■アトランティック・ブルー #1■
穂積杜 |
【2320】【鈴森・鎮】【鎌鼬参番手】 |
東京から出航、四国と九州に寄港し、最終的には沖縄へと向かうアトランティック・ブルー号。
手頃な値段で気軽に豪華客船気分を味わえる船をというコンセプトをもとに設計されたその船が、今、処女航海に出る。
旅行会社による格安パックツアーの客もいれば、四国や九州といった目的地に向かうついでに噂の客船に乗ってみたという客もいるし、船上で行われるライヴが目的の客もいる。それぞれ目的は違えど、乗船困難気味だったこの船に運良く乗船できた乗客たちの表情は希望と期待に満ちていた。
楽しい旅路になる……はずだった。
明るい表情をしている者たちが多いなかで、それ以外の表情を浮かべていれば、自然とそれに目が行くもの。
やたらと周囲を気にしている眼鏡の青年。
憂いをたたえた瞳でひとり海を眺める少年。
大きなぬいぐるみを抱き、通路に佇む幼い娘。
見るからに胡散臭そうなサングラスにスーツの男たち。
華やかな雰囲気を漂わせながらも時折、視線を鋭くする女。
難しい顔で何もない空間を見つめてはため息をつく少女。
あまり一般的とは言いがたい雰囲気に、つい彼らを見つめてしまったが。
「どうかしましたか、お客様?」
乗務員にそう声をかけられ、なんでもないと軽く横に手を振る。
何かが起こりそうな気配を感じつつ、動く豪華ホテル、アトランティック・ブルー号へと足を踏み入れた。
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アトランティック・ブルー #1
「きたぜ、憧れのハワイ航路〜!」
拳をグーに握り、くーっ、やりましたという顔で高々と掲げる。
そう、やったのだ、自分は。間違いなく、確かに。
近所の商店街の春の大感謝セールの一環である福引き。1000円お買い上げにつき、一度のチャンス。
夕飯の材料の買い出しで、お買い上げ金額は999円。消費税を含めても、999円。なんて微妙な、あと一円だし、常連だし……と泣きつくまでもなく、お子様には甘い商店街のオジサンオバサンは、おつかい偉いねと福引きをひかせてくれた。やったーとがらがらとまわして、ぽとんと落ちた玉は、黄金。
所謂、一等賞。
一瞬の間をおいて響いた、からんからんというベルの音。いつもより多く鳴らしておりますというそれのあと、みんなの拍手を受けて一等の賞品を受け取った。
豪華客船アトランティック・ブルー号で行く沖縄の旅。
行きは船で二泊し、現地沖縄のホテルで一泊、そして、帰りはらくらく飛行機で一気に東京へ。素晴らしい旅行内容ではあったのだが、そこは地元の商店街、二人分の余裕はなかったらしく、一般的にはこういった賞品のツアーは二名様一組であることが多いにも関わらず、一名様のみご招待だった。
買い物費用の出資者が誰であれ、買い物に行ったのは自分であり、また引き当てたのも自分。乗船したいというより、ひとりで大丈夫なのかと心配している長兄、次兄を押さえ、さらにはおみやげ代のお小遣いさえ手に入れて、こうして乗船するに至る。
ここまでの回想に浸っていると、不意に声が響いた。
「お客様、こちら、アトランティック・ブルー号は国内航路でございます。ハワイ航路でしたら、パシフィック・ブルー号をご利用くださいませ」
白を基調とした制服に身を包んだ青年だった。だが、言われるまでもなく、そんなことは知っている。……パシフィック・ブルー号のことは知らないが。
「……」
ぶー。ちょっと不満げな顔で青年を恨めしげに見あげる。……わからないのかな、雰囲気の演出というヤツ。……わからないんだろうなー。はう、と小さくため息をつく。
「……どうかなさいましたか?」
「なんでもないでーすっ。えーと、部屋は……」
乗船前の手続きをする受付で、船に関する簡単な説明とパンフレットを渡されている。が、既に心はハワイに……いや、船に飛んでいたため、あまりよくは聞いていなかった。せめて、自分にあてがわれた船室のことだけはよく聞いておくべきだったかもしれない。そう、番号だけでも。何号室なのかがわからない。
「実は……迷子ですか?」
「迷子というか……部屋の番号が……その……」
わからなかったり……と、もごもご言いにくそうに小さく口にすると、青年はああと納得するように大きく頷いた。近くにあった端末のカードリーダーの部分を示す。
「受付でブルーカードというものを受け取っていると思います。それをここに差し込むと、船内の情報、お客様の情報が表示されますよ」
「そういえば、そんなことも言ってたかも……それじゃあ、カードを差し込んで……あ、本当だ」
手渡されていたクレジットカードやキャッシュカードと同じ大きさのカードを差し込む。自分の名前と部屋の番号が表示された。他にもいろいろと項目がある。
「画面に触れることで操作ができます。このカードはルームキーにもなっておりますので、なくさないようにしてください。イベントの確認や劇場などの予約、インフォメーション等、様々な情報を得ることができますので、ご利用ください」
「へぇ〜」
なんだかよくわからないが、すごい。世の中は日々、進歩していると思いつつ、アリガトウゴザイマスと青年に礼の言葉を述べる。冗談ではなく本当に迷子になりそうだから、とりあえず、パンフレットを取り出し、船内地図で部屋までの道のりを確かめてみることにした。白を基調とした船の写真が載せられたそれを広げる。
船内地図の他に、船に関する情報も記載されている。
アトランティック・ブルー号。
重量は118000トン。最大乗客は約3000人。全長は約300メートル。幅は約45メートル。水面からの高さは約55メートル。こうやって数字を見ても、なんだかよくわからない。しかし、大きいことは、乗り込む時点でわかっている。見あげても足りないほどに船は巨大だった。
客室は1340室で、そのうちのひとつが自分の船室。福引きの賞品だから、わがままは言えないが、だからこそ、特等室にしてほしかったなという思いはなきにしもあらず。……そんな自分はとりあえず三等室だ。
船の施設に関しては、大小様々な七つのプール、映画館、劇場、遊技場、図書館、インターネットルーム、スケートリンク、ロッククライミングなどというものまである。他にもいろいろとありそうだ。
食に関するものは、メインとなるレストランの他に二十四時間営業で軽食やデザート等を楽しめるフードコーナー。食に関する費用は基本的に乗船料金に込みとなっているため、好きなとき、好きなだけ、どれだけ食べても無料という扱いになっている。……へぇ、無料なんだ……無料?!
ぱちぱちと瞬きをしながら、もう一度、文面を見直す。やはり、無料とあった。但し、アルコール類はそれに限らずとある。が、とりあえず自分には関係がない。
しかし、無料。どれだけ食べても、無料。これは、もう食べまくるしかないのではなかろうか……食い倒れ万歳(?)の如く。
とはいえ。
お腹が空いてもいないのに食べても仕方がないということで、それは後回しにすることにした。そもそも、二十四時間営業だと書いてあるのだし、急ぐ必要はない。何時まで無料というように区切られていたら、それこそ即座に突撃というものだが。
まずは部屋に荷物を置いて……それから、それから……。
鎮はうんと頷き、颯爽と廊下を歩きだした。
三等客室は思ったよりも広かった。ベッドがひとつ、机がひとつ、荷物をしまっておくクローゼットくらいしかないものと思っていたが、そんなことはない。内装はホテル並みに立派であるし、そう狭くもない。
部屋を見回し、気になる扉という扉を開けてみる。トイレに浴室、テレビが置かれている台の扉も開けてみる。そこには金庫があった。貴重品はここで保管をするらしい。机の引き出しも開けてみる。空っぽかと思ったが、筆記用具一式が入っていた。クローゼットも開けてみる。バスローブやバスタオルなどが置かれていたが、これは大人用。自分には明らかに大きすぎるサイズ。まあ、でも。大は小を兼ねるというから……いいか。
他に開けられそうな扉は、ない。
室内探索は早くも終了。次は……と見あげた天井に、開けられそうな場所を発見。椅子をその下へと持ってきて、手を伸ばす。……届かなかった。
「……」
それでも頑張って手を伸ばす。背伸びをして、ジャンプをして、最終的には風を利用して少しだけ隙間を作った。これは、所謂、換気を行う通気口の類だろう。船内に縦横無尽、それこそ迷路のように張りめぐらされているに違いない。鎮は鼬の姿になると、ぴょんと通気口へと飛び込んだ。
題して、通気口で行くアトランティック・ブルー号裏側の旅。
ってなわけで、れっつごー!
鎮は子供なら楽々、大人であるとかなり厳しい通気口を余裕で走り抜ける。思ったとおり、迷路のような造り。途中でいくつにも分かれ、場合によっては狭くもなるが、それでも今の自分には余裕な空間。各部屋へと繋がっているから、真っ暗ということもない。時折、人の声も聞こえるし、覗いてみれば、部屋の様子もわかる。とはいえ、自分と同じような造りの部屋を見ても、つまらない。ここはひとつ……人の姿ではもぐりこむことができない場所へ行ってみなければ。そう、例えば……特等客室とか、機関室とか……船長の仕事ぶりを拝見するのも悪くはない。
そうと決まれば、早速……と、行きたいところだが、どう進めばそこに辿り着くのかがわからない。結局、適当に進むしかないかと自分の勘が告げる進路を選ぶ。そのうち、美味しそうな匂いに気づき、ふらふらとそれにつられて進みだす。辿り着いた場所で、下を覗き込むと、やはりそこは調理場だった。たくさんの料理人たちが作業に勤しんでいる。その仕事ぶりに、夕飯は期待ができそうだとうんうんと頷いた。
調理場をあとにし、さらに通路を進む。適当に、右、左、上、下と進んでいると、気になる言葉が聞こえてきた。
「船長」
船長と呼びかけているということは、つまり! 鎮はささささっと移動する。網のような通気口の蓋の上に立ち、下の様子を伺った。たくさんの機械、たくさんの人。何がどういったものなのかよくわからないが、おそらく最新設備なのだろう。それらに囲まれ、白を基調とした制服に身を包んだ船員たちが働いている。
「どうした?」
答えた男が船長なのだろう。わりと距離が近いため、顔はあまりよくは見えない。よく見えるのは、その頭にかぶっている帽子か。
「いえ、航路のことなのですが……」
「その話はもう終わったはずだ。上の意向なのだ、私にはどうにもできないよ……お飾りの船長なのだからな」
船長の口調は、どこか自嘲染みているような気がした。不機嫌のような、ふてくされているような……そんな感覚を受ける。
「そんな言い方は……あなたの指揮能力を信頼して、この仕事を依頼したのです」
船長の隣に立っているスーツ姿の男の言葉。全員が白を基調としている制服に身を包んでいるなかで、その男の姿だけが浮いてみえた。船員ではないのかな、オトナってのいうのはいろいろと面倒なことが多いみたいだなと思いながらさらに様子を見守る。
「……君に文句を言うべきではなかったな。今の言葉は、忘れてくれ。しかし、航路については……もはや、どうにもできまい」
「ええ、わかってはいるのですが……」
男は俯く。
「そうか、君の家族は……あの船に……」
「……兄が。何事もないとは思います、いえ、あってはならないとも思っています。けれど、こと自然に関することは縁起を気にするものでしょう?」
「ゲンを担ぐ、確かに山に関わる者、海に関わる者に、それはある。だが、気象に問題はなさそうだ。荒れることも、霧が発生することもあるまい」
船長は答える。それを受け、男は顔をあげた。
「あの日も、そうでした」
それから、お互いはしばらく口を開かなかった。あの船とかあの日とか、そんな抽象的な言い方をせず、そのものズバリと口にしてくれればいいのに。話を聞いている鎮はそんなことを思う。
「……あの海域で、霧と共に彷徨う船を見たという噂もあります。……すみません、こんなことを言っても始まらないのに」
「少し休むといい。君は現場と上との仲介で疲れているだろうしな」
「はい……」
なんだ、もう話は終わりか。なんだか気になる話を口にしていたのに。じゃあ、自分も他へ行こうと動きだす。その際に、かりっと僅かに音をたててしまった。あっと思った瞬間、船長と男が通気口を見あげている。……あんたたち、耳が良すぎ!
「チ、チュウ〜」
ネズミの真似をしてみる。
「ネズミか……ネズミ?!」
はっとする二人になんだかヤバイ気配を感じた鎮は慌ててその場を立ち去った。たたたたたたっと走り、不意にはっとする。
足場が、ない。
足をばたばたさせても、もう遅い。ひゅーんと下へと続く通気口へと真っさかさま。途中、少し斜めになっていたため、滑り台状態でさらに降下、網に衝突。そこで止まるかと思いきや、網が外れた。
「?!」
ぽんっと空中に投げ出され、そのまま落下するも、どうにか、赤い絨毯の上に着地。ほっと息をついていると、何かが影となった。顔をあげると……靴底が迫っている!
この状態で踏まれたら……内臓が口からコンニチハもあり得る。鎮は慌てて人の姿へと戻った。
「ぎゃっ」
踏みっ。思い切り踏まれ、ぎゃっと悲鳴をあげる。と、踏んだ人間は驚き、慌てて足を退けた。
「ご、ごめん。だ、大丈夫?」
踏みつけた方も慌てている。何もないつもりで足を運び、そこに自分がいたのだから、それも仕方がないが……鎮は助け起こされながら相手の顔を見つめた。
「あ」
船長と話をしていたスーツの男だ。顔を覚えていたというよりも、そのスーツを覚えていたと言った方がいいかもしれない。
「?」
「あー、えーと、大丈夫です、大丈夫!」
「それはよかった。だけど、ここは一般のお客さんは立ち入りが禁止されている場所なんだよ。間違えて入って来ちゃったのかな?」
男は穏やかな表情でそう言った。鎮はきょろきょろと辺りを見回す。すぐそこに見える扉は、船長がいる部屋へと続くものかもしれない。
「は、はい……」
「それじゃあ、一緒に行こうか」
男に連れられ、廊下を歩く。最後はなんだか慌てて、風を作ることさえ忘れてしまい、ちょっぴり痛い思いもしたが、通気口の旅はそう悪くはなかった。次は裏の旅ではなく、表の旅を楽しもう。鎮はうんと頷いた。
保護者は一緒に乗っているのかと問われ、この見た目では乗っていないと答えると何かと面倒な事態が起こりそうな気がしたので、うんと答えると、今度は保護者のところまで送ろうと言いだした。それは困るので、適当に、遠くの方の人ごみを見つめ、あ、お兄ちゃんだとちょっとわざとらしく呟いて逃げるようにその場をあとにする。男はそれを信じたようで、追いかけてくるようなことはしなかった。
そういえば、せっかく船に乗ったというのに、海を眺めていなかったっけとデッキへと出てみる。そこそこに人はいるが、混雑しているというほどでもない。誰もが楽しそうな表情で、そのほとんどがカメラを手にしている。それに、ひとりではなく、大抵はふたり、もしくは三人、家族連れ。
「……」
なんだかちょっと……こう、胸のあたりが……なんともはっきりしない、この気持ちがなんなのか。寂しいわけではなく、楽しくないわけでもない。そうではなく、なんというか、この気持ち……疎外感?
もやもやしたものを抱えながら歩いていると、ふと、誰もが楽しそうだというのに、憂鬱そうな、あまり晴れやかではない表情で静かに海を眺めている少年の存在に気がついた。少年の近くには、誰もいない。
……そっか、ひとりなんだ。
もやもやがぱっと晴れた。そうか、ひとりでいる奴もいるんだ……と安堵にも似た感覚を覚えながら、てくてくと少年のもとまで歩く。
「なにしてんの?」
そんな声をかけると少年はすぐに反応を返した。海から自分へと視線の先を変える。
「海を……眺めていたんだ」
まんまだなと思いつつ、鎮は少年を見つめる。よくよく見ると、何故か学生服だ。と、いうことは中学生……高校生にはどうあっても見えない。
「学校の行事でこの船に乗ったわけ?」
だとしたら、すごい学校だ。商店街の一等賞になるような船に乗っているわけだから。聞いた話だと、乗船券はかなり手に入りにくかったらしいし。
「いや、違うよ。あ、そうか。制服だからそう思ったんだね」
鎮の視線が服にあると気づいたのか、少年は少しの苦笑いを浮かべて答えた。
「なんで制服なの?」
それは素朴な疑問。訊ねると少年は一度だけ海へと視線をやった。それから鎮へと視線を戻す。
「この春から中学にあがったから……制服姿を両親に見せようかなって」
「ふぅーん。それで、見せたの? これから?」
「そろそろかな……いや、あともう少しかな」
「? あれ?」
少年のすぐ横に立てかけてあるものは、やけに豪華な花束だった。ユリが主体となり、白でまとめられている。
「あ、これ? ……プリンセス・ブルー号の話、知ってる?」
ふるふる。知らないので鎮は素直に首を横に振った。
「そうだよね。きっと、君は生まれたか、生まれていないかというくらいだから」
いや、それはないよ……とは返さなかった。見た目と年齢が違いすぎることは、目の前の少年にはわからない。
「豪華客船でね、当時としては国内最大級。処女航海にこの船と同じ航路を設定し、出航した。そして、そのまま……戻らなかった」
「え?」
少年は身体を海の方へと向けた。そのまま眩しそうに、ともすれば遠い眼差しで揺れる青い水面を見つめる。
「突如、消息は途絶え……沈没したと言われている。だけど、船に関するものは、何も発見できなかった。沈没したという痕跡も。消失したとしか言えないような状態で……いろいろな噂が飛び交ったけど、そのどれもが憶測に過ぎない。真実は今もわからない……海洋のミステリーとされているよ」
再び、身体を鎮へと向け、少年は明るい表情で言った。
「そっか……」
その花束は消息が途絶えた場所に捧げるつもりなんだ……鎮はふと船長と男の会話を思い出した。あの二人は今の船の話をしていたに違いない。
「時々、あるよね。ふいっと姿を消す船舶や飛行機の話。消息を絶ったと思ったら、数十年後に突如、現れたりする。機体が傷んでいることもあれば、まるで傷んでいない場合もあるし、乗客が姿を消していることもあれば、白骨化していることもある……」
神妙な顔で少年は言い、うんうんと頷く。
「……そういう話、好き?」
「うん、かなり。大好き」
にこりと少年は笑った。
不思議な話が好きという少年の名前は都築海里。カイリという名前は海をこよなく愛していた父がつけたものだという。世の中の不思議な話や今までに経験した不思議なことや面白いことをおやつとジュースを片手に語り合ううちに、すっかり陽は暮れた。
「そろそろ花を捧げる場所かな……」
消息を絶ったのは夕刻、夜になる前だったんだよと海里は付け足す。
「じゃあ、俺も一緒に行くー」
船内からデッキへと移動する。少し湿りけを帯びた潮風。晴れていたと思ったが、もやのようなものが発生している。
「……なんか、こう……粘りつくような嫌な風だね」
花束を手に、海里は言う。
「……」
なんだろう。なんだか、落ちつかない。デッキの雰囲気が昼間とはまるで違うような気がする。鎮はきょろきょろと周囲を見回した。
「それじゃあ、花を……あれ?」
海里の視線は正面、海にある。鎮も同じように海を見つめた。もやの向こうに、何かが見える。朧気な……巨大なもの……かなり大きな……船?
そのまま呆然と見つめていると、朧気なそれが巨大な船だとわかり、それが鏡のようにアトランティック・ブルー号へとぴたりと並ぶ。もやを伴うその船には灯が見られない。飛び移れそうなほど目の前にあるデッキに人の姿はなく、人がいそうな気配もない。
「この船……まさか……」
その言葉にはっとして鎮は船の側面を見やる。
そこにはプリンセス・ブルー号と書かれていた。
−完−
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■ 登場人物(この物語に登場した人物の一覧) ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
【2320/鈴森・鎮(すずもり・しず)/男/497歳/鎌鼬参番手】
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■ ライター通信 ■
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ご乗船、ありがとうございます(敬礼)
相関図、プレイング内容、キャラクターデータに沿うように、皆様のイメージを壊さないよう気をつけたつもりですが、どうなのか……曲解していたら、すみません。口調ちがうよ、こういうとき、こう行動するよ等がありましたら、遠慮なく仰ってください。次回、努力いたします。楽しんでいただけたら……是幸いです。苦情は真摯に、感想は喜んで受け止めますので、よろしくお願いします。
こんにちは、鈴森さま。
当選おめでとうございます(笑)ということで、こちらこそ、お世話になっております^^
船内探索、勢いで書かせていただきました……イメージを壊していなければと思います。いえ、本当にちょっと暴走気味だったのもので(おい)
実は、この少年に興味を持った方は鈴森さまおひとりだけで、都築少年、最も人気(?)がありませんでした。
今回はありがとうございました。#1のみの参加でも旅の一場面として楽しめるようにと具体的な事件が発生するまでは話を進めておりません(一部、例外な方もいらっしゃるかもしれませんが^^;)よろしければ#2も引き続きご乗船ください(納品から一週間後に窓を開ける予定でいます)
願わくば、この旅が思い出の1ページとなりますように。
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