コミュニティトップへ



■あやかし荘奇譚 剣客の下宿8 師範代の素行調査■

滝照直樹
【1411】【大曽根・つばさ】【中学生、退魔師】
有る事件が終わった後だが…義昭君に想い人ができたとか、なんとかと…。
天空剣師範代織田義昭。神の剣を操る高校生。
「青春だな。良いことだ」
とエルハンドは麦茶を飲んでご隠居のようす。
しかしながら、幼なじみの茜や、事件で知り合った瀬名雫にとっては由々しき事態。
茜「よしちゃん…わたしは…(赤面」
雫「初恋は成就しないって言うけど、迷信だって証明してみせる」

エルハンド「夏真っ盛り。平和だな」
あんたはそう見えるでしょうけど当の二人はそれどころではないんですが?

さて義昭君の思い人は?誰でしょうか?
あやかし荘奇譚 剣客の下宿8 師範代の素行調査

■夏だというのに
―若さというモノは良いものだ。
エルハンドは素麺を食べながらそう思った。
自分の部屋で、甚平を着て団扇を仰ぐ。すっかり日本の夏を楽しんでいる…。
或る事件を切っ掛けに、天空剣師範代織田義昭に様々な友人が出来た。
それである珍事件が加わる。
茜と瀬名雫がある魔物に襲われ、義昭が助けに入った時…瀬名雫は彼に一目惚れしたというのだ。
魔物のことも問題だが…瀬名雫と言えばオカルト関係以外殆ど興味を示さない女子中学生というではないか。魔物退治と三角関係…。稽古に学業、青春と大忙しの愛弟子。
魔物退治は片づいたとしても、想い人が出来たという妙な噂。
「義昭も此でだいぶ明るくなるだろう…っと言いたいのだが」
あやかし荘の狭い部屋に…雫、長谷茜が集まっていた。
「何故私の部屋でその話をする?」
エルハンドは溜息をつきながら2人に訊く。
「私、織田さんのこと分からないし…茜さんは教えてくれそうにもないし…だからエルハンドさんに訊こうと」
「だって…私だって…よしちゃんのこと…それに共通して…」
一間置いて
「「想い人って言う噂自体何か、おかしいもん」」
「ハモるな…。此処は恋愛相談所じゃない…」
剣客は溜息をついた。
「義昭は、夏休みに入ってしっかり稽古もしているし変わったところはない。心当たり…稽古の休憩時に上の空ってのは…良くあるな。悩みがあるなら第一茜に先に言うものだが…私にすら相談してこない」
麦茶を飲みながら自分が知る限りの事を言う。
「片想いの人が出来た?」
「かなぁ?」
茜と雫は首を傾げうんうん唸って考える。
「私はそう言うのは管轄外だ。私にだって分からないものは分からん。帰った、帰った」
「ぶ――!」
半ば追い出される形で2人は帰っていった。
数分後剣客は溜息をついて…静寂な部屋に戻ったのでほっとした。
「まったく…」
「この暑い中。二人とも元気やねぇ。若い者にはかなわんわ」
いきなりの関西弁にエルハンドは飲みかけの麦茶を吹き出しかけた。
玄関に大曽根つばさが立っているのだ。
「ノックもせずにいきなり喋るな…」
「ちょこっとだけ耳にしたさかい。瀬名ちゃんのことを気になってここに来たらあんじょうその話で…」
「先ほどの台詞…若い君が言う言葉じゃないと思うが」
「そやね。でもウチの正直な感想や」
麦茶を差し出すエルハンドに素直に答えるつばさ。
「ま、ウチはどっちに着くかは分かっているやろうけど、エルハンドさんは…」
「雫だな」
「もちろん」
元気な笑みを見せるつばさ。
「んじゃ、詳しいことは此処では分からんと言うのは分かったし。ほな、ごちそうさま」
麦茶のカップを空にしてパタパタと部屋から去るつばさ。
―はぁ
剣客は溜息を吐いた。

エルハンドが稽古するために長谷神社に出かける途中、
「エルハンド様こんにちは」
「撫子か、こんにちは」
天薙撫子と出会う。
「丁度お会い出来てよかったです」
「ああ…」
エルハンドの顔つきがおかしいと感づく撫子は
「織田君のことですか?」
「そう言うことだな…」
「確か…道場の中でも義昭君に片想いの人がいるとか何とか噂になっております」
「それ以上のことは誰も知らん。私もな」
エルハンドは肩を竦める。
「茜と雫が躍起になって真相を突き止めようとしている。ヒョッとしたら『自分』じゃないかとな」
「あらら、元気が良いですね」
クスクスと口元を手でおさえて笑う撫子。それにつられ笑みを浮かべる剣客。
喋りながら、神社に着き普通の稽古と「超越者」としての修行を行いその日は極普通に終わった。

実のところ…エルハンドはこの騒動(?)の結末がどうなるか知っている。
「先見能力」が有れば分かるものだ。
楽しくおかしく、若い者に青春して貰おうと考えていた。
稽古中、織田師範代がある「人物」ばかり眺めているのを知っている。
「義昭も…成長したものだ」
と心の中で思うエルハンド。
伊達に義昭を師範代まで鍛え上げた訳ではないのだから…。


●大曽根つばさ1
つばさは、まず噂の元を辿る事にした。まずは天空剣道場に通う人物、義昭の学校の友人から尋ねることにした。
道場の方はエルハンドに訊けば直ぐ済むか、稽古が終わる時に聞いてみる方が良い…しかし、長谷神社は長谷茜のテリトリーだ。真っ向からライバルの領地を侵害するのはあほらしい。
学校の友人というのはメモをしたリストを見るとそういないみたいだ。此は明らかに、義昭自身が線を引いていることか、皆が避けているのか?
「人」と「人外」…彼女もまた一時そのことに悩んだ。
「でも、関係あらへんのに…」
つばさはふと呟く。
義昭の通う学校の友人や門下生に接触し、
「織田義昭君に彼女が出来たってホント?」
と訊いて回った。
意外な回答がくる
「うそ?師範代は茜さんと付き合ってんじゃないの?」
「まだ付き合ってる人はいないと思うけどね〜確かに誰か好きみたいだけど」
「いたとしても…意外に奥手やからなぁ、あいつ。でも誰かは知らないね」
全く手がかりがない。片想いの人の名前が出ないのだ。
「何処でこんな噂が流れているのは嘘?」
おかしすぎる。
「えーい埒があかん!こんな回りくどい事しているより、やっぱ織田さん本人に訊くべきや!」
つばさは義昭を尾行し、真実を突き止める事にした。

しかし、数日後、門下生や義昭の友人に「彼女」が出来たという噂が一気に町中を駆けめぐったのである。


■大きくなる騒動
数日後のことである。
「織田義昭に彼女が出来た!」
という噂は、尾ひれ背びれが付いて、しかも
「実はショタコン趣味のお兄さんと!」
「着物のお姉さん好き」
「萌えの暗黒面に覚醒した」
とか、かなーり混沌とした噂もオマケでついていた。
学校でもネタになる義昭。
「俺の安息の地はないのか…特にオマケは要らないぞ。オマケだったら天使のマークがいい…」
と呑気なボケを言いながら、頭抱える義昭君。
「誰だ!こんな噂を流したのは!俺はそんな訳分からない趣味は無い!」
と屋上で叫んでも意味は…一応あった。やり場のない怒りのあまり神気が発散されたのだ。
ガラスぐらい、粉みじんに砕くほどの威力を放出したのだ。足下のコンクリートも少しえぐれている…。
「はぁ」
溜息をつく。
しかし…
「よしちゃ〜ん」
嫉妬の焔を纏っている茜が現れた。効果音が有れば…ズゴゴゴゴゴゴと出ていることだろう。
―あああ、あの噂を本気で信じているよ…茜ちゃん…。
義昭は項垂れる。
「おいおい、真実ぐらい見抜こうぜ、茜…?だ…だから、そ…そのハリセンを常備するのは…やめろぉ!」
説得むなしく…屋上で大きくハリセンの音が響いた…。
―それでも義昭君の受難は続くのです。


●大曽根つばさ2
学校から実は義昭をつけていた。過去に魔物と戦い、雫が彼に告白したという場所から義昭が出てきたところを持っていた。
「つばさちゃんか?」
義昭は、近くの電信柱で身を潜めていたつばさに声をかけた。気づいていたらしい。
「分かるんやね〜。流石師範代だけのことはあるわ。こんにちは、織田さん」
ぱっと柱から出てきて元気な笑顔を見せた。
「こんにちは。何か用かい?」
「そうやね…ウチが言うのも何やけど…瀬名ちゃんのためや…」
周りは誰もいない事を確認して、大きな声で…
「あんた、好きな子ができたって?」
と叫ぶが…。義昭はまるで他人のように歩いて去っていこうとしていた。
「人の話は最後まで聞かんかい!」
つばさは棍を召喚して義昭の足下を狙って転倒させる。
「ぶはぁ!」
お約束な転倒ぶり。
「凄い人なんか、只の間抜けなのかよう分からん人やなぁ…織田さん」
起きあがった義昭に向かって溜息を混じりで言った。
「ダイレクトすぎるんだよ…質問が…」
転倒したのに、怪我一つ無い。服もそんなに汚れていなかった。
義昭はつばさの目を見ると…何処までも付いてきそうだということを理解して…
「はぁ、何で皆分かるものかね〜」
溜息混じりで呟いた。
「いるんや」
「ああ、好きというよりか憧れかもな…しかし…答えることは出来ないよ」
「…あかん…誰かはっきりしてもらわんと、瀬名ちゃん可哀想や」
「はぁ…それでも言えない」
手を振ってその場から立ち去る義昭。
「ちゃんと答えるまで追い回すで!」
義昭に付いていくつばさだった。


■呑気に歓談?
あやかし荘に、また人が集まった。
撫子と、義昭、つばさに白里焔寿である。
焔寿は久々に皆元気でいるかなぁとフルーツケーキを持って遊びに来たのである。
撫子はいつもの綺麗な着物、焔寿の服装はグレーのツーピースですが、生地は夏用に薄手の半袖です。髪は白のレースのリボンでポニーテール。猫のチャームとアルシュを連れてスイカ模様のリボン付きだ。
「せんせーですか?噂を広めたのは?」
怒り口調でエルハンドに詰め寄る義昭。
「私が何故そんなことをしなくてはならぬのだ?」
笑いをこらえて答えた。
「面白い魔術師さんとは出会いましたけど…。茜は誤解してるし、学校の連れにはからかわれるし、しまいには、萌え者とかいう変な人物にもつけ狙われ…。つばさちゃんにまで訊かれるし…。大体…此を見ておもしろがるのはせんせーと宗家ぐらいです!」
かなりご立腹の義昭。
エルハンドは其れを止める気はないようだ。
「義昭君、少しは落ち着いて。焔寿さんが持って来てくださったフルーツケーキを食べましょう」
撫子が義昭を宥める。
「あ、はい…撫子さん」
いきなり、大人しくなる義昭。ケーキを食べて一言。
「美味しい」
まるでさっきの気迫は何処へやらの平和な顔だ。
「何か分からん人やなぁつくづく」
つばさは呆れかえる
「一体どうされたのですか?」
焔寿が良く分からないので尋ねる。
「いや、義昭に片想いの人が出来たとかなんとか妙な噂がたってね。茜と雫、そして義昭も困り果ててるって所だ」
「そうなんですか♪茜さんって…」
「俺の幼なじみで…撫子さんと同じ巫女だよ。少し能力は違うけどね…後性格はえらい違いだ…」
紅茶を飲んで一息ついている義昭が答えた。
「幼なじみですか…いいですねぇ」
「そうでもないさ…変な誤解を良く受けるしな…」
あまり茜のことは悪く言いたくないが、正直に話した方が良いのだろうかと悩む義昭。
「夫婦ハリセン漫才は上手いな。義昭がボケでツッコミが茜」
エルハンドはクククと笑う。
「茜さんはハリセンで人を蘇生したことも有りますよ」
「凄い〜」
「ハリセンで…人間業ではないわ」
撫子が付け加えるとつばさと焔寿は吃驚する。
すると、大きな足音が迫ってきた。
「もう!私はハリセン使いじゃないもん!」
茜本人参上。
「噂をすればとやらだ」
エルハンドの言葉に茜以外は笑う。
「ちがうったらちがう〜」
地団駄を踏んで抗議する茜だった。

【義昭の好きな人は誰か】
という座談会…もとい審問会がエルハンドの部屋で行われる。
「先生…」
義昭がエルハンドに訊いた。
「何故其処まで…するのです?」
「珍しく楽しい事件だ。たまには息抜きが必要なのだよ」
「やっぱり、宗家と同じだ…」
「で…誰がすきなんや?」
「其ればかりかよ」
「よしちゃんこの際、はっきりと!」
逃げ場なし…
「当然、私でしょう。ヨ・シ・ア・キ♪」
「何故、シェランさんがいるんだ!」
「其れはサンシタに護符を売ってきたところ何ですよ☆」
「漏れもいるぜぇ」
黒乃とシェランも現れる。
「どうなってんだよ〜」
義昭は、叫んだ。


■後日談
あれから数日後…。
「義昭の好きな人」という噂は全く聞かなくなった。
まるで…その噂自体がないような…。
「暗黒天空剣でもつかったのかな?先生…」
河川敷で寝っ転がっている義昭はそう呟いた。
噂を消すぐらいエルハンドなら簡単なことだ。

しかし、まるで夢のような出来事だったな…。
まぁ失恋も悪くない。
相変わらず、茜と雫との三角関係は続いている。
愉快な知人も出来た。


「今日より明日!」
義昭は身を起こし、エルハンドの住まうあやかし荘に向かった。

End


□■■■■■■□■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
□■■■■■■□■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
【0328 / 天薙・撫子  / 女 / 19 / 大学生】
【1305 / 白里・焔寿 / 女 / 17 /天翼の神女】
【1366 / シェラン・ギリアム / 男 / 25 /放浪の魔術師】
【1466 / 大曽根・つばさ / 女 / 13 / 中学生・退魔師】
【1678 / 黒乃・楓 /男 / 17 / 賞金稼ぎ】

□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
■         ライター通信          ■
□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
滝照直樹です。
『剣客の下宿8』に参加していただきありがとうございます。
VSN『神の剣』とリンクしていますが、パラレルワールドとして書かせていただきました。
天薙様、白里様いつも参加ありがとうございます。
また、初参加のシェラン様、大曽根様、黒乃様ありがとうございます。

また機会が有れば宜しくお願いします。

滝照直樹拝