■あるマンガ家の家■
市川智彦 |
【1938】【手島・雄一】【学生】 |
都内の一軒家からSOSの知らせが草間興信所に伝えられて、もう2時間が経過しようとしていた。事務係の零はいつものように心配そうな顔をして兄の草間 武彦の横でそわそわしながら立っている。しかし、彼らにできることはすべてやった後だ。その連絡の後、草間はすぐに救援隊を手配し現場に直行して欲しいと各人に依頼した。彼らは今ごろ玄関で顔を合わせている頃だろう。そして今の草間と同じようにお互いに渋い顔をしているかも知れない。そのくらい事態は深刻だった。
その家の主人は超のつく人気マンガ家・鳴瀬 神太郎だ。彼は週間少年ステップでギャグマンガ『アメリモムーチョ』を連載している。処女作で大ヒットを放った若きギャグの天才は今、その人気を裏付けとも言える豪華な家の奥でなぜか悲鳴を上げていた。昼を過ぎて突然鳴り響いた電話を零が取る。電話の主はゼーハーゼーハー言っていた。そしていつも通りの応対を落ち着いてこなす零……だが電話の向こうでは「助けて〜!」と叫ぶのと同時に恐ろしい物音が鳴り響き、とても賑やかな様子が伺える。すでに普通でない状況の中で電話の主は息を切らせながら喋り出す。
「す、すみません、ぼ、僕、鳴瀬……神太郎と申します。草間さんですよね。ひ、ひとつお願いがあるんです……知り合いに聞いたらここが一番だって言うから……」
「何か、お困りですか?」
「ええ、すっごく。実は……僕の家が、僕の家がギャグ満載の空間になってしまったらしくって……」
「ギャグが……満載?」
いつものようにソファーで寝そべっていた草間が妹の応対をそこまで聞いたところで大きな伸びをして立ち上がり、そのままゆっくりと歩み寄り彼女から受話器を奪い取ると冷静な声で応対する。
「悪い、いたずら電話に付き合ってる暇はないんだ。切るぞ。」
「ほ、ホントなんですってば! ちょっとマンガのコマに魔方陣を描いたらいきなり煙が出てきて、ちっちゃな悪魔がぴょんって飛び出してきたんです! しっぽもありましたし、間違いありません! それで描きかけの原稿読んでゲラゲラ笑って、最後にこう言ったんです……『お前、面白いこと考えるな。だったらお前たちも面白くしてやる』って。そしたら家中がもう絵に描いたようなネタが起こるようになっちゃったんです!」
「絵に描いたような……ネタが現実化する??」
「洋式トイレに入ってたアシスタントさんは突然お尻が便座にハマって今もずっとウォシュレットで攻撃されてますし、他のアシさんも少し歩いただけでゴミ箱で足を引っ掛けて黒インキでそこたらじゅう真っ黒けにするし、僕だってこの受話器取るまでに3回もコケてるんですよ! コケる要素なんかどこにもないのに! これは間違いなく悪魔のせいなんです! もう締切が迫ってて困ってるんです。金に糸目はつけません、早く何とかしてください!!」
「わかった、金に糸目はつけないんだな。ならすぐに専門のものをそちらに向かわせますよ。あっと、今のうちに住所を聞かせてもらえるかな……ズッコケないうちに聞いておかないと大変なことになりそうだからな。」
依頼料と住所の確認だけ大急ぎで済ませた草間は少し考える。そして電話の内容をかなりぼやかして妹に説明し、とりあえずいつもの面々に連絡させた。零はいつもの調子で電話の主に依頼内容を説明する……
「草間興信所です〜、いつもお世話になってます。実はマンガ家さんのお宅に悪魔が住みついて悪さをしてるらしいんです。できれば退魔のお手伝いに行ってほしいんですが……いかがですかぁ?」
零の説明はほぼ大ウソだ。正確に状況を伝えていない。それもこれも草間が人を集めるために苦肉の策をとった結果がこれだった。だが、マンガ家宅に行けばみんな等しく芸人のような目に遭うなどと言って依頼を引き受ける奴が果たしているだろうか。いや、きっとそんな奴などいやしない。彼の脳裏に自分を納得させる単語がよぎった……
「優しい嘘だ、これは。」
そして鳴瀬邸の前に即席コメディアンたちが集まる。彼らは悪魔を捕まえるために今から信じられないような現象を体験するのだ……
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あるマンガ家の家
都内の一軒家からSOSの知らせが草間興信所に伝えられて、もう2時間が経過しようとしていた。事務の零は心配そうな顔をして兄の草間 武彦の横でそわそわしながら立っている。しかし、彼らにできることはすべてやった。連絡後、草間はすぐに救援隊を手配し現場に直行してほしいと各人に依頼した。今ごろ彼らは玄関で顔を合わせているだろう。そして今の草間と同じように渋い顔をしているかも知れない。そのくらい事態は深刻だった。
その家の主人は超のつく人気マンガ家・鳴瀬 神太郎だ。彼は週間少年ステップでギャグマンガ『アメリモムーチョ』を連載している。処女作で大ヒットを放った若きギャグの天才は今、その人気を裏付けともいえる豪華な家の奥で悲鳴を上げていた。正午を過ぎて突然鳴り響いた電話を零が取る。電話の主はゼーハー言っていた。そしていつも通り落ち着いて対応する零……だが電話の向こうでは「助けて〜!」と叫ぶのと同時に恐ろしい物音が鳴り響き、とても賑やかな様子が伺える。すでに普通でない状況の中で、電話の主は息を切らせながら喋り出す。
「す、すみません、ぼ、僕、鳴瀬……神太郎と申します。草間さんですよね。ひ、ひとつお願いがあるんです……知り合いに聞いたらここが一番だって言うから……」
「何か、お困りですか?」
「ええ、すっごく。実は……僕の家が、僕の家がギャグ満載の空間になってしまったらしくって……」
「ギャグが……満載?」
いつものようにソファーで寝そべっていた草間が妹の応対をそこまで聞いたところで大きな伸びをして立ち上がり、そのままゆっくりと歩み寄り彼女から受話器を奪い取ると冷静な声で応対した。
「悪い、いたずら電話に付き合ってる暇はないんだ。切るぞ。」
「ほ、ホントなんですってば! ちょっとマンガのコマに魔方陣を描いたらいきなり煙が出てきて、ちっちゃな悪魔がぴょんって飛び出してきたんです! しっぽもありましたし、悪そうな顔にしっぽもあったんで間違いありません! そいつが描きかけの原稿読んでゲラゲラ笑った後にこう言ったんです……『お前、面白いこと考えるな。だったらお前たちも面白くしてやる』って。そしたら家中がもう絵に描いたようなネタが起こるようになっちゃったんです!」
「絵に描いたような……ネタが現実化する??」
「洋式トイレに入ってたアシさんは突然お尻が便座にハマってずっとウォシュレットで攻撃されてますし、他のアシさんも少し歩いただけでゴミ箱に足を引っ掛けて黒インキでそこたらじゅう真っ黒けにするし、僕だってこの受話器取るまでに3回もコケてるんですよ! コケる要素なんかどこにもないのに! これは間違いなく悪魔のせいなんです! 締切が迫ってて困ってるんです。金に糸目はつけません、早く何とかしてください!!」
「わかった、金に糸目はつけないんだな。ならすぐに専門のものをそちらに向かわせますよ。あっと、今のうちに住所を聞かせてもらえるかな……ズッコケないうちに聞いておかないと大変なことになりそうだからな。」
依頼料と住所の確認だけ大急ぎで済ませた草間は少し考える。そして電話の内容をかなりぼやかして妹に説明し、とりあえずいつもの面々に連絡させた。零はいつもの調子で電話の主に依頼内容を説明する……
「草間興信所です〜、いつもお世話になってます。実はマンガ家さんのお宅に悪魔が住みついて悪さをしてるらしいんです。できれば退魔のお手伝いに行ってほしいんですが……いかがですかぁ?」
零の説明はほぼ大ウソだ。正確に状況をこれっぽっちも伝えていない。それもこれも草間が人を集めるためにとった苦肉の策だった。だが、マンガ家宅に行ってみんな等しく芸人のような目に遭うなどと説明して依頼を引き受ける奴が果たしているだろうか。いや、きっとそんな奴などいやしない。彼の脳裏には自分を納得させる名言がよぎった。
「優しい嘘だな、これは。」
そして鳴瀬邸の前に即席コメディアンたちが集まる。彼らは悪魔を捕まえるために今から信じられないような現象を体験するのだ……
玄関前にその5人が集まった。集まったものは集まったもの同士、おかしな顔をしていた。零の説明では『退魔をする』はずだが、どう見てもそんな雰囲気に見えない人間がいる。腰に剣を、そして手には色紙を持った眼帯の西欧騎士などは風邪かと心配されるくらいに身を震わせていた。真・聖堂騎士団の筆頭騎士でジャパニメーションの信者であるフォルケン・ハイデンの隣には同じように色紙を持っている少年がいる。彼はギターケースを背負ってここにやってきた山口 さなだった。ふたりは顔を見合わせてにっこり微笑む。
「お前、気が合うな。」
「キミこそ。ホントに今日はラッキーだね! 鳴瀬センセの家なんか一生行けるもんじゃないもんねー。」
「あたしも色紙持ってくるんだったな〜。そういえば鳴瀬先生は超のつくほどの人気者だった……」
その話に乗ってくるのは本日の紅一点である銀野 らせんだ。昼休みに連絡を聞き、授業が終わってすぐに神聖都の制服のままここに駆けつけた。彼女はかばんを持ってここにやってきたのでそんな準備などできるはずもない。唇にしなを作り人差し指を当てて残念がるらせんを見て不憫に思ったのか、フォルケンは一枚の色紙を彼女に差し出す。彼女は気を使ってもらっては悪いと胸の前で手を左右に振って遠慮する。すると彼はにこやかに笑い、トランプのように何枚もの色紙を出してくるではないか。それを見たさなもフォルケンと同じように色紙をいっぱい持ってきたと言いながら色紙を何枚も広げるのだった。それを見て、隣でホストのような容姿を持つ青年が呆れた顔をしながら騎士から一枚だけ色紙を失敬する。
「あっ、何するんだお前っ! お前にやるとは一言も……」
「幸せはみんなで共有するもんじゃないのかなとか思ってさ。僕は手島 雄一。ただの大学生なんだけど……そこの毛だらけのキミは?」
「……………それって、俺のことか?」
「キミのこと以外にないと思うのは僕だけかな……」
手島にそう言われた彼は銀色の長い髪を括り、どこかの民族衣装のような衣服を着て立っていた。長身の彼は自分の姿と他人の姿をじっくり見比べるが、どうも納得がいかないようだ。それを証拠に首を大きく右に捻りながらとりあえず自己紹介を始める。
「まぁそれはともかく。俺の名前は久遠 刹那だ。親友に頼まれて退魔に来たんだが……お前ら、悪魔と戦う気はあるのか?」
「もちろん倒す気はあるよ。ただ手の内を最初から見せるのはあんまり好きじゃないんだよね。そこの女の子もその口なんじゃないかな。ま、人は見かけによらないってことさ。心配しなくてもいいよ。」
「それはともかくさ、早くセンセを助けてあげないと……」
「そうだ、それを忘れていた! 鳴瀬先生、今そこへサインをもらいに参りますーーーっ!」
さなの言葉に心を動かされたのがフォルケンは色紙を握りつぶさないよう丁寧に持ちながら全身に力を込める! そして悪魔の館と化した鳴瀬邸に足を踏み入れた。一歩、そして二歩と歩き、そのままずいっと進んでいく。ところが入った途端、道路から爆音が鳴り響くではないか。らせんが大声でフォルケンに忠告する!
「フォルケンさん、もしかしたら出前のそば屋さんが……えーっと、もしかしたらなんですけど……」
「ああ、なんだ聞こえないぞ。言いたいことがあるのなら、はっきりハキハキ言えよ!」
「おいお前、後ろ後ろ!」
らせんに続いて刹那が忠告するが時すでに遅し。フォルケンがその声に振り向くと同時に、コンクリートの壁をぶち破ってそば屋のバイクが突っ込んできた! あり得ない状況に悲鳴を上げるフォルケン!
「んげあぁぁぁぁぁーーーーーっ!」
「どいてどいてどいてどいてどいてどいてどいてどいてどいてどいてどいてどいてどいてぇぇ!」
ドンっ!
そば屋のオッサンのバイクでボールのように吹き飛ばされたフォルケンはそのまま鳴瀬の家の動物小屋の金網を突き破り上半身を突っ込んだ! 身体中にざるそばをまとった彼は小屋の住人につつかれっぱなしだった……その住人とはなぜかニワトリ。そばが絡んだせいで、無防備な目も鼻も狙われてさすがのフォルケンも大慌て。
「うひゃ〜〜〜うひゃ〜〜〜、助けてくれ〜〜〜!」
「あの巨体が貧弱そうなそば屋のバイクにぶつかっただけであそこまで飛ぶか?」
「何かありそうだな〜とは思ってたんだけど、いい実験台になってくれた。僕たちは気をつけて中に入ろうか。」
ニワトリの餌となりつつあるフォルケンをほったらかしてそのまま家の敷地に脚を踏み入れる4人。だが、彼らにも等しくギャグの洗礼が下される。家をまたぐほどの巨大な女性が裏から出現したのだ!
「きゃ〜〜〜〜〜〜っ! お、お、お、お、おっきなオバさん!」
『オバはんちゃうわ、アホ! あたいに踏み潰されたくなかったら、さっさと家の中に入りや! ほらほらほらぁっっ!』
「な、な、何が起きてるんだ、現場で何が起きてるんだ。た、頼むニワトリども、俺に状況把握をさせて……ずぼば!」
ゆっくりと歩き出したショートカットで赤いスーツを着たゴッドな姉ちゃん。その第一歩を踏み出した時、ハイヒールがフォルケンの大事な穴を直撃したのだった……下半身だけ小屋の外に出ていることがここで災いした。それを見た手島はさすがに息を飲む。
「あの太さはないよな……さ、とにかく俺たちはさっさと中に入ろうか。キミは動けるようになったらついてきて。」
「ぐがが、ぎょうがい。」
「お、おいあんた、あれが悪魔ってことはないのか!」
「中をくまなく確認して最後にあれが残ったら悪魔だから、その時戦えばいいんじゃないのかな。ただ、間違いなく具現化してる人間だけど。」
姉ちゃんの様子を伺いながら話していた手島だったが、相手は依然マイペースに行動する。煮えきらずに玄関前で立ち尽くす彼らを何とか追い込もうと姉ちゃんはまた前進し始めた。そして次の一歩を踏み出そうとした時、またも被害者が泣き喚く。
「うごおおぉぉぉぎやあぁぁぁ、ぞこ動かさないで、えぐらないべぇぇーーー!」
フォルケンの穴からヒールをねじるように抜くもんだからその悲鳴もすさまじい。らせんなど声を聞くだけで真っ青になって立ち尽くすだけ。さすがの刹那もさなもこうはなりたくないと思ったのか、素直に手島の提案に乗って立派な屋根のついた玄関前までたどり着いた。だが、誰もその扉を開こうとしない……全員、開けたら何かが起こると思いこんでしまい完全に固まってしまったのだ。不安に震えるその尻尾を立てるように刹那がドアノブに手をかけてそのまま一気に侵入しようと扉を押した!
「俺は掘られたくねぇぇぇ……ってあれ?」
「ラッキー! 普通に開いたじゃん!」
「んげっ……な、なんどが脱出できだぁ……」
合流したフォルケンだけが上ばかりを気にしていたが、他のメンバーは開いた扉の奥に興味があった。だが見る限りでは特に何の仕掛けもなさそうだ。それでも刹那は警戒をみんなに促す。一列に並んで進んでいくことを提案し、玄関から侵入しようとした瞬間!
ゴンっ!
「痛っ………う〜〜〜ん。」
なんと玄関のサイズに刹那の身長が合わず、頭をしこたま打ちつけてしまった! そのままドミノ倒しのように倒れていく刹那……後ろには非力ならせん、さな、そして手島、フォルケンと続いていた。らせんとさなはそのまま一緒に崩れ落ち、手島が3人分の体重を抱えることになった。が、しかしさなはなぜかベースを背中に担いでいる! 音楽をやらない手島でもベースの値段くらいはわかっている。壊れると後々難しい話になりそうなので、手島はここは仕方なしに身体でガードすることにした。後ろはデカいゴツいスゴいのフォルケンである。4人分の身体くらい支えてくれるだろう……軽い気持ちで上下逆さになった状態で手島は騎士を見る。
だが、彼は前から後ろからお尻を押さえて爪先立ちしていた……今、力を入れたら大変なことになってしまうだろう。その姿を見た手島はすべてを諦めた。
バタバタバタバタバタン!
人間ドミノは見事に崩れきった。アンカーのフォルケンは刹那と同等、頭をしこたま打ち玄関から頭だけ出していた。これには手島もダメ出しを食らわせる。
「もうちょっと下半身に踏ん張りとかきかないの、キミ? 毎日トレーニングやってるんじゃないの?」
「お前はわかってない、お尻はな、お尻は重要なんだ。ったくわかってんのか……って、あああああああ!」
『入る気がないんか、おのれは! またほじくるぞ〜〜〜!!』
「うわぁぁぁぁ、姉ちゃんだーーーーーーーー!!!」
突如、ドミノが後ろから置き上がり手島、さな、らせんと起き上がってきたところで……
ゴゴンっ!
「はがっ!」
やっぱり刹那がぶつかった。しかも同じ場所をさっき以上の勢いでぶつけてもう失神寸前。そしてまたドミノ倒しが始まる……
「きゃあーーーーっ!」
「おわああぁぁっ!!」
「フォ、フォルケン、えぐられたくなかったらなんとかするんだ!」
「よし、捨て身で全員の脚を薙ぐスライディングを敢行する! これで砦の攻略はバッチリだ……はっ、とおりああぁぁぁ!!」
そう言いながらフォルケンは長い足と恵まれた肉体を使い、両手を地面についてコマのように脚を振りまわす。その攻撃で全員の足が浮き、ちょうど斜めになりながらゆっくりと倒れこもうとする……力点がずれたその時を狙って、手島の背中を押して全員を安全に家の中に入れてしまおうという作戦だった!
「俺ってあったまいいな〜〜〜! はっはっはっはっは! どすこーーーーーーーー」
ゴンっ、ガンっ、ギンっ、ゲンっ!!
「いっ! なんでなんでなんだ、なんで?!」
フォルケンは全員が頭をぶつけながら成瀬邸に入っていった事実に目を疑った。だが優しさにも似たツッコミがらせんから入る。
「フォルケンさん! 倒れこんだまま押しこんだら、今度は扉の横にぶつかるじゃないですか……っていた〜い!」
「ああ、そうか!」
「そうかじゃねぇ! 俺なんかこれで3度目だぞ、わかってんのか! もっと頭使えよ! 姉ちゃんに狙われてたのはお前だけじゃないんだからな!」
「いてててて……でもドミノの発端はたしかキミだよね?」
「……………そりゃ、そりゃあんた見逃してくれよ。」
さなに厳しい指摘を受けたが、それを棚の上にした刹那は土足で玄関に入る。そこは目を見張るような豪邸だった。すぐ右手には2階への階段があり、奥は仕事場だろうか。中の部屋の配置まで聞いていないが、とりあえず玄関を閉めて残りのメンバーも中に入る。階段は日の光が差しこんできて気持ちよさそうな色を醸し出している。狼の性質からか、暖かなところに向かって歩き出す刹那。遠慮もなしに階段を上がろうとしているのを見て、さなが止める。
「ちょっと待って。その階段に登るの、考えた方がいいんじゃない?」
「俺は悪魔を倒しに来たんだ! あんたらはサインとやらをもらいに来たのかもしれんが、俺は仕事を……」
「だ〜か〜ら〜、ちょ〜っと待ってほしいんだ。なんかおかしいんだよね、この依頼。」
「もういいっ、俺は行くぞ!」
考えることがあんまり得意じゃない刹那はさなの忠告を無視して階段を上がる……だが、道半ばまできても何も起こらない。刹那は赤くなった額を見せつつ満足げな顔を見せつけながらさなに言う。
「どうだ、何にも起こらないぞ。サインは仕事が終わってからだ、みんな行くぞ!」
「キミの考え過ぎだって。行きましょ、成瀬先生を探さないと。」
「あいつの言うこと、なかなかごもっともだな。さ、同志行くぞ!」
どうも腑に落ちないといった表情のまま、列の最後尾から階段を昇り始めるさな。階段ではわいわいがやがやと賑やかな声が響く……それとは対照的に家はこんなに静まり返っている。刹那が2階まであと3歩と迫った時、奇妙な音を察知した。しかし、時すでに遅しだった。
がたん。
「うわうわうわーーーーーーーー………」
がんがらがっしゃんしゃーーーーーん!!
その音とともに階段がすべり台のようになってしまい、猛スピードで落下する刹那に潰されていく愉快な仲間たち……そして立ち昇る埃の中から登場した姿はフンコロガシに丸められた球体だった。さなが小さな声でつぶやく。
「だから……待ってって言ったのに……」
「悪りぃ、俺が悪かった。」
「なんだかなー。ここってもしかしてギャグの家になってるとかそんなのかな、もしかして?」
手島がそういうとさなが大きな声で「そうそう!」と叫ぶ。彼らはここまでの目に遭って、ようやく鳴瀬邸がどういう状況になっているのかに気づいた。そのご褒美と言わんばかりに天井から手島の頭に金だらいが振ってきた。
ゴワァン!
「ぐげ、間違いないってさ……」
「ちっくしょう、バカ悪魔め! 絶対に探し出して懲らしめてやるからな、覚えてろよ!」
刹那のセリフも空しく響く鳴瀬邸だった……
階段からしてあの状態なのだから、ということでまずは1階から探索することになった。まずはらせんが和室に侵入すると……そこには仏像がいた。ふすまを開けて左にいるどう見てもおかしな物体発見に、らせんは思わず刹那を手招きで呼ぶ。そして彼も同じようにそれを見るとギョッとした表情を見せる。
「ここ仏間らしいんだけど……なぜか部屋の端に仏像がいるのよね。」
「俺にそういう説明をされてもよくわからん。今わかってることはこのまま前へ進んだら、またおでこをぶつけることくらいか。」
そんな話をしながら、らせんは部屋に一歩踏み出す。その時、何か違和感を感じた。それに誰かに見られている気がする。とっさに問題の仏像に目をやるが、別に変な動きをした様子はない。らせんは首を傾げながら刹那に話しかけるのに首を廊下に出した……すると仏像が、静かに動き出す。ゆっくりと徐々にその間合いを詰める仏像の手には一本の茶色い棒が握られていた!
「ねぇ、この部屋にもギャグの仕掛けがあるのかなぁ?」
「今まであんな目に遭ってるんだ、なんかあるだろう。」
「でも何の変哲もない部屋なんだけど……ってあれ?」
らせんは畳を擦る音で部屋に視線を戻した。すると仏像がさっきと微妙に違う角度で鎮座しているではないか。すべてを見抜いたらせんはニヤリと笑い、今度はわざと刹那と話し始めた……
「でもキミってさ……おうちに和室とかないの?」
「別に野宿でも生活できるから気にしない。」
「ふーーーん、とか言いながら振り返っちゃったりして!」
すると今まさに棒で殴ろうとしていた仏像がそそくさとさっきの場所まで逃げようとするではないか! らせんは抜群の瞬発力を活かして棒を奪い取り、仏像をボコボコにし始めた!
『いたたいたた、いたいたいたいたたたたた!』
「どーせあなたのことだから『仏像がぶつぞう』って言いたかったんでしょうけど、ここはあたしの勝ちね!」
『うごおお、腹立つーーー!』
「かわりにあたしが言ってあげるわよ。『仏像を……ぶつぞう』なーんてね! おーほっほっほっほっほ!」
「おい、お前……もういいんじゃないか?」
「このこのこのこのこのこのこのこのこのこのこのこのこのこのこのこのこのこのっ、昭和のギャグであたしは倒せないわよ!」
「あの……らせん?」
初めて悪魔を出し抜いたのに満足したのか、らせんは仏像をぶつのに一生懸命になっていた。もはや悦に入っているようでさすがの刹那にも彼女を止めることができなかった。
その頃、フォルケンたちは鳴瀬の仕事場の探索をしていた。真剣な眼差しで書きかけの原稿を見るさなとフォルケン。マンガを楽しんでいるのか事件の痕跡を探してるのかは手島にはわからない。彼は側にあった備え付けの電話のリダイアルを押す……すると草間興信所の番号が表示された。確かに鳴瀬本人が助けを求めたのには違いないようだ。手島がそれを報告しようとしたその時、ふたりが同時に叫ぶ。
「「むむっ!?」」
「どうかしたの、おふたりさん?」
「このページのコマが怪しい! 上から2コマ目なんだが魔方陣から煙のようなものが出てきてるのに、出てきた中身が描かれていないんだ!」
「この原稿は全部通しで読んでも完成に近いものなのに、ここだけ避けて描いてるなんて思えないね。たぶんここから悪魔が出てきたんだ!」
「その通りだ、お前わかってるじゃねぇか! しかし先生、資料で本物の悪魔を呼び出す魔方陣なんかよく手に入れたな……」
推論は立派だったが調べている人間がどうもうさんくさい。手島が確認のためにフォルケンに向かって説明を求める。
「ちょっと疑問なんだけど、キミ本当にそれ魔方陣ってわかって言ってるの?」
「こういうものを取り扱うのが、私の勤めなのだが……」
「一言で片付けられるとなかなか問い詰めにくいもんだね。こっちも一応の手がかりは見つけたから、刹那たちと合流しよう。」
その言葉に頷くとさなとフォルケンは原稿を丁寧に元の位置に戻すとそのまま廊下に向かう。廊下に出ると仏像を叩き終えたらせんとなぜか気苦労でぐったりしている刹那がいた。手島が改めて自分の得た手がかりを説明する。
「電話を調べたら、鳴瀬先生自ら草間興信所へ連絡しているみたいだね。」
「じゃあ、あの階段を昇るしかないのか……」
「悩んでてもしょうがないから、昇っちゃいましょ!」
その言葉が神様に聞こえたのか、メンバーはあっさりと2階へと行くことができた。もう階段に仕掛けはないらしい。なぜ仕掛けがなくなっていたのか、さなは疑問に感じていた……そして考え抜いた末に一言つぶやいた。
「やっぱり、二度も同じネタをしないっていうのはポリシーなのかな?」
2階にやってくると、さっそくアシスタントがトイレで叫んでる声が聞こえる。手島がトイレまで走ってノックすると、中から声が聞こえる。別に手島のノックに反応したわけではない。ただ呆然とアシスタントが喋り続けているだけだ。手島はその声を聞き取ろうと必死になった。すると……
「あーーーっ、もうダメ。ふにゃふにゃ……もうここから出れないよ、ママン。お婿に行けないよ。」
手島はドアを開けるのをやめた。中からはウォシュレットが激流を飛ばしている音がしたからだ。おそらく彼もすでにギャグ空間の犠牲者になっているのだろう。重い足取りでみんなの元へ戻ってもそんなことは一切口にしない。
「トイレは使用中だった、永遠にね。」
その言葉に息を飲むメンバー。やはり2階は2階で何かが待っている……そう思うしかなかった。そして再び悪魔探しが始まる。今度はみんな揃って部屋をしらみつぶしにしていく作戦を取ることにした。
2階は鳴瀬本人の自宅のようだった。まずはリビングの扉を開けて中に入るメンバーたち。だが、中に入るとまだ昼間だというのに一寸先すら見えないほど真っ暗だった。みんな部屋に入った途端、壁伝いにスイッチを探し出したが……誰も何もしてないうちから勝手に明かりが灯された。その色はピンクだった。そしてどこからかピンクムードな音楽が流れ始め、スポットライトがどこからともなく近くにあったダイニングキッチンを照らす。
するとひとりの少女に異変が起こった。らせんが静々とそちらに向かうとテーブルの上に座り、急にストリップの真似事をし始めた! まずはジャケットをいじらしく脱ぎ始め、それをどこかに飛ばすと次はリボンの端を指でつまんでふるふるとそれをはだけさす。男たちは我先にとそれに注目する。
「うおぉぉぉーーー! 現役女子高生のぉーーー!」
「そっ、そんなの見て楽しいのか、お、お前らは幸せ者だな……!」
「刹那ぁ、別に男だったら見ていいもんだぞ。そんなに気取って遠慮するなよ……」
「……………まぁ、フォルケンがそこまで言うのなら、見ても、まぁいいかなとは。」
言葉を濁しながらまじまじとらせんのショーを見つめる刹那。フォルケンは満足してらせんを見ようとすると、自分よりも食いつきのいいさなが邪魔でなかなかよく見えない。一番前で見たいフォルケンはさなを押しのけようと必死になる。そして無茶苦茶な論理を振りかざして後ろに下げようするのだが……
「おい、ここは年功序列だ! 俺が一番前で見るの!」
「じゃあ聞くけど、キミはいくつ?」
「25歳。わかっただろ、お子様にはまだ早いんだ。早く後ろに行った行った!」
「僕、32歳。キミは僕の後ろで見ててね♪」
「「ええっ!!」」
刹那とフォルケンはブラウスの一番上にあるボタンに手をかけたらせんなど無視して大いに驚く。どこから見ても中学生のさなが32歳……その衝撃は何者でも拭い去れない。いよいよ盛り上がっていくストリップショーを足元で見るさなは背中に担いでいたベースをカバーから出して、音楽に合わせて引きながら楽しんでいた。
「らせんちゃん、ちょっとエッチ〜〜〜!」
「ああ〜〜〜ん、言わないでぇ♪ でも……あんたも好きねぇ〜。」
「……………俺よりも年上なのか、さな。なんか俺、ショックだな。」
「どうする、最前列はあそこに押さえられてるぞ……ってあれ、隣でも上半身裸になってる奴がいるけど?」
「うおおおぉぉぉぉおーーーーー、ラブリーーーーーーーー!」
もうひとつのスポットライトめがけて走っていくフォルケン。しかしそこではカッターシャツを抱いたある人物が脱いでいた。
「ちょっとだけよ〜〜〜〜〜〜〜〜〜ぉん♪」
「姿が見えないと思ったら、てめぇか手島ぁぁぁ!!!!」
ボカッ!!
怒りのフォルケンパンチが炸裂したあたりで怪しい音楽と色彩は消え去り、普通のリビングに戻った。窓からはやわらかな光が差し込んでいる……らせんは我に返ったらしく、慌てて脱ぎかけていたものをすべて着始める。さなは彼女の一部始終を最後までじっくりと堪能していた。しかし空間も人間も元に戻ったところでまたいつこうなるかわからない。もうこのままギャグをしまくらなければならないのか……ボケとツッコミを全員が体験した後、疲れ切った顔で手島が言う。
「いたたた……でもこのままじゃどうしようもないよ。ギャグなんて無限にあるんだから。なんとかして終わらせないと……」
「簡単に言ったな、お前。でも、終わらせるってどうするつもりなんだ?」
「それが思いついてたら、こんな騎士に殴られることもなかったんだけどね。」
「俺は早くサインが欲しい! 何とかして思いつかないのか?」
閉塞感漂うリビングの中で制服姿をちゃんと整えたらせんが一声上げた。
「もしかしたら……終わらせられるかも。」
「えっ、キミに何かいい考えがあるの?」
「みんなは男の人だからあたしよりもやりやすいんじゃないかな〜。とりあえずこのセリフを言えば何かが起こると思う……その言葉っていうのはゴニョゴニョ……」
その言葉を聞いたメンバーは半分納得したかのような表情で頷きあう。そしてしわがれたような声で大きく叫んだ。
「ダメだ、こりゃ。」
すると3階からいきなり落とし穴が出てきて、目の前に悪魔が現れるではないか! その小さな悪魔はフォルケンが腰にした剣で一撃にできるほど弱そうな存在だった。
『いててて……まさかギャグを終わらせる言葉でボクを無理やり引きずり出すなんてぇ!』
作戦が大成功したことを知ると、らせんはとっさにキッチンの後ろに隠れて魔法のドリルを呼び出そうと右腕を上げる! すると!
ごいーーーん!
「ぶべっ……な、なんでドリルが出ないの!?」
「ん、どうかした〜?」
「さなさん、なんでもありません〜! よし、じゃあもう一度、えいっ!!」
ごいーーーーーーーん!!
『きゃきゃきゃきゃ、ボクを倒すための武器は呼び出せないぞ〜〜〜。ボクが姿を現したとはいえ、この家はまだギャグ空間のままなんだ!』
悪魔のご丁寧な解説で真相がようやくわかったらせんだが、ふたつの金だらいで頭を打って大の字になって倒れていた。その様子を見た刹那が超スピードで悪魔を切り刻もうと走り出す! しかしなぜかそこにはバナナの皮があって豪快に滑って転んでしまった! 刹那は全身を本棚にぶつけてそのまま倒れこむ……すると雪崩れのように本たちが追い討ちをかけるように振りかかってきた!
「うわわわわわぁぁーーーーーーーっ! か、髪の毛に髪の毛にねずみ取りが挟まって本が落下してきてもう何がなんだかわかんねぇ!」
『キキキキ、だからここでボクは倒せないんだって!』
「しょうがないなぁ、キミたち。じゃあそろそろ手の内でも見せようか……パラスシャドウ、鏡の世界にそのくだらない悪魔を放り出すんだ!」
ふたりに続いて手島がついに手の内を見せる。自分が使役する異界の大烏であるパラスシャドウを召還し悪魔を退治しようとする! そしてガラスの煌きから黒い怪物が部屋の中に入ってくるかと思うと……
べちゃっ。ずるずるずる……
悪魔を捕獲するとかどうこうの前に窓の向こうに激突してそのまま視界から消えていった……さすがにさなもこれにはツッコまずにはいられなかった。
「ま、まさか現実世界に入りこめないの……あの烏って。キミの能力って……そんなに役に立たないんだね。」
「ベースかき鳴らしてるだけのキミにだけは言われたくなかったかな。」
『お約束じゃない、壁に激突するのなんて王道。』
「しかしパラスシャドウのあんな情けない姿、初めて見たよ……」
手島が呆れるというよりも感心したような表情で立っていた。どうにも悪魔を退治できない中、騎士団所属で一番マトモそうなフォルケンが目の前に現れる! 彼は剣を構えて全員の盾となるべく立ち塞がる。
「お、お前……剣は、剣はやめとけ……! ここはギャグ空間だぞ!」
『ケケケ、お前もお笑いのネタにしてやる〜!!』
「ぬおおお、ならば! この俺の紅瞳のエネルギーを食らえ! フォルケンビィィィーーーーーム!」
眼帯を上げ、赤い瞳から高圧のビームが悪魔に向かって放出される! 悪魔はその場を動かない……余裕の笑みを浮かべながらその様子を伺っていた。しかし、奇跡が起こった。
ジュビーーーーーン!
『ウギャアアアーーーーーーーーーーーーーッ! な、なんでだ、なんでなんでなんでビームだけ当たるんだ!』
「もう一撃食らうか、この悪魔め! フォルケンビィィィーーーーーム!」
赤い光は悪魔を追い、その全身を赤く染める! 全身に激痛が走りついには泣き出す悪魔。
ジョワーーーーン!
『ギヒィーーーーーー、許して許して、そんなにパワーないんだからボク! 勘弁してよお願いだから!』
「参ったか、この悪魔め! ははははははははははっ、正義は勝つ!!」
原因はまったく不明だが、なぜかフォルケンの攻撃だけが悪魔に通じ、結局それが事件の解決を導いた……メンバーはなぜ彼が勝ったのか、その理由がわからないままエンディングを向かえることになった。
悪魔を捕獲した後、3階のベランダで頭上から滝のように襲いかかる水流で修行僧のようになっていた鳴瀬 神太郎を発見し、笑いの渦に叩きこまれていたアシスタント数名も救出してなんとか事件は解決した。鳴瀬は大いに感謝し快くサインなどに応じていた。特にさなとフォルケンは嬉しそうにいろいろなことをおねだりしてはお互いに顔を見合わせて何度もニヤニヤしていた。らせんはらせんでいろいろなものにサインをねだっているようで楽しそうだった。
特にマンガに興味のない刹那や手島は別に報酬以外に興味はなかったが、『超有名作家のサインならもらっておいて損はない』と思ってその場ではしっかり頂いておいた。刹那は親友の名を、そして手島は自分の名をいれてもらいそれはそれで満足していた。
その時、刹那がある疑問を思い出した。彼は隣にいる手島にそれを打ち明ける。
「あのよ、なんでフォルケンの攻撃だけが悪魔に通じたんだ? ずっと疑問に思ってたんだけどよ、どう考えても納得がいかないんだよな。」
「ああ、そのこと。僕の中ではある程度の結論は出てるけどね……」
「そうなのか? 教えてくれよ、どうしても理解できないんだ。」
しかし『わかった』という手島の顔も戸惑いにあふれていた……とりあえず推論を話すことを決心し、落ちついて話し始めた。
「いいか、俺たちのやろうとしたことっていうのは全部マトモなことなんだ。だからあの悪魔の力で全部ギャグにされて阻止された。けど、フォルケンの攻撃はギャグみたいな技だったからマトモに当たった……ってとこかな?」
「なんだよそれ、じゃあ真面目に戦おうとした俺たちはただのバカってことか?!」
「じゃあ聞くけどさ、あの状況でギャグと認識された技で悪魔に勝った方がよかったとでも言うのかな?」
ふたりで困った顔を突き合わせていたかと思うと、静かにフォルケンの方に顔を向ける。彼はとても嬉しそうだ。アニメ化になる前にセル画を手に入れてご機嫌だ。さなも製品として売り出す前のフィギュアをおねだりしてもらったようでこちらもご満悦といった感じだ。らせんもすっかり鳴瀬の作品が気に入ったらしくまだまだマンガ家宅の訪問は終わりそうになかった。だが、悪魔を倒した本当の理由の追求も終わりそうになかった……
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■ 登場人物(この物語に登場した人物の一覧) ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
1938/手島・雄一 /男性/18歳/大学生
2066/銀野・らせん /女性/16歳/高校生(ドリルガール)
1800/フォルケン・ハイデン /男性/25歳/真・聖堂騎士団第17師団筆頭
1628/久遠・刹那 /男性/20歳/妖狼
2640/山口・さな /男性/32歳/ベーシストSana
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■ ライター通信 ■
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皆さんこんばんわ、市川 智彦です。今回は「追悼・偉大なコメディアン」でした。
文章でこの興奮をお伝えするのにずいぶん苦心しました。笑わせるって難しいですね!
今回は参加された皆さんからネタをたくさん頂きました。ありがとうございます!
この5人が手元に集まった時、いったいどうしようか悩みました(笑)。
みんなの個性をどこまで表現するか……まぁこの辺はいつもの課題なんですけどね。
鳴瀬 神太郎を助けてくれた方々とはまた別の形でお会いしたいな〜と思っております。
今回は本当にありがとうございました。またシチュノベや依頼でお会いしましょう!
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