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■【庭園の猫】ひとひらゆえに確かなもの■

秋月 奏
【2678】【七伏・つかさ】【交渉人】
庭園内、東屋。
今日も今日とて柔らかな陽射しのみがある庭園内で話すはふたりの人物。

「…また、最近は静かだねえ」
「……暇だ、と言いたい気持ちはわかりますけれど。駄目ですよ、また抜け出しちゃ」
「…それ、言われると痛いんだけどね…そうだ。では、好きな文字の話でもしようか」
「好きな文字、ですか?」
「ああ、例えば……君なら何を思い浮かべるんだい?」
「……えーっと……」

少女は考えながら「猫、でしょうか…」と呟く。

その答えに、本人――猫は軽く頷きながら、微笑う。

「そうやって誰しもに好きな"一文字"がある。だから、思考の末に見つけてみるのも悪くはない」
「ええ……けれど、そういう話を好んでする方が居れば、の話ですね」
「…ま、それはふたをあけてのお楽しみ、というものだよ?」

さて。
好きな一文字――貴方なら、何を思い浮かべますか?


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と、言うわけで猫や少女、もしくは鈴夏と
好きな一文字、について話してみるというお話です。
どのように好きなのか思い出話をお聞かせくださいね♪
尚、プレイングに、猫や少女、鈴夏、「絶対登場して欲しい」
NPCを記載していただけたらそのように対応しますので(^^)
(デフォでは猫が出てきます…人の姿で(笑))

募集人数は私のNPCの人数と同じく「1人〜3人まで」
個別文章の納品になりますゆえ募集人数が少ないのですが
もし宜しければ、ご参加、お待ちしております♪
【庭園の猫】ひとひらゆえに確かなもの

 確かなものって――なんだろう?
 何かを信用するって言うことは「確か」な事なのかな?

(だとしたら)

 だとしたらね……ボクにとっての確かなものは――。

 遠く遠くで、誰かの呼ぶ声が聞こえ、七伏・つかさは耳をそばだてた。
 だが、その声に反するかのように一人の人物が、つかさの袖を掴む。

 そして――……。

 捕まえられるのなら捕まえてみて?と言う様にもう一人が駆け出してゆき…つかさはそれを追いかける。
 何処なの?と言う声がつかさの居る場所と、誰かの居る場所二つで重なる。

 くすくす、くすくす……。

 影は微笑う。
 探す人物を待ち構えるように、密やかな笑い声で――。


                       ◇◆◇


 庭園。
 四阿(あずまや)には、一人退屈そうに伸びをする人物とそして――それを嗜める青年の姿があった。

「……そんなに退屈かい?」
「退屈ってんじゃないけどさぁ……良くまあ、こんな時間が止まってる様な所で毎日過ごせるなと感心するよ、あたしは」
 おや、と青年――猫は微笑い、真鶴・ほくとは「うっ」とその表情に言葉も無く、つまった。
 実際、何故此処に来たかも良く解ってはいないのだが……「なんや、呼んどるみたいやから行ってくれん?」と相方に言われてしまえば来ないわけにも行かず……。
 あーあ、と、ほくとが言いそうな所に、ふわ…と甘い匂いが漂ってきた。
 振り返ると、トレイにお茶とお菓子を乗せ、にこにこ微笑む――確か、道楽屋敷と言う大きなお屋敷のメイド嬢が居て、自然ほくとの表情にも笑みが生まれる。

「お待たせしました♪ 本日のおやつは…シンプルに生どら焼きにしてみました」
「生どらっ!? な、何、何でこう言うの作れんの?! これって売ってる物じゃないの!?」
 矢継ぎ早に質問を投げ出すほくとに、メイド嬢も瞬きを数回繰り返し。
 そして、再び笑顔を浮かべると、
「え…つ、作れますよ? 勿論、お店で売ってるものと比べたら味が落ちるかもしれませんけど……」
 と、微笑みながら、ゆっくりとトレイをテーブルの上に置いた。
 まっさかぁ!
 そう、言いながら、ほくとは目の前に置かれた生どらを食べ、猫がそれに続く。
 その後、「美味しいじゃん!」と叫ぶほくとと、うんうん頷く猫へ「何、何?」と弓弦・鈴夏と風鈴売りの少女が連れ立ってやって来て――お茶の時間は、かなり賑やかな時間へと、なっていった。


                       ◇◆◇


 追いかけっこは続く。
 影が走るから、つかさも影を追う。
 つかさが追いかけるから影も走り――何時しか、つかさは奇妙な場所へと迷い込んでいた。
 ただ、道路しかない場所。
 人っ子一人――いや、つかさと影たちを除けば誰も居ない、空間にぽつん…と立つ、大きな白い門。
 更に不思議なのは門が閉ざされておらず、誰かが来るのを待っているかのように開いていることだ。

「何だろ、これ……柳、知ってる?」
 呼ばれた影は、ふるふると首を振る。
 だが、面白そうだとも言い、入って行こうとするのを藤が止めた。
 ぴたり、と6体の影が意を汲んだかのように動きを止める。
 それを確認して、もしかしたら、と藤が更に言葉をかける。
 此処は狭間の入り口かも知れないと。
「狭間? 此処には誰が住んでるのかは…解る?」
 噂話だが――と、藤はつかさへと話す。
 此処に住む住人の話を。
 風鈴を持つ少女と黒猫の話を――そして、確か今は、とある話をする相手を募集している、とも。
 微かに、つかさの瞳が面白いものを見つけた猫のように煌く。
 子供の素直さで面白そうなものには何でも出逢ってみたいと思っていたし、中の住人にも、どのような面々なのか逢ってみたくもなっていたから。

 だから、つかさは立ち止まって微動だにしない他の影達へと聞こえるように、
「ふぅん……柳も面白そうだって言ってたけど、本当に面白そうじゃん♪ 良し、突撃ーー!!」
 大きな声を出し、そのまま全力で門と門から続く道を駆けぬけていった。
 今度は逆に影達が、大慌てでつかさを追い……やがて、それらは小さく、小さく見えなくなり、門は、つかさ達を待っていたかのように開いていた門戸を、ゆっくり…ゆっくりと閉じていった。


                       ◇◆◇


「そう言えば」
 はた、と気付いたように道楽屋敷のメイド嬢が声を出した。
 その声に引寄せられたかのように、猫、少女、ほくと、鈴夏の4つの頭がくるりと振り返り「ん?」と問いかけ、メイド嬢をギョッとさせてしまったが、それに気付いた少女が怯えさせないよう、やんわりと問い掛けた。
「どうか、しましたか?」
「いいえ、何故此処に来る事になったか旦那様に聞いてなかったな、と思って……」
「ああ、そう言や、あたしも聞いてなかったなあ……呼んでるからって言われるばかりで」
 メイド嬢の呟きに、ほくともふと考えていた疑問を思い出し。
 あれ?と、鈴夏がその二人に聞くように問い返した。
「私も…確か、猫さんに…呼ばれた、んですが…真鶴さんが来るということで」
「……ゑ?」
 くるり。
 今度は女性3人の顔が一斉に猫へと向けられる。
 ……かなり、疑ってかかってるのを、ありありと表情に映しながら。
 だが、当の本人は涼しい顔をするばかりで、少女が心配そうな顔をしているのさえも軽く流してしまう始末……。
 少女らの、唇からあきれ返った様な溜息がそれぞれ、音を違えてもれた。
「……まあ、もう暫く待っていておくれ。今回は風鈴の音さえもものともしない、元気な方が来る筈だから」
「…あのさ、なら初めからそう言ってくれたら、あたしたちも協力するんだってば」
「「全くです!」」
 ほくとの、全く持って正論な言葉と、メイド嬢と鈴夏の綺麗にハモった声に笑いながらも猫はとりあえず、と指を組んだ。
「もう、じきだ。元気な声が聞こえてくるのは――ほら、駆けてくる足音が聞こえてくるだろう?」
 その言葉に首を傾げる4人だったが(実際に聞こえていなかった、と言うのもあるのだけれど)、猫の言葉を肯定するかのように、一人の少女が駆けて来、そして、
「こんにちはっ♪ ねぇ、猫と少女ってどの人かなぁ?」
 と、息を切らせる事無く――穏やかな微笑を浮かべたまま、問い掛けた。


                       ◇◆◇


「まずは自己紹介だよねっ。ボクは、七伏・つかさ。影達と追いかけっこしてたら此処まで来ちゃって……んで、ひとつの影から此処の話も聞いてね? 面白そうだから寄ってみたんだ♪」
「それは何より。では……御用は私だけなのかな?」
「へ? 私って……ボクが用があるのは猫と少女だよ?」
 キミは、どう見たって猫じゃないじゃない?と呟きながら、つかさはメイド嬢が淹れてくれた紅茶を一口、飲むと、猫以外の面々へとつかさは名前を聞いていく。
 話に聞いていたよりも人数が多いような気がするけれど、どうしてだろう?と考えつつも、再び紅茶を飲み、差し出された生どらを一つ、食べた。
 すると、それらを待っていた猫が、ゆっくり言葉を挟む。
「だから私が猫だよ。何を話してくれるのか…凄く楽しみなのだけれどね?」
「……何だか、人の姿で"猫"だって言われても疑っちゃうんだけど……でも、そうだね……ボクの好きな文字は影。影はもう一人の自分で、ずっと一緒にいてくれる存在でもあるんだ♪」
「確かに、影と自分は切っても切り離せないものだからね」
「うん♪ でも、ボクの影は時々かくれんぼしちゃうけどね」
 あっさり、そんな事を言うつかさに、ほくとと鈴夏は「ええっ!?」と声をあげる。
 その吃驚した姿に「や、隠れはしちゃうけど、でも必ず戻ってくるから!」と言うと、ああ、良かった〜とどちらからとも無く声が返って来て、つかさは楽しそうな表情をますます楽しそうな表情へと変えていく。
「影はその人や物の一部だよ。日向に行けば影はよく見えるし日陰に行っても影は影の中に確かに存在している」
 見えていても見えていなくても存在を感じる――一番に確かで、確実だと、つかさ自身も言えるもの。
 それが影だから。
 見てくれる?と、つかさは此処に居る面々に自らの影――7つに分かれている影を見せた。
 ゆらゆらと、陽炎のように揺れる影達は、先ほどつかさが駆けてきた時のように、元気に挨拶をしてみせると、周りから「おお……」と言うざわめきが生まれた。
「これがボクの影達。一番最初から、藍・藤・湊・縹・柳・牡丹・蘇芳。簡単に言えば藍は真面目、藤はおしとやか、湊は元気、縹は悪戯っ子、柳はマイペース、牡丹は消極的で蘇芳は無愛想」
 でも、これがボクの一部、もう一人のボク。とても大切なものなんだ。
「……凄いな、此処まで影が分かれるというのは。そして、これが君の大事なものでもある、と言う訳か」
「うん。だからキミ達にもたまに影を見て欲しいなって思ったんだよ? 藤からね、話を聞いた時に――ああ、これは影の話しかないなって思えたから♪」
「ふふ」
「何?」
「いや、本当に君と影は楽しそうだと思ってね?」
「ホント!? 本当にそう思う?」
「勿論」
 猫は笑い、影を見る。
 黒い、夜を切り取ったようなその姿に、己の姿を思い返しながらも――ただ、穏やかに。
 つかさは、猫のその表情を見、傍へと寄り、服の裾を引っ張った。いつも、影がしてくれるように、くいくいと軽く。
「何かな?」
「あのね、皆にお願いがあるの! 今から、ボク達走るから……影踏み鬼をやって欲しいのね?」
「影踏み鬼? 別に良いけれど…良いのかい、それで」
「うん、ボクは話し終わったら遊んで欲しくもあったから♪ じゃあ……行くよっ? 早く捕まえてね〜♪」
 でないと、鬼は何時までも変わらないよ?と、ある意味、深い言葉を残しながらつかさは駆ける。
 まるで、人では無いような身軽な身体で、飛ぶように。
「さて…じゃあ、行くかい?」
「この為に、あたしら呼んだんでしょ? 良いよ。必ず、一番に鬼交代させてやる〜!!」
 と、ほくとが言えば
「たまには、幼い頃にやった遊びをやるのも良いものですね」
 と少女が言い……二人が追う様に駆けていく。
「んー…私、逃げるのは得意なんだけど……」
 この言葉は鈴夏。
 が、「でも、ま、楽しそうだし♪」と言いながらメイド嬢の手を掴んで走り出した。
 それを見送り、漸く猫も黒猫の姿へと変わり駆け出し……何時、終わるとも知れない影踏み鬼は始まった。

 つかさにとって何より、一番に確かなもの。
 自分自身と、決して自分とは違う――7つの影を従えて。
 ありとあらゆる場所から追いかけてくる、皆の目を上手くくぐり抜け、逃げながらも。



―End―

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■   登場人物                  ■
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【2678 / 七伏・つかさ  / 女 / 27 / 交渉人】

【NPC / 猫 / 男 / 999 / 庭園の猫】
【NPC / 風鈴売りの少女 / 女 / 16 / 風鈴(思い出)売り】
【NPC / 弓弦・鈴夏 / 女 / 16 / 高校生/式神使い】
【NPC / 真鶴・ほくと / 女 / 17 / 女子高生】
【NPC / 道楽屋敷のメイド / 女 / 13 / 道楽屋敷のメイド】
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■        庭 園 通 信          ■
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こんにちは、ライターの秋月 奏です。
今回がこちらのゲーノベへのご参加本当に有難うございました!

シチュノベでお会いした七伏さんとゲーノベで逢えるなんて
本当に嬉しくて……遊びに来てくださったこと、猫と少女も
感謝しているようです、重ねての御礼となりますが
本当に有難うございます♪

最後はNPCとの影鬼をご希望でしたので、女の子たちを
総動員でお迎えして、それに猫がプラスして、と言う形と
なりましたが少しでも楽しんでいただけたなら幸いです(^^)

それでは、また何処かで逢えます事を祈りつつ……。