■花見に行きましょう■
滝照直樹 |
【0506】【奉丈・遮那】【占い師】 |
3月下旬、ポカポカ陽気の洗濯日和。
あやかし荘管理人因幡恵美は、洗濯物を干している。嬉璃はぬくぬく縁側でひなたぼっこ。
そろそろ本当の春も近い。
あやかし荘にある桜が、少しずつ綺麗な花を咲かせている。
「そろそろあの時期ぢゃな」
「ええ、そうね嬉璃ちゃん」
ふたりはにっこりと微笑む。
「花見をするべく皆を呼ぼうぢゃないか」
「はい、場所は大所帯を考えて近くの桜並木公園が良いでしょう」
「うむ。今から楽しみぢゃ」
桜はそろそろ8分咲きを知らせている。心躍る良い天気である。
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花見に行きましょう 2004
【前日】
お誘い:あやかし荘で
恵美と嬉璃がそう決めたときには、近くに数人遊びに来ている人がいた。元から住民の大曽根千春と縞りす、よくあやかし荘に遊びに来る田中裕介に鈴代ゆゆだ。
「お花見ですか、それは良いですね」
と、お茶をすする裕介。
「そうですねぇ」
同意する千春。
「お弁当など作るととても賑わいますね」
にっこり恵美がいう。
「わたし、千春さんのお手伝いするでぃす!」
縞りすはうきうきしている。
「では、私は他の方々に電話してきますね」
恵美は席を外した。
「さて、俺も……数人に電話してみますか」
裕介は庭にでて、携帯を取り出し誰かに電話をしていた。
場所取り
後に奉丈遮那も参加するという仕事先からの電話も入り、まずは見晴らしの良いところを取るべく調査隊と、目印を置くことに。
裕介の方には、何かモガモガ動く物体があった。ゆゆと嬉璃と一緒に歩いていく。
「木の根は弱いから気を付けてね」
とゆゆが促す。
「わかりますか?ゆゆさん」
「皆元気だよ♪特に元気なのはあの大きな『人』かな?」
裕介の質問にゆゆは、見頃の大きな桜を指さした。
「一緒にたのしみたいみたいだよ♪」
「なら決まりぢゃな」
「ええ」
裕介は、モガモガ動く物体を木に吊し、三人は去っていった。
「みなさんひどいですぅ〜」
謎の物体から顔を出したのは三下忠。若返っても相変わらず扱いはぞんざいである。
……此は避けられぬ宿命と言うものだろう。
――まぁ楽しくやりましょう
そんな桜の声が聞こえた気がする三下だった。
「楽しく……ですか……?」
はぁと蓑虫状態の三下はため息をついた。
【午前9時】
一番乗りは天薙姉妹だった。2人とも春を意識した桜の模様の着物である。
既に亜真知は和菓子の『桜餅』と『おはぎ』、洋菓子の『ドライフルーツのタルト』、『シフォンケーキ』を持ってきている。撫子は恵美と一緒に台所で一緒にお弁当を作る約束をしていた。2人揃って管理人室にて楽しくお料理している。
一方、千春とりすは、自分の台所で一緒に花見弁当を作っている。これだけいれば何とかなるだろうと男性陣は、お酒やジュースを現場まで持って行く事にした。現場には吊られている三下にゆゆが待っていた。
亜真知は嬉璃と一緒に饅頭うさぎと戯れている。
恋人の会話とお邪魔ナマモノ
奉丈遮那は占いの仕事で夜遅くに帰っていた。しかし花見に参加する意志は変わらないらしい。
「ゆっくり休んだ方がいいですよ」
「そうも行きません……だって」
――恵美さんと一緒にいたい
とは言えない遮那君。
かなり仕事が忙しかったのか一睡もしていないようだ。ふらつく彼を恵美が抱き留める。
|Д゚)……
ナマモノはこっそりその会話を覗き見して…
|Д゚)ノパチリ
しっかりデジカメに収めるナマモノであった。
【午前10時】
2番目には相澤蓮が、箱いっぱいのお菓子とつまみ、ジュースと酒を積んだ車で登場する。車の方は後々取りに帰る方向にしているようだ。もし飲酒運転で捕まったら、又会社を首になりかねない(とある事件の冤罪で首になっている事は本人自体忘れているが本能で其れは避けているのだ)。匂いを嗅ぎ付けたのか、蓮の間の猫達がじーっと蓮を見ている。その数5匹かそれ以上
「欲しいのか?」
蓮が訊く
「にゃ〜」
ステレオ否、サラウンドで答える猫。
「待ってろよ」
と彼は、猫が食べるだろうと思われるつまみを上げた。猫は喜んで持って帰る。
「ありがとうの一言無しかよ!」
「にゃー」
「後に言われてもなぁ」
――ああ、猫ってそんな奴らばっかだなと頭をかく蓮だった。
丁度4人のお弁当が出来たらしい。その合図が管理人室と千春の部屋で聞こえた。
【午前11時】
男性陣が一通り揃ったところで、重い荷物などを桜並木公園まで運んでいる。お祭りになれている住民が多いし、かつ去年も花見をしているので楽なのだ。
茣蓙をひいて、重しを地面に刺した。と言うか、どう見ても投げナイフそのものに見える。蓮の間から天然剣客が適当な物を見つけてきたのだろう。
「準備の最中ですか?」
と、のんびりとした神父服の男と、少し春らしい洋服に身を包んだ美人がやってきた。
「先生、麗花さん」
裕介が駆け寄る。
「本日は楽しみましょう。ね、麗花さん」
「は、はい……」
どうも麗花の調子がおかしいようだが。このさい気にしない。
わいわい和やかなムードの中、荷物を運び、蓑虫三下をおろして、真ん中に4人が作ったお弁当。そして、既に席が決まっているような感じに皆が座った。時計回りで、恵美、遮那、嬉璃、裕介と麗花に似非猊下、らせん、りす、蓮、撫子、義明、茜、亜真知にエルハンドだった(あれ?三下は?)。
只遮那だけは本当に眠たそうである。
らせんの膝にはかわうそ?が座っている。其れを羨ましそうに見ているりす。
周りには、猫たちと草間興信所の赤猫・焔、饅頭うさぎが楽しく遊んでいる。
蓮としては、このメンバーはかなり最高だなと思っていたりする。ただ、一部妙な雰囲気があるのは否めなかった。それは、眼鏡の和服美人と常備ハリセンを持っている女子高生が何か真ん中の高校生を挟み、火花を散らしているのだ。おそらく三角関係なのだろうか?と思ってみたりする。
――花見の最中にどう発展するか見物だろう。
お酒やジュースが注がれ、裕介が簡単に話しをしてから、
「乾杯」
と、音頭をとって花見が始まった。
【正午】
女性陣が男性陣にお酌しており、裕介がダウン気味の遮那に変わって、色々手伝いをしている。ゆゆは、飲み物を貰ってから八分咲きで綺麗な桜並木を眺めて歩いている。
【午後A3】遮那君ダウン 恵美さんの介抱
やはり仕事が遅くまでしていたためか、朦朧としている奉丈遮那。
「大丈夫?遮那君」
「だ、大丈夫です」
とは言っても、かなりピンチ。
気合いを入れようとして、コップのジュースを飲む。しかし其れで詰み。なぜならば、悪戯好きに義明と例のナマモノがお酒と入れ替えていたのだ。
――あれ?
周りがぐんにゃりする遮那
皆の声も誰も聞こえなくなる。
ただ、遠く意識の中、何かに触れてしまったと言うだけは覚えていた。
で、視点を変えて遮那君の状態をみる。
まずくらりと倒れ込んだとき、恵美が慌てて抱き寄せた。その時に彼は何とか立とうとして彼女の胸を触ったと言うことだ(当然悪戯する例の2人は写真を撮る)。非常事態だから損アコと出ドギマギするわけにも行かない恵美。ま、このまま膝枕をして、冷やしたおしぼりで彼を膝枕して介抱している。
恋人がいない人にとってこれほど羨ましい事はないだろう。
【お開き】
皆で一緒に片付けて、後はあやかし荘で二次会をするという方向になった。しっかりゴミは分別し、綺麗にしている。
蓮は何とか戻って来られたので、又二次会に参加するそうだ。
裕介は、ピクリとも動かない似非猊下を担いで、麗花と共に帰るという。
「お疲れ様でした〜」
と、皆があやかし荘で挨拶してから、各自の行動に移ったのだった。
【閉幕3】遮那君はというと…
目覚めると自分の部屋。隣には恵美が座っている。
「無茶しちゃ駄目ですよ」
「いえ、折角の……」
恵美は彼の口を指で止めた。
「もう、今は疲れを取って下さい。あとですね」
恵美は遮那の頬にキスをして、
「元気になったら、2人きりで又お花見か、どこか行きましょう」
「え、あ、はい」
と、今は返事するしかない遮那だった。
|Д゚)……
しっかりデジカメでその瞬間を撮っている謎生物がいたことをこの2人は知らない。
皆があやかし荘で色々やっている時、ゆゆは桜並木公園にいた。
彼女は、桜たちに、
「又来年ね♪」
と、言って自分の本体に戻っていった。
――来年もまたね。
桜たちも彼女に答えて、また花を咲かし、散らせ、眠りにつく。
End
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■ 登場人物(この物語に登場した人物の一覧) ■
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【0170 大曽根・千春 17 女 高校生】
【0328 天薙・撫子 18 女 大学生】
【0428 鈴代・ゆゆ 10 女 鈴蘭の精】
【0506 奉丈・遮那 17 男 高校生・占い師】
【1098 田中・祐介 18 男 高校生兼何でも屋】
【1593 榊船・亜真知 999 女 超高位次元知的生命体・・・神さま!?】
【1992 弓槻・蒲公英 7 女 小学生】
【2066 銀野・らせん 16 女 高校生(/ドリルガール)】
【2295 相澤・蓮 29 男 しがないサラリーマン】
【2821 縞・りす 15 女 高校生(神の使徒)】
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■ ライター通信 ■
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滝照です
『花見に行きましょう』に参加して頂きありがとうございます。
予定では、1ヶ月後になるはずだったのですが、筆のすすみが一瞬早くなったため、こうして、お花見シーズンにお届けできたことにホッとしております。
色々な方の花見風景が有りますので、是非そちらもご覧下さい。
弓槻蒲公英さま、相澤蓮さま初参加ありがとうございます。
又の機会が有ればお会いしましょう。
滝照直樹拝
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