■剣を取ったらファンタジー?〜中編〜■
安曇あずみ |
【1548】【イヴ・ソマリア】【アイドル歌手兼異世界調査員】 |
東京の一角にある未来型テーマパーク。
特殊な装置を使ってリアルすぎるほどのバーチャル空間でゲームが出来るそこで、
参加者が意識を失ったままログアウトできなくなる事件が起こった。
解決する為には、ゲームの世界の中のどこかにある、
”魔王の剣”という物を手に入れなければならないという。
名乗り出た数名の者達が調査の為にゲーム世界に入り調査は開始された。
調査の結果、”魔王の城”がある都の前まで来た彼らは、
都のどこかにいる”聖女”を探す事が魔王を倒す鍵になると知る。
突如、『強制排除』プログラムが働いて、
探索に向かった全員は一度強制ログアウトされてしまった。
担当者達は急遽、修正プログラムを実行してなんとか再ログイン可能になった。
とりあえず、今回ログインした者は”聖女”を探す事からはじめる事になった。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
◆募集予定人数:1人以上〜(未定)
◆内容:都の中にある”聖女”の石像を探してください。
コメディの予定です。プレイング次第でシリアス展開の可能性も有。
◆戦闘:場合により有◆恋愛:未定◆NPC:登場します。
◆補足:今回だけでは完結しません。連載の中編です。後編で魔王と対決になります。
途中参加・途中辞退はもちろん可能です。
パラレル世界として話を進めます。現実世界での関係はこの世界ではリセットされます。
現実世界での特殊能力を引き継ぐ事は可能です。引き継がなくても構いません。
|
剣を取ったらファンタジー?〜中編〜
■MAINMENU
東京の一角にある未来型テーマパーク。
特殊な装置を使ってリアルすぎるほどのバーチャル空間でゲームが出来るそこで、
参加者が意識を失ったままログアウトできなくなる事件が起こった。
解決する為には、ゲームの世界の中のどこかにある、
”魔王の剣”という物を手に入れなければならないという。
名乗り出た数名の者達が調査の為にゲーム世界に入り調査は開始された。
調査の結果、”魔王の城”がある都の前まで来た彼らは、
都のどこかにいる”聖女”を探す事が魔王を倒す鍵になると知る。
しかし突如、『強制排除』プログラムが働いて、
探索に向かった全員は一度強制ログアウトされてしまった。
担当者達は急遽、修正プログラムを実行してなんとか再ログイン可能になった。
とりあえず、今回ログインした者は”聖女”を探す事からはじめる事になった。
■START
「待っていたわ!魔王を倒す為に選ばれし勇敢なる勇者達よ!」
全員がログインし、都の前に到着した途端…都の手前にあった大きな岩の上で、
長いヴェールを被り…紫の衣装に身を包んだ占い師風の女性が高らかに声をかけてくる。
一瞬、身構えた全員だったのだが…。
「あたしは”諭しの『エリ』”さあ!皆の者よ…私の後に続くが良い!」
どうにも敵意があるとは思えないその様子に、全員揃って顔を見合わせた。
「もしかしてNPCかしら…?」
ふと、黒服銃士の『エン』がぽつりと呟く。言われてみれば、確かにそんな様子に見えない事もない。
しかしそれにしてはどうも背後を感じることが出来るような動きをしているのだが…。
「とりあえず何か聞いてみましょ?」
「そうですね」
薄桃で可愛らしいイメージの衣を纏った召喚士『イヴ』と薄青のローブを纏った僧侶の『みなも』が前に出て、
岩の上のエリに声をかける。エリはなにやらポーズを取り掛け声とともに砂の上に飛び降り…顔面から見事に着地した。
「大丈夫かエリちゃ―――ん?!」
「なんて事だ!女性にとって顔は命なのに!!」
それを見た瞬間、中華風の衣装の武術士の『ヤト』と西洋風な武闘家の『ライ』が猛然とダッシュで駆け寄る。
「あの様子ですと…NPCではないようですわね」
「あれもなんつーの?プログラムってヤツだったら、ある意味凄いよな…」
さらにその様子を見て、露出度の極めて高い衣装の女剣士『デルフェス』と道化師のような服の遊び人『レンレン』が呟く。
「俺はああいう大人にはなりたくないな…」
「大丈夫ですよ。あなたは女の子なんですから」
思わずこぼす弓使いの小柄な黒髪の少女『シズカ』に、
フード付きの白いローブを纏った白魔法使いの『リュート』が微笑みながら返した。
「どちらにせよあのエリさんって方が何かを知っているかもしれませんね」
「そうだな…とりあえず話を聞いてみた方がいいだろうな…」
「ええ、僕もそう思います」
にぎやかに騒いでいる前衛から一歩引いた場所で、
薄緑のローブを着た白魔法風使いの『ウタタ』と、同じく青をベースのローブの白魔法使い『セリ』、
そして動きやすいように最低限の防具を身につけた魔剣士の『セイ』が冷静に会話していた。
地面に顔面着地したエリはというと…ヤトとライに助け起こされて恥ずかしそうにしつつも、
全員の視線を集めている事に気付くと慌てて咳払いをしてその場を取り繕おうとし…。
「よくぞ集った!えーと、1、2、3、4………12人の勇者よ!」
一人一人を指で指しながら数えてから声を張り上げた。
「それはさっき聞いたわ?その勇者って言うのは何なのかしら?何か知ってるのなら教えてくれない?」
「わかっています。えーと…い、イヴさんでしたっけ?あたしは占い師であり予言師である…
ここに皆が集う事も、どのような者がやってくるのかという事も、あたしにはしっかりとわかっているのです」
「疑うわけじゃないけど、どうも胡散臭いよな…」
「なに言ってるんだシズカちゃん!女性に失礼だよ?
それにそんな言葉遣いをしていると、せっかくのキミの可愛さが半減しちゃうだろ?」
「つーか、ヤトさん、あんた動き早っ…!さっきまでエリってヤツのとこに居たのに」
「可愛いコが居ると俺のレーダーは常にバリ3なんだよ♪」
「バルサン?」
「ってそれじゃあゴキブリ退治になっちゃいますよ」
シズカとヤトの会話を聞いていたみなもが苦笑しながらツッコミを入れる。
ヤトは嬉しそうにその手を取ると、にこやかに「ナイスツッコミだね」と微笑みを向けた。
「静粛になさい!あたしの話を聞くのです!」
そんなやり取りを、エリは遮って自己主張をする。
再び、全員の視線が自分に集まった事を確認すると満足そうに杖を持っている手を掲げて。
「あたしはこの世界が変わり行く様を見てきました…全てお話ししましょう!そして勇者たちに導きを…」
「見てきた…って事は、もしかしてエリさん…」
「やっぱりNPCじゃなくて…取り残されたプレイヤーさん…?」
声を張り上げるエリを見ながら、リュートとエンが小声で話をする。エリはそれをさらりと聞き流し。
「さあ!あたしの占いの能力をもって…導きを!」
声を高らかに張り上げると、手にしていた杖を砂の上に立てた。
そして、もっともらしい呪文のようなものを口元でもぞもぞと呟いたかと思うと、
「えい!」と言う、掛け声とともに杖から手を放した。
杖は一瞬そのまま制止したかと思うと、ゆっくりと…右方向へと倒れていく。
全員が静かにその様子を見つめる中―――エリはその倒れた杖を拾い上げて、堂々とした声で叫んだ。
「さあ!我々の行くべき道は右側つまり、都に突如出現した”駅前”ですっ!!」
ゴ―――――ン…。
エリが叫んだと同時に、都に広がっていた石化の霧が晴れる事を示す鐘の音が鳴り響いたのだった。
■Search:The station square 〜駅前〜
「なんで皆、違う場所に行っちゃうんだろ?」
「占いとか言って目の前で棒倒しなんかされたら誰だって…」
「ま、いいんじゃない?わたしは元々ここを探してみるつもりだったから♪」
駅前への道を歩きながら、エリ、シズカ、イヴの女性キャラ三人衆は、
互いの簡単な自己紹介をしたり今までのことを話したりして、比較的打ち解けあっていた。
しかし何と言うか。打ち解けたのは良いのだが…。
「いやー…実はさ、あたし今度のイベントの原稿のネタ探しにこのゲームに参加したのよねー…
そしたら何?いきなりログアウトできなくなってさ!もーびっくりしたの何のって!」
「イベントって…エリさんリアルで何かやってるの?」
「ん〜?ってゆーか………コミケ?」
「こ、こみ…?」
あっさりと言うエリに、シズカはきょとんとした顔を向ける。
イヴはなにやら納得したようで、何ともいえない笑みを浮かべていた。
「ま。どうしよっかって思ってたら…なんか外から調査隊って感じであなた達が来たのよ」
「それで後をつけてきたってわけ?」
「だって楽しそうなんだものッ!冒険よ冒険!魔王を倒すのよ!パーティ組んで!」
「楽しそうって…困ってるヤツもいるんだから…」
「もー!シズカちゃんってばなかなか真面目な事言うのね」
別にいたって普通の事を言ったまでなんだけどな…と、シズカは内心思う。
なんとなく、どうせどこに行ってもバグでどうにかなっているかもしれないのだから…と、
駅前を選んだのだが、どうにもこの雰囲気に馴染めないのだった。まあその理由は一つなのだが。
そうこうしているうちに、三人は”駅前”に到着する。
そこはどう見ても見慣れた渋谷の駅前の風景で、ゲーム中なんだか外なんだか一瞬わからなくなる。
イヴは特に、渋谷の近くに住んでいることもあってなんとなく楽しい気分になる。
「…渋谷といやハチ公だよな…聖女のご加護がありますよーに…」
「そっか♪ハチ公の変わりに聖女があるかも!」
「そうよ!それよ!」
三人は足取りを早めて、現実世界でハチ公のある場所に向かう。
見上げた場所に109が無いのがどうにも違和感を感じるのだが、そこはそれ…当たり前の事だ。
バタバタと駆け足でハチ公の前に三人並んで走り込んだのだが…
「って、なにこれ…?!」
「ハチ公でも聖女でもなく…」
「さ、坂本竜馬が何故ここに?!」
現実世界でハチ公があるはずの場所には、何故か高知の桂浜にあるはずの坂本竜馬の像が、
ずーんと聳え立ってどこか遠いところを見つめていたのだった。
「バグの仕業とは言え…なんじゃこりゃ―!?」
「いっそ西郷さんでも良かったのに、なんで竜馬なんだろ?」
「竜馬かー!いいなー!幕末最高ッ!あたし今度、新撰組本出そうかなーとか思ってて…
って言うかさ!さっきのヤトさんとライさんの外見イメージで本出せないかな♪美形二人…最高v」
なにやらはしゃぐエリ。幕末だとか新撰組だとかは別に良いのだが、
その後にくっついてくる”本”と言う単語がなんともすっかり素になっていると言うか。
「でも困ったわねぇ…ハチ公像の変わりに聖女があればな〜とか思ったんだけど…
だって、見た限りじゃそれっぽいものなんか無いじゃない?」
「そうだよな…じゃあ駅の中探してみるか?」
「賛成!誰も居ない駅!なんかネタになるわ♪」
「なんでもネタになるのね」
「ええ!それでこそ腐女子ってもんですから!」
エリはガッツポーズを作り、にこやかにイヴに笑いかけたのだった。
そして再び、三人は駅の中へと入って行く。
見た目は現実世界のそれと変わらないのだが、まったくの無人と言うのは空恐ろしい雰囲気がある。
深夜や早朝で人が少ない風景は見たことはあるのだが…誰も居ない状態は見たことは無かった。
「改札通っても怒られないよな?」
「さあ…でも券売機で券を買えるとも思えないけど…」
「お金ありませんしねー…」
「とりあえずものは試しって事で俺が先に通ってやるよ!」
シズカは長い髪を紐で縛って気合いを入れつつ、駅の自動改札の前に立つ。
全てストッパーは開かれていて、自由に通れそうな雰囲気なのだが…いきなり何か起こるかもしれない。
じっと改札を見つめ…シズカはドキドキしながらゆっくりとその歩みを進めた。
切符も定期も入れずに、その名の通り静かに進む。
イヴとエリが見守る中…無事にシズカは改札を通り抜けることに成功した。
「大丈夫みたいだな!」
「じゃあ次はわたし、イヴ、行っきま〜す♪」
それに続いて、イヴとエリが改札を通る。
そしてシズカと三人でじっと顔を見つめ合い無事を確認し、電車のプラットホームに向かう。
誰が指示したわけではないのだが、三人ともが自然にそちらに足を向けて歩き始めていたのだ。
そして…プラットホームへと足を踏み入れた時。
『―――番線に、電車が参ります…危険ですので白線の内側までお下がりください―』
どこからともなく、構内アナウンスが流れてくる。
驚いて咄嗟に身構えた三人の耳に電車が近づく音が聞こえ、目には見慣れたカラーの電車が映る。
あきらかに無人の運転席を視界にとらえ、顔を見合わせる三人。
まるで三人の為に入って来たかのようなその電車は、ゆっくりと動きを止め…そして全てのドアを開いた。
「誘ってるのかしら?」
イヴがどこか面白そうなものを見るような表情で目を細める。
「まあ、罠という可能性と…正解への道という可能性とありますね」
「あんた占い師なんだろ?占ってどっちかわからないのか?」
「いいですよ?占っても」
思わず言ってみたシズカだったが、どうせまた杖を転がす棒倒し占いをやりそうなエリを見て、
苦笑いを浮かべたままでそれを断った。
「ま。罠だったら罠で…なんとかなるでしょ♪」
「そうだな…乗らない事には進まない気がするしなー…」
「じゃあ乗ってみましょうか」
何かがあるから、こうやって電車が入って来たのだろう。
例えそれが何かの罠だったとしても…それを危険に思うよりも、乗ってみたい好奇心が勝っているシズカとエリ。
イヴはというと…もしもの事を考えて、今回も分身を現実世界に残すという保険もしっかりかけていた。
しかも、今回はその”保険”にも動いてもらっているのだ。 今のところ、動きがあったような様子は無いのだが。
三人は相談の結果それぞれ、別々の車両に乗ってみることにした。
同じ車両に乗って、全員一緒に罠にはまるという可能性も考えて、の事だ。
バラバラになる事に多少の不安は感じつつも…互いに手を振って誰も居ない車両へと足を踏み入れる。
いつもほぼ満席でゆったりと席を選んで座るなどという事が出来ない現実世界と違い、どこでも好きな場所に座れる。
イヴは真ん中のシートに、シズカは出入り口の脇のシートに、そしてエリは吊り革につかまり窓の外を見た。
それと同時に、電車の扉が音を立てて閉る。
『電車が発車します。お気をつけてください。なおこの電車の次の停車駅は―――』
車両の内部に、そんなアナウンスが流れた瞬間…。
『ログアウトされました。再度、ログインして下さい。』
ピー…という電子音が聞こえた瞬間、イヴははっと目を開く。
目に映った景色、そこは紛れも無い現実世界の、ログインの為の専用部屋だった。
「よりにもよってログアウトだったのね…」
イブは立ち上がると、少し固まっていた身体を解そうと腕を大きく伸ばした。
ログアウトされた事に気付いた関係者が二人、そんなイヴの元へ慌ててやってくる。
そして、すぐに再ログイン出来るようにするので早く戻ってくれとだけ告げて去って行った。
「…ふぅん…なんだかあの慌てた様子、怪しいわね」
腕を組んで訝しがりながら、イヴは椅子に腰を下ろした。
こちらにいる分身から得る情報も現在のところ特に変わった事も動きも無いという事だった。
もし何か悪さをしている者がいれば魅了して手出しできないようにしておくつもりではあるのだが…
『どういうことかしら?』
そんなイヴの耳に、少し遠巻きに誰かが抗議するような声が聞こえてくる。
もしかしたら、今まで一緒に行動していた誰か、かもしれないと聞き耳を立てる。
ゲーム内の声は登録されているヴォイスから選ぶ事もでき、実際の本人の声を変換している場合もあり、
声を聞いただけではそれが誰なのかは判断し兼ねた。
『…話が違うじゃない…だってこの企画は私の…』
企画?と、イヴは聞こえた単語に首を傾げる。
さらにその続きを聞こうと身を乗り出したのだが…ログインするように関係者から声がかかり、
仕方なくイヴは再びゲーム世界へと入ることにした。
■Encounter
霧が完全に晴れた都のコンビニで再び、駅前に向かった三人以外が集まって”聖女”を囲んでいた。
彼女の目覚めと同時に霧が晴れたことを考えても、彼女が”聖女”には違いないようなのだが、
”聖女”は、ある特定の事以外は自分の事もその他の事も何もわからないらしく、
NPCなのか、その後ろにPLがいるのかも、見た限り話した限りでは知る事は出来なかった。
以前関係者が言っていたNPCには自社ロゴが入っている…と言う話も、
こうあちこちバグだらけでおかしくなっているとそれもどうだかわからないものがある。
ただ、彼女の記憶の中にある話によると、魔王を倒してしまわない限りは夜になると再び石に戻ってしまい、
その夜の間は聖女の力も薄れて”石化の霧”もまた都全体に発生してしまうとの事だった。
「限定的な話題しか出来ない点を考えると…NPCという可能性が高いのでは…?」
「わかりませんよ?PLの意識を支配しているかもしれないですから」
「一度ログアウトしてみて調べてみるしかないでしょうね…」
セイとウタタが互いに自分の推理を話し合う。
「聖女さんを都から連れ出したとしても同じ事なんでしょうねえ…」
「わかりません。けれど私はここから外に出てはいけない気がするのです」
「まあ…危ない橋は渡らないに越した事はないからね?俺は薦めないよ」
「そうですわね…わたくしもそう思いますわ」
「んー!それにしても聖女ちゃんがコンビニに居たなんてなあ〜!チッ!」
”聖女”を囲んで話す、リュート、ライ、デルフェス、ヤト。
「イヴさん達はどうしたんでしょう…姿が見えないんですが…」
「そうだよな?今、セリとエンちゃんが見に行ってるけど…お、来た来た」
心配そうに眉を寄せるみなもとレンレン。二人の視線の先には、セリとエンの二人の姿があった。
「駅前には誰の姿も見えなかったよ」
「マジで!?どこ行ったんだ、イヴちゃんたち…駅の中は?」
「あの、それが中には入れなかったんです…シャッターが閉ってて」
二人からの報告を聞いて、その場の全員が心配そうに顔を見合わせる。
もしかして三人に何かあったのかもしれないと、最悪の事態が一瞬その脳裏を過り―――
『心配には及ばないわ!』
どこからともなく聞こえた聞き覚えのある声。なんとなく、最初の展開を思い出し…
すぐ近くに見える一番高い建物へと自然と全員の視線が流れて行く。
その先には案の定、エリを真ん中にして、戦隊モノのようにポーズをとるエリ、イヴ、シズカの姿があった。
「イヴちゃんエリちゃんシズカちゃーん!」
ヤトが嬉しそうに叫んで三人に手を振る。イヴはヤトに手を振って答えると、
エリとは違い、軽やかにジャンプして綺麗に着地する。シズカも同じく、身軽に飛び降りる。
最後に残ったエリはと言うと…しっかりとイヴにクギを刺されているらしく、ちゃんと階段を使っていた。
「やあ、イヴちゃんエリちゃんシズカ君。どこ行ってたんだい?」
にこやかに言うライ。一人だけピンポイントで”君”と呼ばれたシズカは少し固まる。
ライの顔を見ると、『俺の女性を見る目は本物だよ』と言っているようだった。
「それが、駅から電車に乗ってみたら強制ログアウトされちゃったのよね…
まあ、詳しい事は長くなるから置いといて…ついさっき再ログインして来たところよ」
「うわあ〜駅に行ってたらそんな事になったんだ…」
「あの…全員揃ったところで”聖女”さんからもう少し詳しいお話を伺おうと思うのですが…」
少し控えめに手をあげて発言をするセイ。
全員に異論があるはずもなく、揃って”聖女”に視線を向けた。
「私の記憶にある限りでお話します。私は魔王に唯一対抗し得る力をあなた方に授ける事が出来ます…
その力をもって魔王を倒し、この世界に平和を授けてください…でなければ霧が世界を支配してしまう」
「失礼、私、セイと申します…お聞きしますがそれは具体的な武器のようなものをいただけるんでしょうか?」
「いいえ…倒す事の出来る力を授けるだけです」
「おそらく魔王への攻撃を有効化するプログラムのようなものでしょうね」
「って事は、聖女ちゃんに力を貰えば誰でも戦力になれるって事だな?オッケー!ヤト様に任せとけ♪」
ウタタの言葉を聞いて、グッと指を突き出すと同時にウインク一つのヤト。
「あたしで何か力になれるのなら…」
みなもは少し控えめにそう告げて聖女に微笑む。
「聖女さんの為にも、俺は協力を惜しまないつもりだよ?だから安心して…ね?」
優しく手を取り、口付けながら微笑むライ。
「そうですわ!わたくしが必ずこの世界に平和をもたらしますわ」
両手を組んで祈りを捧げるように言うデルフェス。
「僕にも何か出来るようでしたら、やらせていただきたいと思います」
セイは丁寧に聖女と、そして集まっている面々へとあ弾を下げた。
「ま、乗りかかった船だし?わたしも本領発揮させてもらうわね♪」
明るく元気に微笑んで、イヴが言う。
「何が出来るかわかんねーけど、俺も頑張るからな」
長い髪を少し鬱陶しそうに後ろに送り、シズカは笑う。
「僕はそんなに力が無いですが…全力で皆さんをお守りする事にしましょう」
その場にいる全員の顔をゆっくりと見つめながら、ウタタ。
「俺も俺の力を必要としてくれるのなら…喜んで」
静かに、しかしはっきりと力強くそう言ったのはセリ。
「よーし!なんかこういうのっていいよな!俄然やる気出てきたぜ!」
『ケッ…遊び人がどんな戦力になるってんだ』
「こら!やめなさい、ノイ!」
どこか弾んだ調子で言うレンレンに、エンとその人形がツッコミを入れる。
「私は最後に皆さんでゆっくりとお茶が出来ればと思っていますので…お付き合い下さいね」
にっこりと微笑みながら、リュートは頭を下げた。
「…もー!こういうの大ッ好き!さあ皆の者、我が御告げを聞いて旅立つが良い!
聖女が繋ぐ…旅の仲間だ…――あー!言ってみたかったの!これ、言ってみたかったのー!」
なにやらはしゃぐエリ。最初と違い、もう誰も彼女を怪しんだりツッコミを入れる者はいなかった。
全員の気持ちが盛り上がり、月並みな言葉ではあるが心一つになる。
このままなら、確実に魔王に勝てそうな、そんな予感が全員の心に宿っていた。
しかし…。
「皆さん、もうすぐ夜が来ます…夜の間は霧は晴れません…私も再び石になってしまいます…
魔王の力は夜に強くなります、ですから”魔王の城”へ行くのは夜明けまで待って下さい…」
今にも踏み込みそうな勢いをそいだのは、他ならぬ”聖女”の言葉だった。
確かに、ゲームの中ではあるが時間は流れて西の空を見ると日が暮れはじめている。
「確か…一度だけなら自分の意志でログアウト出来るって言ってたわよね?」
「ええ、一度だけ」
「イヴ様のお考え、わたくしにはわかりましたわ」
「俺にもわかります…夜のうちにゆっくり考えましょう」
「え?え?悪ぃ…俺にはわからねぇんだけど…良かったら説明…」
「もしもの事もありますから、ログアウトしたいならしていいよ、って事です…よね?」
『エン、先に言ってとくけどボクはエンと一緒だからな』
「…では皆さん、夜明けまでじっくり考えて…ここに集まりましょう?私はお茶を飲みながら過ごします」
「じゃあ俺は誰と一緒に過ごそうかな♪シズカちゃんにしようかな♪」
「俺は女性となら誰とでもご一緒したいね…女性となら…ね」
皆、口々に話し合って今後の行動を決める。
誰かと一緒に近くの村で過ごす者、一人で過ごす者、この場に残る者…
まだわからないが、ログアウトする者もいるかもしれないだろう…そう思いながら散って行く面々。
やがて来る次の夜明けと共に、
果たしてどんな者達がここに再び集うのだろうか…。
■セーブ■
〓continue〓or〓finish〓
<次回予告>
見事に”聖女”を探し出す事が出来た仲間たち。しかし時間は夜を迎えてしまった。
夜明けと共に、ついに”魔王の城”へと乗り込むことに!
しかしそこに待ち受けていたのは意外な者だった――?!かどうかは定かでは無い…
□■■■■■■□■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
■ 登場人物(この物語に登場した人物の一覧) ■
□■■■■■■□■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
◆泉の広場探索パーティ『ヤト様とエンちゃんとその他約1名(仮名)』
エン:銃士
【1431/如月・縁樹(きさらぎ・えんじゅ)/19歳/女性/旅人】
ウタタ:白魔法風使い
【2328/鈴森・転(すずもり・うたた)/539歳/男性/鎌鼬壱番手/ゲームマスター】
ヤト:武術士
【2348/鈴森・夜刀(すずもり・やと)/518歳/男性/鎌鼬弐番手】
◆教会前の公園探索パーティ『緑茶・THE・カルテット(仮名)』
みなも:僧侶
【1252/海原・みなも(うなばら・みなも)/13歳/女性/ 中学生】
デルフェス:女剣士
【2181/鹿沼・デルフェス(かぬま・でるふぇす)/463歳/女性/アンティークショップ・レンの店員】
リュート:白魔法使い
【2209/冠城・琉人(かぶらぎ・りゅうと)/84歳/男性/神父(悪魔狩り)】
セイ:魔剣士
【2412/郡司・誠一郎(ぐんじ・せいいちろう)/43歳/男性/喫茶店経営者】
◆駅前の探索パーティ『美少女戦隊vオトメンジャー(仮名:エリ命名)』
イヴ:召喚士
【1548/イヴ・ソマリア(いヴ・そまりあ)/502歳/女性/アイドル歌手兼異世界調査員】
シズカ:弓使い
【2320/鈴森・鎮(すずもり・しず)/497歳/男性/鎌鼬参番手】
エリ:占い師兼予言師
【2395/佐藤・絵里子(さとう・えりこ)/16歳/女性/腐女子高生】
◆コンビニ探索パーティ『ライと愉快な仲間達(仮名)』
セリ:白魔法使い
【2259/芹沢・青(せりざわ・あお)/16歳/男性/高校生・半鬼・便利屋のバイト】
レンレン:遊び人
【2295/相澤・蓮(あいざわ・れん)/29歳/男性/しがないサラリーマン】
ライ:武闘家
【2441/西王寺・莱眞(さいおうじ・らいま)/25歳/男性/財閥後継者/調理師】
※あくまで全員、現実世界のPLが誰であるかはまだ知らない状態です。
※パーティ名はライターによる創作です。実在のものとは関係ありません。(笑)
□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
■ ライター通信 ■
□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
こんにちわ。ライターの安曇あずみです。
この度は「剣を取ったらファンタジー?〜中編〜」に参加いただき誠にありがとうございました。
総勢13名の方にご参加いただけて、実に嬉しく、そして楽しく執筆させていただきました。
せっかく多くの方に参加していただいたので話をじっくりと考えさせていただこうと思い、
少し納品がギリギリになるまでお待たせしてしまいましたが楽しんでいただけたら幸いです。
今回、途中参加の方も数名加わってくださり、前回よりも仲間が増えております。
展開の都合上会話ができなかった方もいらっしゃいますが、執筆していないところで交流があった…
という事で楽しんでいただけたらな、と思います。(笑)
また、探索の部分のみパーティごとに別々の話となっておりますので、
他の方々がどんな探索を行ったのか興味がありましたら覗いて見て下さると面白いかも…です。
ちなみに、『緑茶・THE・カルテット(仮名)』『美少女戦隊vオトメンジャー(仮名)』
…の皆様のエピソードにて、現実世界での事件の話題に少し触れております。
こちらも興味がおありでしたら読んでみていただけると嬉しいです。
長くなりましたが、今回も本文が実に長くなりまして申し訳ありません。
ゆっくりと休憩を挟みながらのんびりと読んでいただければ…と思っております。
というわけで…次回で完結になります。
力不足で随分と矛盾点やおかしな点が多々出てきてしまっておりますが、やっと魔王との戦いになります。
また宜しければご参加いただけると嬉しいです。
>イヴ様
こんにちわ。この度は前回に続いてのご参加ありがとうございました。
駅前探索隊の女三人衆として行動していただいたのですがいかがでしたでしょうか。
駅から出る電車は外界へのログアウト手段という事で設定しておりましたので、
今回は強制ログアウトという展開になったのですが、楽しんでいただけていたら幸いです。
また宜しければ次回もご参加いただけるとうれしいです。
:::::安曇あずみ:::::
※今回、個人宛てメッセージはログイン名で書かせていただきました。
※誤字脱字の無いよう細心の注意をしておりますが、もしありましたら申し訳ありません。
※ご意見・ご感想等お待ちしております。<(_ _)>
|