■かわうそ?と愉快な仲間達1■
滝照直樹 |
【1305】【白里・焔寿】【神聖都学園生徒/天翼の神子】 |
貴方の机に程よい厚みのある新書のような本が置いている。
内容はというと、織田義明や、長谷茜。かわうそ?……などの誰かと楽しく過ごしているもしくは喧嘩をしている物語。笑いあり涙あり、そう言った手合いだ。
彼らと一緒に過ごした思い出を書き留めたいなら、思い出すがよい。
その本は厚さに関係なく、白紙を埋めていく事だろう。
そう、思い出はいつもあなたの心にあるのだから……。
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かわうそ?と、よっしーのファッションセンス
白里焔寿は、悩んでいた。
いまいる居候の新しい服が欲しいわけだが、その居候ときたら人混みを避け、服の話を聞かないと言う。いまは、亡き父のお古で済んでいるのだが、どうもその居候には似合わない。其れではやはりダメだと思うわけが人の性だ。
神聖都学園からの下校時、色々思い悩む焔寿の前に
「いよう。焔寿」
「かわうそ?…さん?」
小麦色の動物が現れた。
「いまいる従兄の服を新調したいんですけど、…」
かわうそ?は話を聞いて頷いた。
「助けてくれる人いるかもかも」
「助かります!」
「知っている人〜♪」
と、かわうそ?は四足歩行で走っていく。やはり二足歩行より動きやすいと言うのだろうか?
「待って下さい、かわうそ?さん」
焔寿は急いで追いかける。
たどり着いた先は、長谷神社。刀を振る音。剣戟とかけ声がする。
「稽古日…なのでしょうか?」
「あら、焔寿ちゃんこんにちは」
巫女の長谷茜が、巫女姿で焔寿に挨拶した。
「はい、こんにちは。あの…かわうそ?さんは」
「かわうそ?…多分道場に向かっていったよ?どうしたの?」
「いえ、それが…」
訳を話すと、茜は小難しい顔をする。
「なにか、企んでいるのかなぁあのナマモノ」
そう、かわうそ?は世話焼きではあるが同時に悪戯好きなのだ。
「でも、その従兄が、和服が似合うというなら…正解かもね」
「??」
「珍しくエルハンドがいるの。今よしちゃんと全力で手合わせよ」
「え、ええ!?だ、大丈夫なのですか?あのその…道場壊れないですか?」
「この場合、結界と道場の空間を弄っているから大丈夫。ま、あのかわうそ?は其れさえ無視して中に入って焔寿ちゃんを待っているわ」
こんな事は、日常茶飯事とも言うように茜は言う。
「は、はぁ」
剣の稽古も大変なのねと言う考えはあったが、エルハンドと織田義昭が相談に乗ってくれるのは助かると思った。
「ありがとうございます」
と、お辞儀をして彼女は道場に向かっていった。
その後ろ姿を見て、
「よしちゃんの本当の服装趣味…あうかしら」
困った顔をする茜だった。
「きゃぁ」
道場の扉を開けると、突風が吹く。吹き飛ばされると思ったほどの風圧だ。
「やはり天空剣って凄いです」
と、目を細めながら先を見る。
久々に見るエルハンドと織田義昭が、自分の愛剣を構えて本気で戦っているようだ。一瞬見えなくなって剣戟の嵐。そして2人が、間合いを離れたとき、姿が見える。エルハンドは息一つ乱さず、剣を構えているが、やはり人間の義昭はかなり疲労している。確かに道場に『大きな破壊』の跡がない。おそらく結界なしだと、此処全体は荒野になっているのではと思う程の威圧感だった。しかし、この真剣な空気を台無しにするかのように、例のナマモノが煎餅を食べてのんびり見学しているのだ。
「よし、来客も来たから此処までだな」
「はい、師範」
と、剣客2人は力を抜く。とたんに激しい気迫は消え失せ、心地よい風が辺りを包んだ。
「剣の反省会は後で」
ナマモノはいう。
「分かっている」
と、義昭がナマモノの頭を撫でた。先ほどの激しい疲労は残っているみたいだが…。
「焔寿、久しぶり」
「はい、お久しぶりですエルハンドさん」
胴衣姿から普段の黒マントに変わったエルハンドは焔寿と挨拶を交わした。
「じゃ、俺着替えてきます。待っててね、焔寿ちゃん」
と、義昭は奥の更衣室に向かっていった。
「さて、かわうそ?が話があると言ってきたが…どんな悩みなのかな?」
「ありがとうございます」
そして、訳を話すとエルハンドは手を顎にやり、一考し
「そうか、それなら義昭が良いか。それと其処のナマモノといれば問題ないだろう」
と、微笑んで言った。
再会した神の表情は相変わらず優しかった。
「ナマモノちがう〜。かわうそ?の、かわうそ?なのだ〜!」
と、かわうそ?は文句を言ってエルハンドに向かっていくが、神の片手で止められてジタバタしている。
「ありがとうございますエルハンドさん」
焔寿はその光景に笑いが止まらなかった。
「……」
焔寿はビックリしていた。
着替えて来た義昭の姿が黒い革ジャン革パンという出で立ちなのだ。いままで極普通の服か制服だったから違和感がありすぎる。顔が少し幼いからと言うのもあるが…。チェイン、シルバーアクセサリー、更には革のギターケースを背負っているので、どこかのロックバンドの人になっていた。
「音楽…やっているんですか?」
「いや、此のバックの中は刀だよ。二振りと他の道具が入りやすいんだ」
と、焔寿の質問に答える義昭。
余談だが、本当に革のギターケースなどは刀を入れる物としては最適である。ポケットにも手入れ道具他色々と入る。ただ、耐久性には難があるが(刀が重いため)、一番の利点であるその場で「日本刀を所持」しているという様には見えなくなるのだ。
故にいまの義昭の姿はどう見ても軽音楽の人間にしか見えない。
焔寿はそのため、
―ロックでも更にハードな所紹介されそう。
と、思っていた。
そこで、焔寿は居候がこんな格好をすると、と思い浮かべてみる…
微妙だ…割と似合いそうだが、やはり微妙だ。
「何考えているの?行こう」
「あ、はい」
と言うわけで、焔寿と義昭、犬の首輪とヒモを付けられたかわうそ?は出かけた。
見送った茜はムスッとしている。
「どうした?自分とは一緒に行ってくれないから拗ねているのか?」
「ふん、そーですよー!」
エルハンドに舌を出して別の所の掃除に向かう、義昭の幼なじみだった。
「義昭は服を選ぶとき、地味かマニアックの極端に走る事を知っているはずだろうに」
剣客は苦笑した。
「まー俺の普段着はこんなんじゃないけどね」
苦笑する義昭。
「では今日は何故?」
「新調したギターケースにとても似合うと思ったから、敢えて今日は此なの」
「なるほどです」
「でも話を聞くと、君の従兄さんあまりオシャレに興味ないけど、俺で良いのか悩むよ。せんせー。ま、あの人のセンスも何となく分かるけど」
「義昭さんのセンスでお願いします」
「うんわかった」
「かわうそ?も〜」
「はい、お願いしますね」
と、和気藹々と2人と1匹は洋服店等歩き回った。
「家の中、身軽な物が言いと思う」
かわうそ?は、安価で有名な洋服店でスラックスやトレーナーなどを選んでいく。その色は、草色から紺、槐と様々だ。面白いことにかわうそ?の選んだ服は、確かにあの居候が来ても似合うものだ。
「凄いですね、かわうそ?さん」
「お褒めにあずかり恐悦至極」
ナマモノは、照れていた。
かわうそ?の選んだ普段着はどれも室内では問題ない。しかし万一外に出る事を考えると、どうするか悩む所だ。
「外行きなら、この方が良いかもね」
と、義昭が自分の感覚で綿パンと、Tシャツなど集めてみた。未だ冬なので、ハーフコートぐらいはあっても良いだろうと、選ぶ。
しかし義昭の選んだ服の色は、灰色や黒などが多い。アクセントで赤など入っている物もあるが、あの彼が来て似合うかどうか実際試さないと難しい選択だ。
悩む焔寿に、義昭は尋ねた。
「焔寿ちゃん的に従兄さん、何が似合うのか教えて欲しいけど?」
「あ、えとですね…和服だと思います」
其れはそうだろう、その時代の服装の方がしっくり来るだろう。
「和服ね…なら此処ならこれが良いだろう」
と、彼は和服に合いそうな外套を直ぐに探しだした。確かにその外套は、和服を着てその上に羽織っても問題ない不可思議なデザインだった。
「…」
やっぱり、義昭のセンスは理解できない焔寿。人を超越していくとそうなるのか、元からそう言うファッションセンスなのか…。
かわうそ?と若き剣客が選んでくれた服を買って外に出ると。
「じゃ、次は和服探そう。知っている店があるよ」
「あ、はい」
義昭は荷物を持っているのにもかかわらず、焔寿をエスコートして軽々と人混みをすり抜けるように進んだ。もうかわうそ?が頭に乗っていても無視状態だ。
こなれていないかと思う焔寿だが、深く考えないでおく。
―その辺はプライベートなことだし。
着いたのは、和服全般を取り扱い、且つ、天空剣の胴着も此処で購入するという行きつけの店だった。
「こういう店があると助かるんだよね♪」
と、義昭は嬉しそうだ。
焔寿も見事なまでの生地や服の種類に目を丸くしている。
「こんなステキなところがあるなんて知りませんでした」
「俺は此処以外で和服を買う気はないほど気に入っている」
「義昭さんも剣術としての仕事以外(演舞等)で着るのですか?」
「そうだよ。カジュアル選ぶなら、いまの革ものか着物が好き。でもこれらって高いから」
義昭は苦笑する。
焔寿は其れに釣られて笑った。
「先ほどの外套にぴったりの物もあるよ。でも、やっぱここでも上着は買っておこう」
と、義昭は焔寿に言った。
いっぱい買ったが、義昭は軽々と荷物を持って、かわうそも小さな物なら手伝って焔寿の家まで送っていく。当然、義昭は「物はついでに試してみたら」と言って、黒い革ジャンと革パンを勧める。此は要らぬお世話だろう。
「今日は本当にありがとうございました」
「いや、俺も楽しかったし」
「では、また学校で…」
「ああ、またね」
「焔寿ばいばい〜」
「かわうそ?さんありがとう」
「あい〜」
と、焔寿と義昭は、その場で別れた。
ナマモノは、用事が済んだとばかりに首輪を外し、どこかに去っていった。
後日談であるが、焔寿の従兄(仮称)は沢山の服を見て毎日悩んでいたようだ。其れが、どれもお気に入りでどれを着ればいいのか、それとも奇抜すぎて困っているかの二つしかないという…。
End
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■ 登場人物(この物語に登場した人物の一覧) ■
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【1305 白里・焔寿 17 女 天翼の神女】
【NPC かわうそ? 年齢性別不明 かわうそ?】
【NPC 織田・義昭 17 神聖都学園高校生・天空剣士師範代】
【NPC 長谷・茜 17 神聖都学園高校生・巫女】
【NPC エルハンド・ダークライツ 年齢不詳 男 正当神格保持者・剣聖・大魔技】
※ライター通信の代わりの座談会(今回は割と大所帯かと)。
|Д゚) ←かわうそ?
義昭「何か言いたいんだ?ナマモノ」
かわうそ?「いあ、何故よっしーが引き受けたか謎」
義昭「困っている人を助けるのは普通だろ?」
かわうそ?「其れ、ちがう。なにかある」
茜「そーよー。私とは一緒に行ってくれないのに!」
ハルハンド「落ちつけ茜、事情は分かっているだろう」
義昭「いやそれはなー、お前は俺のファッションセンスって少しずれているって分かっているだろ?あと、男物を知っているのか、茜は?それなら、同年代と思われる俺が良いだろ?」
茜「う…そ、それは…」
かわうそ?「むー筋が通っていると思う。けど…」
茜「でも、一緒に買い物…」
義昭「其れは只の〜」
かわうそ?「茜ヤキモチ。おお、芋が焼ける」
茜「―――――――――っ!」
エルハンド「あ〜痴話喧嘩か始まった…。焔寿、参加ありがとう。従兄が今回義昭とかわうそ?が選んでくれた服を喜んできてくれていることを願うよ」
後ろで喧嘩がありつつ終幕…
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