■【Handle with Care】守護〜友の永遠〜■ |
燕 |
【0026】【プティーラ・ホワイト】【エスパー】 |
暗い部屋に、君達は集められた。
「……良く、来てくれたね」
光の加減で、その声の主の男の顔は分からない。しかし、とても落ち着いている声だ。
「君達に、今回頼みたい事……それは、この少女の命を護り、保護してもらいたいのだ」
その男が見せた写真には、年の頃10歳程度の顔立ちの少女が写っている。
「この少女の名前は?」
「聖・沙羅亜。 優れたサイコ能力を持つ、特異な存在だよ。彼女のその特別な力を狙い、ある組織に狙われているんだ」
「優れたサイコ能力、だと?」
「ああ……君たちが束になって掛かっても、きっと負けるだろう。それ位の力を持つ少女さ。 だからこそ、あの組織が目を付けるのも頷ける」
写真を君達に渡すと、男は話す。
「……聖の命を狙っている組織の名前は、「テンペスト・アーク」。表では護衛等の仕事を請け負っている集団だが、実際の顔……裏の顔は、暗殺集団だ。 聖に目を付けたのは、きっと暗殺集団に仕立て上げるつもりだろう」
「君達が無事に彼女を連れてくる事を望む……では、健闘を祈る」
とだけ言うと、男は出て行った。
「……気をつけて」
君達に忠告するのは、未来を予測する力をもつ、センサリティの女性。
水晶玉を見通すと、その中に彼女は未来を予測できるのだ。
「……見えたものは、【崩壊】【友】。 テンペストアークの狙いは、聖ですが、狙うのは聖だけではない……」
彼女の予測した未来は、どういう物なのだろうか。
※サイコマ初依頼は、かなりシリアス風味を持ったシナリオです。
依頼の概要は、「特別なチカラを持った少女:聖・沙羅亜をテンペストアークの手から護り、保護する事です。
テンペストアークは、タイムESP等、エスパーの者達が数百人在籍する集団です。表では護衛集団として機能していますが、実際の姿は暗殺集団。依頼を受けたら誰でも殺そうとするそんな集団です。
今回テンペストアークは、聖を奪う為に、聖の友人を聖の目の前で殺すでしょう。それを目のあたりにすれば、聖の力は解放されることになると思います。
テンペストアークの手段は、暗殺集団という事で、聖と友人を救うためにはどうすれば良いか、それを考えてみてください。
尚、聖が居る場所には普通に到着出来るので、その辺は書かないでも大丈夫です。
受付締め切り予定:6/30(月) 24:00
募集人数:1〜6人
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【Handle with Care】守護〜友の永遠〜
Period:0−【序章】
真っ暗な部屋に、声が響く。
顔は見えない。誰もが50代後半と思われるそんな声。
「まだ……まだ聖は捕まえられないのか。捕獲の計画を立てて何ヶ月経つと思っている」
「アイツの力は、私達にとって脅威。 一刻も早く捕まえ、我らの計画を邪魔するものには死を与えるのだ」
NGO「テンペスト・アーク」の本部における、少女「聖・沙羅亜」の捕獲計画。
何故、それほどまでに彼らは彼女を必要としているのか、それはまだ分からない。
「失礼します……コードネーム:タイム、参上しました」
若い女性の声、彼女もNGO「テンペスト・アーク」の一人だ。
「……タイム。この少女を捕まえるのだ。 キミの力を信頼しての事だ、光栄に思え」
「……承知しました。必ず、この少女を連れてまいります」
彼女の名前は分からない。しかし、ここにいる彼らに信頼される程に優秀な能力を持つエスパーという事は確実である。
Period:1−【ト・モ・ダ・チ】
エスパーの少女、プティーラ・ホワイトは聖の下へと向かう。
ぱっちりとした瞳で、肩を超えるくらいの長い髪を持つ少女だ。
彼女は今、この裏路地に相応しい格好をしている。理由は聖に疑われないように、この裏路地にいる少女を演じる為である。
「聖ちゃん、どこにいるのかなぁ? 確かここら辺に居るっていう話だけど」
聖の写真と周囲の人々を見比べながら、聖を探すプティーラ。人通りもまばらな裏路地だから、1,2時間探したところで聖とおぼしき少女とその友人を発見出来る。
隣に居る友人も、聖と同じく10歳程度のように見えた。
「あ、あの子かな? 10歳程度だし、お友達と一緒にいるみたいだし……よーっし、始めの挨拶が重要だよね。いっくよ〜」
と言って、プティーラは聖とおぼしき少女へと走っていく。もちろん普通にやってはと思ったプティーラは。
「こんばんわ〜〜っ! きゃっ!」
聖の目の前で、石に躓いて倒れてみせるプティーラ。
『きゃっ! ……え、えっと……あの、大丈夫ですか?』
目の前で倒れたプティーラを怯えるかのように、友達の後ろへと隠れて心配する。
「えへへ……ちょっと痛いけど、プー大丈夫だよっ」
ちょっぴり目尻から涙を流しているが、必死に耐えるプティーラ。分かっていたとはいえやっぱり痛い。
「そ、そうですか……あの、私達に何か用でしょうか?」
心を開かぬまま、友達の後ろで隠れている聖。
「うん、プーここに来てまだ日が浅くって、友達が居ないの。 だから同じ位の年齢のおねーちゃんたちに遊んで欲しいのっ」
にっこり微笑むプティーラ。ここにいる子供を演じてるもののでもやはり聖は隠れたまま……どうやらかなりの対人恐怖症らしい。
『聖ちゃん、この子は悪い人じゃないと思うよ? それに僕達も遊び相手が欲しいなって話してたじゃん、プーちゃんと一緒に遊ぼうよ』
友達が助け舟を出すと、聖はおずおずと出てくる。
『……う、うん……私は聖、聖・沙羅亜。 その……宜しく、ね?』
「うん、宜しくなの〜♪」
ぶんぶんと手を振るプティーラに、聖は怯えながらも手を振る。
最初の友達になると言う作戦は成功したようである。
そして数日が経ち、ある程度プティーラと聖が仲良くなった頃。
聖と四六時中一緒に居ながらも、プティーラは聖に迫りくる手は無いかと《天使の瞳》を見ていた。
そのある日の夜、彼女は夢を見る。
自分の目の前で浚われる聖と、自分の目の前に倒れる友の姿を。
『プティーラさん……大丈夫ですか?』
うなされるプティーラを心配して、聖はプティーラの肩を叩いて起こす。
既にプティーラは汗びっしょりになっていた。夢であるとはいえ自分の力が全く叶わない、そんな相手だった。
「だ、大丈夫……大丈夫だよっ」
元気そうに振舞うプティーラ。
しかし彼女の見たのは《天使の瞳》。確実に聖が狙われる、そう遠くない未来に彼女が浚われるのだ。
プティーラは正直に打ち明け、聖をかくまう事を決める。もう、時間は無い。
「……あのね、聖ちゃん。私の言う事、これは嘘じゃない。 聖ちゃんは、組織に狙われているの。私、貴方を安全な所に連れて来るように言われたの。 ……プーと一緒に、友達と一緒に来て」
珍しく真剣な声でプティーラが言うと、やはり聖も心当たりがあるようだ。
『それって……それって、私の記憶が無くなる事と……関係、あるの?』
「多分、ね。でも大丈夫、私達が必ず聖ちゃん達を護ってあげるからっ」
『絶対に……友達も、護ってくれる? ……私、もう一人になるのは嫌だよ』
「プーの所は、絶対に安全だからっ、だから、友達を連れて着いてきてっ」
プーの言葉に聖は頷き、そして友達と一緒に外に出る。
その時。
『……逃さない』
聖を見つけたテンペスト・アークの者、コードネーム:タイムが三人の姿を見つける。
彼女の持つ武器が、静かに三人をロックオンした。
Period:2−【脱出】
「こっちだよっ、早く早くっ」
プティーラが二人の手を引いて走る。彼女たちの後ろからは、二人を追いかけてくる者が。
『逃さない……大人しくしろ、私達に逆らうな』
その声は、まるで感情のこもっていない戦闘人形のような冷たい声。
プティーラ達は裏路地を通り抜けて、表路地へと出ていく。
裏路地よりは人が多いものの、夜の時間帯であるこの表路地は大して人が居なかった。
着実に冷たい声を放つ者は、プティーラ達に近づいている。
二人を連れて走っているプティーラのスピードが勝る訳がなかった。
「仕方ない……空を飛べば、きっと追って来れないはずっ」
『何を……するの?』
プティーラは、二人を抱かかえ、能力を発動する。
「《天使の翼》よ、開けっ!」
プティーラの背中に輝く翼が生じる。
「つかまってっ、飛ぶよっ!」
『……飛行能力所持者か……甘い』
しかし慌てない声の主……姿がはっきりと見える。
年齢20程度の、青髪の女性、整った顔立ち。
とても暗殺集団の一人とは思えない美貌をもった女性である。
『お前たちを逃すわけには行かない……私の使命だから』
天高く飛翔するプティーラ。さすがに二人を背負った状態では、飛行も安定しない。
ふらつきながらもその少女の下から離れようとする三人に、その女性はサイコ能力を使用する。
『……《リメンブランス・オペレート》』
女性が放つ能力は、記憶操作の能力であった。
その能力は……空高く飛んでいた彼女たちの中の、聖の友人へと発動する。
『……!! や、嫌ぁぁぁっ!!!』
自分の中の、記憶の部分を弄られる感覚は、即座にエスパー能力者でない者に発狂状態を生み出す。
プティーラの腕の中で暴れる、聖の友。
聖は驚きながら友へと話しかける、がその声は通じないまま腕の中で暴れている。
『ど、どうしたの……? 境さん』
『嫌、嫌っ! 助けてっ! やめてよぉぉっ!!』
暴れる為に、更にバランスを崩すプティーラ。
暴れる体にあがなう事は出来ず、仕方なくその場に降りた。
『……聖を渡せ。そうすれば、お前達は傷づけずに済む。 用の無い者を傷つけたくは無い』
対峙する二人。
「どうして、どうして聖ちゃんを浚おうとするの?」
プティーラの言葉に、その女性は静かに告げる。
『彼女の力は、この世界にとって脅威の力だ。 そのままのさばらせておけば、いずれは自滅、もしくは誰かの破滅を産み出す。我らNGO「テンペスト・アーク」はそれを危惧している。彼女は、滅ぼさなければならない』
「嘘っ! 彼女が危険なわけが無いよっ! こうして生きてても、何の被害も無いじゃない、それを一方的に殺すなんて酷すぎるよっ!」
プティーラは、聖を後ろにして気丈に話す。
聖は、今は落ち着いている境の様子を伺いながら二人の話を聞いている。
『何かが起こってからでは遅いのだ。 だから……私に彼女を……聖を渡せ』
にじりよる女、その時。
『私が……私がいけないの? ……私が居るから、皆苦しむの? 私……私、好きでこの力を手に入れたわけじゃないのに……なのに……』
静かな声と共に、激しい力を感じる。
『発動が始まったか……仕方ない』
女性は、聖の方へと駆け出す。
「聖ちゃん、大丈夫だよっ、私は苦しんでなんかいないよっ! いつまででも、プーが聖ちゃんを護ってあげるから、だから大丈夫……』
その言葉は、聖の強大なる力の発動に掻き消される。
『伏せろっ!!!』
女性は、プティーラを下にして抱かかえる。
激しい力が、彼女たちを襲った。
『ぐ……っ!!』
皮膚が焼ける匂い、そして服が焼け焦げる匂いが辺りを包む。
プティーラの《天使の剣》と同じような力……聖のサイコ能力の一つ《プラネット・ブレイク・ダウン》が発動したのだ。
プティーラは、女性に抱かれながら……激しい力に記憶を失った。
「……ぅ……ぅぅ……っ」
プティーラは目を覚ます。
目を覚ますと、そこには一面焼け野原となったさっきまでの場所と、激しくダメージを追っているさっきの女、そして聖が倒れていた。
『……気づいたか?』
そう、女性は聖の能力の発動から自分の身を犠牲にして、プティーラを助けたのだ。
『……聖は、今回はお前たちに渡す。 ……お前達を助けた為に、体に傷を負ってしまったからな』
「……敵なのに、どうして助けてくれたの?」
『……さぁな。 目の前でサイコ能力に倒れるものは見たくない……それが理由さ』
腕を抑えながら、その場を去る女。
「せめて……貴方の名前を教えてよ」
プティーラの言葉に、女性は立ち止まる。
『……クリア・カンタート。NGO・「テンペスト・アーク」暗殺部隊、コードネーム:タイム、だ』
と言って、クリアはプティーラの下を去っていった。
その後、プティーラは聖を連れて帰る。
聖は、全く心を開かなずに、与えられた部屋で一人塞ぎ込んでいた。
『……私、私……もう、力なんていらない……』
泣き続ける声が、聖の部屋から響き渡った。
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■ 登場人物(この物語に登場した人物の一覧) ■
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【0026 / プティーラ・ホワイト / 女 / 6歳 / エスパー】
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■ ライター通信 ■
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どうも、始めまして、燕です。
サイコマスターズOMCの初作品、<【Handle with Care】守護〜友の永遠〜>
をお届けします。
この【Handle with Care】シリーズは、毎回シリアスな話で行く予定です。
インターミッションとして一息つける話も用意するつもりですが、予定は未定ですので……。
サイコマスターズの世界に一番合うのは、シリアスな話だと思うので。
尚、今回出てきたクリア・カンタートに関しては、どこかに情報がありますので探してみて下さいね。
>プティーラ様
今回のミッションは、半分成功と言った所になります。
今後聖に対しての対応によっては、ちゃんと心を開くように聖はなりますので、ご安心ください。
ただ、今後も聖に対しての干渉は、テンペストアークは続けて行きます。
何しろエスパーが一杯いるNGOですので、エスパー能力を持つものは沢山いますので……。
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