■剣を取ったらファンタジー？〜後編〜■
安曇あずみ |
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【3300】【楓希・黒炎丸】【かぶと虫型武者】 |
東京の一角にある未来型テーマパーク。
特殊な装置を使ってリアルすぎるほどのバーチャル空間でゲームが出来るそこで、
参加者が意識を失ったままログアウトできなくなる事件が起こった。
解決する為には、ゲームの世界の中のどこかにある、
”魔王の剣”という物を手に入れなければならないという。
名乗り出た数名の者達が調査の為にゲーム世界に入り調査は開始された。
調査の結果、”魔王の城”がある都の前まで来た彼らは、
都のどこかにいる”聖女”を探す事が魔王を倒す鍵になると知る。
冒険者達の探索によって”聖女”を見つけることができ、
魔王を倒すための力を得る事ができたのだが…
冒険者達は最後の戦いへ向けて、自分のこれからの選択の為に各地へと散って行った。
戦いへと臨むために戻ってくる者…
自らの力を思いログアウトを選ぶ者…
そして新たに戦いへと加わろうとする者…
様々な者達の思いが交錯する中、戦いの朝日は昇る―――
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剣を取ったらファンタジー？〜完結編：楓希・黒炎丸の章〜
■MAINMENU
東京の一角にある未来型テーマパーク。
特殊な装置を使ってリアルすぎるほどのバーチャル空間でゲームが出来るそこで、
参加者が意識を失ったままログアウトできなくなる事件が起こった。
解決する為には、ゲームの世界の中のどこかにある、 ”魔王の剣”という物を手に入れなければならないという。
名乗り出た数名の者達が調査の為にゲーム世界に入り調査は開始された。
調査の結果、”魔王の城”がある都の前まで来た彼らは都のどこかにいる”聖女”を探す事が魔王を倒す鍵になると知る。
冒険者達の探索によって”聖女”を見つけることができ、魔王を倒すための力を得る事ができたのだが…
冒険者達は最後の戦いへ向けて、自分のこれからの選択の為に各地へと散って行った。
戦いへと臨むために戻ってくる者…
自らの力を思いログアウトを選ぶ者…
そして新たに戦いへと加わろうとする者…
様々な者達の思いが交錯する中、戦いの朝日は昇る―――
■START
カチャカチャというキーボードを叩く軽快なリズムが都内某所の建物の一室に響く。
画面にはやたらと小難しげな英数字がいくつも並んでいて、素人目にみれば何をしているのかわからないだろう。
傍らには黒光りする鎧をまとった彼女の弟子が、今か遅しと自分の出番をひたすら待っていた。
彼女は今、その両手の指と、頭脳を使って世界征服への第一歩のため”犯罪”を犯していた。
―――そう…ハッキングという名の。
＊＊＊
「―――どういうことだよ？！」
驚愕の表情を隠しもせずに声を張り上げたのは、ヤトだった。
負傷し、倒れている仲間を魔法と回復薬を使い治療していたみなもも、その声に驚いて顔を上げる。
そのみなものサポートについていたミコは、思わず立ち上がって目を大きく見開いた。
彼等の視線の先に…黒く重厚な鎧に身を包んだ何者かがのっそりと立ち上がり剣を構えていた。
その姿は例えるなら『武者』。
あまりにも特徴的な六本の全てには、金棒、薙刀、戦斧といったありとあらゆる武器が握られていた。
「…味方…という雰囲気はなさそうですね…」
傷を負って、その場に膝をついていたリュートが苦笑いを浮かべながらゆっくりと立ち上がる。
「お茶でも飲もうと思っていたのですが、少し先送りになりそうですね」
「飲めるといいがな…」
両手に剣と刀を持ち直しながら、タツヤは小さく呟いた。
魔王の白の屋上で、”聖女”の身体を乗っ取っていた”魔王”を倒したばかりの彼ら。
しかし、そこに出現するはずだった”魔王の剣”は現れず…
変わりに出現したのは、武者型の機械兵士、『楓希・黒炎丸（ふうき・こくえんまる）』だった。
「おまえ…何者だ？！」
威勢はいいのだが、どこか腰が引けているヤト。
黒炎丸は、ゆっくりとした動作で俯きかげんだった顔を上げ、そちらに視線を向けた。
「人に尋ねる前に名を名乗るのが武士としての礼儀！」
「な、なんだと？！俺は武士じゃねえからいいんだよっ！！」
「ヤトさん、そういう問題じゃ…」
黒炎丸の言葉に、言い返すもののやはりじりっと下がりながら言うヤトに、
隣りにいたエンが苦笑いを浮かべて思わずツッコミを入れる。
「では僕がご挨拶をしましょう。僕はこの方々のリーダーをさせていただいています、セイと申します」
冷静に、ヤトとエンの二人に下がるように腕で指示しながら前に歩み出る。
「だ、大丈夫なんでしょうか…？」
「話をしてみないことには始まりませんから」
心配げに見つめるみなもに、セイは静かに笑いかけるとさらに一歩、近づいた。
「さあ、あなたのことをお聞かせください…」
「……我が名は月霞様の一番刀…『おにぎり名人』の黒炎丸！！
拙者達は世界征服への道のひとつとしてこの世界を拙者達の支配下におく為にやって来たのでござる！」
黒炎丸は、声高らかにそう叫ぶと、腕のひとつを動かして剣の切っ先をセイに向けた。
「貴様らの事は承知している！魔王の剣が欲しいのでござるな？」
「ええ…その為にここまできたのですから」
「ならば拙者を倒して見よ！そうすれば剣を貴様らにくれてやるでござる！」
黒炎丸の言葉に、セイをはじめ全員が思わずそれぞれの顔を見合わせた。
「これも…バグの産物ってヤツか…？」
傷を負い、意識を失っていてその場に横になっていたレンレンが身体を起こしながら呟く。
「聖女さんの意識のない今は確かめる事はできませんからねえ…」
「実はこっちが本ボスって事もあるんだよな…？」
レンレンの言葉に返したリュートに、さらにセリが立ち上がって言う。
切り裂かれていた腕の傷は、みなもの治癒魔法と回復薬のお陰でもうほとんど塞がっていた。
「こっちはさっきのがラスボスだと思って全力投球したってのに…」
額に手をあてて、まいった、とばかりにレンレンは苦笑を浮かべる。
確かに、先ほど倒した魔王が最後だと誰しも思っていて、力もほぼセーブせずに戦ったのだ。
回復はしたと言えど、ほとんどが負傷し、疲れきっている。
さらに…シズカ、デルフェス、聖女は未だに意識を失ったままで。
ウタタとライは治療の為に必要な薬を取りに、下の都へと戻って行ったばかりなのだ。
確実に戦力になりそうな者といえば、ほぼ無傷のタツヤと、ヤト、そしてエンの三人と、
軽傷であるセイ、そしてリュートくらいであった。ミコとみなもは元々戦闘には不向きであるし、
レンレンとセリは受けたダメージが大きく万全とは言いがたい。
「さあ、拙者は手加減はせぬが、卑怯な真似もせぬ！どこからでもかかってくるでござる！」
しかし…どうやら、こちらの態勢が整うまで待ってくれるという様子は無かった。
当たり前といえば、当たり前であるが。
「来ないのならば拙者から参らせてもらう！」
なかなか動こうとしない面々に、黒炎丸は埒があかないとばかりに六本の腕を構え、
攻撃態勢を取り攻めに入る。
「面白い…なら俺が一撃で仕留めてやるよ」
複数の剣を扱う者として、タツヤは手合わせをしてみたいという気持ちもあり、剣を構えて進む。
「いざ、勝負でござる！！」
掛け声と共に両者の剣がぶつかり合い、甲高い金属音が響く。ギリッと力をこめるタツヤだったが、
黒炎丸の別の腕が彼へ別の角度から攻撃を仕掛ける。さらにタツヤもそれをなんとかもう片方の刀で受け止めたものの、
「所詮は二本の腕。六本の拙者には敵わぬでござるよ」
黒炎丸はぐわっと金棒を持った腕を振り上げて、タツヤの頭上に振り下ろした。
「そうはいくか！！」
ガッという音が響き、金棒はタツヤに直撃する前にヤトの蹴り上げた足によって制止される。
しかし黒炎丸の力は相当な力だったらしく、ヤトの全身を電流のようなものが一気に駆け抜けて行った。
「もう！しっかりしてくださいヤトさん！！」
あまりの衝撃に声も出ないらしく、後方に飛びのいてうずくまってしまうヤトの前に、エンが飛び出しあきれた顔で振り返る。
エンはノイの”四次元チャック”から小型の手榴弾とハンドミサイルを取り出してその場に構えた。
「タツヤさーん！」
エンの声と姿に、タツヤは状況を瞬時に判断して競り合っていた剣を弾き後方へと退避する。
その瞬間、エンは手榴弾を放り投げ、ハンドミサイルをすかさず一弾、そしてすぐに二弾とぶっ放した。
着弾し炸裂してもうもうと煙を上げる黒炎丸の周辺…「やったか！？」と期待する面々だったのだが…
「……拙者にその程度の攻撃など効かぬ！」
煙が晴れ、叫ぶと同時に黒炎丸はエンに向かって攻撃を仕掛ける。
「あぶない！！」
思わず飛び出すレンレンだったのだが………
「あ？あれ？」
黒炎丸は、がしょんがしょんと足音を鳴らしながら必死でこっちに走って来ている最中だった。
「もしかしなくてもあいつ…ものすっごく足が遅いんじゃ…」
「もしかしなくても遅いと思いますよ」
杖を支えにして立ち上がりながら、引きつった笑みで呟いたセリに、冷静にみなもが返す。
どうやら黒炎丸。防御力はかなりのものらしいのだが、そのスピードたるや…小学生の徒競走以下の速さであった。
「おのれ拙者の事を足が遅いと思っておるな！？おぬしら！！」
「いや…遅いと思うも何も…」
どう言えばいいのか、返答に困る。
「だったらこっちが有利って事だな」
タツヤは再び黒炎丸に仕掛け、黒炎丸は迫ってくるのをあきらめその場に足を止めるとタツヤの剣を斬馬刀で受ける。
リュートは残り少ない『爆茶』を手に、レンレンとセイは剣を手に、ヤトもまだ痛みはあるものの我慢しながら一斉に仕掛けた。
セリもなんとか立ち上がり、雷を呼び黒炎丸へと落とす。爆発音と、鍔迫り合いの音が響くのだが、黒炎丸には傷一つつかない。
繰り出した剣はことごとく六本の腕で受け止められ、爆発物系や魔法系は鉄壁の防御力の前では無力だった。
「拙者はこの世界では無敵の存在でござる…どうあがいても倒す事はできないのだ！！」
「む、無敵って…そんなのアリかよ？！このゲーム…無敵は不可だったんじゃ…」
「もともとバグも多いですし…それが原因かもしれませんよ？！」
「じゃあどうしろって言うんだ！？」
どうすればいいのかがわかりそうな頼みの綱の聖女は未だ起き上がる気配はない。
かと言って、打開策があるわけでも…
「拙者も鬼ではない…貴様らに一つ、条件をくれてやろう」
「条件…？」
「拙者のこの体に一太刀でも食らわせ、傷をつける事が出来たなら…剣を貴様らにくれてやろう！」
不敵な笑みを浮かべながら告げた黒炎丸。
一太刀でいい…そんな条件を出すのだから、よほど防御力には自信があるのであろう。
「……その言葉、嘘ではありませんわね…？」
不意に、男達の背後から少し弱々しげな声が聞こえ、一斉にそちらを振り向く。
そこにはみなもに支えながらも、立ち上がって剣を構えているデルフェスの姿があった。
「デルフェスさん！お体…大丈夫なんですか！？」
「ご心配には及びませんわ…それより皆様、ご迷惑をおかけいたしました…魔王を倒す事に協力できませんでしたわ…」
「そんな事全然いいって！いや、ほんとに無理すんな…？」
レンレンが慌てて駆け寄って彼女の体を支える。しかし、デルフェスは微笑みながらそれを制すと、
しっかりと自分の足で立ち、そして歩き始めた。
「黒炎丸様とおっしゃいましたわね？先ほどの言葉に嘘偽りはございませんですわね？」
「武士に二言は無いでござるよ」
「…それでしたら、このわたくしが必ず貴方様に一太刀与えて見せますわ！」
チャキっとデルフェスは剣を黒炎丸に向けた。俄然、周囲の男達の士気も上がるというものである。
「では…いざ勝負！！」
再び、今度はデルフェスの声と共に火蓋が切って落とされる。
黒炎丸はどこか楽しそうな笑みすら浮かべて、自分を攻撃してくる数々の剣を、
時には金棒で、時には戦斧で、そしてまた時にはノコギリで弾き、そして相手へと仕掛ける。
防御しながらの攻撃で、黒炎丸からの攻撃は大ダメージにはならないものの、
小さな傷が増える事も時として多きな傷よりも厄介な痛みを身体的にも精神的にも与える事がある。
接近戦の間を縫って、エンは拳銃で攻撃を仕掛ける。さらに…
「俺を差し置いてクリアはさせないからな…」
目を覚まし、まだ回復途中ではあるがシズカが一番後ろから弓矢を放ちサポートにまわる。
一進一退とも言える攻防が、休む間もなく黒炎丸と彼らの間で繰り広げられていた…のだが…
『どうなってるの…？』
「あ、気がついたんですね！聖女さん！良かった！」
それまでひらすら気を失っていた”聖女”が起き上がり、驚愕の表情で目の前に起こっている事を見つめていた。
隣にいたみなもとミコは顔を見合わせる。何故か、今の”聖女”の雰囲気が…違っているようで…
「あの…聖女さん…？」
『ちょっと、これはどういう事なの？どうなってるの？あれは何？何と戦ってるの？！』
どこか遠くから聞こえてきているような聖女の声。そして、何か慌てたげな様子の聖女の声だった。
とりあえず、今までに起こった出来事をかいつまんでみなもとミコは説明する。
聖女は顎に手を当てて難しい顔をすると…その外見に似合わず、小さく舌打ちをして。
『やられたわね…これ、イレギュラーもイレギュラーな…もしかしたら不正アクセスかもしれないわ』
「え？！ど、どういう事なんですか！？みんなはバグかもしれないって…」
『バグ？そんなもの最初から起こってないわ』
あっさりときっぱりと言う聖女の言葉が、理解できずにみなもとミコは互いに顔を見合わせる。
しかし聖女はそれっきり何も喋らず、ひたすら難しい顔をしたままで目の前の戦いを見つめていた。
黒炎丸との戦いは、大詰めを迎えていた。
スタミナ切れという言葉を知らないのかと思うほどの元気さの黒炎丸に対し、さすがにこちらは疲労も限界。
攻撃の精度も下がり、少しの反撃だけで大きく後ろへとよろけてしまうほどだった。
「拙者にも情けがある…そろそろ一思いにいかせてもらうでござる」
黒炎丸はそう告げたかと思うと、六つの腕を大きく伸ばし…そして…
「黒炎丸秘技…必殺・黒炎陣！！」
キメゼリフと同時に六つの腕が、すばやい動きで繰り出して連続攻撃を仕掛ける。
ありとあらゆる武器で攻撃を受けて、なんとかダメージを最小限に抑える程度の防御しか出来ず跳ね飛ばされる。
そんな中にあって…デルフェスは必死でその場にとどまり、そして剣を構えた。
「聖女様のお力…たとえ相手が魔王でなくとも通用するはずですわ…っ！！どなたか援護を！！」
「俺…いや、アタシに任せとけっ！！」
シズカが弓矢を番えて、そして風を巻き起こしながら連続して黒炎丸へと弓矢を射続ける。
その攻撃自体でダメージを与える事は出来ないのだが、弓矢は黒炎丸の腕を一瞬でも止めるのには充分だった。
そして、デルフェスにはその一瞬があれば充分だった。
「聖女様から授かりしわたくし最後の力…剣戟の乱舞…！」
デルフェスの剣が美しく、軌道を描くようにして何度も黒炎丸へと繰り出される。
それはどんな鉄壁の防御すら切り裂いてしまうほどの、力強さを持っていた。
黒炎丸にとって、この技を一番最初に使っていたとしたら…たいしたダメージでもなかっただろう。
しかし、いくら無敵とは言えそれなりに攻撃を受け、攻撃を仕掛けた後…デルフェスの渾身の技の切っ先は…
黒炎丸の黒い鋼鉄の鎧を浅く切り裂いていた。
「………見事だ…」
黒炎丸は、悔しがるそぶりも見せずに…デルフェスを見つめると顔に笑みすら浮かべる。
「縁あらばまた会おうぞ…！！」
「あっ！」
短く告げたかと思うと、黒炎丸は一瞬にしてその場から消え去ってしまう。
その直後、カランと音を立てて一本の剣がまるで空から舞い降りてきたかのように…床の上へと落ちてきた。
「もしかして俺達やったのか？終わったのか？剣、手に入れたのか！？」
「どうやらそのようだな…」
「やりましたね皆さん！！レンレンさんも、タツヤさんも、ヤトさんも、セイさんも、セリさんも、エンさんも！
そしてシズカさんにデルフェスさんも！それにみなもさんにミコさん！！…えーっと…それから…」
「もしかして…出遅れたみたいですね、僕たち」
「ふっ…俺とした事が最後の最後にレディをお守りできなかったなんて…」
「ああ！そう！ウタタさんとライさん！」
いつの間にやら、回復薬をしこたま手に持ったウタタとライも戻ってきていた。
戻ってくる途中で戦いの音に気づいて急いで駆け上がってきたらしいのだが、少し遅かった事をかなり悔しがっていた。
「黒炎丸さん…本当に強い方でしたわ…傷をつけただけで本当に去っていっていただけて安心しましたわ」
「武士にに二言は無いそうだからな…」
苦笑いで呟くセリに、デルフェスは微笑んで。
『皆さん、お疲れ様でした。無事に剣を手に入れてくださりありがとうございます…これでクリアになります』
「聖女様！！」
『申し遅れました。私、今回の企画担当のミムラと申します。この度は私達の不手際でご迷惑をお掛けしました』
「…あの？どういう事でしょうか？えっと、話が…」
『今回のこの事件、そもそも私をはじめとした開発チームが仕組んだ自作自演の事件だったんです。
シナリオも私が担当してました。そして監視役として私は聖女として、他の関係者もNPC、PCとして入り込んでいたんです。
あと、新システムの試験も兼ねてました。遊びではなく今回のように切羽詰った状態でプレイした場合の人体に直接与える刺激等を調査する為に…
ログアウト出来なくなっていたＰＬさんは皆、ほとんどお金で雇っているか、もしくは協力者の方々です。』
延々と”聖女”の口を通して語られるのは、なんとも腹立たしい事実ばかりだった。
要するに事件を解決しようと集まった者は実験の被験者としてデータを取られたりしていたというのだ。
彼らがそのような手段を取ったのも、新システムの開発をしていた主任が事故死してしまってから、
主任不在ではシステムが不安だからという理由で開発中止の話が持ち上がっていて、なんとか開発を続けたいと言う気持ちがあり、
やってはいけない事とわかっていながらもそうさせてしまったらしい。何を聞いても関係者が口を割らなかったわけも理解出来るというわけだ。
『それにしてもあの黒炎丸…我々のシステムにハッキングしてくる者がいたなんて…
これでどのみち開発はまた一からやり直さなければならなくなったのね…ほんとうにごめんなさい…なんて馬鹿な事をしたのかしら』
”聖女・ミムラ”は自嘲的な笑みを浮かべると同時に、ログアウトの方法を彼らに告げて姿を消したのだった。
※
ログアウト後、それぞれは顔を会わせる事はせずに解散する事になった。
と言うのも、テレビ局や新聞が取材にやってきていて、皆バラバラでこっそり帰るしかなかったからだ。
色々と納得のいかない事もあるが、関係者達は後日改めて伺うとだけ告げて彼らを見送った。
後ろ髪を引かれながらも、再び再会する事を誓って…仲間達は帰途についたのだった。
■
ゲームオーバー。
ハッキングに成功し、うまくネットの世界を操れるかと思っていたのだが、
面白くなるかもしれないと出した条件が間違いだった…そう思いながら、ログアウトしてきた黒炎丸を彼女は見つめた。
「もう少しのところでござった…かたじけないでござる」
「いいのよ。まだまだこれからなんだから！次よ、次！！」
黒炎丸のボディをポンポン、と叩いたあと、少女は立ち上がって部屋を出て行く。
「世界征服への道は長く険しいものでござるな…」
誰もいなくなった部屋の中で、ポツリと黒炎丸は呟く。
重い体を引きずるように自分も部屋を移動して、そしてふとテレビの置いてある場所に出る。
『テーマパーク事件・解決へ！！』
そんなテロップが表示されて、ニュース番組は特番を組んでいた。
なんでも、今回は話題を呼ぶためにテーマパークの一部の人間が仕組んだ”自作自演”の事件だったらしいのだが、
途中からイレギュラーなハッキングを受けた為に話がややこしくなってしまったという事だった。
そのハッキングの犯人を調査中であるという事だったのだが…
「拙者たちを捕まえる事などできはしないでござるよ…」
黒炎丸は自信たっぷりに呟くと、その体を揺らして誇らしげに歩き始める。
ログインした時は白く黄色く輝いていた太陽も、今は赤く黒炎丸の黒いボディを照らしていたのだった。
■ＴＨＥ ＥＮＤ■
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■ 登場人物（この物語に登場した人物の一覧） ■
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みなも：僧侶
【1252／海原・みなも（うなばら・みなも）／女性／13歳／ 中学生】
エン：銃士
【1431／如月・縁樹（きさらぎ・えんじゅ）／女性／19歳／旅人】
デルフェス：女剣士
【2181／鹿沼・デルフェス（かぬま・でるふぇす）／女性／463歳／アンティークショップ・レンの店員】
リュート：白魔法使い
【2209／冠城・琉人（かぶらぎ・りゅうと）／男性／84歳／神父（悪魔狩り）】
セリ：白魔法使い
【2259／芹沢・青（せりざわ・あお）／男性／16歳／高校生・半鬼・便利屋のバイト】
レンレン：狂剣士
【2295／相澤・蓮（あいざわ・れん）／男性／29歳／しがないサラリーマン】
シズカ：弓使い
【2320／鈴森・鎮（すずもり・しず）／男性／497歳／鎌鼬参番手】
ウタタ：白魔法風使い
【2328／鈴森・転（すずもり・うたた）／男性／539歳／鎌鼬壱番手／ゲームマスター】
ヤト：武術士
【2348／鈴森・夜刀（すずもり・やと）／男性／518歳／鎌鼬弐番手】
セイ：魔剣士
【2412／郡司・誠一郎（ぐんじ・せいいちろう）／男性／43歳／喫茶店経営者】
ライ：武闘家
【2441／西王寺・莱眞（さいおうじ・らいま）／男性／25歳／財閥後継者／調理師】
ミコ：踊り子
【2449／中藤・美猫（なかふじ・みねこ）／女性／7歳／小学生・半妖】
タツヤ：英雄
【2953／日向・龍也（ひゅうが・たつや）／男性／27歳／何でも屋：魔術師】
楓希・黒炎丸：裏ボス
【3300／楓希・黒炎丸（ふうき・こくえんまる）／男性／1歳／武者型機械兵士】
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■ ライター通信 ■
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＞楓希・黒炎丸様
こんにちわ。はじめまして。ライターの安曇あずみと申します。
この度は「剣を取ったらファンタジー？完結編」にご参加いただきありがとうございました。
今回、楓希・黒炎丸様のプレイングが裏ボスという事で、実に面白いプレイングをしていただけたので、
調子に乗ってリンクシナリオ的な手法で執筆させていただきました。（＾＾；
本編からこちらのノベルに飛んでくるようなかたちになっております。
黒炎丸様との戦闘に至るまでの経緯がお知りになりたければ、他の参加者様のノベルをご覧下さいませ。
黒炎丸様と他の参加者様の戦闘、なかなか執筆していて楽しかったです。
個人的に世界征服を企むけど憎めないタイプの方々が好きなので楽しませていただきました。
またどこかでお会いできるのを楽しみにしております。
：：：：：安曇あずみ：：：：：
※誤字脱字の無いよう細心の注意をしておりますが、もしありましたら申し訳ありません。
※ご意見・ご感想等お待ちしております。<(_ _)>
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