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■駅前マンション〜それぞれの日常■

日向葵
【0389】【真名神・慶悟】【陰陽師】
 二十階建て各階五戸、屋上完備の4LDK。しかも新築で駅から徒歩五分程度。それなのに家賃はばかに安い。
 今は現役を引退した老退魔師が大家と管理人を兼ねるこのマンションは、異様なまでに怪奇現象が多い。
 土地柄のせいもあるのだが、人間世界に慣れない妖怪や人外の存在を次々と受け入れているためである。
 しかしそれだけに、このマンションは騒ぎも多い。
 謎の怪奇現象や人間世界の常識を知らない住民が起こす事件や、かつては凄腕の退魔師だった大家を頼ってくる人外などなど。
 けれどまあ。
 いつも大騒ぎというわけでもなく。
 平和な毎日と、時折起こる事件と。

 そんな感じに、駅前マンションの日常は過ぎて行くのだ。

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◆ライターより◆
・駅前マンションを舞台としたフリーシナリオ。完全個別ということで+500円しております。
 別PCと一緒に描写してほしい場合は同時期に発注のうえ、プレイングにその旨明記をお願いします。

・怪奇事件との遭遇や日常生活風景的などなど。貴方の日常生活を好きに発注してくださいませ。今までの駅前マンションシナリオや日向 葵が担当したシナリオに関わるシチュエーションもOK。

・日向葵の他NPC、公式NPCなども登場可能。

下記以外のNPCに関しては、東京怪談個別部屋を参照願います。
http://omc.terranetz.jp/creators_room/room_view.cgi?ROOMID=397
駅前マンションの怪

●類か友か

 それを感じたのは、ただの偶然だった。
 もうそろそろ日も落ちようかという夕暮れの刻。
 真名神慶悟は、仕事先から家に向かうべく歩いているところだった。
 ふいに、見上げる。
「・・・・なんだ?」
 感じる――殺気。
 隠そうともしていない、それ。
 害意を持つ魔物かなにかだろうか?
 それは、少し離れた場所にあるマンションに向かっていた。
 遠目からでもわかる、背の高い建物。
 そのマンションに、慶悟は覚えがあった。
 実際に行った事はないが、草間興信所の依頼なんかで一緒になる者の中に、あそこによく出入りしてるとか、あそこに住んでるとかいう者が居たためだ。
「類は友を呼ぶ・・・とは、まさにこの事だな」
 話を聞く限りでは、あそこには慶悟の同業者や、人に友好的な人外の者なんかも住んでいるらしい。
 つまりだ。
 わざわざ慶悟が行かずとも、誰かがなんとかする可能性は高いというわけだ。
 だが。
「金にはならないかもしれないが・・・・・・知っていて見ぬ振りをするというのも陰陽師の沽券に関わるか」
 誰かに期待するだけで何もしないというのは、慶悟の流儀ではない。
 かといって特に慌てるわけでもなく。
 慶悟は、マンションへと向かって歩き出した。


●偶然の合流

「真名神様!?」
 道の真中でいきなり声をかけられて、慶悟は思わず足を止めた。
 振り返ればそこにいたのは何度か仕事で一緒になったこともある、見知った女性。
 大和撫子という言葉がぴったりと似合うその和服美人の名は、天薙撫子。
「ああ、あんたか。もしかしてあんたも気付いたのか?」
 いまもマンションの方からひしひしと放たれ続けている殺気にチラリと意識を向けつつ、慶悟は呑気な声で言った。
「気付いているのなら――」
 焦ったように口を開いた撫子の言葉半ばで、慶悟はそれを制止した。
「まあ、そうかもしれないが。焦りすぎても良いことは何もないぞ」
「そうかもしれませんけど、被害が出る前に何か手を打たなければ」
 撫子の言葉も正論だ。
 だが、殺気を放っているとはいえ、それがイコール敵であると確定したわけではない。
 あれだけあからさまに殺気を放っているのだ。よほど自分に自信があるか、頭の回らない獣か、もしくは何らかの事情で気が立っているだけか。
 とにかく行ってみなければわからない。
 そしてもしも戦う必要がある敵ならば・・・・・・。
 ここからマンションまでは少し距離がある。そして運悪くエレベーターがなかなか降りてこなかった場合、二十階建ての階段を徒歩で行くことになるのだ。ここで体力を消耗しすぎては後で困ることになるのだ。
「だがあそこの住人の大半は術者と人外の者だろう? まあ、だからといって放っておけるわけではないが」
 そう。
 だから、そんなに大きな被害は出ないのではないかと思うのだ。
 再び歩き出した慶悟に、撫子もすぐに歩き出す。
 偶然にも合流した二人は、ともにマンションの大家の元へと向かった。


●呑気な大家

 大家の部屋は、マンション一階の一番入口に近い部屋。
 中に招き入れられた慶悟はとりあえず挨拶しようとしたがその前に、撫子が挨拶もそこそこに老人に問う。
「あの、今日、なにかおかしなことはありませんでしたか?」
 真剣な表情の撫子と慶悟に、大家の老人はカラカラと楽しげに笑った。
「なーんも、ないよ。いつものコトならあったがな」
 お爺さんは座布団を勧めてくれ、テーブルの上に置かれていた煎餅の皿――ちょうど食べていたところに二人が訪ねて来たらしい――を、スイと二人の前に押し出してくれた。
「いつものコトって・・・殺気を撒き散らしてるあの気配か?」
 慶悟の問いに、老人はうむ、と鷹揚に頷いた。
「そんな、のんびりしている場合ではないのではないですか?」
「ふむ。ま、誰かがなんとかするから大丈夫だろう。私のような引退したモンがわざわざ出ていくまでもない」
「まあ、間違っちゃいないが・・・・・」
 確かに間違った論理ではないと思うが、だがやっぱり少し納得がいかなかった。
 慶悟の声は自然と呆れ気味になる。
「では、わかる限りで構いませんから、状況を教えていただけませんか?」
 気を取りなおしたらしい撫子が問いかけたが、
 だが。
「さあなあ。羽音は聞こえてきたが、特に確認に行ったわけでもなし」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
 あまりにも呑気なその答えに撫子は言葉が出なかったのか、沈黙で返した。
「な、なら。ちょっと頼みがあるんだが」
 削がれかけた気力に活を入れ、苦笑しつつも慶悟は数体の式神を呼出した。
「様子を見るのにこいつを使いたいんだが」
「やめといた方がいい。術者はともかく、妖怪連中は面白がってからかいにくるぞ」
「だから、印をつけてくれないか? あんたの関係者だってわかるように」
 予想済みだった言葉に慶悟はすぐさま答えを返し、老人は快く頷いてくれた。
「じゃあ、行くか」
 印つきの式神を連れて少し賑やかに、二人プラスαの一行は殺気の主の元、屋上へと出かけた。


●獣

 屋上へ出る扉は、開け放たれていた。そして、数人の声。
 その中に聞き覚えのある声を見つけて、慶悟は走るスピードを上げた。
「シュライン様!?」
 同じく気付いた撫子は、ぱっと声をあげて扉の向こうを見る。
 そこには、シュラインのほかに二人――男が一人と、女性が一人。どちらも慶悟と撫子には見覚えのない人物だった。
「あら、二人とも。奇遇ね」
「あんたらもこれ、確かめに来たのか」
 シュラインに続いて、男が軽い口調で言う。
「え、ええ」
 微妙に緊張感のない受け答えに、撫子は返す言葉に戸惑いを見せた。
「あ、俺は真柴尚道」
「レベル・ゴルゼルデです」
「俺は真名神慶悟だ」
「天薙撫子といいます」
 さっと名乗りあって、それから、慶悟と撫子は改めて獣の方へと目を向けた。
 黒い毛並みで、全長は二メートルほど。背には黒い翼があった。
 獣は、どうやら怪我をしているらしい。屋上の床には赤黒い血のあとがぽつりぽつりと落ちている。
「でもちょうど良いところに来てくれたわ」
「ちょうど良いところ・・・ですか?」
 シュラインの言葉に、撫子が不思議そうな顔をした。慶悟は変わらず獣の方への警戒を怠らない。
「あの子・・・怪我をしてここに不時着したみたいなんです」
 レベルが、ゆっくりと静かに告げた。
「なんとか治療なりしてやりたいんだけどさ、近づかせてくれねえんだよ」
 まあ、手負いの獣とはそういうものだ。
「言葉は通じないのか?」
 慶悟の問いを聞いて、尚道とシュラインが首を横に振った。
「知能は普通の獣と大差ないみたいで」
 そう答えたのはレベル。
「ならば、少し強引だが無理やり動きを封じるか?」
「でもそれでは、下手をすると暴れ出すのではないでしょうか・・・?」
 その時だった。
 ふいに、レベルが何かに気付いた。
「どうした?」
 じっと俯いて――自分の服のポケットを見ている。
 途端。
 なんの気負いもなく。
 レベルはすたすたと獣に向かって歩き出した。
 止める暇は、なかった。
 慶悟は慌てて符を手にし、撫子は妖斬鋼糸を手にして、尚道も戦闘態勢を整えた。
「待って・・・」
 獣の呼吸音の変化を鋭い聴覚で聞き分けたシュラインが、三人に制止をかけた。
 暴れ出す様子はない。
 三人は、戦闘態勢は崩さないまま、静かにレベルの動向を見守る。
「これ・・・食べます?」
 レベルがそっとお菓子を差し出すと・・・・何を思ったのか、獣は急に大人しくなって、差し出されたお菓子を食べ始めた。


●そして、終わりに

 一行の現在地。
 マンション一階、入口に一番近い一一〇号室。
 このマンションの大家の部屋である。
「おお、お疲れさん」
 何時どこから情報を仕入れたのか、大家である老人は五人を快く家に迎え入れた。
「まあ、私にはこれくらいしかできないが、お礼だ。ゆっくりしていきなさい」
 お煎餅とお茶を出して、老人は五人をもてなしてくれた。
 もともと別口の用事で出てきていたレベルは早々に帰っていってしまったが・・・・・・残る四人は、老人の淹れたお茶と、撫子が持参してきた栗蒸し羊羹で、楽しいお茶の時間を過ごしたのであった。


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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整理番号|PC名|性別|年齢|職業

0328|天薙撫子     |女|18|大学生(巫女)
0389|真名神慶悟    |男|20|陰陽師
1823|レベル・ゴルデルゼ|女| 5|家事手伝い、錬金術師の弟子
0086|シュライン・エマ |女|26|翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員
2158|真柴尚道     |男|21|フリーター

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■         ライター通信          ■
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 こんにちわ、日向 葵です。
 撫子さん、慶悟さん、シュラインさん。いつもお世話になっております。
 レベルさん、尚道さん。初めまして。
 この度はやってきた魔物の調査、お疲れ様でした。

>撫子さん
 素敵な設定をどうもありがとうございました♪
 序盤の蔵整理のシーンは書いていてとても楽しかったです。(実は頑固老人系書くの大好き・・・v)

>慶悟さん
 今回は符を使う暇もなく・・・。もともと羽音が屋上から響いてる事もあって、一直線に屋上を目指してしまいました。
 せっかくつけてもらった印の活躍シーンがあんまり書けなくてすみません。
 次回までにもっと精進していたいと思います。

>レベルさん
 動物に懐く方ということで、獣の宥め役に回っていただきました。
 ヴィエちゃんのお菓子ならきっと美味しいお菓子だったろうと思います(笑)

>尚道さん
 マンション住人さんのご参加、ありがとうございました。
 なにかマンションに怪しい設定が増え、ますます楽しいことになりそうです♪

>シュラインさん
 お見事、大正解でした。
 悪意=敵とは限らないという発想の方がいらっしゃったおかげで平和的にコトを進められました。
 どうもありがとうございました〜。


 それでは、今回はこの辺で。
 またお会いする機会がありましたら、よろしくお願いいたします。