■宇宙公安バルザー! 「危機! 赤色電波包囲網の恐怖!」■
ALF |
【1855】【葉月・政人】【警視庁超常現象対策本部 対超常現象一課】 |
●『赤』
「バルザーは、地球人を殺した‥‥何の罪もない、ただの地球人をだ。これで、バルザーは犯罪者だ‥‥この地球上ではな!」
闇の中、将軍は興奮した口振りで話していた。
「くくく。もはや、我々がバルザーに狩られる時間は終わった。次は、バルザーが地球人に狩られる時間が来るのだ!」
「そう上手くいくものかな? バルザーは強いぞ?」
揶揄するような議長の声。水を差された将軍は、ムッとした様子で一瞬黙りこむが、すぐに皮肉げな声を返した。
「議長‥‥私が引き続いて作戦進行の任を受けたのが、それほど気に入らないか?」
「ふん‥‥貴様と違い、俺は書記長より素晴らしい任務をもらっている。遠くない内に、この星は争いの無い平和な世界となるだろう」
「‥‥‥‥」
将軍と議長は、そのまま睨み合いを続けていた‥‥
●赤色電波の恐怖
「‥‥浄化装置は、あいつらが浴びるべきだな。『赤』の中で一番、書記長様の意志をわかってないんじゃないかと‥‥」
腹立たしげに言う、肌も露わな鎧をまとった美女‥‥将軍直下の部下リン・パラは、東京を見下ろす高層ビルの屋上に立っていた。
その傍らには街宣員達の他に、頭に室内アンテナ、顔はテレビモニタ、肩から電波塔を生やし、肘や膝にはパラボラアンテナをつけた奇っ怪なものがいる。
「ゆんやんゆんよん」
訳のわからない事をブツブツ呟くそれは、今回の作戦の為に連れてきたオルグ獣だった。
ただ、なかなかに気持ち悪いので、リンも少し距離を置いている。
「まあ良い。やれ、赤色電波オルグ。地球人に平和の素晴らしさを思い知らせてやるが良い!」
「発信ゆんゆん 発信ゆんゆん 発信ゆんゆん」
奇怪な身振り手振りを交えつつ、奇妙な呪文を唱える赤色電波オルグ。その体からは、目には見えない赤色の電波が放出されていた。
その日、放送されたテレビやラジオの番組は、全て赤一色に染まっていた。
戦隊ヒーローは戦うべき悪の組織と手を取り合い、戦争映画では敵味方が肩を組んで歌を歌う。競馬中継じゃ、騎手と馬が全員で手をつないで同時にゴールインする異常っぷりだ。
戦いや争いと名が付きそうなものは、フィクション、ノンフィクション問わずに消えた。
平和万歳。戦争反対。平和万歳。戦争反対。平和万歳。戦争反対。そんな内容。
そんな中で、バルザー叩きの番組だけが、非常に熱心に暴力的シーンを流す。
バルザーが『赤』の街宣員を殺すシーンが何度も流され、また予想再現と称して小学校乱入教師殺害事件の一部始終が大量の捏造を交えて放送される。まるで、バルザーが血も涙もない悪魔で、今も罪もない市民を殺そうとしているのだと思わせる放送‥‥
もちろん、各放送局は通常通りの番組を送っている。しかし、赤色電波に汚染されると内容はことごとく変化してしまうのだ。
もっとも、ほとんど改変の必要がない番組が幾つかあったのも現実だが。
ともかく‥‥恐怖の赤色放送は始まる。それは、誰も止める事の出来ないまま、日を越えても続けられていた。
●追われる者
バルザーは路地裏を歩いていた。
目的は、赤色電波を発信するビル‥‥だが、そのビルを家々の屋根の向こうにとらえたその時、バルザーは足を止める。
遠くから街宣車の流す声が聞こえた。
「この近辺に殺人犯が逃げ込んだとの通報がありました。皆さん、鍵を閉め、決して外には出ないようにしてください‥‥繰り返します」
『赤』ではない、警察の車だ。
警察‥‥そしてIO2は、バルザーをここに追い込んでいた。既に包囲は完了している。
それを可能としたのは、警察無線などに入り込んだ赤色電波。それが、バルザーの正確なデータや現在位置を教えてきたからだ。
狩り場となった東京の街‥‥獲物は宇宙公安バルザーであった。
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宇宙公安バルザー! 「危機! 赤色電波包囲網の恐怖!」
●『赤』
「バルザーは、地球人を殺した‥‥何の罪もない、ただの地球人をだ。これで、バルザーは犯罪者だ‥‥この地球上ではな!」
闇の中、将軍は興奮した口振りで話していた。
「くくく。もはや、我々がバルザーに狩られる時間は終わった。次は、バルザーが地球人に狩られる時間が来るのだ!」
「そう上手くいくものかな? バルザーは強いぞ?」
揶揄するような議長の声。水を差された将軍は、ムッとした様子で一瞬黙りこむが、すぐに皮肉げな声を返した。
「議長‥‥私が引き続いて作戦進行の任を受けたのが、それほど気に入らないか?」
「ふん‥‥貴様と違い、俺は書記長より素晴らしい任務をもらっている。遠くない内に、この星は争いの無い平和な世界となるだろう」
「‥‥‥‥」
将軍と議長は、そのまま睨み合いを続けていた‥‥
●赤色電波の恐怖
「‥‥浄化装置は、あいつらが浴びるべきだな。『赤』の中で一番、書記長様の意志をわかってないんじゃないかと‥‥」
腹立たしげに言う、肌も露わな鎧をまとった美女‥‥将軍直下の部下リン・パラは、東京を見下ろす高層ビルの屋上に立っていた。
その傍らには街宣員達の他に、頭に室内アンテナ、顔はテレビモニタ、肩から電波塔を生やし、肘や膝にはパラボラアンテナをつけた奇っ怪なものがいる。
「ゆんやんゆんよん」
訳のわからない事をブツブツ呟くそれは、今回の作戦の為に連れてきたオルグ獣だった。
ただ、なかなかに気持ち悪いので、リンも少し距離を置いている。
「まあ良い。やれ、赤色電波オルグ。地球人に平和の素晴らしさを思い知らせてやるが良い!」
「発信ゆんゆん 発信ゆんゆん 発信ゆんゆん」
奇怪な身振り手振りを交えつつ、奇妙な呪文を唱える赤色電波オルグ。その体からは、目には見えない赤色の電波が放出されていた。
その日、放送されたテレビやラジオの番組は、全て赤一色に染まっていた。
戦隊ヒーローは戦うべき悪の組織と手を取り合い、戦争映画では敵味方が肩を組んで歌を歌う。競馬中継じゃ、騎手と馬が全員で手をつないで同時にゴールインする異常っぷりだ。
戦いや争いと名が付きそうなものは、フィクション、ノンフィクション問わずに消えた。
平和万歳。戦争反対。平和万歳。戦争反対。平和万歳。戦争反対。そんな内容。
そんな中で、バルザー叩きの番組だけが、非常に熱心に暴力的シーンを流す。
バルザーが『赤』の街宣員を殺すシーンが何度も流され、また予想再現と称して小学校乱入教師殺害事件の一部始終が大量の捏造を交えて放送される。まるで、バルザーが血も涙もない悪魔で、今も罪もない市民を殺そうとしているのだと思わせる放送‥‥
もちろん、各放送局は通常通りの番組を送っている。しかし、赤色電波に汚染されると内容はことごとく変化してしまうのだ。
もっとも、ほとんど改変の必要がない番組が幾つかあったのも現実だが。
ともかく‥‥恐怖の赤色放送は始まる。それは、誰も止める事の出来ないまま、日を越えても続けられていた。
●追われる者
バルザーは路地裏を歩いていた。
目的は、赤色電波を発信するビル‥‥だが、そのビルを家々の屋根の向こうにとらえたその時、バルザーは足を止める。
遠くから街宣車の流す声が聞こえた。
「この近辺に殺人犯が逃げ込んだとの通報がありました。皆さん、鍵を閉め、決して外には出ないようにしてください‥‥繰り返します」
『赤』ではない、警察の車だ。
警察‥‥そしてIO2は、バルザーをここに追い込んでいた。既に包囲は完了している。
それを可能としたのは、警察無線などに入り込んだ赤色電波。それが、バルザーの正確なデータや現在位置を教えてきたからだ。
狩り場となった東京の街‥‥獲物は宇宙公安バルザーであった。
●習志野愛
面会謝絶。その一言が、習志野・愛の見舞いに来た銀野らせんを阻んだ。
「‥‥小さな物音でも泣き叫ぶんです。とてもじゃありませんが、人に会える状態じゃありません」
応対した看護婦はそう言って表情を暗くする。
他の全て‥‥両親をも含む全てを拒絶する今の彼女に、見舞いなど不可能だ。
「わかりました‥‥」
他にどうする事も出来ず、銀野は素直に病院を後にする。
だが、銀野は静かな決意の中に怒りを燃やしていた。
愛の心を傷つけた者達に復讐を。
その復讐の矛先は、あの日に学校へ来ていた‥‥そして、何故か何処のニュースからもその名が出る事のない、TI社に向けられていた。
一方‥‥愛の見舞いに来た者が、もう一人。
それは、先の戦いのおりにバルザーと戦った冠城琉人。
しかし、隣人の銀野はもちろん両親すら会えない状況にあって、何の縁もない冠城が見舞いなど行えるはずもない。
為す術もなく追い返されて、冠城は見舞い用の花束をゴミ箱に放り込んだ。その目尻に、思わず涙が浮かぶ。
発狂した愛‥‥冠城は、彼女を救うことが出来なかった事を悔やみ、涙していた。
何の考えもなく、ただ異形だからと言う理由で学校に入り込み、それと戦った。あの時、まかり間違えれば、自分がこの悲劇を生んでいたのだろう。
単に異形を倒すことが、人の幸せに直結しないということを自分の中で確認する。思い知ったと言って良い。
その認識は冠城の心を縛ろうとしていた。
●治療
狂気の中の習志野愛‥‥しかし、彼女に施されたのは治療ではなかった。
ベッドの周りを取り囲む医師達。彼らは、ベッドに拘束帯で縛り付けられた愛の頭に、顔の半ばまでを覆うヘルメットをかぶせる。
ヘルメットからはケーブルが伸び、ベッド脇に置かれた大きな機械につながっていた。
医師達はその機械のスイッチを押した。途端に、愛の体がベッドの上ではね、悲鳴が病室を満たす。
機械は、洗脳装置。行われているのは、記憶の書き込み‥‥言ってしまうのは簡単だが、それは強く記憶を焼き付ける作業。完全に定着させる為に、何度も‥‥何度も。
愛は狩野が殺される瞬間を何度も体験させられていた。
事実とは違う、「教師狩野を殺したバルザーの偽者とバルザーが戦っていた」という記憶。だからといって、狩野が目の前で死ぬという事実だけは変わらない。
夢の中であっても、それは現実と何も変わりがない。だが、現実なら抗う事が出来る。現実ならいつかは終わる。
止めようにも止まらない。逃げようにも逃げられない。繰り返し、繰り返し、目の前で殺される狩野の姿を見る。
それは、少女の繊細な心には耐えようもない苦痛だった。
血を吐く程に悲鳴を上げ‥‥血の涙を流す。
そんな愛の様子を、医者達は冷酷に見下ろしていた。誰も、愛を救おうとはしない。
だが、愛には最後の救いが来た‥‥心電図のモニターの中、異常な乱れを見せていた心拍を示す線が平坦になり、室内に甲高い音が響く。
「また、心停止だ」
医師達はすぐに蘇生作業を始めた。
●匿名掲示板
「これで良いですか?」
ちょっと小太りの男が、向き合っていたパソコンからイヴ・ソマリアへと視線を移す。
「ありがとう。パソコン、詳しいのね」
「いや、別にこんなもん、詳しくなくても出来ますよ」
男は照れた様子で答えた。
彼は、芸能人であるイヴのファン倶楽部に所属する男であり、パソコンに少々詳しいのでイヴから少し頼まれたのだ。
とは言え、それは男の力を借りずとも出来るようなことでは有ったのだが。
「でも、こんなスレ立ててどうするんです?」
「内緒〜」
くすくすと笑いながら、パソコンのモニターを覗き込むイヴ。そこには‥‥
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【赤色】毒電波発生源を見にいくOFF!【ゆんゆん】
1 :名無しさん@宇宙公安 :03/11/27 23:33 ID:n5RRL4H7
今、テレビやラジオで流されている、テレビ局の平和キャンペーン。
あちこちの板で関係者の漏らした話によりますと、放送局では普通の放送をしているとの事です。
この異変が始まってから、各板にスレが立ち、この放送について様々な議論が行われていました。
そしてついに、放送に対する電波ジャックが行われているらしき場所が突き止められました!
このOFFは、電波ジャックが行われている場所に行き、その真相を確かめるOFFです。
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それは、国内の巨大掲示板に作られたスレッドだった。
電波を介する通信手段は赤色電波で全滅なわけだが、電波を介さない通信媒体‥‥例えば、新聞、雑誌、有線放送、インターネットなどは元のまま。
それらの中では、現在起こっている赤色電波による異変が、多くネタにされていた。
ここ巨大掲示板でもそれは変わりなく、あちこちにこの異変に関するスレッドが建てられ、様々な情報が飛び交っている。
そんな中、一つの板で建てられたこのOFF会スレは、無数のレスを集めて急速に動き始めた。
●やってきた者達
ビルの屋上。街宣員達が下のコンビニから買ってきた弁当を食べ終え、ゴミを一通りまとめた後はいつものようにやることもなく、『赤』の指揮官、腰まで届く黒髪にねじくれた長い角を持ち、豊満な体を露出度の高い黒い鎧に包んだリン・パラは、屋上の片隅で奇怪な踊りと妙な発言を繰り返している赤色電波オルグを、暇そうにしながら見ている。
作戦は順調に進行中‥‥なのだが、端から見ていてもそれがちっともわからないのが暇な理由だった。
今日もまた、一日中ずっとこんな日なのだろう‥‥リンがそう思ったその時、異変が訪れる。
屋上に通じる扉。それが開かれ、そこに‥‥何やら十数人の男女が姿を見せた。
皆、普通の若者風であり、何か特別にどうという風にも見えない。
彼らは屋上を見回すと、そこにいたリンと街宣員達を見‥‥一瞬、身構えたものの、すぐに一礼をした。
「すいません。こんな事を言うのも変なんですけど‥‥ここが毒電波発生源ですか?」
「‥‥お前達は?」
問い返すリンの前、何人かはノートパソコンや携帯電話を取り出し、使い始める。
そんな彼らをバックに、若者達の中、比較的年かさのスーツ姿の男が、苦笑いしながら言った。
「いや‥‥実はここ、OFF会の会場なんですよ」
「‥‥おふかい?」
戸惑うリン。彼女から見えるスーツ姿の男の背後、パソコンを使う者達によってスレッドへの書き込みが行われていた。
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84 名前:名無しさんレポ中◆HSuta38Kda :03/12/15 15:33 ID:nGPzjRdf
美人のお姉様と、予算のない三流特撮ドラマの怪人、ハケーン。
お姉様、(*´Д`)/\ア/\ア
85 名前:名無しさん :03/12/15 15:34 ID:ehzYEwvH
美人なのか!?
86 名前:_ :03/12/15 15:35 ID:bTr1Rac7
漏れも。
ビキニ鎧、(*´Д`)/\ア/\ア
87 名前:名無しさん :03/12/15 15:37 ID:pNplxIVk
写真うぷキボン
88 名前:名無しさん :03/12/15 15:40 ID:X33MrGMz
>>87
ほれ、写真だ。
http://******.r0tte.com/motorcycle/motorcycle.jpg
名前:87 :03/12/15 15:41 ID:pNplxIVk
>88
氏ね。
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このビルの屋上は、普段使う人はいないが開放スペースであるため、不法侵入ではない。
また、下でオフ会主催のスタッフらしき少女が誘導してくれていたので、それほど混乱もなく屋上まで来れた。更には、通信用のケーブルまでもが用意されている準備の良さだったが、誰がそこまで準備したのかは謎だった。
正確には、OFF会主催者の「名無しさん@宇宙公安」さんがやったらしいが、残念だがそんなコテハンだけで何がわかるでもない。
ともあれ、このOFF会は何げに始まり、少しずつ人を増して来ていた。
「ところで、警察とか来ないんですか? スレの中で、何度か通報した人が出たみたいですけど」
OFF会参加者の一人が聞く。
「ん‥‥まあ、警察は何度か来たが」
特に隠すことも無いというのか、リンは少し胸を張って答えた。
「電波の発信設備がない事を説明したら、調べるだけ調べて帰っていった。見てみるが良い。ここの何処に電波発信設備がある?」
「‥‥‥‥」
多くの者の視線が、ビルの片隅で奇怪な踊りを踊りながら、ゆんゆん言っているアンテナだらけの生き物に向けられる。
怪しいこと極まりない。とは言え、そんなものから電波が出てるなどと報告すれば、多分、確実に正気を疑われただろう。
だからこそ、警察はここを見逃したわけだが‥‥
「‥‥あれかな?」
「何故わかった!?」
勇気ある一人の指摘に、リンは大いに動揺して見せた。
●バルザーを追う者
「こっちです、バルザー! こっちからなら逃げられます!」
路地裏‥‥纏魔した姿で、冠城は包囲されつつあるバルザーに声をかけた。
だが、バルザーは冠城を無視し、違う道を選ぶ。警察が包囲を狭める方向へと。
だが、冠城の言葉を信じないのは当たり前だろう。つい先日に戦いあった相手の言葉を信じる理由はない。
また、冠城の示す道は、バルザーが目指しているビルとは真逆の方向だ。
「待ってください! こっちに行けば、逃げられるんです!」
冠城は慌ててバルザーを追いかけ、声をかける。
「ここは警察から逃げて、『赤』の事は私に任せてはくれませんか?」
その言葉に、バルザーは首を横に振り、再びビルに向けて歩き出す。冠城の言葉に従うつもりがないことは明白だった。
冠城は走り、バルザーの前に回り込む。
「『赤』の活動は止めて見せます。だから‥‥」
「自らの職務を他人に肩代わりさせる事は出来ない。また、自分は法の正義に従っている。法が変わらない限り、自分の行動もまた変わる事はない。そして法は、『赤』の抹殺を命じている。活動を停止するだけでは何の意味もない」
言葉を遮り、バルザーは答えた。
バルザーは個人の意志では動いていない。バルザーを動かすものは、社会正義たる法である。
すなわち、バルザーに幾ら言葉を投げかけようと、法が変わらなければバルザーはその活動を止めないのだ。
自らの意志で任務遂行を止める権限を持たないと言っても良いが、これはバルザーを追う警察官やIO2隊員などと同じ事だろう。
法が変わらない限り、バルザーと『赤』の間に和解などはあり得ない。同様に、バルザーと警察との間だの敵対関係も消えないのだ。
だが冠城は、必死の思いでバルザーを止めようと、悲劇の少女の事を引き合いに出した。
「先日の少女の不幸を繰り返さないためにも、ここは私に任せて下さい!」
「少女の不幸と、自分の任務は、何一つ関係のない事だ。どんな犠牲を出そうとも、任務を放棄する事は出来ない」
愛の件‥‥だからどうだと言うのか?
あの日、赤色教師オルグを殺す機会がもたらされていたなら、バルザーは愛の目の前であっても躊躇せずにそれを行っただろう。それが職務であるからだ。
不幸は避けるべきだが、不幸を避けるために職務を放棄すると言う選択はどう考えても有り得ない。
第一、任せろというが、冠城はいったいどの様な終わりをもたらすつもりなのか? 具体的な言葉は無い。
冠城に任せれば、誰の悲劇もなく全てが円満に終わるとでも言うのか? それを証すものは何も無い。
バルザーの任務は、『赤』が大人しくなればそれで良いという性質のものではない。『赤』は全員、抹殺もしくは逮捕されなければならないのだ。
冠城が『赤』のメンバー全員の首を上げて持ってくると言うのなら別だが、実際にはそんな事をするつもりはないだろう。
有りもしない妥協点を探して事を先延ばしにするだけでは、邪魔をしているに等しい。
「退いて欲しい。地球人の言葉で自分を止めることは出来ない」
「通すわけには‥‥」
冠城は、両の腕を広げてバルザーを止めにかかった。全ての攻撃を受け止めてでも、バルザーを止めるつもりで。
「‥‥地球人による妨害を確認。思想犯罪への協力及び宇宙公安調査局への妨害と認識。攻撃制限、限定解除。地球人を無力化、排除する」
呟きの後で無造作に突き出されたバルザーのレーザー警棒が、攻撃を受け止める冠城の胸をいとも簡単に貫いた。
それが抜かれると、冠城はその場に倒れ、動かなくなる。
「障害排除完了」
バルザーは、欠片ほども心を動かされた様子はなく、ただそう言うと冠城を無視して先に進みだした。
だが‥‥その時、
「動くな!」
声が挙がる。周囲を取り囲んだ警官隊が姿を現し、銃をバルザーに向けていた。
●OFF会会場にて
「アンサズ‥‥予想以上に仲良くしてるから、連れてくるのは無しの方向で」
返送してOFF会場に入り込んでいたイヴは、アンサズに携帯電話でそう伝えた。
OFF会場は、何やら交流会めいてきており、『赤』とOFF会参加者達は少しずつだが交流を深めていっている。
リンを見‥‥格好がダサイとか言おうとも思ったが、そんな事を言う雰囲気じゃないので止めた。
ここが、『赤』の糾弾会の様相を呈していれば別だが、場の雰囲気がまたっりしてしまっている以上、場を乱す発言は避けた方が良いだろう。
誰が見たって一目瞭然な事を、いちいち指摘して相手を蔑むような人物は好かれない。
わざわざイヴが嫌われ者になる必要も無かった。
そして、わざわざバルザーを嫌われ者にする必要もない。
今、OFF会場にバルザーを連れてきて、オルグ獣退治なんぞをやらせたら、どんな演出をやったってバルザーは悪人認定されるだろう。
よくよく考えてみれば、苦情を言って行動を改めてもらおうというくらいの気持ちや、警察に言って逮捕してもらおうという気持ちはあるかもしれないが、皆は殺してしまえとまで思っていない。
どうも、『赤』に対するイメージの悪さが、判断を誤りへと引っ張っている。一般の人々は、それほど過激ではない。
と、その時、新しく誰かが屋上のドアを開けた。
「ここが、電波の発生源ね!?」
高く上げられた声に誰もが振り返り‥‥絶句した。いや、正確には、絶句したのはOFF会参加者のみだが。
そこにいたのは月見里・千里。
何処ぞのアニメそのまんまのパワードスーツを着て、巨大なハンマーを持った姿。
月見里は、そのまま真っ直ぐにリンを指さし、高らかに叫んだ。
「貴方ね!? △△の放送を邪魔したのは!?」
「△△?」
「特撮だろ。確か」
OFF会参加者が囁き合う。
月見里の言うのは、特撮番組なわけだが‥‥続く台詞がまた痛々しかった。
「こんなの○○(注:美形悪役の名前)じゃないっ! こんなんじゃ○○x■■(注:美形主人公)が台無しじゃないっ!! △△を汚す貴方達なんか、この世から抹殺してやる!!」
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321 名前:名無しさんレポ中◆HSuta38Kda :03/12/15 15:51 ID:nGPzjRdf
同人女
キタ━━━━(゚∀゚;)━━━━!!!!
カップリングが壊れたとかで、殺すとか言ってまつ。
もうアフォかと、ヴァカかと、
322 名前:赤色名無し :03/12/15 15:51 ID:FfmQWfgb
同人女、イベントでもないのにコスプレです。
痛すぎます。
この生電波をお届けできないのが辛いです。
もう、このOFF会場、電波に満ち満ちてます。
323 名前:名無しさん :03/12/15 15:53 ID:hP3fS/e7
あーっ、行きてえ!東京在住じゃないのが悔やまれる。
324 名前:_ :03/12/15 15:54 ID:1RkO6Rrf
良し、仕事終わった!
今から合流する!待ってろビキニ鎧お姉様と電波オタ女。
325 名前:_ :03/12/15 15:56 ID:bTr1Rac7
>>325
良し来い。
近くで警察が捕り物中だから注意な。
詳しくはこのスレの>>2でも見てくれ。
326 名前:名無しさんレポ中◆HSuta38Kda :03/12/15 16:01 ID:nGPzjRdf
消防も
キタ━━━━(゚∀゚;)━━━━!!!!
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「スポンサーとして赤色な内容は不許可!! 僕がやっつけてやるんだからな!」
ヒーロー系のスーツ着て声を上げた小学生‥‥銀野翼。本人は格好いいつもりなのだろうが、残念ながら小学生のやる事とは言え痛々しいだけだった。
「なあ、何でいきなり暴力なわけよあいつら」
「しかも、やっつけるって‥‥」
「‥‥‥‥」
少し話し合った後、OFF会参加者達はこの二人を止めることにした。
放置している今、月見里と銀野はジリジリとリンの方へと進んでいる。既に三人は臨戦態勢と言っても良い雰囲気‥‥正直、そんな状況は好ましくない。
「待て待て待て」
OFF会参加者達は意を決して、両者の中に割り込んでいく。敵以外目に入らないと言った感じの二人だったが、流石に何人もが割り込めばその存在に気付かざるを得なかった。
「何でいきなり暴力沙汰にするかな。それに抹殺するって何よ? 殺人予告?」
「だ‥‥だって、こいつら人間じゃないんだよ? だったら、殺しても良いじゃない? 殺人じゃないよ‥‥」
止められるとは全然思っていなかった銀野が、戸惑ったように声を上げる。まるっきり、これが殺人とか呼ばれる事とは思っていなかったのがまるわかりだった。
「おいおい、人として最低だな」
「人でなしだって言いたいんだろけど、そんな言い分、通じる訳がないよ」
「犬だろうと、猫だろうと、気にくわないからって殺しちゃ拙いでしょ」
「だって、こいつらが変な電波で△△を‥‥」
思わず抗弁する月見里。だが、それは相手を呆れさせるだけだった‥‥と言うか、彼らはリアルでそんな連中を見た事に喜んでさえいる。
ネット上には月見里の様な弁論をうつ者は、それこそ掃いて捨てる程いるわけで‥‥だが、リアルではなかなかお目にかかれない。お目にかかりたいとも思わないが。
「まあまあ、そんなどうでも良い事で殺すとか言わないで」
「どうでも良いだなんて!」
「いや、実際、どうでも良いし」
月見里は憤慨するが、特撮なんか何年も前に卒業した者達にとっては、非常にどうでも良いことである。
だが、それで言い合っていてもしょうがないと、今までネット上で厨と接してきたOFF会参加者は、別路線からの説得に切り替えた。
「まあ待てよ。良いのか? お前が殺人を犯したら、その番組は絶対に打ち切りになるぞ」
「う‥‥」
その一言で月見里は止まった。
この状態でリンとオルグ獣の抹殺なんかすれば、どうなるか‥‥
もちろん、目撃者達は通報する。
連日、ワイドショーで『特撮ドラマに傾注する危険な子供達』とかいうテーマを知識人達が語り合い、子供を持つ主婦達はそれに危機感を煽られてテレビ局に抗議‥‥そして、自分の子供達に特撮番組視聴禁止令を出す。
視聴率低下と視聴者の抗議、さらにテレビ局のイメージ悪化を受けて、番組は打ち切り。
月見里のせいで、月見里の楽しみにしていた番組は、中途半端な所で終わってしまうのだ。
もっとも、その頃には警察に厄介になってるだろう月見里が、番組を見られるかどうか非常に疑問だが。
「ついでに、社会問題化して、その手の番組の全部が影響被るぞ。スポンサーも大損だな」
「え?」
次の言葉に、今度は銀野が止まる。
まあ、確実に該当番組の商品は売れなくなるだろう。ついでに、関連して全体的に商品は売れなくなる。
それに、社長の息子が殺人をおこしたなどと言う事になれば、社長退任などという展開が見え見え‥‥正直、洒落にならない。
「ああ‥‥ミヤザキの時みたいにか。あの時はアニメとホラーだったけど、今度は特撮」
「あと、多分、同人関係も叩かれますよ。マスゴミとプロ市民はそういうの好きですから」
「そうなったら、マスコミと社会団体全部を殺して回るつもりか? それはそれで祭りの予感だが」
「二代目キャットキラー誕生の瞬間に立ち会うってのもねぇ〜」
月見里の動機を考えるなら、社会全体が敵に回ったときにはその社会全体を破壊して回らなければならないという事になる。
しかし、そんなことは出来るはずもない。超常能力を持っているからといって、何をやっても良いわけではないのだ。
「じゃあ、△△はどうしたら良いの!? これから先、ずっとあの訳のわかんない放送を見なきゃならないの!?」
「そうだよ! あんな変な話じゃ、うちの商品が売れないよ!」
言われっぱなしな状態に嫌気がさしたのか、月見里と銀野が続けざまに言った。それに対し、非常に素っ気ない声が返る。
「とりあえず、止めてもらえるよう頼めば? 殺すとか言う前に」
「まあ、ここまで人を集めた以上、続けるのは困難と思うべきだな。今回は終わりにしよう」
リンは、面倒を避けるべく、月見里と銀野が何かを言う前にそう言った。
とにかく、バルザーを追いつめるという面においては十分に効果を発揮したわけだから、作戦の一応の目的は達成している。となれば、作戦続行に熱意を燃やさなくても良いだろう。
それに、あまり長居してバルザーに襲われても困る。特に、こうやって誰か彼か来訪者がある状態で襲われたら、彼らに巻き添えで被害が出かねない。
「赤色電波オルグ。放送電波への干渉を止めろ。それから、街宣員は帰り支度開始」
「交信よんよん」
赤色電波オルグは素直に頷き、踊りと奇妙な呪文を止めた。
その途端、発振されていた赤色電波は消え、全ての放送が正常に行われる様になる。
街宣員達は、辺りに置かれた機材の収拾を開始。そして数人がかりで赤色電波オルグを担ぎ上げると、そのままビルの中へと運び込んでいった。
●偽バルザー
狭い路地の中でバルザーを包囲する警官隊‥‥高千穂・忍は、そこにバイクを突っ込ませた。
バルザーの姿を写し取った追加装甲をつけた簡易型装甲服を着、偽バルザーの存在をアピールして警察の捜査を妨害するのが与えられた任務。
バイクから降りた高千穂は、偶々近くにいた警官の胸を手刀で貫いた。
警官は驚きの表情を浮かべて動かなくなる。
抜いた手の後から溢れ出した鮮血が、高千穂の装甲表面を赤く染めた。
「つまらん死に方だな。あの女教師の方が楽しめたぜ」
言って見得を切る高千穂‥‥しかし、その姿勢も長くは続かなかった。
直後、目の前に突然現れた人影が、横薙ぎに太刀を振るう。
とっさに身をかわした高千穂。だが僅かに遅く、胸の装甲が粘土か何かの様にたやすく切り裂かれる。
「高周波ブレード!?」
自分の得物と同じ‥‥だが、警察がこんな物を持っている筈はない。
しかも、攻撃はそれで終わりではなかった。
人影の持つサブマシンガンから無数の銃弾が撃ち放たれ、装甲の表面で火花を散らす。
幾発かが装甲を抜けたのか、警告音が耳元で鳴り響いた。
「な‥‥なんだ?」
高千穂が目を凝らした一瞬‥‥体のラインが浮き出すようなパワードプロテクターを着た少女の姿が見える。
だが、その姿はすぐに、高千穂の目の前で忽然と消えてしまった。
「警察か!? こんな奴が来るなんて聞いてないぞ!」
相手は警察だという油断があった。しかし、相手は警察とは思えない戦力を持っている。
正体はIO2‥‥NINJAと呼ばれる、パワードプロテクターを装着した捜査員なのだが、高千穂はIO2の介入について全く知らされていなかった。
そしてさらに‥‥
「があああああっ!?」
突然、背後の空間に現れたドリルが、背中から高千穂を襲った。
その一撃は、高千穂の精神を大きく削り取る。
「な、何だと‥‥」
よろめき、倒れる高千穂。その前に空間を割って姿を現した一人の少女が立つ。
「銀の螺旋に勇気を込めて、回れ正義のスパイラル ドリルガールらせん、満を持して只今見参!」
ドリルガールらせんは、魔法のドリルを手に、怒りの眼差しで高千穂を見下ろしていた。
「こんな筈では‥‥」
計算が完全に崩れた。それでも、任務を果たそうと‥‥高千穂は力を振り絞って立ち上がると、止めて置いたバイクに駆け寄り、素早くそれに跨って走り始めた。
「逃がさない‥‥」
「‥‥‥‥」
高千穂を追うドリルガールらせんとパワードプロテクター姿の少女。と、少女は通信機を動かして言った。
『バイクで逃げたから、そっちで落として』
「りょーかい」
通信が届いた先は狭いコックピットの中。
ポニーテールの若い女が答え、素早く照準機の上で手を動かす。
直後、モニターに映し出されたバイクに、サイトが二つ重ねられた。
「弾種、プラズマ榴弾。レールキャノン、発射!」
引かれるトリガー。
直後、高千穂は突然の爆発に巻き込まれた。
それが、シルバールーク改Dから放たれた榴弾の直撃だと知るよしもなく、高千穂は炎の中に消える‥‥
●終わるOFF会
「このビルか‥‥」
『赤』との接触を求め、赤色電波発生源のビルへと来た田中祐介。
しかし、そこで出会ったのは、思っても見ない人物であった。
「な‥‥」
「OFF会会場はこちらでーす」
何だか、(・∀・)な感じのキャラクターが胸に描かれたTシャツを着て、エレベーターホールに立っていたのはミナ・ルーその人。
周囲には、アンサズの姿はない。
田中は急ぎその元へと駆け寄り、ミナの肩を掴む。
「ミナさん、いったい‥‥」
「あら、遅かったのね?」
背後からかけられる声に、田中はミナをかばう様な形で振り返る。
そこにいたのはイヴ。彼女は小さく溜息をつきながら続けた。
「でも、アンサズの方が遅刻だわ。まだバルザーと接触してないなんて」
アンサズを呼んでから田中と会うつもりだったのだが‥‥アンサズは、バルザーとの接触をまだしていない。
まあ、この場はアンサズが居なくても何も問題ないのだが。
「何のつもりだ‥‥」
「あら、その子を返してあげようかと思ってるだけよ。優しいでしょ?」
イヴの本意をつかめずに戸惑う田中に微笑みかけ、イヴはゆっくりと二人に歩み寄った。
そして、軽く田中を押しのけると、その場に佇むミナを抱き寄せてしっかりと唇をあわせる。
そのまま僅かな時間‥‥イヴはミナを放すと、くるりとその場で踵を返した。
「またね?」
去りながら振られる手‥‥
「何なんだ‥‥」
残された田中は、傍らのミナを守る様に抱き寄せながら、この場でミナを残していくアンサズの意図をつかめずに苦悩の呻きを漏らした。
一方その頃、ビルの屋上ではOFF会は終わりを迎えようとしていた。
「僕もう帰るよ。遅いから」
既に夕方も近い。OFF会から離れた所で暇そうにしていた銀野は、そう言ってからリンに向けて続けて言った。
「もう、テレビに変な事しないでよね」
「‥‥じゃあ、私も帰ります。もう、こんな事しないでくださいね!」
銀野にあわせ、ぶっ殺すという意気込み全部を流され、何処か疲れた様子でいた月見里が言い放つ。
そして、二人はコスプレそのままの格好でビルを下りていった。
残されたOFF会のメンバーにも、そろそろ帰ろうかという空気が流れる。
「お開きだな」
「2次会しようか‥‥」
「えーと、じゃあ貴方も行きませんか? 政治思想とか関係ない話もしに」
と、その内の一人が言った。その発言に対し、周囲から色々と声が上がる。
「一応犯罪者だろ? 良いのか?」
「‥‥良いんじゃないのか? もう、何回も通報はしたわけだし、警察も彼女と話もしてるわけだし」
警察が犯人じゃないと見ている以上、普通につきあったって良いだろう。
「飲みか‥‥悪くない。お供させてもらおう」
リンはあまり深く考えることなく同意した。
「少し待っててくれ。着替えてくる。この格好ではちょっとな」
地球人の中に入り込むには、リンの鎧では少し問題があった。
それを知っているのだろう、リンはそう言ってトイレの方へと消える。
ややあって戻ってきた時、その格好は普通のスーツ姿に変わっていた。
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946 名前:名無しさん :03/12/15 17:03 ID:E9ae0Pds
そろそろ、次スレ立ててくる。
947 名前:赤色名無し :03/12/15 17:05 ID:FfmQWfgb
これから、皆で2次会行きます。
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●包囲を抜けて
ドリルガールらせんと少女が走り去り、残された警官隊は混乱の中でそれを見送る‥‥だが、バルザーが再び歩み始めたのを見て包囲に戻った。
バルザーは、高千穂と少女二人の走り去った方角へと歩いていく。『赤』のいるビルを目指して。
警察官達の警告など、元より聞きはしない。
と‥‥一発の銃声が響いた。
警察の威嚇射撃だ。
それでも足を止めず、バルザーは呟く。周囲を取り囲む警官隊を突破するために。
「機動モード」
瞬間、バルザーの顔を覆うように、透明な物質で出来た板状のフェイスガードが現れる。同時に、バルザーの左手に、その全身を隠せるほどの大きさの直方形の盾が現れた。
その変形を、抵抗の予兆と見たか、警官隊は一斉に発砲を開始する。
銃火に、装甲表面を火花が走った。しかし、バルザーはその攻撃によろめきながら、呟く。
「敵の抵抗をこれより鎮圧する」
言うなり、上げられた手から高圧水流が撃ち放たれた。
それは、警官の一団に当たり、そこにいた者達をはじき飛ばす。次の一発は、道をふさぐ警備車輌の横腹を大きく凹ませ、潰す。
次々に撃ち出される高圧水流は、確実に警官達を排除していった。
高水圧に潰され、砕けた車輌。そして倒れて呻く警官達。その中をバルザーは歩く。
誰も抵抗できぬ中をバルザーが通り抜けかけたその時、バルザーの前に一人の警官がたった。
FZ−01。バルザーとは縁浅からぬ者。
彼は、同僚達に降り注いだ惨禍にやりきれぬ思いを抱きながら、それでもバルザーを憎む事は出来ず、ただ自分の思いを吐き出す。
「我々にだって自分達で未来を選ぶ権利がありますし、人間はそんなに愚かじゃありません。宇宙からの思想的脅威が有るというのなら、貴方は事実を我々に伝えて警鐘を鳴らせば良いじゃありませんか。戦う勇気も必要ですが、戦いだけが方法じゃ無い筈だ」
バルザーは‥‥答えぬかと思いきや、少しの沈黙の後に口を開いた。
「‥‥君の言うとおり、地球人達には地球人自身の手で未来を選ぶ権利がある。『赤』の活動を思想的驚異ととるかどうかもまた、地球人達の判断に任されている。故に、その判断に対して自分は‥‥宇宙政府は干渉しない」
地球人と戦いたくはない。しかし、それが地球人の選択であるならば仕方がない。
バルザーはバルザーの属する政府の方針にそって行動している。
それに対し、地球人達がどう判断しようと自由だ。戦い以外の方法を選ぶかどうかも地球人達の自由。もちろん、戦う事も自由。
その判断に干渉する事はしない。あえて地球人達を味方に付けようとも、敵に回そうともしない。自らの任務のみに忠実にある。
「君は君の職務を果たせ。自分は自分の職務を果たす」
「それしかないんですか?」
FZ−01のその問いかけに、バルザーは答えなかった。だが、その沈黙からは、迷い無きバルザーの意志が感じ取れる。
だが、FZ−01は動けなかった。迷いがまだ彼を縛り付けていた。
FZ−01は、バルザーが自分に手の平を向けるのを見る。
「他に‥‥方法が」
「それを探すのは君達の自由だ。だが、自分はあくまでも職務に従う」
短くかわしあった言葉。
直後、撃ち放たれた高圧水流が、FZ−01の装甲を打ち砕いた。
一撃‥‥一撃でFZ−01は倒れ、動かなくなる。
と‥‥そこに拍手の音が響いた。
「‥‥‥‥」
バルザーは視線を巡らせ、路地の影にたたずむ男に目をとめる。
仮面に顔を隠した男は、鷹揚な拍手を止めると、道化のように深々と一礼した。
「アンサズという者です。直接、会うのは初めてですかね」
顔を上げたアンサズは、バルザーに向かって微笑みかけ、敵意がないことを示しながら言葉を続ける。
「『赤』の地球からの排除を目論む者‥‥バルザー、貴方の味方になりたいと願う者だと思って下さい」
バルザーは興味も無い様子で、ただその言葉を聞いていた。
アンサズの方も、バルザーの態度はそれほど気にもしていない様子で、ただ話すべき事を並べていく。
「任務遂行の手助けをする代わりに、地球人の好みそうな方法でオルグ獣を倒すよう依頼するつもりだったんですけどね。先程の話を聞いて、意味がないと悟りました」
盗み聞いた、冠城やFZ−01との会話。そこから推測するに、バルザーに地球人を積極的に味方にしようという選択肢は無い。
地球人が敵に回ろうと何だろうと、バルザーは彼なりの行動を止める事はないだろう。
それにそもそも、バルザーに地球人の好みそうな方法で敵を倒すだなどと、器用な真似が出来るはずもない。
どうせ、衆目の中でもお構いなしに『赤』のオルグ獣や街宣員を細切れにするのだ。
それに、仮にそれでヒーローになれたとしても、警察やIO2の敵‥‥すなわち殺人犯である事実は変わらない為、結局は地球人を敵に回すという展開は変わらない。
故に、アンサズの目論見は元から成功の見込みなど無かったのである。
「ですので、情報だけ‥‥『赤』は、浄化装置を使うそうです。それが、何の意味なのかは知っていると思います。それから、『赤』の本拠地である宇宙船は月軌道上に隠れているとか」
「そうか‥‥」
バルザーは答えて、進む道を変えた。
「どちらへ?」
聞くアンサズに、バルザーはただ短く答える。
「宇宙へ」
●仇の名
クレーター状にえぐれた路上。そこには、バイクと強化装甲服の破片‥‥それと幾ばくかの焦げた肉片が落ちているだけで、高千穂の姿は無かった。
「便乗犯の撃破を確認」
通信を送る少女の隣、ドリルガールらせんは肩を落とす。
「手がかりが‥‥」
「手がかり?」
少女は、らせんの言葉を少し気にしたが、次に届いた通信にそれを忘れた。
『解析完了。TI社の強化服よ、そいつ』
「TI社‥‥武器商人が何を?」
『さあ? まあ、何にしても、これからの捜査は私達の仕事じゃないわ』
確かに、それはテロ対策班の仕事ではない。
仕事はちゃんと別にある。
「で、本命は?」
『逃げたわ。警官隊は全滅。バルザーがやった方に死者はいないけど、山積みの負傷者回収のために包囲は断念。追跡のみに方針変更ね』
包囲し、逮捕するだけの人数が集まらないのだから、その方針変更は仕方のない事だろう。
「テロ対策班から、もう少し戦力引っ張ってこないと、これ以上は無理じゃないかな‥‥変なのもいるみたいだし」
バルザー以外に、何やら動いている連中が居る。IO2として、当然そいつらを放置は出来ない。
『それも、上の判断で、私たちの仕事じゃないわ。私たちの仕事は、萌ちゃんと私の愛を深める事‥‥』
「違う! 私たちの仕事は、超常能力テロリストの逮捕! じゃ、バルザー追跡に戻るから!」
少女は声を上げ、そしてバルザーが消えたとおぼしき方向に向かって走り出した。ちらとだけ振り向き、らせんへと言葉を残して。
「協力感謝します! でも、危険な事はしないように!」
少女が道の向こうに消え、残されたドリルガールらせんは、少女が先ほど漏らした名を自らも口にする。
「TI社‥‥」
思わず口端に冷たい笑みが浮かんだ事に、らせんは気付かない。
「そこが、愛ちゃんを‥‥」
●TI社
「習志野・愛ですが、死亡しました。記憶の上書きに耐えられなかったそうです」
秘書の報告に、社長室の貴城・竜太郎は落胆の溜め息をつく。
「そちらも失敗ですか‥‥」
今回の高千穂の件で、バイクや装甲服の破片などを手に入れたIO2は、TI社に対して圧力をかけてきていた。
これ以上、派手な活動をおこなえば、TI社へ捜査の手が入る事も有り得る。
そうなれば、TI社は倒産‥‥軽くとも社長辞任などの事態が確実。仮に犯罪立証できずと言う事になっても社会的な信用を失う事は絶対で、会社が大ダメージを受ける事は避けられない。
そんな状況の焦臭さを感じたのだろう。既に、IO2との関係も深い米国や欧州関連の商売相手が、一斉にTI社との取引をキャンセルしてきていた。それによる損害は、かなりの額に昇る。
『赤』の活動を阻害する必要はもちろんあるが、それと引き替えに会社を失ったのでは何の意味もない。
「当面、大人しくするしかないですね」
IO2がバルザー対策に乗り出したことで、今までのような無理を通すやり方は利かなくなっている。
より慎重な行動が求められていた。
「それと社長。アマチュア天文家の発表したデータの中に‥‥」
「ありましたか?」
貴城は、秘書の差し出した数枚の写真を受け取り、そこに目をやった。
月の付近を撮った写真‥‥その中に、かなり小さくだが方形の物が移っている。
「これが、『赤』の根城ですか‥‥早速、観測を始めてください」
指示を出しながら、貴城は次に打つ手を考えていた。
●二次会
ビルからそう遠くない場所にあった居酒屋。そこに席を取って、二次会は始まっていた。
一通り、自己紹介から始まって政治経済の話や、その他たわいもない話を楽しみ‥‥少し疲れたリンは、場を少し離れて一人で飲んでいた。
と‥‥その向かいの席に、二人の人が座る。
グラスから目を上げたリンは、そこに仲間のミナを見た。
「ミナ!?」
「‥‥こんばんわ。はじめまして」
驚きのあまり呼んだ名に答えたのは、ミナの隣に座る田中。
リンは訝しげな目を田中に向けた。
田中はリンの前、静かに全てを語り始める。ミナの身に起こったであろう全てを。そして最後に、こう言いつのった。
「赤の思想、バルザーの正義。そんなのは俺には関係ない‥‥ただミナを助けたい‥‥その為にはお前の、お前達の技術力が必要だ‥‥お前の力が欲しい」
「勝手を言うものだな。それで助力をしようと言う気になる者などいないぞ」
地球人達のミナへの仕打ちに燃え上がる怒りをグラスの酒に飲み下し、努めて冷静にリンは言った。
「確かに、ミナの治療はしよう。しかし、それはお前の為じゃない。ミナの為だ」
「すまない、感謝する」
田中は素直に頭を下げた。確かに、田中の頼み方は断られても仕方がないものなのだから。
しかし、頭を下げた田中にリンは、田中をこの戦いに引き込むだろう現実を告げる。
「だが、バルザーを何とかしないと、いつか必ずミナは殺されるぞ」
「『赤』と縁を切ってもか?」
「罪は、法で裁かれて初めて許されるものだ。それが社会正義だろう」
リンはグラスの中身を干しながら言う。
犯罪組織から離れたからといって、犯罪組織にいた間に犯した罪が消えるわけではない。
ミナの心変わりなど何一つ関係なく、バルザーはミナを殺しに来る。
「バルザーが私的な正義で動いているなら、その辺は何とでもなるのだろうがな。あれは社会正義を守る為に存在している。説得は通じないと思った方が良い」
宇宙治安維持法‥‥その法律を変えない限り、バルザーを止めることは出来ない。
そして、その法律を変える事は、『赤』のメンバーや地球人には絶対に出来ないのだ。
「ミナを助けたいなら‥‥バルザーとの戦いは必至か」
ミナを守る。その為には、バルザーを‥‥田中その現実をかみしめる。
そんな田中を見て、リンは静かに口を開いた。
「殺せとは言わない。浄化の際、バルザーを一緒に浄化できれば、バルザーと仲良く地球で未来を生きるという選択も生まれるはずだ。問題は、バルザーや他の連中に邪魔されず、いかにして浄化を成し遂げるか‥‥」
「浄化?」
聞き慣れない言葉に、田中は答えを促す様な声を投げ返す。
リンは空のグラスを弄びながら、少し笑顔で答えた。
「人間から闘争心を奪い、代わりに博愛の心を与える。いわば、心の浄化だ。争いのない、平和な世界が訪れよう。誰も争うことなく、誰もが他の皆と手を取り合う世界がな」
争いのない世界。誰もが平和に暮らせる世界。それを理想郷というのだろう。
この地球をそんな理想郷に変える準備が、既に進められているのだ。
「それはいつの事だ?」
「もうじきだ。地球は、暴力の業から解放される‥‥」
『赤』の計画は進んでいる‥‥
世界平和という、地球人類にとっても夢である事を為し遂げる為に。
「なあ、もう少し詳しい事を‥‥」
言いかけた田中は、テーブルの向こうでリンが突っ伏しているのに気付いた。
耳を澄ますと、かすかに寝息が聞こえていた。
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■ 登場人物(この物語に登場した人物の一覧) ■
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【整理番号 / PC名 / 年齢 / 性別 / 職業】
0165/月見里・千里/16/女性/女子高校生
1098/田中・裕介/18/男性/高校生兼何でも屋
1481/ケーナズ・ルクセンブルク/25/男性/製薬会社研究員(諜報員):
1548/イヴ・ソマリア/502/女性/アイドル兼異世界調査員
1855/葉月・政人/25/男性/警視庁対超常現象特殊強化服装着員
1865/貴城・竜太郎/34/男性/テクニカルインターフェイス・ジャパン社長
2066/銀野・らせん/16/女性/高校生(ドリルガール)
2138/高千穂・忍/26/男性/TI社エリート工作員
2209/冠城・琉人/84/男性/神父(悪魔狩り)
2373/銀野・翼/9/男性/小学生
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■ ライター通信 ■
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しまった。誰も死んでない。
死んだのは習志野・愛一人か‥‥
今回、電波発生源でOFF会って事になったので、かなり予想と違う結末になりました。
月見里さんとか、銀野君とか、OFF会参加者を巻き込んで大戦闘、大虐殺ってのも惹かれましたが、まあ今回は大人しめに。
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