■あやかし荘のクリスマス 2003■
滝照直樹 |
【1108】【本郷・源】【オーナー 小学生 獣人】 |
因幡恵美は、近頃良く顔を出す織田義昭と道であった。
「こんにちは稲葉さん」
「こんにちは、近頃どうですか?」
と、挨拶と他愛のない会話。
街はクリスマスセールで賑やかである。
「クリスマスですね〜」
と、義昭は何気なく言う。
「そうですね。あ、そうそう、いつもあやかし荘はクリスマスパーティしているのですよ。よろしかったら参加しませんか?」
「え?俺がですか?」
いきなり誘われたものだから義昭はビックリする。
「あ、ごめんなさい、その日は茜さんと…」
と、恵美は謝るが…
「…茜だけとって?と、とんでも無い!ブハッ」
義昭は予定はないと否定するも、後ろからハリセンの音。
「何がとんでも無いって?」
ハリセン娘、長谷茜登場。義昭の後頭部をハリセンがクリーンヒット。
「あ、茜さんこんにちは」
「こんにちは、いつもこの天然とエルハンドがお世話になってます」
朦朧状態の幼なじみを猫掴みして茜は挨拶する。
歳が近い女の子は、色々と会話が弾み…、
「クリスマスパーティを皆でするのですけど、参加しませんか?」
と恵美は誘うのだ。
「じゃ、色々な人と楽しめるんだ♪」
茜は喜んだ。朦朧状態の義昭も聞いていたようで、
「皆で楽しむ事には依存はないです…」
一方、長谷神社には珍しく三下忠こと三下忠雄が何か熱心に願っていた。
「何をしているのだ?三下」
エルハンドが大きな白い袋を持っていつも明日がない男に訊く。
「あ、あの、今度こそ、男らしさクリスマスパーティの時、管理人さんに格好いいところ見せたいなと…」
「はぁ…クリスマスというのは別宗教の祝い事。日本ではその神聖なる儀式を商業目的で利用しているだけであるが…。それでも、此処で当日の事を祈るのはお門違いだぞ?大晦日だと思うのだがね。あと、その若返り現象を何とかしたいと願うのが普通ではないか?」
「…しかし…」
「しかしも案山子もあるか。既に嬉璃から、クリスマスのパーティの準備を進めろとお前に伝言を頼まれたんだ。友人や世話になってる人を誘うのも良いだろう。しっかりするんだな」
と、大きな袋を三下に渡す。
「うう、はいぃ…うわぁっ!」
受け取ったモノの、白い袋はかなり重たいのか三下は其れに下敷きになった。
エルハンドはため息をついて、片手で袋を持ち上げる。三下は…へしゃげていた。
「運命とは言え、此処まで哀れとはな…」
エルハンドはため息をついたのだった。
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あやかし荘のクリスマス 2003
【おでん屋台蛸忠】
蓮の間。
そこには眠っている義昭を微笑みながら、チビチビ酒を飲んでいるエルハンド。
「剣客や、近くに美味しいおでん屋台があるのぢゃ。行って見ぬか?」
珍しくエルハンドを呼ぶ嬉璃。
「何か面白そうな事でもあるのかな?」
「美味いおでんと、酒が飲める」
「ほほう」
エルハンドはニコリと笑う。
「では行くか」
2人してにこやかにあやかし荘を出かけた。
夜には、嬉璃が言っている様に、あやかし荘の近くに屋台があった。
「なかなか趣があってよろしいな」
と剣客の一言。
「ぢゃろ?」
と、軽い足取りで屋台の席に座った。
「やぁ、源。またきたのぢゃ」
「嬉璃殿!来てくれたのか嬉しいのじゃ」
嬉璃の登場で嬉しそうに答える、本郷源。背丈など全く同じだ。座敷童子が2人居る感じにみえる。
「今度は連れも居るがいいかのう?」
「かわうそ?殿かの?」
「ナマモノではないのぢゃ」
既に常連の態度を見せる嬉璃の後ろから、ゆっくり現れる剣客。
「かといって旧支配者のでもない。私はエルハンドと言うものだ」
と、彼が挨拶をする。
「何か凄い力を持っている御方のようじゃ」
源も「異世界の神」の気配を感じ取り驚いたようだ。
「気にする事はない。とって食うような野蛮な神ではないのぢゃ」
嬉璃があれこれ源に剣客のことを説明するが、ついでに酒もおでんも注文していく。
酒の酔いも心地よく回ってきたため、和気藹々と会話が進む。源もエルハンドの存在を警戒することはなくなった。
「そうぢゃ、明日、くりすますぱーてぃーをするのぢゃが来ないかの?」
「くりすます‥。しっておるぞ、しっておる。栗栖マスさん(推定87歳)の誕生を祝う日本の伝統的行事じゃな。この日は仏壇を紅白に飾って鯛のお頭つきと羊羹でお祝いをするのじゃな。お歳暮の交換も楽しみじゃな。」
「そうぢゃ、そうぢゃ」
2人してなにやら謎めいた会話が続く。
其れを、微笑ましく見ている剣客だった。
宴も終わったときエルハンドが、
「大根が美味かったぞ。それになかなか手に入らない、美味い地酒や、各地の隠し酒も仕入れているとは。なかなかやるな」
「神に喜んでもらえるとは良かったのじゃ」
源はにっこり笑った。
そして、源と嬉璃2人祭り当日に参加することを約束し帰っていった。
【パーティ開催】
あやかし荘に参加者が集まってくる。
「メリークリスマス!」
「メリークリスマス!」
和洋入り交じった料理と、様々な酒とジュース。そしてはしゃぐ子供達。希望者が集まった、プレゼント交換等々で全て、白い袋に入れられた。エルハンドと義昭、忠はサンタの衣装になっており…。
「何故、長谷神社にサンタの衣装があるのか教えてくれ」
「わかんないわよー。其れはもう亡くなったおじいちゃんに聞いてよ〜。あるだけ良かったじゃない」
と、エルハンドの問いに苦笑するミニスカサンタの格好をした茜が言い返した。
みあおは沢山ジュースとお菓子などを持ってきて、三下を見つけると
「よかった〜。生きてる!」
「生きてるって何ですか〜!」
妙な会話から始まった。
「あ、そうそう。いっつも不幸な三下にクリスマスプレゼントだよ!」
「いっつもはよけいだよ〜」
「なかないの!はい」
不幸を強調して、サファイアのネクタイピンを渡した。
「あ、ありがとう〜みあおちゃん」
「なくしちゃだめだからね♪」
嬉しさのあまり、感涙する忠。喜びようがみあおには嬉しかった。
亜真知は神としての正装でやってきて、草間零と五月、頭乗り猫焔の興信所の方々とアトラスの碇を連れてきている。しかし、彼女の背後に「何か」居るような気がするは気のせいだろうか?
しかも怪しい箱を持っている。
「なんぢゃそれは」
「楽しいゲームなの。嬉璃ちゃん」
「ほほう…」
2人は、ニコリと笑う。
汐耶が急いで、やってくる。
「こんばんは、メリークリスマス」
「メリークリスマス」
にこやかに皆に挨拶して恵達と少し世間話をする。前もってお酒などの手配をしてくれたのは汐耶だった。
背後に田中裕介が居るとわかると、すこし顔を強ばらせ…彼をすこし避けてエルハンドの方に向かった。
苦笑するしかない裕介。彼は例のトランクが4〜5個あるのだ。
「やはりあの件で、嫌われたのでしょうか…」
「なにが?」
「わぁ、茜さんいきなり背後に現れないで下さい!」
後ろをとったのは茜。ビックリする裕介。
一仕事(?)終えた義昭が顔を出し、
「また、着せ替え魔+カツ丼にならなきゃ良いよね」
「そのカツ丼は止めて下さい」
彼の言葉に項垂れる裕介だった。
それを慰めるのは、茜ではなく…。
「大丈夫何とかなる」
かわうそ?だった。
「あなたに言われても何か嬉しくないんですけど…」
「失敬ニャー」
ナマモノはその場でくねりくねりと奇妙なダンスを踊り始めた。
「面白そう!」
一緒に踊り始めるみつきもいたので、裕介の心は更に重くなった。
ゆゆは、エルハンドと込み入った話をしているようで、ゆゆは、一度蓮の間に向かったようだ。
汐耶がエルハンドに会釈する。
剣客も其れに習い会釈した。
「何かお話ししていたようですが?」
「ん、まあ彼女の相談を乗っていっただけだよ。今宵は良きクリスマスになると願いたい」
「そうですね」
汐耶はエルハンドの言葉に頷く。
撫子と蓮也、茜、恵美が、最後のケーキを運び終えたのち、皆にシャンパンの栓を飛ばす準備やジュースやお酒をグラスに注いでいく。嬉璃が、酒の入ったグラスをとって。
「メリークリスマス乾杯ぢゃ!」
と一声の元、クラッカーが鳴り響きパーティは始まった。
料理では、撫子の和料理と、蓮也のブリ大根も人気があり、あっという間になくなる。茜と恵美の料理も更に進歩している。蓮也はまだ残っている事を思い出し、ブリ大根を持ってきた。
遮那は、恵美との別行動ばかりとることにしているのだが、恵美が気になっている。なので占いを頼まれても、気になり、丁寧に謝って占いは止めた。
汐耶とエルハンドは、食堂の隅の方でゆっくりしている。
みつきやナマモノは、そこら中をかけずり回って楽しんでいた。
【神出鬼没の源、飲んべえのみつき】
おでんの残りとたくさんの酒瓶をもって、源が現れた。
「お、源」
「遅くなって済まないのじゃ、しかしおでんとお酒を持ってきたのじゃ!」
和気藹々と会話する同じ背格好の子供。
「本日は無礼講なのじゃ!飲めや歌えなのじゃ!」
といって、子供であろうが誰であろうが、構わず酒を注いでいく。
既に別のところで知り合いになったみつきは出来上がっていた。
「うぃ〜あはははは」
パタパタとウサギ耳を揺らしながら、源の持ってきたお酒を飲み続けるみつき。
良い飲みっぷりなので、嬉璃も気分がよい。
恵美が
「コラ、みつきちゃん。ダメじゃないそんなに呑んで」
「えーじゃーこれでどうかな?」
とみつきが瞬く間に大人の美女になった。しかし精神年齢は変わらないのがオチ。
「たしかお酒は20歳からだったよね〜ヒック」
とは言っても、物の怪に其れが適用されるのだろうか?
恵美の方は、みつきが大人に変身出来ることで固まっていた。柚葉の変身をよく見ていたのだが、やはり慣れないのだろう。
「ボクもまけない!」
柚葉はライバル心からか、大人の自分に変化して、お酒を飲む。
「あははは〜いくぞ〜」
とうとう、化けウサギ対妖狐の子供の変化+飲み対決に発展した。ギャラリーもそこそこ増える
かわうそ?がお酌している。
この勝負は、いつも呑んでいるらしいみつきの勝利になり、柚葉はノックダウンしていた。
またかわうそ?と「なにか」が担架を持ってきた。
「あははは、あたしのかちぃ」
みつきの笑い声がずっと続いた。
そしていつの間にか、源は居なかった。
「神出鬼没…」
かわうそ?が、ぼそりと呟いた。
【終幕】
「クリスマスプレゼント交換会をします」
と恵美のアナウンスで、参加者があつまり、袋を持ったサンタ姿のエルハンドに期待の目を向ける。
そして、参加者に中に入っているプレゼントを渡していった。しかしまだ開けてはならない。
皆が輪になってジングルベルに合わせて、回していくのだ。
ミニスカサンタメイド姿の歌姫(レアであるな)がジングルベルの英語版で歌い出す。順序よく回っていくプレゼント。
そして、歌が終わり、プレゼントの中を開けたときの皆の一喜一憂が楽しかった。
特に、義昭は満面の笑みだった(余談だが撫子のキスマークがいっぱい付いている)。
忠は、亜真知が用意していた手袋だった。
みあおは、皆に、青い羽根のしおりを配って、交換会はおわる。
みつきは
「もう食べられない、でも沢山プレゼント貰った〜」
と、寝言を言いながら眠っていた。
外では雪が降っている。
「ホワイトクリスマスだ!」
と、誰かが叫んで歓声が起こった。
こうして、あやかし荘のクリスマスパーティは終わりを告げた。
【蛸忠再び】
数日後の、蛸忠。
エルハンドと嬉璃がのれんをくぐる。
「源、今日の良いもの適当に見繕ってくれないかの?」
「まっていたのじゃ。今日は出汁も具も最高じゃよ。酒はどうする?」
「八海山をたのもうかのう」
「そうだな」
「わかったのじゃ」
と、おでん屋は年末に向けて忙しかった。
End
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■ 登場人物(この物語に登場した人物の一覧) ■
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【0328 天薙・撫子 18 女 大学生】
【0428 鈴代・ゆゆ 10 女 鈴蘭の精】
【0506 奉丈・遮那 17 男 高校生・占い師】
【1098 田中・祐介 18 男 高校生兼何でも屋】
【1108 本郷・源 6 女 オーナー 兼 小学生】
【1415 海原・みあお 13 女 小学生】
【1449 綾和泉・汐耶 23 女 司書】
【1593 榊船・亜真知 999 女 超高位次元知的生命体・・・神さま!?】
【2099 白兎・みつき 5 女 バケウサギ…って職業じゃない】
【2276 御影・蓮也 18 男 高校生 概念操者】
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■ ライター通信 ■
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滝照直樹です。
『あやかし荘のクリスマス 2003』に参加して頂きありがとうございます。
今回で、私はライター1周年を無事迎えることが出来ました。
これも、皆様の参加のおかげだと思っております。
いつも参加して下さる方々、又初参加の御影蓮也様ありがとうございます。
良きクリスマス、そして良い年でありますように(少し早いかな)
では機会が有ればお会い致しましょう。
滝照直樹拝
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