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■妖精さんいらっしゃい♪〜初詣Ver■

日向葵
【1415】【海原・みあお】【小学生】
 新年が明けた神社は初詣で賑わい、初詣客を狙った屋台があちこちに出ていた。
 おいしそうな匂いに釣られて、人のごったがえす神社へやってきた妖精コンビ。
「ふわ〜。すごいの」
「人がいっぱいなのー!」
 神社の小道を埋め尽くす、人、人、人。
 街に出たことはあれど、これほどの人ごみを見たことのなかった妖精コンビはその行列に目を丸くした。
 屋台の食べ物をちょっぴり拝借しつつ、行列の先頭を追いかけてきた二人は、あるものを視界に留めて、好奇心いっぱいの瞳をきらきらと輝かせる。
 それは、お参りをする人たちがガラガラと鳴らしている鈴だ。
「ねえ、あれ!」
「うん、やりたいのっ!」
 二人は早速、鈴を鳴らしに行くべく近づいたのだが……。
「きゃうっ!?」
 コンッ、と。
 誰かが投げたお賽銭が、運悪くウェルの頭にぶつかった。
 急なことでバランスを崩したウェルはそのままひゅるひゅるとお賽銭箱へと落ちていく。
「ウェル〜っ?」
 慌ててその後を追いかけようとしたが、大きなお賽銭箱とたくさんの人。
 投げ込まれてくるお金もたくさんで、下手に近づけばテクスも落ちてしまいそうだ。
「ウェル、ウェル〜」
 片割れを見失って半泣きのテクスは、妖精を信じない大人たちには姿が見えない。
 それは逆を言えば子供には見えるということで……。
「ねえ、ママ。あれなにー」
「蝶々さんが泣いてるよ」
 そこここで子供たちが告げ、大人たちは首を傾げる。
 子供たちが一斉に指差した先を見つめて、不思議そうに、もしくは幽霊でも見るような表情を浮かべる大人たち。
 そんな中。
「も、いやあんっ!」
 お賽銭箱の周りをうろうろし、投げ込まれるお金を避けながらどうにかウェルを助けようとしていたテクスがキレた。
 途端、神社脇に植えられていた木が冬の様相から変化する。蕾が膨らみ、花が咲き。
 人々の視線は一斉に、突如起こった不思議な現象へと注がれた。

妖精さんいらっしゃい♪〜ハロウィンVer

 その日はとある小さな公園で、ハロウィンのお祭りが行われる日だった。
 お祭り好きなみあおはもちろん参加する気満々で、その公園にやってきた。
 一番上の姉から借りた可愛らしい蝶々羽根な妖精の衣装を身にまとい、二番目の姉からもらったおこづかいを財布に持って。
 みあおはご機嫌に公園内を巡っていた。
 かぼちゃ型のランプが夜を照らし、公園をぐるりと囲む形で建てられているいくつもの屋台。
 町内の小さなお祭りだから仕方ないのかもしれないが、夏祭りと勘違いしているのではないかと思える様相だ。
 だが遊びに来ている人たちはハロウィンらしく、様々な仮装をして楽しく騒いでいる。
 主に仮装をしているのは子供たちだが、あまり凝ってはいないけれど仮装をしている大人もいた。
 皆楽しそうで、見ているだけでもウキウキしてくる。
「さーて、何から行こうかな〜」
 おこづかいはたっぷり貰ったからお金の心配はないし、衣装は汚れても良いとの許可もあるので、何も心配することなく思いきり遊べる。
 そんな時だった。
 透明で薄い綺麗な四枚羽を持ったそっくり同じ姿を持つ二人が目に留まったのは。
 見覚えのある小さな妖精コンビに、みあおはぱっと目を輝かせた。
 なにやら悪戯をしているらしいが多分構って欲しいだけだろう。
「妖精さーん、一緒に遊ぼっ♪」
 みあおは、ぱたぱたと手を振って妖精コンビに声をかけた。


 最終的に妖精の元に集ったのは五人。
 蝶々羽根の妖精の仮装をした海原みあお。学校帰りの鬼頭郡司。同じく学校帰りだが、何故か滑稽な人形を抱えている巽千霞。高級そうな菓子折りを持った真名神慶悟。妖精に飛びつかれて断ることのできなかった佐和トオル。
 五人はハロウィンパーティの会場となっている公園の隅っこに陣取って、今後の行動に話を弾ませていた。
「まずは屋台制覇だよねっ」
「せいは、せいは〜っ♪」
「おおっ、屋台全制覇! すげぇな」
 ワクワクとしたみあおの提案に妖精たちは浮かれてくるくる飛びまわり、慶悟が浮かれた声をあげた。
 千霞がどこか不思議そうな顔でみあおを見つめた。どこからどう見ても小学生のみあお。屋台の数は三十弱、一般的小学生のお小遣いでは回りきるのはちょっと無理がある。
「あの、大丈夫なんですか?」
 千霞の問いに、みあおはぱたぱたと手を振ってにぱりと無邪気な笑みを浮かべた。
「大丈夫っ。お腹は丈夫だからっ!」
「いえ、そうではなくて・・・・」
「多少なら俺が出そう」
 千霞の問いの意味に気付いた慶悟が、苦笑しつつも口を開いた。
「ハロウィンだしね。子供のお菓子代くらいなら俺も出すよ」
 慶悟に同意して告げたトオルの言葉に、郡司が首を傾げた。
「はろうぃん?」
「あれ? 知らないの」
 みあおが意外そうな顔をする。
「知らずに来てたのか、キミは」
 小さな笑みを浮かべたトオルが説明するより先に、滑稽な――けれどどこか愛嬌のある人形が喋りだした。
「仮装して、『お菓子をくれなきゃ悪戯しちゃうぞ』って練り歩くお祭りだよ」
 いや、正確には喋っているのは千霞で、腹話術を使っている。
「うわあ、すごーい」
「お人形さんが喋るの〜」
「の〜〜っ♪」
 その技術に素直に感嘆するみあおと妖精コンビとは別に、郡司がまったく別の部分で感嘆の声をあげた。
「仮装して『食いモンくんなきゃ暴れんぞッ』って脅す? うわ、すげぇナイスな祭りじゃん!」
 途端、郡司はばっと学制服を脱ぎ捨てると、虎皮の褌一丁に肩から頭月の虎皮を掛けた服装に着替えた――どこにしまっていたのかは謎だ。そして、普段は隠している角もしっかり出して。
「堂々と驚かせて遊べるなんてそうそうねぇじゃん♪」
 思いっきりやる気満々にバッと立ちあがる。
「いよーし。ウェル、テクス。余計な悪戯はダメだぜ? 食いモン貰えなくなっちまうからな」
「はーいっ」
「はいなのぉ♪」
 びしりと良い子のお返事とともに片手を上げた妖精コンビに、みあおも続いて立ちあがる。
「じゃ、みんなで屋台制覇にごーっ!」


 屋台は、よくある綿菓子やくじ引きからハロウィン仕様のグッズやかぼちゃのランプの店まで、実に様々だった。
 そしてみあおは本当に、その全ての屋台に顔を出しては必ずと言ってよいほど何かを購入していた。
 面白そうな物を見つけるたびに飛びこんで行こうとする妖精コンビを制するのは慶悟とトオル。残念ながら普通の人間には妖精の姿が見えないため、下手に飛びこませると騒ぎになってしまうからだ。
 その代わり、二人は――主にトオルが――あとで思う存分遊ばせてやろうとハロウィングッズをちょこちょこ購入していたが。
 千霞は、飛びこんで行こうとしては止められてむくれている妖精コンビを楽しげな様子で眺めている。
 郡司はと言えば、ある意味一番正しくハロウィンを楽しんでいるかもしれない。屋台で立ち止まるたびに、教えてもらった『トリック・オア・トリート』の台詞を言っては、向こうもそれ用に用意していたらしい、ささやかなお菓子――飴玉一個とかチロルチョコ一個だとか――を貰っていた。
 賑やかに騒ぎつつ一周した頃には、すっかり人が減っていた。
 住宅地の真中で、参加者の大半は幼い子供とその保護者だったためだろう。屋台もそろそろ片付けの準備を始めている。
「うわあ、結構ゆっくりしちゃったねえ」
 公園の隅のベンチに陣取った一行。
 みあおは片付けの様子を眺めつつ、両手に一杯の戦利品を抱えて言った。
「いーや、こっからが本番だ! ハロウィンってのは本当は人の家を訪ねて周るんだろ?」
「でも日本ではあんまりそういうことはしませんし・・・」
 まだまだやる気の郡司に、千霞が困ったような顔をする。隣近所の付き合いが少ない東京では、知らない家のチャイムを押して『トリック・オア・トリート』だなんて普通はやらない。
「えー? つまんねぇなあ」
「まあそう言うな」
「つまんなーいっ」
「まだたりないのーーっ!」
 慶悟の制止も虚しく、妖精コンビはぷくっと頬を膨らませてブーイング。郡司もそこに加わり、三人揃ってのブーイング合唱が始まった。
「まだ満足しないなら、俺たちだけで続きをするのもいいんじゃない?」
 人の減った今ならば多少妖精たちに好きにやってもらっても騒ぎにはならないだろう。
 トオルは苦笑して、さっき屋台で買っておいたお菓子やプレゼント類の袋を見せた。
 多分こうなるんじゃないかと思ったのだ。特に妖精たちが、屋台巡り――小さい公園だから、ゆっくりまわっても二時間とかからない――だけでは満足しないだろうと。
「それじゃ、こんなのはどうでしょう?」
 千霞が、さっき屋台のくじ引きで当てたドールハウスの小物を出した。
「うわあ、可愛い〜v」
「妖精さんの食器にぴったりだと思うんです」
 突発屋外パーティ――しかも食べ物は屋台で買った物ばかり――に食器はあまり使わないような気もするが、せっかくだ。
 妖精さん用にドールハウスのコップにジュースを淹れると、妖精コンビは満面の笑みでそれを受け取った。
「ねね。パーティって何するの?」
 みあおの脳裏に浮かんだのは、いつか映画で見たハロウィンパーティ。仮装した少年少女のダンスパーティだ。・・・ここでそれが実行されると本気で思っていたわけではないが。
「そうだな・・・・。妖精というのは悪戯もするが、踊るのも得意なんだろう?」
 慶悟の提案に、みあおはぱあっと瞳を輝かせた。
 妖精コンビは最初はきょとんとした顔で慶悟を見つめ返し、それからにっこりと無邪気に笑った。
「もっちろん」
「踊るのは好きなの〜っ」
 言うが早いかコップのジュースを一気飲みして、ぱっと月明かりの下に飛び出して行く。
 さわさわと夜の風に木の葉が揺れる。
 妖精コンビは、可愛らしくも美しい宙空の舞いを披露して見せる。
「みあおも! みあおも踊るっ♪」
 ぱたぱたと可愛らしい仮装の妖精が加わり、
「では、せっかくですから私も入りましょう」
 穏やかに笑った千霞の控えめなダンスが加わった。
「ふむ・・・。こういうのは賑やかなほうが楽しいだろう」
 呟いた慶悟が、数体の式神を呼び出した。【替形法】でふわふわんっとウェーブのかかった薄紅の髪と深緑の瞳、薄く透明な四枚羽を背に抱く――妖精コンビと同じ姿に変化させた。
 トオルが用意したハロウィングッズの中に魔女の帽子を見つけた慶悟は、ひょいとそれを無造作に被り、
「衣装の準備は魔女の仕事だったな」
 ニッと笑って呟くと、次々と式神たちの服装を変化させた。式神の妖精たちは魔女やかぼちゃ頭、シンデレラなどの可愛らしい仮装の衣装に身を包み、踊りの輪に加わって行く。
「あーっ、ずるいのーーっ」
「ワタシも欲しいのっ!」
「お人形さんの洋服なら着れるかな?」
 みあおの意見は正しい。だが生憎とここに人形の洋服はなかった。
「よーし、なら用意しようぜ」
 ひょいと妖精コンビを手招きで寄せた郡司はそろそろ片付けも終わろうかという屋台の方へと駆けて行った。
 そして数分後――
「きゃーっ、可愛いの〜」
「ありがとうなの〜っ♪」
「まさか、強奪してきたりしてないよな?」
 絶対にないとは言い切れない――むしろあり得そうだからちょっと恐い。
 慶悟の問いに、郡司はニヤリと不敵に笑った。
「ハロウィンなんだろ? ちゃーんとハロウィンらしくしてきたぜ!」
 屋台の商品だった人形を指差して、『トリック・オア・トリート』の台詞を告げたら貰えたと言うのだ。
 最後だったから、お店の人もオマケでくれたのだろう。
「じゃあ、ダンスパーティ再開だねっ♪」
 郡司も加わり――郡司の場合ダンスというよりは浮かれて跳ねているだけだが――月明かりの下のパーティが再開される。
 やはり、妖精というのは人を魅了する力を持つものなのだろうか?
 トオルはふとそんなことを考えた。
 散々振りまわされたと言うのに、楽しげに踊る妖精コンビを見ていると思わず微笑が浮かんでしまう。
「最後の締めはお約束の記念写真で行こうっ!」
 ひとしきり踊って満足したのか、みあおのその提案には妖精コンビも諸手を上げて賛成の意を示した。

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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整理番号 | PC名 | 性別 | 年齢 | 職業

0389|真名神慶悟|男|20|陰陽師
1415|海原みあお|女|13|小学生
1838|鬼頭郡司 |男|15|高校生・雷鬼
1781|佐和トオル|男|28|ホスト
2086|巽千霞  |女|21|大学生

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■         ライター通信          ■
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こんにちは、日向 葵です。
慶悟さん、みあおさん、郡司さん、トオルさん。いつもお世話になっております。
千霞さん、初めまして。
この度は妖精さんのハロウィンパーティにお付き合いいただきどうもありがとうございました。

>みあおさん
今回は可愛らしい仮装での参加どうもありがとうございます。
私は書きながら映像が頭に浮かぶタイプなので、みあおさんの衣装を想像してはその可愛さについついニヤけてしまう危ない人と化しつつ今回の小説を書いてました(笑)

>郡司さん
お見事!
プレイングを読んだ瞬間の感想はその一言に尽きます。いつも楽しませていただいておりますが、今回もまた楽しませていただきました♪
どうもありがとうございます〜。

>トオルさん
妖精さんにか、それとも女の子全般に優しいのか。振りまわされても怒りきれないトオルさんが素敵でした。
今後も妖精コンビが迷惑かけることもあるかもしれませんが、広い心で接してやってくださいませ(笑)

>慶悟さん
お菓子の差し入れ、どうもありがとうございました。きっと皆で美味しく食べた事でしょう。
今回は可愛らしい式神さんのダンス参加でパーティに彩りを沿えてくださり、書いているこちらも楽しかったです♪

>千霞さん
はじめまして、ご参加ありがとうございました。イメージと違う点などありましたら、遠慮なくテラコンから言ってくださいませ。
用意している暇を作れなかったので屋台で当てたということにしてしまいました・・・・。
前もって出現地点がわかっている子たちじゃないので(笑)どうしても前準備がしずらく・・・・(汗)


それでは、今回はこの辺で。
機会がありましたら、その時はまたよろしくおねがいします。