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■桜花苑奇譚【月下】氷結の夜■

天瀬たつき
【1252】【海原・みなも】【女学生】
冬の気配が漂い始めたある夜のこと。
桜花苑の店主、篠原藤也はある工事現場の一角に佇んでいた。
「これは、思ったより厄介だな……」
彼が見る先には一枚の銅鏡。かなり古いものらしく、あちこちが欠け、かなり酷い状態だ。
そして何より、彼にそう言わしめたのは、彼の目にだけ映るもの。
鏡の周りに漂う白い霧。その霧が触れる地面は白く変色している。霜が降りているのだ。

そもそもことの発端は、ここの工事を請け負った業者の現場監督からの依頼だ。
工事をしていると鏡が出てきたのだが、掘り起こそうとした作業者が何人も触れた途端に意識を失い、そのまま昏睡状態なのだという。
信心深かったこの監督はこの鏡に何かあるのだと思い、縁のあった桜花神社にお祓いを依頼してきたのだ。
「まずは、再封印して、それからだな……」
藤也は一枚の符を取り出し、念を込める。そして、鏡に放とうとしたその時だった。

一挙に空気を吐き出すような音。脆くなっていた鏡にひびが入り、そこからさらに真っ白な空気が噴出す。
どんどん噴出す空気に押され、ヒビは広げられ……
「!」
藤也がとっさに身を庇う。と同時に鏡はパキリ、といくつかの破片に割れる。
そして、噴出した白い空気はまるで生きているかのように藤也に襲い掛かった。

その次の日、桜花苑。
入口には「臨時休業」の看板がかかっている。
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こんにちは、もしくははじめまして、天瀬たつきです。
今回は少し、真面目なお話です。
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