田は殴り倒されて芝生に転がったまま、実にムカつく一言を口にしてきた。
「下らないことを言ってないで、どうすればいいか考えろ!」
「おお。頼られてるじゃんオレ。
 やったね」
「べっ…別に、頼ってはいない!」
「あっそ」
 あわてて打ち消す歩をあしらうように。
 豊田はハンドスプリングの要領で鮮やかに芝生から飛び起きた。
 そして、ぱんぱんとズボンに付いた葉っぱをはたき落とすと、
「なんにしても、もう風野さんは御苑を出ちまったと思うべきだろうな」
御苑を囲う壁の方へ、くるりと顔を向ける。
「く…ッ!」
 歩の口から、もう一度苦鳴が。
 そんな歩に、豊田は「しょうがない」と言うように肩をすくめ、
「じゃ、とりあえずメシでも食いに行くか」
当たり前のように、一言。
「は!?
 何で俺がお前とメシなんか食わなきゃならないんだ!」
「何故かと聞かれたら、腹が減ったからだな」
「なぜお前となんだって聞いてるんだ!」
「作戦会議を兼ねてだよ。
 長丁場になりそうだからな」
「…作戦会議?」
「イヤならいいぜ。明日からは一人で頑張ってくれ」
 素っ気なく言って、豊田はすたすた歩き始めた。
「…おい」
 その背中を見送りながら、つい呼び止める歩。
「んー?」
 いい加減な返事が返ってきた。
「…その作戦、勝算はあるんだろうな」
 他になんと声をかけていいか分からずに、とりあえずそう口にする。
「『ドアの前には立たせてやる。開けるのはお前自身だ』ってやつだ」
「…なんだそれ」
 訝しげな顔を浮かべる歩に、豊田はにやりと笑った。
「信じろってことさ」
 そしてまた、御苑の門に向かって歩き始める。
「早く来ないと置いてくぞー」
「お前な…俺をなんだと」
 文句を言いかけたが、豊田の後ろ姿が次第に遠ざかっていくのを見て取ると、歩はもう一度小さく舌打ちをした。
 そして。
「しょうがないな…おい、コラ、待てって」
 小走りに、その背中を追いかけた。


■後日談。

 まるで三下のように。
「時音ー…
 もうダメだよ、絶対次は死んじゃうよ」
 今日もぼろぼろになって返ってきた柚葉は、布団の上に身を起こした時音に泣きついた。
「そうですね…僕の体調もずいぶん回復しましたし。
 ありがとうございました、柚葉さん」
 苦笑いで、頭を下げる時音。
「じゃあ、もういい? 囮やらなくていい?」
「はい。ご苦労様でした」
 微笑みかけると、柚葉も泣き笑いになる。
「はうー…やったよー」
「しかし、日増しに巧妙になっていきますね。歩の襲撃」
「…うん。気の休まるヒマがなかったよ」
 ゲリラ戦さながらの、どこから襲撃されるか分からない日々を思い出して、自分の肩を抱く柚葉。
「時音はんは、それを今までずっとかいくぐって来てたんやなぁ」
「はは…まあ、ここまで連日じゃ、なかったですけどね」
 言って、時音は立ち上がった。
 付き添うように腰を上げた歌姫が、彼の手に、きれいに洗濯されたいつもの服をそっと手渡す。
 受け取りながら、しばし二人の視線が重なる。
 そして、どちらからともなく微笑みを浮かべた。
「大丈夫」
 時音が、誓うように口にした。
「僕は必ず、ここに帰ってくる」


「今日こそ決めてやるぞ、時音!」
 きつく拳を握って、歩は決然と声を絞った。
「まったくだ。毎回毎回逃げられて、よっぽど嫌われてるんだな、蒼乃」
 雑音に裏拳を叩き込み、
「場所は!」
情報だけを要求する。
「聞いて驚け、因縁の桜並木だ」
 まったくダメージを感じさせない声で、豊田。
「…新宿御苑か」
「ビンゴ」
「何でまた、同じ場所に?」
「誘ってるんじゃないか」
 言って、豊田がPCのディスプレイを向けてきた。
 その画面に映る、Webカメラの画像の中で。
 『光刃』を手にした時音が、残映が残るほどの鮮やかな剣さばきを見せていた。
 八方から舞い散る木の葉を、竜巻のように一枚残らず両断していく。
 それはまるで、舞踊のような優雅さを帯びて。
「…完全復活か?」
「むしろ、本物登場って感じだな」
 豊田の言葉に、「ふん」と不敵な笑みを浮かべ。
 歩はゆっくりとイスを立った。
 それから、豊田の方へ顔を向ける。
「行くぞ」
「上等」
 黒塗りのごつい一眼レフカメラを片手に、背の高いアトラス編集部アルバイターも口元に笑みを刻んだ。
 そして二人は、新宿御苑目指して走り始めた。


 End.


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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 【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

1219/風野・時音(かぜの・ときね)/男/17/時空跳躍者
1355/蒼乃・歩(あおの・あゆみ)/男/16/未来世界異能者戦闘部隊班長

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■         ライター通信          ■
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 お待たせいたしました。草村悠太です。
 柚葉と綾の新サービスにご依頼いただきまして、ありがとうございました。

 今回のテーマは、「友情と迷惑」です(真顔)。
 いただいたプレイングにて、「成り行き任せ」というコトになっておりましたので、本当に成り行き任せな時音さんとなっております。
 お話の性質上、そしてプレイングの内容上、今回の時音さんは本当に活躍しません。歌姫の部屋に入ったきりです。
 新種の密室ものですね(謎)。

 で、電話をしていないときの時音さんがなにをしているのかというと、歌姫嬢の膝枕でまどろんでいたわけです。
 なんてうらやましい。
 草村の描く『あやかし荘』ものでは、あり得ないぐらい優雅な時音さんでした。

 それでは、新作でお会いできることを祈っております。
 ありがとうございました。 


                       草村 悠太