■味見と言うより毒見 in 草間興信所■
深海残月 |
【1831】【御影・涼】【大学生】 |
「ところで草間さん。食べますか?」
「ん?」
「これ」
草間興信所事務所内、真っ昼間。
男にしては細長く綺麗な真咲御言(しんざき・みこと)の指が草間の目の前のデスクの上を――正確にはその上にある皿を指していた。
もっと正確に言うならその皿の上にあるものを。
「…なあ、真咲」
「はい?」
「どうしてお前がここに居る」
「アラビカ豆のブレンド美味しくなかったですか」
「いや、それはお前が選んだだけあって悪くなかったが。
…じゃなくってな。お前がここに来た理由を訊いてるんだが」
「いつもは特に訊きませんよね?」
「…今日は話が違うだろう」
「違わないと思うけどね。私たちは単に暇だから来ただけ。そうしたら、こんな話になっていて、ねえ?」
静かにコーヒーを啜りつつ、何処か顔色の悪い妙齢の貴婦人は肩を竦め苦笑する。
薄く開いた唇には、牙の如き尖った乱杭歯がちらりと覗いていた。
「俺も困ってるんですよね。エルさんも困ってますし、零さんも困ってます」
「…だから俺にどうしろって?」
草間はぐしゃぐしゃと頭をかき混ぜる。
どうやら碧摩蓮からだ、と言う菓子折り。
そこから零が取り出した中身は――赤ん坊…のミニチュアに見える何だかよくわからない物体。
幾ら皿に並べられ、食えと言われてもさすがにちょっと口に入れるのは憚られる代物。
「やっぱり…食べるべきなんでしょうかね…居合わせてしまった以上…。あ、どうせですから誠名(まな)さんとか凋叶棕(てぃあおいえつぉん)も呼び付けましょうか…困った時はお互い様と言う事で」
「碧摩さんには絶対に皆で食べるよう、言い付かったん…ですけど」
「あーらら。零ちゃんに『命令』、しちゃったの。あの子」
「…エル」
「それでなくとも敵に回したら怖そうなお姉さんでしたよ。あの方は」
「…真咲」
「できませんか? お願いします。兄さん」
「…零」
寄ってたかってじわじわと、追い詰められて行く草間。
はっきり言って嫌なものは嫌だ。
だが真咲の言う事にも一理ある。…確かに、碧摩蓮を敵に回したらどうなるかわからないところはある。最近の傾向としては…勝手にカードに魂を封じ込められるくらい、簡単にありそうだ。
そしてエルの発言も然り。…零は一度受けた『命令』にはとことん忠実である。
…そして何より『妹』の頼み。
いったい俺にどうしろと。
※ライターより※
こちら、「各調査機関&あやかし荘+解決編」と言う形のシリーズ(全部で5部)予定になってます。お話として繋がりはありますが、直接時系列が繋がる続編では無いので全部に参加しないとわけがわからなくなる、やら出番が減る、やらと言った心配はありません。ただ「解決編」に参加する場合だけは、最低「各調査機関&あやかし荘」の「どれかひとつ」には参加なさっていた方が良いと思われます。
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味見と言うより毒見 in 草間興信所
■オープニング〜取り敢えず試行錯誤■
「へぇ」
まじまじとテーブル上に置かれた皿の上にある『赤ん坊型の何か』を見ていたのは御影涼(みかげ・りょう)。
好奇心やら探求心の旺盛な医学部の大学生である。
「これって『人参果』だろ? 西遊記にでてきた果物。確か、万寿山福地・五荘観洞天にある霊木・人参樹になる物で、三千年に一度花が咲き、また三千年に一度実を結ぶ。更にまた三千年たってやっと熟して食べられるもので、それもたった三十しか実がならない。縁あってその匂いを嗅ぐ事が出来れば三百六十歳まで生きられ、一個でも食べる事が出来れば四万五千年長生きすると言う。で、思いっきり抵抗感抱いてしまう程赤ん坊そっくりの見た目で、すぐに硬くなって食べられなくなるらしい…と。ついでに五行を忌む…ってあったよな」
ふむふむ、と考え込みつつ、じーっ。
「御丁寧に解説有難う御座います」
涼の科白に、苦笑しながら居合わせたバーテンダー、真咲御言(しんざき・みこと)が珈琲を啜る。
…彼手ずからブレンドしたと言うアラビカ豆の珈琲。
ちなみにこの御言、自分が来ている時は家人にも客人にも、珈琲に限ってはわざわざ手ずから淹れたものを出しているらしい。…既に趣味のようなもの、だそうだ。
…取り敢えず不味くは無い…と言うより端的に言って美味いので、文句が出た事は取り敢えず無い。
「真咲さん…だったよな、何か間違ってた、か?」
「いいえ。確かにそうでした。これも恐らくはその『人参果』だと思われます。ああ…そう言えば『人参果』って『草還丹』と言う別名もありましたよね」
「そうそう。長寿の薬で『万寿草還丹』ってね。ふぅん…仙人的なことだけど本当にあったんだなぁ。…そう言や西遊記って変わった人物が多くでてきて面白いよな――ってそう言う話じゃないか」
「…ってどうせならそこで現実に引き戻さないで欲しかったんだけど」
ふぅ、とアンニュイに溜息を吐きつつ、居合わせている顔色の悪い女吸血鬼こと、エル・レイ。
けれど彼女の目の前にあるのはやっぱり皿の上の仮称・人参果。
…若干場違いのような気も。
「まぁ、私は…普通に生命体として存在してはいないから人間と同じ意味合いでの基本的な飲み食いに関しては…必要か不必要か、と言う意味ではどうでも良いんだけどね」
…嗜好としてなら最近和菓子に凝ってるけど。
「だったら、これの始末はエルさんにお願いできるんでしょうか?」
ちら、とそんなエルを見つつ、御言。
「…とは言ってもね、見たとこ『赤ん坊』となると違う意味で引け目を感じるのよね。私たちみたいなのだと」
「…やっぱり」
「生命力の象徴、属性は光。…で、曲りなりとも人参果――草還丹、つまり『浄化されている存在』である仙人の持つ、とっておきの『薬』とも言えるでしょう? …だからむしろ――私たちみたいなのだと却って毒なのかも知れない、ってね」
確か中国の吸血鬼って桃が弱点だったと思うし。
…存在の意味的には人参果ってそれと近そうだし。
そもそも見た感じからして…なぁんとなく、嫌なのよねえ。
「…取り敢えず現時点で縁のある鬼家の仙人たちに限っては『浄化されている存在』とは到底思えませんが」
「…ま、あの子たちは善悪の概念が人間どころか他の神仙と比べても完全に違うからね」
「…そもそも『鬼(くい)』と名乗ってる時点でちょっと問題でしょうし。普通なら」
「…だけど平気な顔して仙界居られるみたいよね?」
「…ある意味別格なんでしょう。恐らく」
呑気に話しながら御言とエルは再び珈琲をず、と啜る。
「そう言や仙人と面識あるんだってね、真咲さんもエルさんも…それから零さんも」
意図的にか無意識か、目の前にある『人参果』から爽やかに脱線している話に首を突っ込む涼。
…その話もその話で興味深いので。
「ええ。草間さんも知ってますよ。特に鬼凋叶棕(てぃあおいえつぉん)なんかは草間興信所の下請け調査員をやってますんで、ここには良く出入りしてます。ついでに言うとさっき呼びましたんでその内来るでしょう」
「…下請け、って…何だか随分庶民的だな? その凋叶棕とか言う仙人」
「ま、人の世界にかなり馴染んではいますよ。…とは言っても、一般市民の世界と言うより…あまりお天道様に顔向け出来ない世界の方に馴染んでいる気もしますが」
元・殺し屋ですし、と御言はあっさり。
え? と涼は首を傾げる。
「…仙人って…殺生戒ってなかったか…?」
「その通りです。みだりに人を殺してはいけない筈ですよ」
が、凋叶棕はあまり気にしてませんけど。
「その時点でも変よねえ…ま、吸血鬼としては充分変な部類に入る私も人の事は言えないか」
涼と御言、ふたりの言に対し、しみじみと言うエル。
と、そこに。
「…で、この赤ん坊の形の――人参果…と言うらしい物の話に戻るんですが」
挟まれた言葉の主――佐和(さわ)トオルに視線が集中した。
「…戻らなくても良かったんですが…」
はぁ、とわざとらしく嘆息する御言。
………………どうやら話の脱線はやはり意図的なものだったらしい。
ごくごく普通らしい口調に反し、御言とエルの間に妙ーに白々しい空気が流れているとは…トオルも感じていたのだが。
「すみませんね。でも目の前に置いてあるこれの始末を付けないと、結局何をどう誤魔化そうとも…皆さん落ち着かない気がしまして」
「…やっぱりそうですか、佐和さん」
「真咲さんもですか」
「正直な話、逃げたいですね。…実行に移せるかどうかは別として」
「…駄目です。少なくとも兄さんが帰ってくるまで、興信所にいらした方は帰しません」
「零ちゃんあのね…」
がっくりと、エル。
「…皆そんなに嫌そうなら俺が食べてみるよ。元々面白そうだと思ってたし。こんなチャンス滅多に無いだろ? …良い?」
小首を傾げながら涼が言う。
有難い事は有難い申し出だが…それもちょっと待てな話。
そもそも本物か、これ?
否、本物でも贋物でもそれなりに問題があるような。何故なら持ち込んだ相手が曰くありの代物しか取り扱ってないと言って間違いないアンティークショップ・レンの主…。
それだけでただごとでなく胡散臭い。
「…いえ、取り敢えず…どうするにしろ、ここの主の草間さんが戻ってからにしません?」
「確かに。これ、怪奇探偵への差し入れ、なんですよね?」
「はい。兄さんはじめ…絶対に興信所の皆で食べるよう、言い付かってます」
「言い付かってるって…命令形ですか」
冷汗混じりにトオルが零に聞く。
零はにっこり微笑み、あっさりと頷いた。
と。
表から、車のドアが開閉されるらしき音が二、三回連続で響いた。
それから少し経ち、こんこん、とノックされ――興信所の扉が開かれる。
扉を開けたのは黒いスーツを着込んだ屈強そうな、けれど印象はとにかく控えめな男がひとり。
入って来るなり興信所内の面子と室内の様子を確認し、今度は背後を振り返ると静かに頭を下げる。
そこには。
車椅子に乗った銀髪の紳士が現れていた。これまた控えめなスーツの男に車椅子を押されて。
ちなみにそのまた後ろ、庶民にはまるっきり縁の無い類の、冴えた銀色が眩しい超高級車――ロールスロイスのロングボディシルバーセラフ――が停まっている。
果てしなく場違いに感じられるのは気のせいか。
何と言ってもここは『貧乏』と『怪奇探偵』が売り(?)の興信所である。
が、
「お邪魔致しますよ」
にこやかに微笑んだ彼――セレスティ・カーニンガムにすればあまり気にする事でも無いらしい。
当然のように応接間に入ってくると、零にトオルと言った知っている顔を見つけて軽く会釈。それ以外の面子にも丁寧に挨拶をしてから、ぱちん、と指を鳴らした。
と、彼の脇にスーツ姿の控えめな男がひとり、持てる程度の…とは言え充分大きな箱を三つ程積んで持ち、すぅっと現れる。
彼を見上げ確認してから零を見、セレスティはひとこと。
「差し入れです。どうぞお納め下さい」
セレスティの言葉に反応したかしないかの時点で、箱を持つ男は零の前に移動。そして差し入れの内訳を説明し、何処に置いたら良いかを聞くと、結局、零と共に奥の台所へ。
「近くを通り掛かりましたので、立ち寄らせて頂きました…と、何やらまた騒ぎの様子ですね?」
上流階級ばりばりの立ち居振舞いに当てられまくる面子に気付きもせず、セレスティはトオルをちらり。
目を瞬かせたトオルは、ああそうそう、とテーブル上の物体を指し示した。
「零ちゃんが…アンティークショップの蓮さんに渡されたそうなんですよ。食えって」
「…ほう?」
戻って良い、と自分の車椅子を押していた男に告げ、セレスティは皆の近くに車椅子を転がす。
そしてトオルの示した物体――赤ん坊型の代物を視界に入れる。が、セレスティは特に驚くでもない。
「これは?」
「『人参果』と言う物らしいです。どうやら」
彼に答えたのは涼。それはどう言った物ですか、と聞かれ、涼は改めてまた西遊記、延いては人参果について説明し出す。一通り聞いたセレスティは小さく頷き、口を開いた。
「…漢書はあまり読んだ事が無いので知りませんでした。西遊記、ですか…中国の四大奇書にも含まれる呉承恩の作、と。…チェックしておきましょう。で、そこに出てくる果物のようだ、と。…そうですね、果物の部類に入るのでしたらミキサーでジュースにでもして飲んでしまえば宜しいのでは? そうすれば見た目も気になりませんし」
「…俺もそれと近い事を考えてたんですが。形が嫌だってんなら砕いて水にでも溶かしてみたらどうかと」
セレスティに続けて、トオル。
「じゃあ、ひとつだけやってみましょうか? たくさんありますし」
うーん、と考えるような顔をしながら、零。
「…一応、本来の食し方はそれに近いですよ。清水に溶かして、とあります。さっき御影さんが説明した陰陽五行思想の『五行』の中に、知っている者としては当然な話になるんですが『水』も含まれていまして、この『水』を『忌む』――具体的にどう忌むのかと言うと、『水に遇う』と形を失う――『溶ける』んです。つまり、わざわざ砕いたりせずとも、水に触れるだけで人参果は溶けるそうですよ」
…文献通りの本物なら、と注釈が付きますが。
ぼそりと御言。
と。
「取り敢えずこれは…溶けないようですが?」
即座に何処からともなく水を召喚し、セレスティは仮称・人参果の中のひとつにそれを一滴だけ垂らしていた。
…文献通りなら滴の落ちたその場所が削られるように窪むなり小さな穴が空くなりしそうであるが。
「贋物決定ね。さて、いよいよ口に入れるのは怖いんじゃないかしら」
他人事のように、エル。
「でしたらはじめに佐和さんとセレスティさんが仰った通り、試しにミキサーにでもかけてみましょう」
その方が食べやすいかもしれませんもんね。
いつの間にか戻ってきていた零は平然と告げると、ひとつだけを取り、台所へ。
やっぱり食べろって事に変わりはないのか――と、何とも言えない顔でそれを見送る、涼とセレスティを除いた一同。
そして暫し後、白く透ける――微かにだけ濁った…と言うか微妙な沈殿物のある――液体が少量ずつ分けて入れられているグラスが、零の持つお盆の上に人数分載っていた。
何事も無かったように持参して、零は丁寧にそれぞれの前に置く。
…反射的に沈黙がその場を支配した。
■過去の騒ぎを知る人々+α■
仮称『人参果』ひとつ分だけをジュース状にしてグラスに分け、それぞれの元に置いてはあるが…皆、なんだかんだ理屈を付けて結局放置。誰も手を付けていない。
興信所の主が帰って来ない、と言うのも原因の一端としてあるかもしれない。
…皆で食え、と言われて零が受け取った、となると、これは『主が貰った物』になるから。
そんな逃げ場があるのだろう。
と。
こんこん、と扉が叩かれた。
一瞬、主の帰還か、と一同が思わず身構える。
が。
直後。
「…うわ凄えあれってロールスロイスだよな、しかもガードらしき人に運転手? …草間さんのクライアントか? んじゃちょうど良いバイトでも来てるかな? ひょっとして?」
明らかにここの主である草間武彦ではない声、が聞こえた。
否、冷静に考えれば主がノックをして入って来はしないだろう。
「…いや、依頼人とも限らないんじゃないか…鞍馬(くらま)?」
何やらぶつくさ話しつつ、その扉から現れたのはまだ若い二人組。灰色の髪に赤い瞳の――何処か色素の薄い大学生風の青年と、彼と同年代と思しき――赤茶色の髪と瞳を持つ…音楽でもやっていそうなかなり垢抜けた印象の青年。
そして色素の薄い方の青年が中へ一歩足を踏み入れた途端。
唐突に凍り付いた。
「…どうした? 彬(あきら)?」
ぎょっとして鞍馬と呼ばれた赤茶色の髪と瞳の垢抜けた方の青年――草壁(くさかべ)鞍馬は、自らが彬と呼んだ青年――陵(みささぎ)彬を気遣うように、慌てて顔を覗き込む。
「鞍馬…ひとつ確認してやってくれないか…」
「確認? 構わないけど」
「………………ここのテーブルの上に何がある…?」
凄まじく嫌な予感に押し潰されそうになりながら、興信所に足を一歩踏み入れたままの状態で凍り付いている彬の声も思わず上擦る。
「テーブル? んにゃちょっと待ってろ」
言い置いて、鞍馬はすたすたと所内に入って行くと、その場に居た面子に軽く挨拶。そして何やら液体が少量だけ入っているグラスが人数分と、何故かミニチュアの赤ん坊に見える代物が、ちょうど応接間の入口からは影になり見えない皿の上にごろごろと数個あるのを確認した。
「なんだこりゃ、赤ん坊?」
「…もういい…わかった」
派手に嘆息しつつ、覚悟を決めたように彬は鞍馬の元まで歩いて来、肩を叩く。
「帰るぞ」
「はぁ?」
「…駄目です」
要領を得ない鞍馬の返答を聞く前に、唐突に零が眼前に現れ、にっこり。
「折角いらしてくださったんですから、どうぞお付き合い下さいね?」
…穏やかな中にも有無を言わさぬ初期型霊鬼兵の微笑みが、彬と鞍馬の動きをやんわりと遮った。
………………蟻地獄ですか、本日の草間興信所。
■■■
「てーと、これが例の…お前が関ったっつぅ人参果、の話か」
「…ああ、状況が見事に同じだ。アトラスの時ともあやかし荘の時とも…」
聞けば聞く程。
言って彬はぐったりとソファに沈み込む。
「と、言う事は、何故だかわかりませんが…『これ』と同様の物が近隣各所にばら撒かれていると」
ふむ、と横から確認するセレスティ。
「…ああ。食ったら腹壊したり頭に花が咲いたり声が入れ替わったり出なくなったりしてたさ…生で食うとヤバいとか…色々言ってもいたな…」
くうっ、と心底思い出したく無さそうな態度のまま、彬はぽつりぽつりと説明する。
「挿し木で殖えた人参果の亜種とか言う話で…効能やら何やら…本物とは程遠いと言っていた…」
「…挿し木」
「…天地未だ開かれざる頃に生まれたと言う霊験あらたかな霊木を挿し木ですか…」
「ああ…アホらしい話のようだが本当らしい…事実、物によって全然違うわけのわからん効果が出まくるわ色や形が違うわ五行は関係無いわで…。
ところで興信所の前に停まっているロールスロイスは…リンスター総帥様のだったんだな…」
現実逃避がてらセレスティの姿を見、ぼそりと彬。
「そう言えば君とはお会いした事がありましたね。陵彬君…でしたか」
「ああ…そうだったな、あの時は…三下絡みで大変な目に…」
とそこまで言い、彬は再びがっくりと項垂れる。
…実は彬の関った人参果騒ぎの二件、どちらも…三下と同席していた。
「どうしました、陵君」
「…いや、何でも」
どうにかこうにか返答し、彬は再びがっくり。
と。
またもこんこん、と扉が叩かれた。
「…今度は誰でしょうね」
「ノックしてくる以上、草間さんじゃない事は確かでしょうね…」
しみじみと言い合う、夜のお仕事と言う部分だけお揃いの男たち――ホストのトオルにバーテンダーの御言。
そんな間にも叩かれた扉が開かれる。
「こんにちは。…ってあれ、草間君は居ないんですね」
きょろきょろと中を見回し、爽やかに言う白衣の青年――久遠樹(くおん・いつき)。
「今日は定休日なので…お茶でもしに来たんですけど」
言って片手にぶら下げた袋を持ち上げて見せる。
「スイカのムースだよ! 樹ちゃんのお手製☆」
そして彼の背後に嬉々としてくっついていたのは身長一メートルの女の子。市松人形のような髪型のきらきら光る銀髪を元気良く揺らした彼女――葉山壱華(はやま・いちか)は、所内の一同に宣言。
が、あまり所内の反応は芳しく無い。
疑問に思った樹と壱華は顔を見合わせる。直後に壱華は無邪気に頷くと、たったったっと所内に入ってきた。そしてテーブルの上を見たり、一同の顔をきょろきょろ見渡す。
「どーしたの何かあったのー? って何これ赤ん坊だー。でもちょっと小さいねー? で、何でお皿に載ってるの? ねえねえ? え、赤ん坊じゃない? じゃー何?」
誰彼構わず疑問をぶつけまくる壱華。
と。
「あらあら、またですか☆」
壱華の騒ぐその後ろからひょっこりとテーブルを覗き込んで来た黒髪黒瞳銀縁眼鏡の薬師。
何処か嬉々としたその表情を見、彬が反射的に、げ、と呟いた。
…実はあやかし荘での騒ぎの原因の一端は、樹が人参果で作った『薬』にあったらしい。
更に言えば彬はその被害者と言うか強制モニターのひとりだったとか…。
「またって…キミはこれに心当たりがあるんですか、久遠君」
「佐和君もお久しぶりですね。これに関しては、前にあやかし荘で色々とあったんですが…あまり心配しないで下さい。大した事じゃありませんから。で、またなんですが…これを分けてもらっても宜しいですか?」
にっこり。
胡散臭いまでに爽やかな笑顔で樹が零を見て言う。
…交渉するべき相手が零だと即見抜いている辺りがさすがだ。
「でも…蓮さんは絶対に皆で食べるように、と仰ってまして…」
悩むように、零。
樹はそんな彼女を諭すように微笑む。
「零君、私が薬を作りたい、と言う事は、その薬はいずれ使われる訳ですから、人の口には入るんですよ? つまり『食べる』事にはなる訳です」
それでも駄目ですか? と、にっこり。
少し考えてから、零はこくんと頷いた。
「だったら構いませんね。どうぞ」
「…いやちょっと待って下さい、陵君の態度からするとむしろ生より物凄く不安なんですが!?」
慌てたようにテーブルに手を突き立ち上がり、口を挟むトオル。
…更に言えば樹の背後に視える何とも言えない空気の色からして…不安らしい。
「キミたちも何とか言って下さいよ、このままじゃ!」
そして同じソファに沈んでいる一同に振る。
が。
「…俺は…この手の実験台は慣れてますから。鬼家の仙人連中と付き合ってますと必然的に良くある事なんで」
薄ら嫌そうではありつつも、取り敢えず抵抗する気は無さそうな御言。
「面白そうじゃないですか。さすがに、死ぬと言う事も無いと思いますし」
何やら終始他人事なセレスティ。
「人参果で薬なんかつくるのか? …例えばどんな物が出来るんだろう?」
これまた素直に興味を抱く涼。
…彼の場合は自身が医学生と言う事もあるからかもしれない。
「んじゃ、あたしは…『何とかー!』」
はいはーい、と手を上げ、嬉々として叫ぶ壱華。
…そんなベタな。
「…俺は彬を実験台にしないんだったらどうでも良いが」
…その代わり彬に手ぇ出したら…容赦しないぜ?
あっさりと物騒な気配を隠さず言う鞍馬。
「いや、鞍馬に手を出されても俺は困るが…」
こちらは力無く――けれど本能的になりゆきに抵抗する彬。
…どうやら、現物を目の前に置いた状態での過去の回想だけでもダメージがデカかったらしい。
と。
「薬の話はひとまず置いておいて、みあおは食べるー! マイ箸とマイ涎掛け、そして今回は調味料も持参しましたっ! 押し入れに眠っていたマイ七輪も持ってきました! さあ食べよー!」
唐突に上がった、ついさっきまでは居なかった筈の声。
銀髪銀瞳の元気なお嬢さんこと海原(うなばら)みあお。
「…何処から出てきた…?」
その小柄な姿を見、やや茫然と、涼。その顔に対しみあおは挑戦的に、にっ、と笑った。
「人参果のあるところ、みあおありっ! 次辺り草間興信所に来ると思って張ってたんだっ! そしたら案の定☆」
ふふふ、と嬉しそうに口許を押さえて笑いつつ、みあおはいつの間にやら来客用ソファのど真ん中にちんまりと座っている。
「良く七輪なんか押し入れに眠ってましたね。マイ、って事は貴方のですか、小さいのに良い道具知ってますね」
「…気にするところはそこな訳、真咲」
ぼそりと突っ込むエル。
「…現実逃避でもしないとやってられませんよ」
ふ、とニヒルに笑い、御言。
「ところで真面目な話に戻りますが…七輪やら調味料…と仰ると言う事は…貴方はこれを調理せよと?」
「うん☆」
こっくりと頷くみあお。
「前までも料理したし。でね、見た目の人種とか調理する人によって味が変わるんだよ。今までのパターンからして『力』持ってる人の方が美味しい料理作れる事が多かったみたいなんだ! だから今回は零に頼みたいなー☆」
「…前までって事は」
「言ったよね♪ 人参果のあるところ、みあおありっ! て」
「つまり陵君の遭遇したと言うこれと同様の事件にみあおちゃんも遭遇していると」
考えつつ告げる、トオル。
「んーとね、その前にも一件あったよ、ゴーストネットの雫のところで!」
「でしたら…この人参果に関しては、この場に居る中ではみあおが一番の経験者と言う事になりますね?」
静かに告げるセレスティ。
「経験者…まーそうなるかな? とにかく四食制覇する! 最後の満干全席も食べて見せるっ!」
みあおは、ぐっ、と拳を握り瞳にめらめらと炎を燃やす。
「そう言う話だったらあたしも食べるっ!」
はーい、と元気に立候補したのは樹にくっついてきた鬼っ娘の壱華。
「出来たら樹ちゃんの御料理が良いけど無理には言えないし、でもでも、零ちゃんの御料理だったら美味しそー☆」
「だよねだよねそう思うよね? えーと名前は」
「あたしは壱華!」
「みあおはみあおって言うんだ。宜しくっ☆」
ぱんっ、と景気良く互いの手を打ち合わせ、に、と笑い合うみあおと壱華。…何やら意気投合した模様。
と。
玄関扉の向こう側でがさがさと紙袋やらビニール袋の音がした。
「…なんでウチの前にロールスロイスなんぞ停まっているんだ…依頼人か…?」
「金払いの良さそなクライアントは大事にせなあきまへんで草間さん」
「…ってな、依頼料を派手に滞納するような奴でない限り客は皆大事にするもんだ」
と、これまたぶつくさ言いつつ、今度こそ当然の如くノックも無しで扉が開く。
扉を開けたのは主こと草間武彦御当人と、何やらどっさり荷物を抱えている――と言うかこれは武彦に持たされている様子――の、大阪弁を巧みに操る日系ロシア人な男子高校生。…どうでも良いんだが本日の草間興信所、気のせいか銀髪な方が多い。
とにかく戻ってきた彼らは中の様子を見て、先程の彬&鞍馬同様、瞬間的に凍り付いた。
人参果人参果と手に手を取って騒ぐみあお嬢と壱華嬢に、興味深そうにテーブル真ん中の皿を覗き込んでいる涼、謎の液体が入ったグラスを前に不自然なまでに素知らぬ顔で居るトオルに御言にエル、何事も無いよう艶やかに微笑むセレスティに普段通りの零、そして何やら警戒心ばりばりの――まるで毛を逆立てた猫のような態度の彬、宥めるように彼の背をぽんぽん、と叩いている鞍馬の姿がそこにあった。
そこはかとなく漂ってくる異様な気配に、直感的に武彦は中へ足を踏み入れるのを躊躇う。
やがてテーブル上の皿、涼が見ていると思しきその上に載るものを視界に入れ、ぽつり。
「………………誰の赤ん坊だ?」
「…さあ?」
速攻で飛ぶ他人事(と言うか何故否定しない)な御言の声に、武彦は中の面子を見渡した。
そして。
「…お前か、佐和」
「…はい?」
「そう言うものをこんなところに処理に持って来るな。ウチは探偵だ。医者でも寺でも無い」
「………………ちょっと待って下さいなんで俺なんですか! しかもこれ赤ん坊じゃないですよっ! これは零ちゃんが蓮さんから受け取った差し入れとかで、絶対に皆で食えと言われたって話で! つまりはこれを受け取ったのは究極的に言えば草間さんになるんですよっ。俺は関係ありません居合わせただけですっ!」
「…そう、か。まぁ、赤ん坊ってのは冗談だ」
「…笑えませんよ」
「まぁ、どちらにしろお前ならこう言うの見慣れてるだろ。水子供養と思って何とかしろ。食え」
「それどー言う意味ですか?」
「いつも違う女を連れているじゃないか」
「ってあのですね、俺が毎回違う女性を連れてるのはお客さんだからですよ。第一、食ったからってそれが供養になりますか! それに俺はそんな失敗しませんよ!」
「…そうか?」
「なんでそんな疑惑の目なんですか。草間さんこそ相当数の女性を泣かせて来てるんじゃないんですか!?」
「………………お前な」
「否定できないでしょう」
と。
「………………って…ココにも蓮姐さんの魔の手が…」
トオルと武彦の舌鋒を聞きつつたっぷり一分程凍り付いた後。
荷物持ちをやらされていた日系ロシア人の高校生――淡兎(あわと)エディヒソイこと愛称・エディーは…茫然と呟いた。…何故こうも間の悪い時に――たまたま暇だった上に偶然怪奇探偵と遭遇し更には荷物持ちを任され興信所までのこのこと付いて来てしまったのだろう、自分。
茫然と呟くエディーの声に、武彦は、ん? と訝しげに目を細める。
「淡兎、何か心当たりがあるのか?」
「ふ…話せば長くなりまっせ。すべてはゴーストネットの雫ちゃんのトコから始まったんや…」
やや遠い目をしつつ、エディーは武彦の疑問にゆっくり丁寧にじっくりと答えた。
…曰く。
ひとことで言うと『碧摩蓮が赤ん坊型の物体を菓子折りに詰めて配り歩いている』に尽きる。
――はじめのゴーストネットの時は。
雫以下の面子と共にこの人参果の持ち込みに居合わせ、まずは本物かどうか『五行』に『匂い』等色々試していたのだが…その内これを食材に何故か料理する羽目になり、適当な家庭料理を作っては見たものの、何故か無味無臭、調味料の味すらも見事に無いと言うオチになった時の話。…ちなみにその時たまたま居合わせた仙人の丁香紫(てぃんしぁんつー)が実の樹の持ち主、鎮元大仙に確認にまで行ったが帰って来なかった、と言うおまけも付いている。
――そして次、月刊アトラス編集部の時は。
ゴーストネットの際と同様の物体が持ち込まれた――但し、赤ん坊と一口に言っても見た目がやや違い別人種の赤ん坊のような形をしていた――のだが、その時、これまた具体的にこの代物が何だか知ってるような別の仙人こと湖藍灰(ふーらんほい)が現れ――曰く、この仙人はアトラスでライターやってる術師の師匠に当たる人物らしかったのだが――その伝手から先日確認に行って帰って来なかった丁香紫の消息が掴めたりした。更に、その丁香紫から「これは人参樹から挿し木で殖やした樹になった人参果の亜種で、五行も忌まないし効能は滅茶苦茶、しかもやたらめったら実が付き捲ると言う騒動の種必須の代物で、その上効能を調べる為に手当たり次第あちこちバラ撒かれている」と衝撃の事実を暴露されたりも。しかも「生は腐り易く、そうでなくとも生のまま食うと食べた人物を苗床に花が咲く」などと、面倒なお話までくっついて来た。…曰く、火を通せば食用も基本的には(あくまで基本的には)大丈夫らしい、と言う話でもある様子。
が…それは既に人参果じゃないとも言えるような…。
――で、次にあったと言うあやかし荘の件は、エディーは知らない。
「…てな訳や」
「そう言えばあんた…淡兎って言ったっけか、アトラスの時には居たがあやかし荘の時には居なかったな…」
過去回想だけで瀕死の彬が、やっと顔を上げエディーを見る。
「そーか…あんたは陵の兄さんやったな…ワイの事はエディーって呼んだって下さい☆ …じゃなく、あやかし荘でもこの騒ぎがあったんか…」
「ああ。だがあやかし荘での時は俺は原型見てない。予め菓子に使って作ってあってな…しかも別口で久遠樹って言うあの薬師が人参果で薬を作っていたらしく、知らず知らずの内に俺はそちらを盛られていた。で、結果は…同様に一服盛られていた連中と何故か声が入れ替わってな…」
遠い目で言う彬。
「そりゃ災難でしたな。…でもそりゃ…ひょっとすると今までで一番『らしい』効果とちゃいます?」
「ちなみに、そのまま生で食った場合だと声自体が消えていたようだ…」
しかもアトラスの時と同じ人物が計らずも口にし、その効果が出ていた…。
「そ、か…。
ふぅ、今回またも出遭うてもうた以上、一度は逃げられたとは言え…縁が切れた訳や無かったんやなあ…」
しみじみと言いつつ、エディーは持たされていた荷物を持ったまま、黙って先に奥の部屋に消えた武彦の後を追い奥の部屋の方へ移動。
少しして応接間に戻ってくる。
と。
「…こうなったら、しゃーない。…やっぱここはワイが料理をっ???!!」
シリアスな表情から一転し、エディーがちょっと嬉しそうに決意を口にした途端。
――エディーと武彦が入ってきて後、開いたままだった扉の方から別の声が飛んできた。
「…エディー…それだけは勘弁してくれる?」
来て早々頭が痛そうな顔をして眉間に皺を寄せている赤いスーツの女性の姿。
「人参果――と言う事は、ただでさえ訳わかんないのにあんたが料理すると更に色々とこんがらがるから」
言いながら所内に入って来たスーツの女性は、最早草間興信所内で武彦、零に続き第三の家人と言える、事務・整理等のバイト――と言うか台所事情を熟知し、更に八割方を仕切っているシュライン・エマ。
テーブル上の物体と中に居た面子を見て、はぁ、と思いっきり嘆息している。
「とうとう来たわね…ウチにも」
呟きながらおもむろに携帯電話を取り出し、ぴぽぱぽぴ。
「…」
繋がらない様子。
が、更に待つ。
(…御用の方は、ピーと言う発信音の後に――)
……ぴー。
「シュラインだけど。――他人様に御迷惑かける前に来て貴方が食べなさい。以上」
切。
そして今度はもうひとつ携帯電話を取り出し、何やらボタンをぴ、と押してから耳に当てる。
「…どうも。で、今回の持ち込みは、草間興信所で。場所はわかります? え、だったら弟分の凋(てぃあ)が多分行くから好きに使え? いえそれは構わないんですが…ええ、それはやるつもりで。『嫌』ですが一応持ち歩いてますから大丈夫ですし。じゃ」
再び切。
シュラインは改めて興信所内を見回した。
「さて、エディーにみあおちゃんに陵君の姿も見えるのだけれど、この場の皆さん、いったい何処まで承知しているのかしら?」
…ちなみにこの彼女、みあお嬢同様、ゴーストネットの時からずぅっとこの仮称・人参果に遭遇しております。
■■■
「…そう、だいたいは話した訳か。あ、物によっては命に関る可能性もある、って事は話した?」
丁香紫さんがそんな事を言っていたけど。
「でも大丈夫だよその辺に関してはきっと。だって幸運の青い鳥なみあおが居るもん♪」
「そーそー、大丈夫大丈夫♪ 」
手と手を合わせ所内をくるくる踊っているみあおに壱華。
…元気だ。
「ま、本人に食べる意志が無いなら食べさせない方が良いって事で。…うーん…命令だからってそう言う事まで強要して欲しくないなぁ…」
…などと思っているのだけれども。
ちょっぴり苦い顔をしつつ、シュラインは零の頭を撫で撫で。
きょとん、とした顔で零はシュラインを見上げている。
「無茶な命令は聞かなくても良いのよ? 零ちゃん?」
「…はぁ」
むー、と考え込みつつ、零はシュラインにされるままになっている。…どの程度がシュラインの言う『無茶な命令』になるのか考えているらしい。
やがて、この場合『強要する』のは悪いのか、と思い至った。
無言でこくりと頷く。
「…何だか良くわからんが傍迷惑な事は確かだな…」
「そうなのよ。実はあやかし荘で一度蓮さんとニアミスしたんだけど逃がしちゃって…」
あの時は悔しかったわ…と言いつつ、皿の上の人参果もどきを見ながら、取り出した手帳に何やらさらさらさら。
「…何してるんだ?」
訝しげに武彦。
「今までとの相違点見てるのよ。今後の為に」
「ほー? 詳しいですね?」
ちゃっかりと手帳を覗き込む鞍馬。
「見た目やら感触やら、おお、写真に成分表示まで」
「今までもあったのか…って色黒って…しかも大きさも随分変わってるみたいな…」
鞍馬同様、いつの間にか見ている涼。
「…ある意味、意地ね。この資料制作は…ふふふ」
含み笑うシュライン。
ちょっと怖い。
「とは言え今回は…ゴーストネットの時とあまり変わらないみたいね? 大きさ以外は」
「えー、んじゃアジアン? 美味しくないのー!?」
ぶー、とむくれつつ、みあお。
「…いや、それはわからないわよ。一応違う事は違うみたいだし」
「そお? だったら良いけど…」
「ところで武彦さん」
「ん?」
「もし食べるなら…生だけは避けてね…」
ちら、とテーブル上のグラス――誰が置いたのかいつの間にやら主のデスクにも確り置いてある――を見つつ、心配げにシュライン。
知らずとも察しは付くその中身。
「だったらこれもヤバいじゃないですかっ!」
びしっ、と自分の前に置かれたグラスを指し、叫ぶトオル。
「先程、腐り易いと言う話だ、と仰ってましたね、淡兎君が」
ふむ、と頷き、セレスティ。
「取り敢えず変な匂いもおかしい様子も無いですが…それでも?」
「ううん…確かにあやかし荘の時は…大丈夫だった…のかしら、あれ」
悩む。
「んじゃそれもそれで一応置いとけばどうだ? 誰か手ぇ付けるかもしれないし。余興にさ♪」
「草壁…何の余興だ何の…」
がっくりと武彦。
「…まぁ、何か身体に変化がありましたら…果汁だけでも私の能力で取り出して差し上げますので、皆様どうぞ遠慮無く」
にっこりと微笑みつつ、セレスティ。
「煽りますかカーニンガムさん…」
ふぅ、と溜息を吐きつつ、御言。
「…で、成分調査はまた頼むとして…じゃ、みあおちゃんに壱華ちゃん、と待ってる子たちも居る事だし、料理、やってみよっか?」
シュラインは、ちら、と零を見、微笑んだ。
■結局料理〜そして何かが起こる■
で。
「まさか他ならないここ――草間興信所で丁の言ってた話に遭遇するとはな…」
溜息混じりにぼやきつつ、都会の裏街道を歩いていそうな洒落た殺し屋風(?)の三十路男――に見える仙人こと鬼凋叶棕がどっかりとソファの空いたところに腰を落ち着けていた。
ちなみに丁と言うのは丁香紫。
たった今ここに来た凋叶棕は、御言の呼び出しと、実は兄貴分だったりするその丁香紫の手前もあり訝りながらも来たのだが、彼の来た今の時点で既に数名の姿は台所に消えている。
そして、何やら床に崩れ、ずーん、と派手に落ち込んでいる銀髪に眼鏡の日系ロシア人な男子高校生が場の空気をちょっとだけ重くしていた。
凋叶棕としては状況がわからないだけに余計に気になる。
「………………ところでどうした、坊主?」
「…それだけは勘弁て…そんな…殺生な…シュラインのねーさんも零ちゃんも…ワイから隠すみたいに人参果全部持ってってもーたし…くうっ…なんで皆ワイの芸術的な料理をわかってくれへんのや…なんでやあああああ!」
号泣。
「まあまあ、あたしはエディーちゃんの料理好きだよー?」
ぽん、とそんな哀愁漂うエディーの背を叩き、宥めるように言う鬼っ娘。
「お、壱華ちゃんやないけ…有難な…そう言うてくれんのは壱華ちゃんだけや…」
鬼っ娘の気遣いを受け、くぅっ、と感極まったように再度泣くエディー。
「………………何だか良くわからんが…つまりは料理がしたいだけな訳か?」
「まぁ…そう言やそうかも知れへんしそうでもないような…ところで兄さんは何もんや」
「鬼凋叶棕。一応ここの下請け調査員やらせてもらってるんだが…お前とは会った事無かったな」
「おお、鬼って事は仙人の兄さんか」
「知ってるのか」
「湖藍灰の兄さんにゃちょいと因縁があるんや」
ふっ、と笑いつつ、ぐぐっと握り拳。
と。
「…ところで先程から気になっていたんですが…久遠君は何処に行ったんでしょうか?」
ぴしり。
セレスティのさりげないひとことに、久遠樹と言う薬師を知る面子は――思わずその場で凍り付いた。
…とは言え、凍り付いたのは彼を慕う壱華『以外』、だが。
■■■
興信所の台所。
窓が全開な上、ごおおおおおおお、と派手に換気扇が回っている。
「うーん。取り敢えず切った感触もゴーストネットの時と変わらないわね?」
「そうなんですか?」
ちりちりとみあおの七輪で人参果もどきを焼きつつ、零が訊く。
…ちなみに零の焼いているこれ、先程みあおが自身の霊羽で霊力を付与して行った物。曰く、≪幸運≫の味がしないかな♪ と試しにだそうである。
ついでに御土産用にも宜しくねー、と元気に頼んで彼女は応接間に戻って行った…。
「う〜ん…何でも良いけど…それだけは凄く抵抗あるような」
零の手許を見ながら、シュライン。
…肝心の零は、シュラインの態度に首を傾げている。
■■■
「…ところで、飲めとばかりに置いて行かれたこれはいったいどうするの?」
黙って成り行きを見ていたエルがグラスを指して、ぽつり。
再び、ぴしっ、と何かが凍る音が響いた。
…本日の草間興信所、良く凍る。
「喉渇いてない?」
「誰が」
「草間さん」
「いや」
「では真咲さん」
「大丈夫です。御気遣いどうも」
「ではセレスティさん」
「私は水に餓える事はありませんよ」
「…そう仰る佐和さんはどうですか?」
「いや、俺は遠慮しますよ」
「まま、そんな事言わないで。これ、名峰富士の涌き水なんですよ☆」
「興信所にそんな物があるとはとても…」
「陵君はどうですか?」
「いや、却下」
「では御影君は」
「…うーん。取り敢えず妙な霊的波動は無いみたいだけど…料理の方を待とうと思うよ。一応」
「…じゃあ、淡兎はどうだ」
「ワイも勘弁したって下さい…いや、これ使ってなんか作っても…?」
「却下」
「即答でっか…くうっ」
と。
料理を待ち踊るみあおと壱華を余所に、グラスを前にした面子が…何となく互いに押し付けあっている。
…内に。
「あ」
グラスの中身がこぼれた。
灰皿に。
と。
そこにあった山のような吸殻――いつの間にやら出来ていた――が。
新品同様の一本の煙草に変わった。
「…は?」
――但し、サイズが変である。
そこにあった煙草すべてを合わせたような大きさの。
巨大煙草が現れた。
「これって…何?」
…知らないって。
■■■
「まぁた面白い事になってますね☆ 誰が持ってきたんですかその煙草?」
一同が茫然とする中、白衣の青年が何処からとも無く応接間に戻ってくる。
「今までいったい何処にいたんだ…久遠さん」
彬が苦い顔で言う。
「企業秘密です」
唇の前に人差し指を立て、茶目っ気たっぷりに宣言。
と。
「ねえねえねえ、今のって、このグラスの中身がこぼれてこうなったよね? そうだったよね!?」
嬉々として壱華が言い募る。
「あ、ああ、そうだったと」
と、涼が肯定するなり。
壱華は、ひょいっ、とまだ残っているグラスを取り、くるんと踵を返すと、たまたま視界に入った――鞍馬を見る。
そして悪戯っぽく目が光ったかと思うと。
「おいーっ!?」
…ばしゃんと人参果ジュースが頭から掛けられた。
すると。
「「なにすんだーっ!?」」
同じ声がダブった。
…と思う間にもその姿が。
ふたりになっていた。
「「って、え、なんだこりゃ」」
しかも動きから話す言葉まで御揃い。
それを見てみあおも目を輝かせた。
「うわ、分裂した」
「「なにーっ!?」」
「他のはっ!?」
きょろきょろと辺りを見渡し、グラスを取ってみあおは手当たり次第にばしゃん。
と。
…近場の観葉植物が巨大化したり、灰皿が増殖したり、本棚の棚が増えたり。
「…」
そしてたまたま人参果ジュースの掛かった御言の左腕が――肩から二本生えていたり。
「…便利…なんでしょうかこれは」
「げ」
「治れば良いですが…放っといたらまるでシャム双生児だか明王尊のような…」
と、周囲は引いている割に本人はやけに冷静に嘆息。
「うわああああ、面白おおおおいっ」
「…」
言いつつまた、ばしゃん。
…今度はエディーの頭に掛かる。
と。
その柔らかく輝く銀の髪が唐突にずざーっと伸び、床に広がった。
「…だあああああ、重いわぁっ」
咄嗟に、せいやっ、と気合を入れ、エディーは髪に掛かる重力を軽減した。
■■■
そんなこんなで暫し後。
シュラインと零がそれぞれ料理――『人参果の中華風スープ』に『人参果と野菜の炒め物』、『人参果の餃子』に『人参果の姿焼き』等を盆に載せ、持って台所から戻ってきた。
が。
「…あの、兄さん?」
「細かい事は気にするな。取り敢えず…逃げろ」
…座ったままの武彦に低い声で言われ、目を瞬かせる零。
「どうしたの、武彦さん…って――」
近くに行き、武彦の姿を見たシュラインは絶句する。
…何やら背中から腰、そして足に掛けての一部だけが、一度溶けてくっついたかのように椅子と同化している。
「いや、グラスの中身は全部無くなったか…だったら、もう…大丈夫か」
ぼそりと呟く武彦の言を聞き、更に他の方々の惨状を見ると――説明を求めるようにシュラインは武彦をもう一度見る。
「良くわからんが…あのグラスの中にあった生の人参果が付着すると…ひとつだった物質が分裂したり、複数だった物体がひとつに合体したり…形自体が変わったり…と色々起きるらしい。対象は…制限無しだ」
心底嫌そうに武彦。
「…おかげで俺は今立ち上がれない」
「ちょっとこれ洒落にならないわよ…」
「…ちなみに俺はこんなでして」
左腕を二本別々に動かす御言。…器用だ。
「「俺なんかこうです」」
まるごとふたりになってしまっている鞍馬が何処か憮然と言う。
「ワイなんか異様に髪が伸びとるでぇ…どないするんや切ってええんかこりゃ」
その科白で、床に近い部分で微妙に浮いている銀色の細波がエディーの頭髪と知れ、もう何が何やら。
だが。
「あ、料理出来たんだね、シュラインに零っ!」
全然気にせず、嬉しそうに言うみあお。
………………この状況でも食う方が先か。
■■■
じゃあ、ついでですから私のスイカのムースも出しましょうか、と言いつつ樹も持参した手製の赤いムースをテーブルに並べ、ソファにちょこんと座る。
…ちなみに生の人参果からは逃げきっていたらしい。
他にも逃げきれていたと思しき面子は、涼に彬にトオルにエルに凋叶棕、そして生の人参果をあちこちに掛けに走った当人であるみあおに壱華。ちなみにセレスティは裏技(水霊使いの能力)で逃げきった模様。
とにかく、嫌になっている組に楽しんでいる組にはっきりきっぱり分かれている。
そしてなしくずしに楽しんでいる組、の手によりシュラインと零手製の料理+樹のムースがテーブル上に広げられていた。
みあお嬢と壱華嬢は嬉々として早々に食べている。
「うん。美味しいっ。≪幸運≫の味ってこんななんだー」
ふーん、と納得しつつ、人参果の姿焼きも気にせずに。
「樹ちゃん御手製のムースも美味しいよー」
はいはーい、と樹のムースを勧める壱華。
「いいねっ、デザート☆」
頷くみあお。
「…ん。本当に美味しい事は美味しいよこのスープ」
一口啜ってみて、うん、と頷く涼。
「皆さん、そんなに警戒しないでやって下さいね? 美味しいですよこのムース」
と、持参した自分でもムースを食べている樹。
「じゃ、私も貰って良い?」
「どうぞ☆ 勿論ですよ」
エルの声に快く答える樹。
そんなこんなで楽しい食卓。
■■■
…けれど樹は内心で首を捻っていた。
何故なら…誰にも何の効果も表れない。
それは自分や壱華は耐性があるからわかるのだが、当面食べている様子のみあおと涼はそんな事も無い…だろう。
…失敗でしたかね?
残念そうな顔をしつつ、樹は再びムースをぱくり。
そんな樹の内心も知らず、みあおを中心に食卓は盛り上がっている。
ちなみに薬に効果が無かった理由は、みあおの場合は≪幸運≫の影響によって薬の方が無害に、涼の場合は実はムースの方は…食べているようで食べていなかったのだ。
そして他の面子は…食事よりも、生人参果の掛けられた部分に起こっている奇天烈な効果の方に気を取られている。
巨大化した煙草や観葉植物、いきなり増殖した灰皿やらエディーの髪に御言の左腕…等々。
つまりは真っ当なモニターに恵まれなかったらしい。
合掌。
まんじりともせずそれら様子を見ていて、シュラインは二つ目の携帯電話――実はあやかし荘の時点で丁香紫から渡された、人界〜仙界直通OKの携帯電話型宝貝である――を取り出し、ボタンをぴ。
「あのね丁香紫さん、他は――まぁいつも通りみたいなんだけど、今回、生がね…」
物凄く変な効果になってます。
■■■
唐突にワンダーランドに変貌した興信所。
一部の人は楽しそうだが一部の人は頭が痛い方が先のよう。
「俺にこの後始末をさせる気か丁…」
がく、と俯いた凋叶棕の肩に、まぁまぁ、とでも言いたげな彬の科白が投げられる。
「…何だかあんたもある意味被害者みたいだな」
…少なくともヤバい状況で食っちゃいないし、訳知りな連中と近いとこに居るみたいだけど。
悟ったような態度で、ぼそりと彬。
凋叶棕はしみじみと彼を見返す。
「お前程じゃ無さそうだがね」
肩を竦めて言いながら、とん、といきなり彬の額に軽く指先を当てる。
「?」
「子年だな? となると貪狼か…」
呟きつつ、そのまますらすらと何事か書き始めた。
「…おい?」
訝しげに、彬。
「ま、ちょっと黙ってろ」
悪いようにはしねえから、と凋叶棕。
と。
「「…俺の彬に何してんだおっさん」」
何やら殺気立った声がダブルで飛んできた。
…先程壱華に人参果のジュースを掛けられて分裂しふたりになってしまった鞍馬。
「簡単な厄除けみたいなモンだ。七星の守護がありますようにってな。…どうも、ちょっと見てられなくってね」
それでも凋叶棕はしれっとした態度のまま彼らを見返す。
「別に危害を加える気は無いから安心しろよ。『守人』さん。お前のそれも治してやるし」
「「…本当だな?」」
「幾ら何でも今の状態でこれ以上余計な悪戯する気にはなれねえよ。湖じゃあるまいし」
思いっきり嘆息。
「…で、結局…どうにかしてもらえるのかしら、これ?」
シュラインは凋叶棕に問う。
…丁香紫は弟分の凋に頼れと言っていた。この凋とは凋叶棕の事だろう。
「まぁ、乗り掛かった船だ…」
凋叶棕は何処か遠い目をしつつ、所内を見渡し――樹の薬は今回は大した効力は無かったようだが、人参果の亜種自体の奇天烈な効果により色々に変化、合体、分裂した物体が溢れる状景に嘆息。
何やら円満解決には物凄く手間が掛かりそうな勢い。
「…頼む…凋叶棕」
所内の状況を見て激しく頭が痛くなっている様子の武彦が、やる気になれば何とかなりそうな発言をしている――見た目と気配は危険そう、けれどその実お人好し、の類な仙人を見てぼそり。
「…お前の頼みじゃ断る訳にも行かないだろ。それに放っといたらお前どころかシュライン女史に零も『これ』の後始末に困るだろうし真咲も被害を被っている訳だしな…ま、ここは仕方無え、か」
「だったら…有難いわ…。
と。ところで今回…以前にも増して訳がわからない事態になっている気がするのは…気のせいかしら」
…いえ、恐らく気のせいではありません。
【続】
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■ 登場人物(この物語に登場した人物の一覧) ■
□■■■■■■□■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
■整理番号■PC名(よみがな)■
性別/年齢/職業
■0086■シュライン・エマ(しゅらいん・えま)■
女/26歳/翻訳家&幽霊作家+時々草間興信所でバイト
■1831■御影・涼(みかげ・りょう)■
男/19歳/大学生
■1712■陵・彬(みささぎ・あきら)■
男/19歳/大学生
■1717■草壁・鞍馬(くさかべ・くらま)■
男/20歳/インディーズバンドのボーカルギタリスト
■1883■セレスティ・カーニンガム(せれすてぃ・かーにんがむ)■
男/725歳/財閥総帥・占い師・水霊使い
■1415■海原・みあお(うなばら・みあお)■
女/13歳/小学生
■1781■佐和・トオル(さわ・とおる)■
男/28歳/ホスト
■1576■久遠・樹(くおん・いつき)■
男/22歳/薬師
■1619■葉山・壱華(はやま・いちか)■
女/12歳/子鬼
■1207■淡兎・エディヒソイ(あわと・えでぃひそい)■
男/17歳/高校生
※表記は発注の順番になってます
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
※オフィシャルメイン以外のNPC紹介
■居合わせその一■真咲・御言(しんざき・みこと)■
男/32歳/バー『暁闇』のバーテンダー兼用心棒、昼間は基本的に暇人
■居合わせその二■エル・レイ(える・れい)■
女/?歳/これでも一応吸血鬼・草間興信所には良くお茶をしに来る
■巻き込む為だけに呼び出されその一■鬼・凋叶棕(くい・てぃあおいえつぉん)■
男/594歳/表向きは探偵(草間興信所の下請け調査員)・本性は仙人
■今のところ事情が一番わかってそうな電話の相手■鬼・丁香紫(くい・てぃんしぁんつー)■
無/664歳/仙人
□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
■ ライター通信 ■
□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
さてさて。
深海残月です。
御影涼様、佐和トオル様、初めまして。そしてセレスティ・カーニンガム様、このたびは御参加、有難う御座いました。
久遠樹様、「あやかし荘」からの継続御参加、更に葉山壱華様を引き連れての御参加、有難う御座いました。
陵彬様、「アトラス編」からの継続御参加、更に草壁鞍馬様を引き連れての御参加、有難う御座いました。
淡兎エディヒソイ様には「あやかし荘編」を除き、「ゴーストネット編」からの継続御参加有難う御座いました。
シュライン・エマ様、海原みあお様には、今のところ全編継続の御参加、有難う御座いました。
皆様、いつもお世話になっております(礼)
引き続いての方ばかりで無く、毎度のように初めましての方も巻き込まれて下さるのでいつも驚いております…。何やらどうしようもない事態になっておりますので初めての方は驚いたかもしれませんが(汗)
そして相変わらずの納品の遅さとちょっと待てレベルな長引き振り、辟易してたら申し訳無いです…。
それと…個別のライター通信も今回は省略の方向でお願いします。
…いえ、今回は長いから、と言うより済みません時間の問題が(汗)
苦情御意見御感想はテラコンレターででもお願いします…。
さて。
各調査機関&あやかし荘+解決編の「味見と言うより毒見」シリーズ、前振り編終了こと第四段「草間興信所編」をお届けします。
第四段と言っても第一段、第二段、第三段の方と時系列が直接続いている訳では無いので、今回初めて御参加下さった方も問題は無い仕様になっております(その筈…です)
今回は(も)全面的に皆様共通の文章になっております。個別部分がありません。
終わり方が『続』なのがその理由(?)です。
…内容としてはやっぱり見事に何の解決もしていません。
基本的には相変わらず騒いだだけです(え)
『解決する』のはあくまで『解決編』でです。
が。
今回の『草間編』は一日も経たない内に参加者様が十名に達してしまうと言う最速振りでして。
あまりに早かったのでこちらとしても少し気になりまして、この『草間編』の窓は念の為もう一度開ける事にしました。
よって、『解決編』の際は、『草間編』の扱いのみ、今回と次回の二編をパラレル仕様で考えております。
それでもこの『味見と〜』シリーズの場合、同じ『解決編』を書く事が可能だと気付きましたので(え?)
と、言う訳で、『解決編』の窓口が開くのはまた少し遅れます(汗)
相変わらずのノロノロ運転ですが、
ここまで来たなら(笑)どうぞ最後までお付き合いしてやって下さいませ。
ではまた、解決編でお会い出来る事を。
深海残月 拝
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