■箱についての考察■
滝照直樹 |
【1831】【御影・涼】【大学生】 |
「まただわ…」
毎度おなじみの恵美さんの声。
玄関にまた例の「箱」がある。
虹猫、未来からの魔物、異次元の壺、タイムカプセル、異世界への温泉旅行…。
何が目的なのか…コレを送ってきている者は誰?もしかして組織?
「また、箱ですか?」
とエルハンドが顔をだした。
恵美は頷く。そして、
「開けるのは後にして…手伝ってくれる人達で…考えた方がいいですね……」
と、ため息一つ吐いて、答えた。
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あやかし荘奇譚 箱についての考察
■管理人室で箱を囲む会?
「これで何回目なのかでしょうねぇ」
「6回目だと思うのぢゃが」
「奇妙なものだ」
恵美、嬉璃、エルハンドが卓袱台の上に置いた「箱」と睨めっこしてた。
考え込んでいる最中に守衛室で何か騒がしいので気が散ってしまう。
「たぶんいつもの連中が時音をからかっているのだろう。先は箱についてだ」
とエルハンドは2人に言った。
しばらくすると
「やった、やった〜♪」
と声がする。
「やっぱり気になりますね」
「…たしか赤ちゃんに名前を決めるかどうかだったな」
「決まったみたいぢゃ」
「時音さんにもお願いしましょう」
恵美はそう言って時音の部屋に向かった。嬉璃もついていく。
「名前は雪香です」
と赤ん坊を抱いて、もう親ばか丸出しで喜んでいる時音と会う。
「おめでとうございます」
と恵美が言った。
「しかしのう…此処まで親ばかになると…馬鹿を通り越して赤子萌えぢゃ」
「其れは其れで危険思想よ、嬉璃ちゃん」
恵美が注意した。
「ところでお友達は?」
「名前決定トトカルチョが終了したら帰っちゃいました」
かなりまったりしている時音。よほど嬉しいのだろう。
「それはそうとぢゃ…また例の「箱」が来たぞ」
「またですか?」
「はい、今管理人室でエルハンドさんと考えていました」
「分かりました僕も一緒に調べます」
あやかし荘に向かう途中で丁度エルハンドに会うために来た綾和泉汐耶と御影涼が出会った。
汐耶はエルハンドに世話になったので日本酒とあやかし荘の皆に和菓子の詰め合わせを持っていた。涼は何も持っていない。単に散歩している様に見える。
2人とも初対面。
「こんにちは、あやかし荘に用事でも?」
「はい、はじめましてあなたも…ですか?」
涼が先に口を開いたので、汐耶は少し驚く。
「俺は御影涼です。はじめまして」
御影涼という男は何となく気分を落ち着かせる雰囲気を持っていた。
「私は綾和泉汐耶よ、宜しく一緒に行きますか」
そんなとき、後ろから情けない雰囲気を醸し出す「あの人」が来た。
「あ、三下さんこんにちは、今日は早いのね」
「綾和泉さんこんにちは。いえ、編集長が急いで帰れって…」
「其れってもしかして…リストラの第1段階??」
「今の世の中…世知辛いからなぁ」
汐耶と涼は妙に納得し、同情の目で三下を見ている。
「そんなんじゃないですよぅ〜。あやかし荘に又「箱」が現れたって連絡が来たんですぅ!」
あわてて否定する三下。
「箱?」
「妙なアイテムが入った箱です。ネタになるから取材で帰れって…」
首を傾げる2人に簡単に三下は説明をする。
「そうなのね、私たちも調べましょうか」
「そうだな」
と、3人であやかし荘に向かっていった。
「ごめんください」
と挨拶して、丁度赤子の話で盛り上がっている(?)最中の恵美と時音がいた。
■出現状況と中身の考察
改めて初顔合わせの来客に自己紹介をして箱について考えることにした。
「過去何回ほど有りました?」
汐耶は恵美に訊ねる。
「いつの間にか玄関に有るのです。人の気配は全く」
と恵美は答えた
「誰の悪戯でもないと…」
涼が箱を触ろうとするが、銀髪隻眼の男エルハンドに睨まれ止めた。
「今は触らない方が良い…振ってみたりしようと考えただろう」
「分からないものは調べてみないことには」
「其れは一理あるが…数回迷惑な代物が入っているからな」
「でも此処まで持ち運んだのなら…」
「エルハンドさんがその箱の「時間を止めて」持ってきたんです」
「其れだったらその時に開けてみれば…」
「時間を止めたのはほんの数秒だ。中身を開くと罠が発動すると見越してだ」
玄関で固まるより、こうして茶菓子とお茶でゆっくりして考える方が良いと言わんばかりにエルハンドが素っ気なく言う。
「箱だけ転移魔法で送られている可能性がありますね」
と時音が言った。
「となると受け取り拒否は出来ないわね」
汐耶が納得する。
「中身の経歴は、虹猫(草間さんところ焔ちゃん達)、宴会の壺、魔物の詰め合わせ、タイムカプセル、温泉旅行のチケットでした」
「魔物の詰め合わせって何ですか」
時音の説明に汐耶と涼が困り果てた顔をする。
「温泉旅行は最高だったかも」
思い出話に浸り始める恵美。
「色々面白いところだなぁ」
と、涼は素直な感想を述べる。
「成る程、「粗品1」は温泉旅行と言うことなのね」
汐耶は納得。
「今回の粗品がなんなのかは…分からないが」
エルハンドは箱をずっと見ている。
「猫だけは勘弁ぢゃ…里親募集中の世話をするのに大変だった。それに今では庭に饅頭ウサギがいる」
嬉璃は縁側の窓を開ける。其処には数羽のウサギが可愛らしさ100%の仕草で草を食べていた。
「たまにかわうそ?らしいナマモノがいるからな…」
嬉璃がため息をついて窓を閉める。
この数分、じっと睨んでも何も起こらないので涼が
「生き物ではないみたいだし、振ってみよう」
と言う。
「まあ…危険な魔物だったら…僕と先生で迎え撃てば良いだけだし。割れ物でもないからいいか…でも開封は気を付けよう」
時音が答えた。
涼が振ってみる。
紙の重みや、何か梱包剤で包んだ様な音が聞こえる。それ以外何も起こらない」
「説明書と、サンプル品かな?やっぱり危険物じゃないようです」
「なら開けましょうか。念のため罠など考えて封印した方が良いよね?」
と、汐耶が提案する。
「開けてビックリな展開だったらその時に考えればいいよ」
とほんわかとした雰囲気で涼が言った。
■開けるのは誰?そして箱の中身は。
いったん、箱を外にだし、ウサギを籠に閉じこめ周りを囲む。
「危険物の可能性は否めないからな」
エルハンドは呟く。
「一応、大抵の危険に対応出来る人物が開けるべきだが…」
汐耶とエルハンドは互いを見て…お互い含み笑いをし…三下を見た。
「え?え?僕ですか!」
「他に誰がいるの?」
「碇に電話して貴様を帰宅させたのは私だ。これも仕事だ。がんばれ」
汐耶と先ほどとはうってかわったエルハンドの言葉。
「骨は拾ってやるから安心しろ」
嬉璃のトドメの一言。
「エル先生だったんですね…三下さんを呼んだの」
萌え者達がいないことを幸運と思う時音。
「大丈夫よ、三下君。すでに私が封印しているのだから」
怖がって震えている三下の肩をぽむぽむとたたく汐耶。
「俺も手伝って良いかな?この調子だと…彼、開ける前に気絶しそうだ」
涼が言う。
「ん?其れはやめておいた方が良いと思うよ」
時音が制した。
「どうしてさ?」
「エル先生は何か考えているんだろう」
時音はエルハンドの意見を尊重していた。
三下が怯えながら開封作業中…
心当たりのある品物と、予想する品物のリストを書き上げて皆が推理していた。
「本が入っているのは確かだから。それは取扱説明書?」
「萌え者ではないからこれも除外と…遊び倒してすぐに中に瞬間移動は流石に不可能だし」
「願いを叶えるアイテムとか…」
「呪いのアイテム詰め合わせ?それはいやですね」
「近頃おかしな事件が多いぞ」
「中身が一口羊の置物で、ある時期本物の羊になられたら困る」
数分後…。
「開きました〜」
と三下が中身を持ってやってきた。
中身は、200ページは有ろうかというA4サイズの本であった。
タイトルは…
『不思議アイテムサンプルガイド』
そして梱包剤で包まれている箱が何個もある。
中身は指揮棒みたいなもの、ケースつき楽器の数々、装飾された木の箱、タロットデック…まるでファンタジーの魔法物品詰め合わせ…。
「これ分かります?」
汐耶がエルハンドに聞いた。
「如何にも魔法物品だ…鑑定するまでもない…その不思議アイテムに説明が書かれているだろう…」
本を広げたエルハンド。
中に手紙が挟まれていた…。
何故かエルハンドと、あやかし荘の恵美宛だった。
「手紙ですか?」
恵美が不思議がっている。
エルハンドは、サインを見てため息をついて、手紙を読む。
なにぶん…言語が…この世界には存在しない物だったからだ。
―親愛なる友へ
そっちの世界は楽しいか?俺の方はわりかし忙しくなった。単に楽しくなったと言っても良いか。
とりあえず、箱の業者が俺にコンタクトを取ってきたので俺が試練で作った音楽系統の魔法物品詰め合わせを送らせてもらった。そっちの世界でどういう効果を発揮するかは知らないが、悪いもんじゃない。ただ、デックだけはエルハンド持っておいた方が良い。例の「アレ」だから。
んじゃ、そっちの異変研究しっかりやれよ
悪友より―
「サンプルどころか…厄介な代物だな…」
ため息をついたエルハンド…。
「では、音楽等に詳しい方に上げるとか出来ませんね…ご友人からのプレゼントですから」
「友人と言うより…親父に匹敵するぐらいはた迷惑な輩だが…しかし、安全は保証できる」
恵美の言葉に異世界の剣客はため息をついた。
「欲しいなら持って帰っても良いぞ。しかし…このタロットはとても危険封印しておく…まったく…あの男は…」
「そのタロットは気になるなぁ…」
涼は興味津々にそのデックを眺めた。しかしそのアイテムだけは本に記載されていないので、止めることにした。
「結局、お礼というか…異世界からの宅配便だったのね」
杞憂に終わったことで汐耶はため息をつく。
「しかし、音楽というならのう、その得意な奴にあげるのも良いかもしれぬ」
嬉璃が言う。
ガイドブックにはそれぞれの取扱説明が丁寧に載っており、素人でも扱えるようだ。
それぞれの楽器の音色は驚くほど美しく、和やかな感じな物や、感動して涙が出るものと様々だった。
「今夜はこれを皆で使って宴会ぢゃ!」
祭り好きの嬉璃の一声。
「其れは名案」
涼も同意。
早速、皆は知り合いをかき集め…夕方には食堂で音楽祭が開かれた。
恵美とエルハンド、時音はは食堂から離れてから箱について話をしていた。
「まったく…興味本位であの「箱」を使うとは…」
「結局分からずじまいでしたね、エルハンドさん…」
「いや…この手紙で目星がつきましたよ、管理人さん…」
「え?本当ですか?」
「まだ確信が持てないですけど」
「僕も何となく…ですけど…分かる気がします」
と…エルハンドと時音は苦笑した。
まぁ、おかしなナマモノもいれば、こういったおかしな組織がいてもかまわないか…といった顔だった。
この日から、あやかし荘は、いつも美しい音色を奏でるアパートとなった。
余談であるが、三下はこの記事を提出したが没ったらしい。
End
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■ 登場人物(この物語に登場した人物の一覧) ■
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【1219 / 風野・時音 / 男 / 17 / 時空跳躍者】
【1449 / 綾和泉・汐耶 /女 / 23 / 司書】
【1831 / 御影・涼 / 男 / 19 / 大学生】
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■ ライター通信 ■
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滝照直樹です。
『箱についての考察』に参加してくださりありがとうございます。
結局どう調べるのか色々考えてくださって楽しかったです。
特に綾和泉様の「三下君に開けて貰う」には笑わせていただきました。
御影様初参加ありがとうございますこれからも宜しくお願いします
滝照直樹拝
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