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■獣達の啼く夜■

水貴透子
【2863】【蒼王・翼】【F1レーサー 闇の皇女】
「今回で7件目か」
 桃生 叶は遺体に被せられているビニールシートを捲りながら小さく呟く。
 今回もまるで獣に食い荒らされたような遺体だった。
 ここ3週間で七人もの人間が通り魔にあっている。
 被害者の共通点は全くなく、共通して言えることは毎回、獣に食い荒らされたような遺体だという事。
「叶さん、気合入ってますね」
 名も知らない同僚達が声を潜めて言っている。
「気合も入るさ、この通り魔事件の最初の被害者は彼女の妹だったんだからな」
 年を取ると口が軽くなうというのは本当らしい。
「…すみませんケド、これ以上見ていても無意味なので失礼します」
 そう言って叶はすたすたとどこかへと歩いていった。
 これが普通の刑事課なら許されないのだろうが、叶が所属しているのは無職一課。
 迷宮入りになりそうな事件、迷宮入りになった事件を調べる一課、といえば聞こえはいいが
 簡単に言えば邪魔者を放り込む用なしの一課、というのが事実だ。
「…ふん、里香の仇は必ずとるわ…」
 そう言って叶は調査書をファイルしてある分厚い本を取り出してパラパラと捲る。
「昨日の事件は公園か、今日の夜にでも調べに行こうかしら…」


         ▽ライターより▽
 初めましての方もそうでない方もこんにちは、瀬皇緋澄です。
 このシリーズ…獣達の啼く夜は一応続きモノですが、短編の集まりにする予定です。
 ですから、最初から参加されても途中から参加されても大丈夫…だと思います^^:
獣達の啼く夜~act1~

オープニング

「今回で7件目か」
 桃生 叶は遺体に被せられているビニールシートを捲りながら小さく呟く。
 今回もまるで獣に食い荒らされたような遺体だった。
 ここ3週間で七人もの人間が通り魔にあっている。
 被害者の共通点は全くなく、共通して言えることは毎回、獣に食い荒らされたような遺体だという事。
「叶さん、気合入ってますね」
 名も知らない同僚達が声を潜めて言っている。
「気合も入るさ、この通り魔事件の最初の被害者は彼女の妹だったんだからな」
 年を取ると口が軽くなうというのは本当らしい。
「…すみませんケド、これ以上見ていても無意味なので失礼します」
 そう言って叶はすたすたとどこかへと歩いていった。
 これが普通の刑事課なら許されないのだろうが、叶が所属しているのは無職一課。
 迷宮入りになりそうな事件、迷宮入りになった事件を調べる一課、といえば聞こえはいいが
 簡単に言えば邪魔者を放り込む用なしの一課、というのが事実だ。
「…ふん、里香の仇は必ずとるわ…」
 そう言って叶は調査書をファイルしてある分厚い本を取り出してパラパラと捲る。
「昨日の事件は公園か、今日の夜にでも調べに行こうかしら…」



視点⇒蒼王・翼


 獣達の啼く夜〜act1〜

「連続通り魔事件か…」
 翼はザワザワと煩い野次馬とマスコミの連中から少し離れたところで呟く。近くに行って見たほうが状況はよく分かるのだが、F1レーサーという顔を持つ翼が簡単にいける場所ではないので、遠くからしか見る事がかなわなかった。
「…どの殺人も同じ獣に食いちぎられたような殺され方。間違いなく人間ではないだろうな…ライカンスロープ、獣人、魔女…どちらかといえば獣人の犯行が一番納得がいくな」
 もし、翼の言うとおりならば本来は僕的存在。だが、今回は度が過ぎるため狩るべき存在と翼は見なした。
「…全くいつまでこんな事件が続くのかしら…」
 一人愚痴るように現場から離れてきた女性に目が行く。その女性は警察関係者のようでいつまでたっても進展のない事件にイラついているようだ。
 翼はなるべく接触を持たないように身体を木の影に隠して、その女性が通り過ぎるのを待った。誰かと協力すれば解決は早いかもしれないが、人間が相手ではないという可能性がある以上、一人で行動した方が何かと便利なのだ。
 誰かを守りながらだと、自らの破滅を招きかねないからだ。
 犠牲者に共通点は全くないとテレビで言っていた。おまけにマスコミは中々解決しない事件を面白おかしく囃し立てている。犯人にもし知性というものがあるのならば調子に乗って、近いうちに犯行を繰り返すだろう。
「…まぁ…知性あるモノならば七人も殺したりはしないのだろうが…」
 そう呟くと、翼は踵を返してその場を立ち去った。



 事件は翼が思っていたより早めに起きた。
 夜の九時、突然風の音が変わり、翼はハッとする。
「思っていたより早かったな…」
 翼は風が道を指す方向へと足を進める。
「ここは…」
 着いた先は昼間に来た七人目の犠牲者が出た現場だった。
「…知性があるかと思ったが…やはり馬鹿だったな…」
 翼は溜め息混じりに呟く。同じ現場で犯行を繰り返すなど子供でも考えはしないだろうというのに。
「グァァァァァアアッ!」
 突然、獣の咆哮が翼の耳に入ってくる。バッと後ろを向くと昼間の女刑事が人間の姿をした獣に襲われていた。人間の姿と言っても獣とわかるくらいだから普通の人間の姿とはかけ離れていたが…。
「キャアッ!」
 女性の声が夜の公園に響いた後にガスンと鈍い音がした。
「…っ!?」
 遅かったか!と翼は女性に駆け寄るが、幸いにも女性は頭を強く打っただけで命には別状はないようだ。
 翼はホッと胸をなでおろし、この状況をありがたく思った。今から翼がすることを見れば女性は翼に問い詰めてくるだろう。
「…さて、と、何も迷う必要はなくなったことだし…キミにも消えてもらおうか」
 命乞いは聞かないよ、と剣を抜きながら言う。その獣に翼の言葉が理解できるのか、できないのかは分からないが気持ちの悪い笑みを翼に向けた。
「…チッ」
 翼が小さく舌打ちをすると同時に獣は鋭い爪で襲い掛かってきた。
「く…」
 翼は剣で間一髪で攻撃を受け流すが、第二撃目で吹き飛ばされる。
 グッ、と翼は呻きながら立ち上がる。
「…おかしい…」
 目の前にいるのは間違いもなく獣人、本来ならば自分に服従する存在のはずだ。暴走をして襲い掛かってくるのは百歩譲って納得をするとしても、問題はこの力だ。翼の力を獣は遥かに上回っている。本来ならばありえないことなのに。
「…お前は…誰だ…!」
 剣で斬りつけても、刺しても痛みを訴える表情をするどころか、先ほどの気持ちの悪い笑みを絶やす事はない。
 その時だった、一筋の光が翼を差した。突然の事で翼は思わず目を細める。
 そして、その光が懐中電灯のものだと気がついたのはそれから数秒後の事だった。
「あんた、強いね。俺の作った合成魔獣をここまで苦しめたのは、あんたが初めてだよ」
 公園のジャングルジムの上から楽しそうに笑うのは翼と同じ年くらいの少年だった。
「…作った?」
 翼は疑問を少年に投げかける。
「そう、これは本来あるべき姿を捻じ曲げて作った生き物でないモノ。面白いだろう?」
 少年は楽しそうに笑う中、獣はけたたましく叫びながら翼に向かって襲い掛かってきていた。
「…五月蝿いよ、お前」
 笑っていた少年が途端に表情を変えてナイフを獣に投げつけた。
「…今は俺が喋っているんだよ、邪魔をするな」
 感情を見えさせない声に翼はゾクと背筋が凍るのを感じた。
「それ、俺はもういらないから壊していいよ。新しいのを作ればすむからね」
 そう言って少年はその場から立ち去ろうとする、が…翼がそれを止めた。
「待て!お前は―…」
「俺は十六夜・夜白。気が遠くなるほどの昔に、人間どもに言い様に身体を弄られて人間を捨てさせられたモノだよ。蒼王・翼サン…」
 クスと意味のある笑みを浮かべながら夜白は闇に溶けて消えていった。
「十六夜…夜白か…気味の悪い男だ…」
 そう言って再び剣を構えて獣と向き合う。夜白が投げたナイフのダメージは全くと言っていいほどないようで、グルルと唸りながら翼を威嚇している。
 ダメージが残っていない事は感謝したいくらいだ。人の手を借りた、などといわれたくはないから。
「さっきは油断しただけだ。どうやらキミはおいたがすぎたようだな。僕から逃げられるなどと思わない事だな」
 そう言って剣を構える。
 そして、獣を斬りつけた。手ごたえはあった。獣は苦しそうに呻きながらよろよろと倒れこんだ。畏怖の目で獣は翼を見る。それが翼には命乞いをしているように思えてフッと笑みを浮かべた。
「今までそういう目でキミを見た犠牲者は何人いた?」
 そう呟いた後で翼は消滅能力で獣を消し去る。砂が舞い散るようにザァッと音をたてて獣は消えた。
「…終わった、といえるのか…?」
 新しく作る、確かにあの少年はそう言った。これからも先ほどの獣のようなものが現われ続けるのならば…。
「僕は切り倒すのみさ…」
 剣をギュッと握り締めて夜空に映える月を見ながら呟いた。




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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

2863/蒼王・翼/女性/16歳/F1レーサー兼闇の狩人

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■         ライター通信          ■
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蒼王・翼様>

いつもお世話になっております、瀬皇緋澄です。
今回は「獣達が啼く夜」に発注をかけてくださいまして、ありがとうございます。
話の内容はいかがだったでしょうか?
少しでも面白いと思ってくださったらありがたいです^^;
それでは、またお会いできる機会がありましたらよろしくお願いします^^

               −瀬皇緋澄